きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.5.20 栃木市 とちぎ蔵の街




2007.6.28(木)


 日本詩人クラブHPに事務所の略図を入れました。一度行ってしまうと分りやすい所だと思うのですが、初めての人は戸惑うようです。ま、普遍的なことですけどね。私も最初は付近の地図をネットで調べて行ったのですが、ちょっと迷いました。理事の中からも略図があった方がいいよな、という声もあったのでやってみました。
 本当は
html形式で作れば奇麗なんですけど、この貧弱なソフトではやっぱり無理で、いつも通りエクセルで略図を作ってプリントアウトして、それをスキャナーで読み取ってjpgで貼り付けるという面倒なことをやっています。そのため文字の滲みがあって、美しいとは言い難いんですが、まあ、実用上は問題ないでしょう。

 パソコンで略図を見る機会が多いだろうと思って、47キロバイトほどの大きさにしました。でも、実際には現地で携帯から見るという場合もあるだろうからと、試しに見てみると、容量が大きすぎて見られませんでした。それじゃあ、というので携帯用に31キロバイトの略図を作りましたけど、今度は小さな携帯の画面ではよく分らない…。私の携帯では拡大もできませんでした。うーん、なかなか難しいものです。
 しかし、とりあえずはこのままにしておきます。いずれ携帯が進化して大容量も扱えるようになるし、地図の拡大機能もつくはずです。当面、おいでになる方は予め47キロバイトの方でプリントアウトしておくのが良いでしょうね。事務所は会員・会友の皆様が会費値上げに同意していただいたこと、事務所維持用のご寄付を頂戴したことによって運営されています。有意義に使っていきたいものです。



詩誌『光芒』59号
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2007.6.24 千葉県茂原市
斎藤正敏氏発行  800円

<目次>
◇詩作品
山佐木進/同行二人 6           藤井章子/エッシャー風な庭 8
帆足みゆき/九十九里浜 10         立川英明/月々のうた 12
本田和也/へし折られる 15         奥 重機/隅田川 18
奥 重機/母の眼 20            吉田博哉/眺躍芸人 22
市村幸子/小さな町 25           中村節子/ひとりの家 28
中村節子/ペンペン草 30          植木信子/雪のない雪ふる地での 32
植木信子/ひとつだけ 34          みきとおる/麦笛と少年 36
山田ひさ子/結末 38            佐野千穂子/終末時計 41
武田 健/二月の沈丁花 44         清水博司/知ったことを 46
阿賀 猥/松之山から十日市まで 49     川島 洋/Nさん 52
池山吉彬/鳥 55
◇特集・一篇の詩と立ち会う意味
菊田 守/一篇の詩に立ち向う意味 58    保高一夫/詩の力量 59
池下和彦/覆された思いこみ 59       高橋 馨/詩を書くことの未来について 60
川島 洋/一篇の詩と立ち会う意味 61
◇エッセイ
高橋 馨/続・名著再読・その6 書物への収斂−アラン・ポオの『アッシャー家の崩壊』を読む− 64
松下和夫/石垣りんの空(遠い日のノートを読む) 68
佐藤鶴麿/長篇詩『悪の光』の使徒たち・について 73
山田ひさ子/忘れ得ぬ人(8) 74
神尾加代子/かぶ 76
◇翻訳詩
本田和也/ジエイムズ・ジョイスの詩 80   水崎野里子/モリー・ケネリーの詩 82
◇詩作品
小池孝三/残光について 84         横森光夫/美しさの報復 86
吉川純子/おら悟空 88           高橋文雄/春の音 90
山形栄子/風のことば 92          山形栄子/立ち姿 94
石橋満寿男/狼狽え 95           青野 忍/走る 98
金屋敷文代/モグラ 101
.          川又侑子/三月 104
水崎野里子/花見の宴 107
.         篠原義男/思いのさざ波 110
篠原義男/散歩21−カモさんと風− 112
.   小関 守/一本の年輪 114
小関 守/羽化登仙の挽歌 116
.       松下和夫/まぶしい春−花が好きだった妻三子に捧げる− 118
松下和夫/返事がない 120
.         神尾加代子/沈丁花 122
神尾加代子/月の夜に 124
.         石村柳三/化城の世人 127
鈴木豊志夫/さくらだより 130
.       斎藤正敏/平気かい それとも 132
伊藤美智子/SKYLARKから 135
.    伊藤美智子/バラード(Yellow Bird) 136
◇言葉の広場
清水博司/『酸衆(ほおずき)と富士』 137  立川英明/ことばの背景 138
吉田博哉/石人日記 139
◇詩集評
I 斎藤正敏 141
.  U 池山吉彬 145.  V 本田和也 149
◇詩誌評
T 山佐木進 155
.  U 鈴木豊志夫 157
◇受贈深謝 162
◇詩の窓 【選者】帆足みゆき・吉川純子・斎藤正敏
星野 薫/ゆきうまれたよ 166
.       松本関治/遺憾 166
大曽根満代/わたしという者の前進 167
.   金綱あき子/亡き母に 167
さとう義江/雨の日の会話 168
.       中山 操/寂しい夏の終り 168
吉沢量子/しじみ蝶 169
.          知野創七/希望という文字だけを残して 169
大塚光江/花降る里で 170
.         御園千賀子/寒ボタンの花 170
◇同人の近刊書一覧 172
◇ご案内
三隅浩詩集『痕跡』
.175           草原舎の近刊書 176
茂原詩の教室 177
             『広報もばら』で詩作品募集 177
光芒の会ご案内 177
◇編集後記 178              <表紙絵/内海 泰>



 Nさん/川島 洋

Nさんが亡くなって半年がすぎました。三月初めの霧深
い夜明け 彼は静かに息を引き取ったのです。もうこの
宇宙のどこにもNさんはいません。あの世へ 私たちの
知らないどこかへ去ってしまいました。いえ 彼は永遠
の眠りについたのです。一片の夢も見ることなく永劫に
続く眠りです。暗黒さえもなく 「無いこと」すらもあ
りません。何もない永遠があり その永遠には今という
瞬間がありません。いえ 彼は――

亡くなる少し前に 無類の読書好きであったNさんは
枕元の奥さんに尋ねたそうです。あの世にも本はあるの
かな。本がなかったら退屈で困るだろうなあ。尋ねられ
た奥さんはうろたえました。真剣な顔でこんな子供じみ
た質問をするNさんに 何と答えればいいのか。さあ
どうでしょうね 多分あるんじゃないんですか などと
思わず心細い答え方をしてしまったそうです。だって永
遠だよ。永遠のあいだ読み続けても読み切れないほどの
本なんて――なあ と彼は続けます。本もこの世から運
ばれていくのかねえ。 あの世にドストエフスキーやプ
ルーストはあるのかね。太宰や三島がそこで執筆を続け
ていたりして。Nさんの子供のような空想は続くのでし
た。悪や犯罪は御法度なんてことはないよな。苦悩も。
出版社とか 印刷所とか 翻訳家とか そのへんはどう
なっているのかな。変だなあ。どうも変だ。そうひとり
言をつぶやいていたのが最後の言葉で 彼はそれから不
意に声が出なくなったそうです。

彼の身体は「遺体」になり 「むくろ」というものにな
り それから激しい炎に焼かれて蒸気と煙と灰と白い骨
になりました。Nさんであった有機物の組織も その活
動も 一切が消滅しました。私たちの中の彼の面影 彼
の仕事の記録 そして大量の蔵書とささやかな遺産が残
されました。しかし彼はあの霧の朝からこちら もうど
こにもいません。秋が近づいています。

あの世にも本があるのか なんて いかにもNさんらしい
心配ですね。そう言うと 奥さんは微笑みました――
本が栞のところでそっと開かれるように。そうなの その
質問がなんとなくずっと気になっていましてね じっさい
どうなのかしら 今もときおり考えてしまうんです。

 いかにも「無類の読書好き」らしい最期の言葉だと思います。しかも、ただ本が好きというだけでなく「悪や犯罪は御法度なんてことはないよな。苦悩も。」と、文学の本質を突いているところが「Nさん」の見識の高さを示しています。それにしても「永遠のあいだ読み続けても読み切れないほどの/本なんて」あるのでしょうかね。過去に限らずこれから先も永遠に文学が続けば、あり得ない話ではありません。私も最期のときはこのくらい気の効いた言葉を遺してみたいものです。
 今号では拙詩集について斎藤正敏氏が「詩集評」で好意的に採り上げてくれていました。御礼申し上げます。



隔月刊会誌Scramble88号
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2007.6.24 群馬県高崎市
高崎現代詩の会・平方秀夫氏発行 非売品

<おもな記事>
○詩にかかわったこと…横山慎一 1
○現代詩ゼミ(2007.4.28)講師 久保田穣氏 詩の実作上のでの大切なこと…斎藤亮子・記 2
○私の好きな詩 三好達治の大阿蘇…福田 誠 4
○会員の詩 芝 基紘/吉田幸恵/横山慎一/遠藤草人/渡辺慧介/福田 誠/鈴木宏幸…5
○編集後記…8



 かをり/芝 基紘

そっと、
静かに
桜の花びらが、枝をはなれる
ゆっくりと、
ふと、思いついたように
さりげなく、

春の午後の
もの憂い陽ざしに
ゆらめきながら
ただよいながら
花びらが舞い、おちてゆく。

枝をはなれた時が過去
漂泊の果て、地に着くのが未来。
過去と未来の間に
うすもも色の桜の花びらがただよう
とまどいながら
ためらいながら
未来にむかって
花びらは、静かに、落ちてゆく。

過去と未来の間
やすらかな、時が、ただよう。

 「会員の詩」の中の1編です。「枝をはなれた時が過去/漂泊の果て、地に着くのが未来」、その「過去と未来の間」を描いた、視点のユニークな作品だと云えましょう。謂わば現在≠ナあるわけですが、それを「やすらかな、時」とするところにこの作者の特徴があるように思います。前向きで肯定的な姿勢は、現代詩が忘れているものの一つかもしれません。
 タイトルの「かをり」も奏功しています。そのことについて本文には何も書かれていませんが、それがかえって詩に奥行きを与えているように思いました。



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