きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.5.20 栃木市 とちぎ蔵の街




2007.6.15(金)


 夕方6時から日本詩人クラブの理事会が開かれました。場所は神楽坂の事務所です。理事会としては初めて使いました。関西担当理事は来られませんでしたが、16人全員が集まって、ちょうど座りきれる大きさです。事務所にはまだ会議用のテーブルと椅子、壁面に書棚しかありませんが、喜びは大きかったですね。
 何も揃っていないのでボチボチ買い足していかなくてはなりません。総務担当の船木さんと私の仕事になります。とりあえず鋏や糊から、という状態で、明日、二人で買い物をして当面のものは揃えることになりました。いずれパソコン、コピー、電話なども入れる予定です。
 理事会はかなり激論があって、新しいパワーを感じました。年齢が若返るということはそれだけでもパワーを感じます。入会は、会員入会が4名、会友入会が3名。その中で戦後生まれは3名。ここのところ入会の半数が戦後生まれになっているように思います。新しい皮袋に新しい酒、というところでしょうか。事務所も出来て、名実ともに社会に開かれた団体になっていってほしいと思っています。



詩誌SPACE74号
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2007.7.1 高知県高知市
大家氏方・SPACEの会発行 非売品

<目次>

雨上がりの街他1編/ヤマモトリツコ 2   人生の青い中也よ(二)/豊原清明 6
歴史の路地裏または理論への信仰/南原充士 8 日々/内田紀久子 11
五里霧中/さかいたもつ 14         夕陽/武内宏城16
 §
台所詩(11)/中上哲夫 36          無音の風景/かわじまさよ 38
朝/いずみしづ 40             ある予感/近澤有孝 42
カメラで狩に/弘井 正 44         回想/阿部博好 46
 §
輪/あきかわ真夕 64            光の海/広田 泰 66
わけもわからぬままに/大家正志 67     ベランダ/山川久三 70
五丁目電停札所/萱野笛子 72        六月の邂逅/澤田智惠 74
陽に溶ける氷のように/山下千恵子 77    蕪村句を読む/指田 一 78
詩記 山崎詩織 48
エッセイ
着物のこころ/片岡千歳 35         耳がボワッとするのです/山沖素子 52
カエル好きは遺伝するか/さたけまさえ 54
演奏会だより 弘井 正 50
リレーシナリオ 豊原清明 58・62      大家正志 60
評論 連載Y『<個我意識と詩>の様相』〜日本人の自我意識と詩(7)〜/内田収省 18
編集雑記 80
表紙写真 無題(制作・指田一)2006年 南京袋、着物地、座金、鍵ほか 53×70



 無音の風景/かわじまさよ

閉ざされた窓の向こうの
遠く広がる無音の風景

晴れた日
物干し場にはためく洗濯物
あんなにも
陽の光に 風に
全身で はためいている

洗濯物で
胸がいっぱいになったことは
これまで なかった

ああ
息吹のなかに
包まれたい あらんかぎり
陽の光や風や雨にさらされて
苔むしたり
朽ちたり

ガレージを横切る野良猫
でていく車
はいってくる車
コンビニエンスストアの自動ドアが
人をのんだり吐いたりしている

レンジでチンされたお弁当のね
まっかなウインナーがね もしも
お嬢ちゃんの指だったとしてもね
だあれも気がつかないよ ヒヒヒ

点滴が充電切れでピーピー鳴って
私はまた 病室のベッドヘと戻される
カーテンとカーテンで仕切られた
私のための薄暗い犬小屋

 病室の窓から見える「無音の風景」を描いていると思います。「洗濯物」が「全身で はためいている」、「洗濯物で/胸がいっぱいになった」などのフレーズにかわじまさよ詩の面目躍如たるものを感じます。第6連だけは実際に見ていない光景ですが、ここも良いですね。どなたかが熊の家族のおやつに人間の指が出てくることを書いていましたが、それと通ずる発想でしょう。最終連の「私のための薄暗い犬小屋」も秀逸です。明るい外の風景と対比されて、詩を締めていると思いました。



詩と評論『操車場』創刊号
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2007.7.1 川崎市川崎区
漉林書房・田川紀久雄氏発行 500円

<目次>
詩作品
Actor/倉田良成 1             八月のブランコ/池山吉彬 2
井守/野間明子 3             コーヒーはブラック/高橋 馨 4
永遠の都/田川紀久雄 6          浜川崎商業開発予定地/坂井のぶこ 8
短歌 川波/保坂成夫 9
エッセイ
幻のサーカス/坂井信夫 10         末期癌と診断されて/田川紀久雄 12
■後記・住所録 14
■付録 漉林ミニ通信一号〜四号



 末期癌と診断されて/田川紀久雄

 病院に行く前から、これは癌に違いないと確信していた。母が癌で亡くなった時の症状に酷似していた。思った通り、医師から「あなたは末期癌です。手術が出来ません」と言われた。その時は、ほとんどショックを受けなかった。それよりも死を宣告された事によって、本当の詩人として生きられるかも知れないと、思った。私には知的障害者の妹がいる。私が先に死んだらどうなるのだろうかという考えがかすかに脳裡を横切った。
 生きられるだけ生きればそれで良いではないかと思った。本当に書きたい世界がまだ私に残されているのだろうか。いや書かなければならない世界がかならずあるはずだ。田川紀久雄しかできない本当の世界があると思った。一瞬一舜を大切に生きていくしかない。
 そう思うと、胸の内が熱くなってきた。人生ただ長生きすれば良いというものではない。自分なりにどう生きたかが大切なだけだ。いまの時代で本当に詩人として生きられた人が何人いるだろうか。詩人と名乗っている人はあまたいる。しかし、本当に自分自身に問うて「私は詩人だ」といえる人が本当にいるのだろうか。
 死を宣告された事によって、これから最後の本当の仕事が出来る。そう思うと心から歓びが湧き出てきた。
 もう詩などという形に捕らわれる必要もない。本当の書きたい世界を追い求めて行く中で言葉が詩として定着してくれればそれでよい。人に誉められたいなどというちっぽけな心などさらさらない。(後略)

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 衝撃的なエッセイ「末期癌と診断されて」の冒頭部分です。「死を宣告された事によって、これから最後の本当の仕事が出来る。そう思うと心から歓びが湧き出てきた」という部分に胸が熱くなりました。『漉林』は137号で終刊、新たに『操車場』を命の限り続けると「後記」その他にあります。見続けていきたいと思います。



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