きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
070520.JPG
2007.5.20 栃木市 とちぎ蔵の街




2007.6.25(月)


 日本詩人クラブの7月例会案内状を出す準備をしています。今回から宛名シールに会費受領状況を併記することにしました。具体的には「会費はH**年まで受領済です」という一文が加わります。
 本来は会員・会友各位がいつまで支払っているか個人で管理すべきだ、という意見があります。執行部側の事務の煩雑さもあって、現実にはそうせざるを得ませんでした。しかし、私はそれに反論していました。宛名シールを使うのなら、そこに会費受領状況を併記することは技術的には何の問題もありません。総務担当になって案内状を私が出す立場になりましたから、さっそく持論を行動に移すことにした次第です。これで会員・会友の皆様は毎月ご自分の支払い状況を確認することができるようになりました。滞っていたら速やかにお支払いくださいね、という願いも込めています(^^;

 でもね、現実にやってみると、予想した通り大変でした。なにせ900人近い会員・会友ですから、お一人お一人の状況を把握するのは一苦労です。今年度から会費が1万円に上がっていますけど、今まで通りに8000円しか送ってこない人、もう3年も支払ってくれていない人、5年先まで払い込んでくれた人など様々です。それを名簿と照らし合わせながらチェックするのは、私も大変だけど会計担当者がもっと大変です。幸いなことに会計さんはメールが使えますので情報の遣り取りは早いですけどね。
 それに一度このシステムが確立してしまうと、あとはルーチンで流れるという気安さがあります。その最初の一歩を慎重に進めています。近々案内状が届きますので、そこでご確認ください。万一間違いがありましたらご一報ください。すぐに調査いたします。



詩誌『石の詩』67号
ishi no shi 67.JPG
2007.5.20 三重県伊勢市
渡辺正也氏方・石の詩会発行 1000円

<目次>
うつ期…濱條智里 1
小詩集 棲息歌…米倉雅久 2

魔女宣言 XXXXI…濱條智里 8        風落ちて/海溝…真岡太朗 9
迷子…西出新三郎 10            見えない線…大西規子 12
宴は終わる…キム・リジャ 13

三度のめしより(二十一) 本当はもう一つ自分の家があったのだったか…北川朱実 14

霜月…加藤眞妙 18             窓…坂本幸子 19
洗濯情報…落合花子 20           走る…谷本州子 21
秋の蛙…奥田守四郎 22           栞…澤山すみヘ 23

ラキュイーユ村のホテルにて…西出新三郎 24

紅葉街道…浜口 拓 27           カーソル…橋本和彦 28
永遠のコドモ会 […高澤靜香 30      眠らないもの…北川朱実 32
夜から朝…渡辺正也 33
■石の詩会 
CORNER 34
■同人著書一覧 35             題字・渡辺正也



 見えない線/大西規子

午後の陽が直接入る
窓際の席で
コースケは突然 わたしの肘に線を引き
鉛筆の芯を立てた

そして オレの陣地に入るな
と 削りたての鉛筆を
槍のように構え
一方的に宣告したのだ

その日から
ふたり並びの長方形の小さな机の中心に
見えない線が引かれた

すっかり忘れていた
半世紀も前の出来事だが

朝の
――北海道沿岸で日本漁船が銃撃、拿捕される――
というニュースは
見えない線を思い出さす

あの時 わたしは漁船だったのだ

地上に 海上に 地球上のあらゆる処に
引かれた線の痛みを
わたしは 肘の痛みでしか
感じることが出来ないが

今夜は
肘がしんしんと病める

 「ふたり並びの長方形の小さな机の中心に/見えない線が引かれた」り、見える線が引かれたりしたことは私も記憶しています。そんな小さな「陣地」取りは今でも続いているようで、隣地との境界争いを見聞きするたびに、いったい土地って何なんだろうなと考えてしまいます。作者は「地上に 海上に 地球上のあらゆる処に/引かれた線の痛みを」「肘の痛みでしか/感じることが出来ない」と言っていますが、感じるだけでも立派だと思います。痛みなど感じず「削りたての鉛筆を/槍のように構え/一方的に宣告」するか、私のように傍観者に回るのがほとんどでしょうから。その意味でも最終連の「病める」という言葉に込められた意味は深いと云えましょう。考えさせられた作品です。



詩誌『樹洞』25号
jyudo 25.JPG
2007.6.10 仙台市青葉区
建入登美氏編集責任 非売品

<目次>
◆ 詩
水を汲む/小西たか子 二          頁岩/渡辺悦子 四
明日葉/佐藤のり子 六           さし芽/佐藤のり子 八
春の風/細谷節子 一○           牧神の午後/秋山千恵子 一二
ふるさと/川崎洋子 一四          たこまるさん/斉藤 央 一六
時計/建入登美 二○            夕闇/建入登美 二二
◆ 随筆
出合いの場所「酒田 鶴岡 日本海」/永田玲子 二四
ジグソー・パズル/建入登美 二六

執筆者住所・著者案内
表紙絵 氏部経彦



 時針/建入登美

おもちゃのような可愛いアクセサリーを見つけると
つい 買い求めてしまう
ほとんど使いもしない そんな小さなものたちで
あふれかえっている チェストの引き出しを
おもいきって 整理することにした

ああ これは あのときの…
これは 夏のワンピースに合いそう…
などと ひとつひとつ手にとっていると
半日が 瞬く間にすぎてしまって
いっこうに はかどらない

まだ片付かない 底の片隅で
何かが 光った
すっかり忘れていた
細い鎖ベルトの 古い腕時計だ

こんなところに?

ネジを巻いてみると
ふいに 目覚めて カチカチと動きだし
銀色にきらめいて わたしを見つめ

 三十年間
 あなたは 何をしていましたか
 あなたは 幸せでしたか

左腕に しなやかに 絡み付いた

けっして 整理することのできない
膨大な(時)を 引き連れて

 「三十年」前の「古い腕時計」に「三十年間/あなたは 何をしていましたか/あなたは 幸せでしたか」と語らせる、巧い作品です。最終連の「けっして 整理することのできない/膨大な(時)を 引き連れて」というフレーズも締まっていて良いですね。「チェストの引き出し」は「おもいきって 整理すること」ができても、整理し切れないのが人生だろうと思います。日常のささやかな行為から人生を語ってしまった佳品と云えましょう。



   back(6月の部屋へ戻る)

   
home