きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.8.20 神奈川県真鶴半島・三ッ石




2007.9.10(月)


 午後から日本橋兜町の日本ペンクラブ会館で開かれた電子文藝館委員会に出席してきました。本日の主議題は電子文藝館の音声訳について。目の不自由な人が文藝館の作品をパソコンの音声訳で聞いているという話は以前からあって、どうも文藝館は音声訳にうまく対応していないようだ、なんとかならないかと言われていました。私も詳しいわけではありません。委員長がその道の専門家と交渉してくれたらしく、(株)ユーディットというところの女性社長がレクチャーをしてくれました。一言で言って、ショックでした。
 障害者がWebサイトにアクセスしやすいかどうかをアクセシビリティと言うんだそうですが、事前に文藝館のアクセシビリティを調査してくれて、15画面分の報告書が配布されました。それによると文藝館は文章中心なのでアクセシビリティは悪くないように見えるけど、実はかなりの問題点があるとのこと。

 最大の問題点のひとつはフレーム構造であること。この拙HPでは使っていませんが、画面の上部や左部に固定のフレームがあるHPが多いですね。文藝館もそのひとつで、画面上部に「本館」「著者」…「展観道案内」などが固定されています。音声訳…音声ブラウザというそうですが、それでは別々のページとして切り替えて読み上げるため、操作が煩雑になるんだそうです。また「本館」「著者」…「展観道案内」は画像で貼り付けてあるため、拡大すると文字がボヤけて分からなくなるそうです。これは私にも小さな画像を拡大する機会がありますので、よく分かりました。
 この対策としては画像をやめればよいわけですが、テキスト形式の文字でもうっかりすると弱視者に負担を掛けるようです。例えば明朝体はゴシック体に比べると見難いんだそうです。拙HPを始め、文章を主体とするHPは文字の品位を大事にしますから、かなり明朝体を使っています。複雑な漢字も多用しますのでゴチでは潰れてしまいます。それで明朝なんですが…。

 もうひとつは情報量の多いページの問題です。多いときは原稿用紙で100枚ほどをひとつのページに入れますから、これは健常者でも大変なことは判っていました。ページの最初から最後まで読んでいって、途中でどこを読んでいたか分からなくなったときのイライラ。でも私たちはマウスを普通に使えますからまだ良い方で、障害者にはマウス操作が困難な人もいると聞いて、これもビックリ。
 その対策としてはページの頭に目次などを入れて、文章の途中に「戻る」ボタンを置いて、途中からでもページの頭に戻ることが肝要なんだそうです。

 まだまだ細かい点を指摘されましたが、この辺でやめておきます。文藝館開設当初からの委員は私を含めて数人しかいませんので、私が代表するような形で「8年前の開設当初は余裕がなく、作品を多く載せることだけでそこまで気が回りませんでした」とゴメンナサイをしておきましたけど、アクセシビリティがやかましく言われるようになったのはこの数年のことだそうで、8年前なら、まあ、しょうがないでしょね、と言ってくれました。しかし現状の欠点が分かった今後は、このまま放置するわけにはいきません。早急に対策を立てようと思っています。

 それにしてもショックだったなぁ。拙HPも電子文藝館も、開設当初はちゃんと本を買ってきて勉強したんですけど、ここのところ最新情報を集めることをサボっていたのは事実です。いつまでも古い技術に甘んじているのは技術屋として戒められるところですが、退職を機にそんな気概も薄れたのかもしれません。それに気づいてますますショック…。意識して技術書を読むようにしないといけないのかもしれません。



高橋禮子氏歌集『ガラスのクッキー』
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2007.7.11 東京都千代田区 角川書店刊 2571円+税

<目次>
T ひかるひたち野
水平線 11      空のコメント 13   歪んだ真珠 17
十日はトリノ 21   あるならばいつ 28  箱の重さ 32
水だより 37     第九の渦 42     ひかるひたち野 46
U 風のハミング
つくばのもみじ 55  秋日のかけら 57   風のハミング 61
キッチンライフ 66  花のあっぱれ 71   ふるるんるんる 77
緑の電話 82     耳のかゆみ 86    値千金 90
V 竜のたわむれ
ジェンガの涙 99   六十の門 103
.    ジダン 108
竜のたわむれ 113
.  ぽかぽかびより 115. 雄蕊のごとく 121
撮られる心 125
.   しばし一九と 130.  森のペルシア 134
W 広浦ろまん
ガラスのクッキー
.143 花かくれんぼ 146.  雪とわたし 152
宴のピリオド 156
.  広浦ろまん 161.   三角ガラス 167
桜のリズム 171
.   大型ボルト 177.   ほらほらの洞 181
X ドレミファソっと
オーバーラップ 189
. 風の語り 191.    私はレイコ 197
ローズルージュ 202
. あしたをおくれ 207. 画家の迫力 212
月のお告げ 217
.   ニュータウン 222.  ドレミファソっと 227
あとがき 232
.    装幀 田口良明



 ガラスのクッキー

はつなつの壁は練り色わが影を捉えてしかと未来のレリーフ

親も無し夫無し子無し版木ありどこか似ている江戸の子平に  
林子平「六無の歌」

人生をがらりと変えよというひとの踊る「初恋」祈るがごとく

ひた走る風のトンネルさみどりのマイナスイオンに包まれている

透き通るものが好きだと言ったって食べられないよガラスのクッキー


 短歌は門外漢ですのでトンチンカンな読み方をしているかもしれませんが、楽しめました。ここでは表題の章を紹介してみました。1首目の「未来のレリーフ」に意外性を感じています。新しく壁を塗り替えたのでしょう。まだ乾ききらない壁に「わが影」がレリーフになり、しかもそれは未来の姿だと言うのですから歌人の感性とはすごいものだなと思います。

 5首目についてはあとがきで詠もうと思ったわけでもないのに∞ふいにこぼれてきた≠ニありました。続いて私の内なる思いが、普段着のまま飛び出してきたようです≠ニありますから、普段から「透き通るものが好き」なんでしょう。でも「ガラスのクッキー」は「食べられないよ」ね、という著者の苦笑いが見えるようです。
 その他にも、

六十をみっつもよっつも越えたこと私ばかりではないけれど  「空のコメント」
おひさまが朝な夕なに声かけるだからお山は下を向かない   「ひかるひたち野」
降り出した雨の勢いてこにして洗ってしまえり網戸の十枚   「ほらほらの洞」
とっときの服みたいのを先生は着てくるんだね Kくんいわく 「ローズルージュ」
下の句を書けなくなったボールペン芯ぬきたればまさに透明  「あしたをおくれ」

 などなど、思わずニヤリと楽しませていただきました。短歌もいいもんだなと改めて思います。お薦めの1冊です。



詩マガシン『PO』126号
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2007.8.20 大阪市北区 竹林館発行 840円

<目次>
特集 時間
杉山 平一 時間について…9
宮澤健太郎 賢治に於ける二重の時間とファンタジー…12
村田 辰夫 丁・S・エリオットと時間『四つの四重奏』を中心に…20
若嶋 眞吾 時間と日本人…25
森   修 時間−始まりのすがたは?「今」はとらえることができるか?−…34
森原 直子 十年パスポート…42
梶谷 忠大 石原吉郎ノート−戦争体験…ハイデガーの『存在と時間』を逸れて…44
藤原 節子 詩歌のとらえた「時」と「時間」…50
川中 實人 アナタの時間 ワタシの時間/時間想貌…57
中野 忠和 時計が多くなかった時代−「カルメン」より−/時間がなかったら…65

清沢桂太郎 詩二編…67           日野 友子 時間…69
蔭山 辰子 詩二編…70           北山 りら 砂時計…71
神田 好能 深いところで…75        佐相 憲一 超大陸パンゲア…76
北村 こう セブンティーンの素顔…77
詩作品
倉橋 健一 足裏に汗が…78         筧  槇二 消えた石ころ…80
椛島 恭子 重ね着…82           加納 由将 スパーク…83
おれんじゆう 雨降りの好きな女…88     藤谷恵一郎 ゴンとオリオン…90
星乃 絵里 旅する白い風船…93       与那嶺千枝子 月の光 星の群れ/捨てられたキャッサバ…98
水口 洋治 生きる力…102
.         牛島富美二 時効…104
長谷川嘉江 ある日曜日…110
.        佐古 祐二 希望…111
清沢桂太郎 ある古老の話/学際的研究…112
. 藤原 節子 苔むした 水車…122
梶谷 忠大 ことばの流れのほとり…124
.   左子真由美 Mon Dico(私の辞書)・愛の動詞…126
川中 實人 魔見夢めもりい…130
.      佐藤 勝太 詩を書くひと…138
堀   諭 まだ間に合う−川物語…140
.   中野 忠和 鯉のぼり/川/麒麟/風船/リコーダー…141
神田 好能 こいもどき…150

扉詩 中野忠和…1
ピロテイ 『夫婦で30年間 地球冒険13周半の旅』出版記念写真展奮闘記 中川 隆…7
舞台・演劇・シアター ミステリーと文楽の相性 河内厚郎…84
この詩大好き 今、気にいっている詩 日野友子…86
一編の小説 佐江衆一『横浜ストリートライフ』 佐相憲一…94
一冊の詩集 峠三吉『原爆詩集』 寺沢京子…96
ギャラリー探訪 「岩窟の聖母」二枚の驚き 蔭山辰子…106
エッセイ チャンスをつかめ 神田好能…107
ビデオ・映像・ぶっちぎり 本土防衛の砦「硫黄島」かく戦った 佐藤勝太…118
エッセイ 続アメリカ黒人詩の流れ27 堀 諭…119
詩誌寸感 ワーキング・プア 水口洋治…152
◎受領誌一覧…154
◎執筆者住所一覧…155
◎編集後記…156
◎お知らせ
▽「PO」ホームページ/投稿案内/会員・誌友・定期購読募集/広告掲載案内/「PO」育成基金/「PO」例会…157
▽詩を朗読する詩人の会「風」例会…158
編集部 左子真由美・佐古祐二・寺沢京子・中野忠和・藤谷恵一郎・藤原節子・水口洋治



 イワンは走った/蔭山辰子

「一日の内にまわれただけ
 その土地を与えよう」

日の出と共に
イワンは走った
遠く 遠く
広く 広く
丸く 丸く
イワンは走った
鼓動を昂らせ
息もきらず
水も飲まず
イワンは走った
イワンは日没と共に帰った
イワンは最大の土地を得た
顔は赤く 青く 黒く 白く 無色
イワンは死んだ
穴が掘られて
イワンは亡骸
(なきがら)の大きさの
土地をもらった

 特集「時間」の中の1編です。「一日の内」という時間の捉え方がユニークでおもしろいと思います。もちろん「イワンは亡骸の大きさの/土地をもらった」という寓話もおもしろいのですが、ここには時間と仕事量という現代の問題も隠されています。単位時間当たりの仕事量というのは、特に工場などでは効率を求めて追求される事柄です。「イワンは走った」のは単位時間当たりの面積を最大にしようとしてやったことで、これは現代でも同じ考え方をします。そして労働者は「最大の土地を得」ようと「顔は赤く 青く 黒く 白く 無色」になり命を縮めます。

 ここでもうひとつ注意しなくてはならないのは「一日の内にまわれただけ/その土地を与えよう」と言った者の存在です。その者は結局、時間も失わなければ土地も失っていません。これは寓話ですからここで終わりですけど、現実の社会でその者は大勢のイワン≠フ時間を自分のものにするわけです。その結果、「亡骸の大きさの/土地」を与えるどころか倍する土地≠得ます。
 結果として、イワンは初めから「亡骸の大きさの/土地」だけを受け取っておけば良かったのかもしれません。そうすれば残りの時間は全て自分のために使えたことでしょう。おもしろくて、そして色々考えさせられた作品です。



詩誌『パレット倶楽部』4号
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2007.9.10 埼玉県三郷市    非売品
植村秋江氏方連絡先・パレット倶楽部発行

 目次 
熊沢加代子…モビール・人の四季…2     藤本敦子…ありがとう・ゾウ…6
植村秋江…壷・午睡…10           重永雅子…暮らし・積み木しながら…14
笠間由紀子…木の実・一日…18
<エッセイ>
熊沢加代子…散歩とウォーキング…22
<スケッチノート>…24
あとがき



 モビール/熊沢加代子

憎しみの中にも愛がある
愛の中に憎しみがあるよりは良いかもしれない

真底愛しているひとを真底憎んでいる
モビールのリボンが裏になったり表になったり
でもそれは一つのモビール
言葉が風のように消えていくのは
良いことだろうか悪いことだろうか

だが本当は言葉ほど後に残るものはないのではないか
後に残って樹の根っこになるのだろう
根っこになってその人の一生を左右することもある

愛も憎しみも同じ一つの幹に収斂される
モビールは幹になる
そうして愛憎の危ういバランスをとりながら
いくつもの枝葉を外界に張っていく

 第1連の「愛の中に憎しみがあるよりは良いかもしれない」というフレーズは一面の真実を突いているように思います。「憎しみの中にも愛がある」というのは、偏狭な私にはなかなか出現しないことですが…。
 「言葉が風のように消えていく」が、「本当は言葉ほど後に残るものはない」という見方も卓見と云えましょう。こちらは覚えていなくとも、相手は私の失言を覚えていて「その人の一生を左右」しかねない場面も否定し切れません。「モビールのリボンが裏になったり表になったり」するように、「愛憎の危ういバランスをとりながら」私たちは生きているのでしょう。短い作品ですが込められたメッセージは深いと感じました。



個人誌『餐』29号
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千葉県流山市 上野菊江氏発行 非売品

<目次>
*詩
クラウン…4     針金渡り…6     アクロバット…8
ブランコ…10     雑技…12       イノベロボット アイコとともに…15
*エッセイ
表現文化としてのサーカスの世界…1
近未来を占うロボット…14



 クラウン

派手すぎる粉飾と
厚化粧のパントマイムに招かれ
奇妙な感触の世界ヘツンノメッテいる

鼻先のテントが揺れ あの匂い
キュンと胸しめつける…… そう
サーカスを サーカスたらしめている匂い

幕のない
スピーディな演技
それらの展開をつなぐクラウン
メリーマンと呼んでくれ この男を
手品師にして軽業師
綱渡り師にして曲馬師
グロテスクな俳優であるばかりか
千変万化 怪力の持ち主でもあって
観衆を夢と笑の渦巻きに感染させる

戦術があり
転落の危険もある
命こそ賭けていないけれど
彼自身の存在を虚空に問うため
美学があり 放れ業がある
八頭の馬 あるいは
銃剣をたてた十八人の歩兵を飛び越え
宇宙的スケールで
にんげんの孤独をかいまみせることも

サーカスが
サーカスであるための
非日常 祝祭空間をつくるクラウン

どんな富とも交換できないことを知っている

 今号は目次でもお分かりかと思いますが、サーカスとロボットの詩・エッセイです。エッセイでは「サーカスが最もシンプルな体技≠フ追求にあるとすれば、その対極にあるのがロボットであろう」と書かれていました。
 紹介したのはサーカスになくてはならない「クラウン」についての作品です。「手品師にして軽業師/綱渡り師にして曲馬師/グロテスクな俳優であるばかりか/千変万化 怪力の持ち主」とありますから、クラウンは本当はオールマイティのプロなのかもしれません。「どんな富とも交換できないことを知っている」プロ中のプロ、そんな印象を受けました。
 子供の頃に何度かサーカスを観たことがあります。木下大サーカスなんて覚えていますね。昔を思い出しながら拝読しました。



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