きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.4.8 神奈川県真鶴岬




2007.5.14(月)


 日本ペンクラブ電子文藝館委員会が日本橋兜町の会館で開かれました。ペンクラブの各委員会は2年が任期で、今回が最後の委員会です。5月30日の総会で新理事会が決まり、その後、各委員会の委員長が任命されます。その委員長によって新たな委員が任命されるという仕組みですから、現在の委員が全員そのまま再任ということはありません。一応、そういうけじめになっています。

 最後の委員会では電子文藝館サイトの若干の手直し、必要な箇所の英文化、中国語化、ハングル化などが話し合われましたが、ほとんどが次期委員会への申し送り事項となりました。現在の電子文藝館委員会として新委員長は推薦してありますけど、名目上は新理事会の承認後の発表となります。私も留任かどうかは判りませんので、これ以上の発言は控えておきましょう。

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 電子文藝館委員会の写真はほとんど載せたことがないと思います。上のメンバーは全員ではありませんけど、近くの居酒屋「濱町亭」での懇親会に残った人たちです。担当理事を始め、現委員長、新委員長候補などの皆さんが集まりました。
 写真は、今日使うのが初めてという方のデジカメで店の女の子に撮ってもらいましたけど、設定を頼まれた私の操作が悪くて暗くなってしまいました。ゴメンナサイ、です。なにせ、だいぶ酔っていたものですから(^^;
 さて、このうち何人が残り、どんな新しい人が委員になるのか判らず、私自身も白紙状態ですけど、担当理事ともども6年に渡って手塩にかけた文藝館は、今後も大きく発展してもらいたいものです。良質の日本文学を国内のみならず、世界中に発信していってほしいと願っています。



詩誌『饗宴』49号
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2007.5.1 札幌市中央区
林檎屋・瀬戸正昭氏発行 500円+税

<目次>
詩論
詩とは何か−日本追分ソーランラインの旅(中)/高橋秀明…4
作品
かみすながわ−不思議の二条通り/嘉藤師穂子…6  Water lilies・睡蓮/吉村伊紅葉…8
転身譚5/塩田涼子…10              美を見しひと/瀬戸正昭…12
記憶のトビラ・ハミングウェイ/新妻 博…14    モモイロのトマト・美しかった日々/新妻 博…15
暗闇と戦う・けむり/中村容子…16         白い春/村田 譲…18
寂陽/谷内日ゆかり…20              半島/尾形俊雄…22
ヨーロッパに行ったことがありますか/木村淳子…24
特集 生誕100年 ルキノ・ヴィスコンティ(1906〜1976)
ヴィスコンティとレオパルデイ/工藤知子…26
「夏の嵐」に始まって/塩田涼子…29
ヴィスコンティを追ってボガールのそばまで/笠井嗣夫…31
破滅へ向かう者への優しい眼差し/和田由実…36
ヴェニスに死す/瀬戸正昭…38
連載エッセイ
林檎屋主人日録(抄)(10)(2006・11〜2007・3)/瀬戸正昭…40
受贈詩集・詩誌…19
饗宴ギャラリー やまだ乃理子「花宇宙」…2



 転身譚5/塩田涼子

そのひとは
窓際の座席で
午後の列車の進行方向とむかい合い
小卓の上の
バターピーナッツをときどきつまみ
缶ビールを飲み干し
そのあと
宙に浮かせた手を
ゆっくり 膝の上におろす

足元に落ちて 弾んで 転がり寄る
灰色にくすんだ月のようなゴムボールを
むこうの天井近くからみつめている
遠くのこどもに投げ返し
壮年を過ぎた
その手を
揺れる膝の上に置く

あの ちっちゃな はなたれこぞうの目が
蜻蛉の羽のように
空気をかきまぜるので
そのひとは
揺れる脚に力をこめる

肘をついたもう片方の手を
集合と離散の
光の飛沫にかざす
終点
そんなものはない
ほとんど止まっているのと変わらない速さで
もうじき見えてくる
三つ数えても
数えなくても

窓を 浅葱の空がよぎる
川だ

川という
水の姿が近づくと

ひと群れの色あせたヒヤシンスが
水の声に軋みながら 低い橋を渡り

はばたきもしないで そのひとは
旋回する

 45号(2006.1.1発行)から続いている連作の5回目です。何に「転身」するのかは、たぶん完結しないと全貌が見えないと思います。しかしそれぞれ単独の作品として読んでも構わないと云えましょう。紹介した作品では「そのひと」の「手」に注目しました。「集合と離散の/光の飛沫にかざ」された手は、華美な世にかざす神≠フ手、と捉えては読みすぎでしょうか。
 「川という/水の姿」という詩語にも着目しています。器がなければ形を保ち得ない水の、ひとつの形が川です。水の分子に過ぎない私たちも世間という川の中でしか形を保ち得ない。そんなふうに捉えてみましたけど、これもまた読みすぎかもしれません。



詩誌『ひを』9号
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2007.5 大阪市北区
三室翔氏発行  286+税

<目次>
萩美智子/離宮へ 2            そのとき 4
三室 翔/バール 6            密かに偏在する 8  距離 11
古藤俊子/花のためのメモ W 12      花のためのメモ V 14
小西民子/ねむい空 Z 16         ねむい空 [ 18
後記 20



 ねむい空 Z/小西民子

うすい雲を
かかえて

山並みを見ながら
行き来をくりかえす日々が
つづく

 春にさしかかると
 どこかで

魚と夢をひきあげる昼の網

 うとうとする 野

暮れかけた駅へ
降り立つと
白い花の木がどこまでも
浮かんでいる

 問いばかりが
 ふくらんで

 連作「ねむい空」も今回はZと[を迎えました。ここではZを紹介してみましたが「うすい雲」「昼の網」「白い花の木」など、いかにも眠そうな素材です。1字下げの連、たった1行の連も奏功しているように思います。
 しかし、そればかりではありません。最終連では「問いばかりが/ふくらんで」となっていますから、ここは眠いだけでは済まされません。問で頭が活性化されるのか、あるいはボンヤリと問が膨らんでくるのか、その双方かもしれませんけど、人間の性状をうまく捉えていると思います。おもしろく拝読しました。



野村俊氏詩集『あのねのワルツ』
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2007.6.15 東京都新宿区 文芸社刊 1700円+税

<目次>
序曲 たんぽぽのワルツ 4
四月 14
園長先生のワルツ 16
.  お膝の交代式 21
お花見 24
.       かくれんぼ 28
小学枚の宇宙人 31
五月 36
こいのぼり 38
.     マミちゃんの夢 40
逃げた鯉のぼり 42
.   プレゼント 45
幸せな影法師 47
.    雑草 53
六月 56
土方作業 58
.      かにの床屋さん 61
犯人は誰だ 65
.     しずかちゃん 68
ほっペ 71
七月 74
プール 76
.       あんよ 79
ミサちゃんのジージ
.82  記念写真 84
群蝉 86
八月 88
りんご 90
.       桑の葉 93
仔猫のように 96
九月 100
新学期 102       お姉さんになっちゃった 104
ふかちゃん 106     王女さま 108
骸骨の話 110
十月 114
お話の旅人 116     幼稚園の廊下 118
幼い恋人 121      お昼休みの甘い山柿 125
色鬼(いろおに)131
十一月 134
焼き芋大金 136     秋のコンサート 140
淋しさ 143       落ち葉 146
落ち葉のお風呂 148
十二月 150
小春日和 152      帰り道 155
サンタの贈り物 158   小学三年生のさゆりちゃん 161
一月 166
お餅つき大会 168    しりとり 171
写真 174        みい君 176
田舎の幼稚園へ行った178 メール友達 180
二月 186
体重 188        あっちゃん 190
柴刈りに 192      お膝のお馬 194
美しい笑顔 196
三月 200
さとみちゃん 202    ミルク 204
みさちゃんの紙芝居 206 だるまさんがころんだ 208
離任式 219
終曲 十五歳のワルツ 226
あのね 230



 みさちゃんの紙芝居

昔々 あるところに
おじいさんとおばあさんがいました
おじいさんは山のゴルフ場に芝刈りに行って
おばあさんは洗濯機が壊れたので
川へ洗濯に行きました
川の上の方から桃の皮をかぶった桃太郎が
流れてきました
おばあさんは桃太郎を連れて帰りました

おばあさんは洗濯物どうしたの?

桃太郎に持ちなさいと言って持ってもらいました

やがて桃太郎が大きくなって
おばあさんにきびだんごを作ってもらって
鬼退治に行こうとしました
そのとき
どこさいくだ
おじいさんに叱られました
いつもいつもうるさいんだよと
桃太郎は怒ってまた桃の皮をかぶって
川を流れていってしまいました
めでたしめでたし

これはみさちゃんの紙芝居
三枚の画用紙を代わる代わるめくりながら
とんでもない
創作桃太郎を読んでくれました

 しばらく笑いが止まりませんでした。「おばあさんは洗濯物どうしたの?」という発想には驚かされますし、「いつもいつもうるさいんだよ」には子どもの正直な気持が現れていると思います。最後の「めでたしめでたし」では、とうとうたまりかねて大声で笑ってしまいました。
 著者は小中学校の校長先生、幼稚園の園長先生などを長く勤めた方です。子どもとの交流を描いたこの詩集には「四季の詩(うた)」という副題が付けられています。年長になった幼稚園生が、園長先生の膝へどうやって座るかを新入園児に教える「お膝の交代式」、小学校3年生以上は授業中だったが、早く帰る2年生と一緒に廊下で遊んで、立たされてしまった校長先生を描いた「だるまさんがころんだ」など、笑いの中にも教育とは何かを考えさせられる好著です。ご一読をお薦めします。



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