きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.5.20 栃木市 とちぎ蔵の街




2007.6.21(木)


 伊東市一碧湖畔の「池田20世紀美術館」に行ってきました。企画展は「嶋田しづ展」をやっていました。知らない作家でしたが、絵は油彩中心の抽象画で、良かったです。色と面のとり方に特徴があって、ちょっと日本人離れしているなと思ったら、20年もパリに行っていたようです。どぎつい色彩、鮮やかなもの、淡い作品とバリエーションも豊富でしたが、私の好みはモノトーンに近い絵でした。単純な線と暗い色調の絵が好きなんだなと改めて納得した次第です。
 それにしても「池田20世紀美術館」の企画展はハズレがないように思います。もちろん全てを観ているわけではなく、1975年開館の当初から30年ほどの間に15回ほどしか行っていないでしょうが、その中でハズレたという記憶はありません。計算上は2年に一度の見学ですから、今後は年に一度は訪れたいと思っています。拙宅からクルマで約2時間。意外に近いのです。



詩と評論『日本未来派』215号
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2007.6.15 東京都練馬区 西岡光秋氏発行 840円

<目次>
<眼> 日本人の「付和雷同性」と「みんな一緒主義」/細野 豊 表紙2
<特集> 詩と経験
詩と経験/石原 武 26
ことばのみなもと 詩と経験−この世の終わりのその日の夜明け−/山内宥厳 30
「われ初めて血をかぎぬ」−東静雄の擬似体験/南川隆雄 34
経験と詩の共有フィールドについて/岩井美佐子 38
石原吉郎の詩集『サンチョ・パンサの帰郷』から、「詩と経験」とは−/金敷善由 42

見渡す限り/木津川昭夫 2         昔の庭/内山登美子 3
自動小銃/中原道夫 4           仏向町/細野 豊 5
母の足音/西田彩子 6           ラストノート/大河内美佐 7
白線へ寄せる波/角谷昌子 8        俺は あれこれと考える/島崎雅夫 9
木の重い椅子/井上嘉明 10         年の瀬つめ町/藤森重紀 11
四月になって/若林克典 12         風と道と/森ちふく 13
ぼく(U)/高部勝衞 14           後ろ手又は後手/石井藤雄 16
クロッカスの詩/磯貝景美江 17       並んでいる/水野ひかる 18
隠しても/平方秀夫 19           影絵/山内宥厳 20
新しい朝に/今村佳技 21          人生のかたち/安岐英夫 22
花冷えの夜に/天彦五男 23         寸景(7)(8)/坂本明子 24
だるまさんが転んだ/伊集院昭子 25
<海外詩> フランス ロベール・マレの詩三篇/山田 直 訳 46
<日本未来派の詩人たち> 田熊健の原風景/井上嘉明 48
<旅から生まれた詩>
気ままな旅の詩/木津川昭夫 50       旅の詩−ヒマラヤ・ジョムソン街道から−/中原道夫 52
光り輝く、天も地も/磯貝景美江 54
<書簡往来> 俗を語る/天彦五男 56
<詩との出会い> 詩の景/水野ひかる 58
<私の処女詩集>
たった二冊の詩集/植木肖太郎 60      出会いの贈り物/林 柚維 61
幸運のマスコットとして/宮崎八代子 62

ディナー・クルーズの女/五喜田正巳 64   おかげさまで/壺阪輝代 65
嘴の漁港/吉久隆弘 66           ブックオフ/くらもちさぶろう 67
焚き火/建入登美 68            僕の病についてのお話/鈴木敏幸 69
思い出にならない/井上敬二 70       花が咲く/福田美鈴 71
印象派のどぶろく/前川賢治 72       かくれんぼは終らない/壁 淑子 73
女帝と廃帝/川村慶子 74          桑の実/柳田光紀 76
父の肖像/菊地礼子 78           みんなの仲間/岩井美佐子 79
添影/青柳和技 80             フジサンキタカイ/平野秀哉 81
西国巡礼から/まき の のぶ 82       磁針/林 柚維 84
働き蜂と猫/水島美津江 85         裸木/松山妙子 86
貧しい列島/後山光行 87
<ボワ・ド・ジョワ>
マイナーポーエットの春 日本詩人クラブ詩界賞を受けて/石原 武 45
忘れ難い日の記−岡山県文化賞を受賞して/坂本明子 88

庭の入り口/植木肖太郎 90         夕陽/南川隆雄 91
風の情話−または仮死について/川島 完
.92  レッドゾーン−赤い桝目の中で−/小倉勢以 93
北の浜辺にて/綾部清隆 94         桜道/瀬戸口宣司 95
落葉/青木洋子 96             未来へ/中村直子 97
セーヌ/藤田 博 98            黄泉路より/星 善博 99
記憶/武田 健 100
.            災厄クロケットとなる/宮崎八代子 101
勇敢なつわものと一人歩きのバラの情報/金敷善由 102
スミタさん/斎藤 央 103
.         物憂く/杉野穎二 104
夕闇は来て/山田 直 105
.         探鳥記/小山和郎 106
老牛の嘆き/西岡光秋 107

ささやかな私の詩学/坂本明子 108
.     雪の夜、天から舞いおりてくるもの/星 善博 109
カワセミ/吉久隆弘 110
.          ふるさと小田原−桜・いとこ・透谷碑−/福田美鈴 111
パリに思う/藤田 博 112
.         神霊治療体験記/斎藤 央 113
スノーパラダイス戸狩温泉スキー場にて/平野秀哉 114
復活祭の想い出とヒース/角谷昌子 115
.   是がまあつひの栖か/安岐英夫 116
妻の子守歌/藤森重紀 117
.         詩人の眼線/森ちふく 119
書評
木津川昭夫詩集『境野』/坂本登美 120
.   吉久隆弘詩集『メタセコイアが揺れている』/冨長覚梁 121
平方秀夫詩集『人差指』/梁瀬和男 122
.   藤田博詩集『アンリルソーよ』/金子秀夫 123
若林克典詩集『桜庭』/鈴木理子 124
.    瀬戸口宣司『表現者の回廊 井上靖残影』/傳馬義澄 125
この七冊 坂本明子 126・まき の のぶ 128
. 詩書督見・西岡光秋 63
短信往来89・133 投稿作品 小倉勢以・安岐英夫130 投稿詩応募規定133 同人住所録135 編集後記136
表紙・カット 河原宏治



 貧しい列島/後山光行

豊かな人と貧しい人の
格差がひろがっていると指摘される
現代がある
経済的なという枠組みのなかで語られている
昭和から平成へと
豊かさを求めて
みんな働いたのではなかったのか
求めた豊かさが貪しさを生んだ
というのは何と言う事だ
経済的に貧しい人
経済的に豊かなようで人間的に貧しい人
ああ
日本は現代になって
貧しい列島になったか
貧しい人という枠組みのなかで生きてきて
せめて人間として
豊かに在りたいと
道端に咲く
雑草の花の美しさを
ひととき安堵して見つめている
貧しい格差のなかに在ると
美しさでは
空腹は満たされない
けれども他人の一言の
美しさに奮える
一瞬の心の輝きも捨てがたい

 作者とともに団塊世代の一人としては「求めた豊かさが貪しさを生んだ/というのは何と言う事だ」という思いを強くしています。経済的に豊かになることで人間的にも豊かになると信じていましたが、実際には「経済的に豊かなようで人間的に貧しい人」も多く現れてしまいました。企業戦士≠ニして会社の利潤向上にも貢献して、社員に還元することに寄与してきたつもりでしたが、そうはなりませんでした。この上は「他人の一言の/美しさに奮える/一瞬の心の輝き」を見つめることしか出来ないのかもしれません。
 今号の「詩集展望・この七冊」で、まき の のぶ氏が拙詩集『帰郷』についてあたたかい評を下さっていました。御礼申し上げます。



季刊詩誌『竜骨』65号
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2007.6.25 さいたま市桜区
高橋次夫氏方・竜骨の会発行 600円

<目次>
<作品>
石に祈る/森 清 4            日々/松崎 粲 6
昏い空 毀れた空/長津功三良 8      包む/今川 洋 10
開けごま!/河越潤子 12          五月一日に見た/庭野富吉 14
迷い人/横田恵津 16            巣塔の塒/西藤 昭 18
分岐点/内藤喜美子 20           錆びた道程/小野川俊二 22
 ☆
跳ぶ/島崎文緒 32             詠人知らず六本木/木暮克彦 34
千年の樹/高野保治 36           コルカタのかなた/友枝 力 38
辛抱研(と)ぎ/松本建彦 40         漣と蒼い風に乗って/上田由美子 42
しぐれて/高橋次夫 45
羅針儀
詩道/今川 洋 24             城山三郎・戦争と詩/森 清 25
両国駅界隈(二)/高野保治 28
書窓
中 正敏『星ではない』/高橋次夫 46    清水榮一詩集『きしみ』/高橋次夫 47
海嘯 方言は文化だ/高橋次夫 1
編集後記 48
題字 野島祥亭



 包む/今川 洋

早春の朝
浅緑の空は寒い
冷たい手をこすりこすり歩くと
あなたは自分の手袋をはずして
そうっと握らせた
温もりのこもる手袋で両手を包むようにして
うつむいた少女の頃

風呂敷という重宝なものがある
お酒のビンはこのように
大きいもの 小さいもの……はと
テレビが実演していた
わたしの心も包めたら
多分木の枝にでも ひっかけておくだろう

地球を包むには特大風呂敷だ
もっとも布では間に合わない
 宇宙の心
 大気の心
ところが平和の顔美しい顔をして
 包みが破けそうな国
銃撃の絶えない国
核やミサイル……にこだわりの国

破けそうだ破けそうだ 地球はもろいんだ
地球が小さくなる
うろうろしているのは昆虫らしい
木の枝の包みの中で昆虫がうごめいている
今こそ若い血潮の籠る 手袋の温もりを
地球を包むもののほころびは温もりが必要だ

しかし間に合うだろうか
大気の冷々の表情よ
宇宙の困惑の態度よ

 「わたしの心も包めたら/多分木の枝にでも ひっかけておくだろう」というのは詩人としての矜持と云えましょう。「地球はもろ」く「小さくな」っていくなかで「今こそ若い血潮の籠る 手袋の温もりを/地球を包むもののほころびは温もりが必要」なのだという詩点も詩人ならではのものと思います。「しかし間に合う」のでしょうか…。「大気の冷々の表情」や「宇宙の困惑の態度」に対して、私たちは書き続けるしかないのかもしれません。「温もりのこもる手袋で両手を包む」という小さなことから始まって「地球を包む」まで展開させた佳品だと思いました。



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