きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.8.20 神奈川県真鶴半島・三ッ石




2007.9.16(日)


 義母がときどき泊まりに来るんですが、泊まる部屋にはTVがありません。そんなときは私の机の片隅にある超小型TVを貸してあげるんですけど、やっぱり大きいTVで観たいと言い出しました。年金もまだもらっていない私にはそんな余裕はありません。知らん顔していたら、お金は出すよと言い出しました。それじゃあ、ということで(待ってましたとばかり(^^;)一緒に買いに行きました。
 BSなんて観ないでしょ、と言ったら、それも観たいと言います。そんなに大きくなくてもいいでしょ、には20インチで良い。で、BS付きの20インチに決まり。その部屋には地上波の配線はありますけど、BS配線はありません。既設の配線から分岐することにして、分配器と5Cの配線を買って帰宅しました。

 今夜からしばらく泊まると言うので、さっそく天井裏に登りました。ここで失敗を発見。既設のBS配線は3Cでした。買ったのは分配器・配線とも5C用。まあ、大は小を兼ねるさ、と自家工事はとりあえず完了。で、さっそく試視聴。特に問題もなく、素人ながらアマチュア無線もやっていて、電波に強いて言われたオレの腕もまだまだ衰えていないなぁ、と自己満足。久しぶりに技術屋の感触を味わっていたのです…、、、ところが、、、。

 問題が発覚したのは、いろいろなケースを想定して、居間のTVを点けたり消したり、新しいTVを点けたり消したりしてテストしている最中でした。地上波はまったく問題なかったのですが、BSに異常が出ました。新しいTVの元電源を切ると、居間のBSが映らなくなるのです。画面には「アンテナからの電波が受信できません」の警告が…。ええーえーっ! そんな馬鹿な! 理屈に合わないじゃないか!!!

 結局、新しいTVの元電源を切らないで、画面だけを消す待機電流通電状態で、居間も新しいTVもBSは観られることが判って、とりあえず家族に対する面目は保ちましたが、理論的にはまだ不明です。おそらく5C配線と3C配線の組み合わせが悪さをして、異常な誘導電流が発生しているのではないかと思っています。BSという高周波を真面目に扱うのは初めてで、実はその辺の周波数の勉強をちゃんとやっていません。でも、勉強するのは後からとして、とりあえず3C配線で統一する方が先かな? そのうちこっそり交換しておこうと思っています(^^;



季刊詩誌『現代詩図鑑』第5巻3号
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2007.9.1 東京都大田区 ダニエル社発行 600円

<目次>
書評 生の現われ…小林弘明 1
麦わら帽子の穴…北川朱実 5        時の薫り…新延 拳 10
水を得る…有働 薫 13           百回・海風…高木 護 21
鈴しい、ぞ…支倉隆子 25          波/ララバイ…枝川里恵 30
聞える…大木重雄 35            病果
(びょうか)…若狭麻都佳 38
梅雨が明けたら…松越文雄 43        ひとつのからだ…岡島弘子 46
美しい道…國井克彦 50           火の粉…眞神 博 53
魂の叫び…小野耕一郎 56          落とし噺…倉田良成 59
蛍の小道…佐藤真里子 62          私と夫…阿賀 猥 65
影…山之内まつ子 69            ヨルダン川のみなもとへ…高橋渉二 72
表紙画…来原貴美『少年の人形』



 ひとつのからだ/岡島弘子(おかじま ひろこ)

湯ぶねに しずまると
つながっているのがわかる

もつれた髪の毛の一筋の先まで
シャンプーでほぐしたし
あさってのほうを向いたままの後頭部も
両手でマッサージしてたしかめた

鏡に写そうともしなかった
顔も
自分の涙でなぞることができた

一番遠い背中は
乾布まさつの要領で
世のあか あくたをこすり落とし
体毛を逆立てておいた

岬の先端
その先におきざりにされた孤島のようだった
足の小指の先も
この浴槽の中につれもどした

氷のようにひえた肩も
逆上し カッとのぼせて熱くなった心臓も
今は心地よい湯かげんに
あたたまっている

湯にだかれてとりもどした私のからだは
世界地図のようになごんでいて
いがみ合っていても そむいても
世界も
海にだかれたひとつのからだなのだと気づく

 「湯ぶねに しずま」って「心地よい湯かげんに/あたたま」ることは毎日のことですが、「ひとつのからだ」だと意識することはあまりありませんね。それを改めて気づかせてくれた作品です。そして、自分の身体から「世界も/海にだかれたひとつのからだなのだ」と展開した最終連は見事です。人間ひとりが一つの身体ならば、地球も一つの身体。そこで「いがみ合っていても そむいても」何の益があるものか。紛争の当事者に見せてあげたい作品です。



広瀬弓氏詩集『満ち干』
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2006.8.14 東京都港区 新風舎刊
1300円+税

<目次>
先生 8                  満ち干 10
紅色の夢を見た 14             たんぽぽ 18
海と空の交わるところで 22         シルバーシート 26
鍋とこげ 30                おばあちゃんのたぬき 34
落としもの 38               繁殖の季節 40
花祀り 44                 新年 46
カーテンを開けると 50           この言葉に 54
風を見た日 58               すすき火 62
イラブー洞で 66              月夜 70
黄桃 72                  サビチ洞の馬 76
満月の夜は 80
あとがき 84



 鍋とこげ

花に水をやって台所にもどると
煙もうもう
鍋がこげていた

おしるこが食べられなくなったことなど
どうでもよかった
こげついた鍋は
姑のものだということが
問題だった
金タワシでこすっても
びくともしない
こげの頑固さに閉口しながら
年とともに凝り固まっていく性格とは
こげのような物ではないか
と考えていた

姑が帰って来て
つり上がった目をして言った
天日に干せば取れるかもしれないよ
次の日
お日様に干すと
ベりべり剥れた
それから
姑と私は少し仲良くなった

同居はまだ始まったばかり

 昨年夏に出版された第1詩集です。第25回新風舎出版賞ポエトリー部門優秀賞を受賞して出た本だそうです。紹介した作品は「同居はまだ始まったばかり」という時期の、姑との確執が背景にありますが、小さなトラブルを契機に「姑と私」が「少し仲良くなった」ことが分かってほほえましく感じました。第2連の「年とともに凝り固まっていく性格とは/こげのような物ではないか」というフレーズも佳いですね。それも「天日に干せば取れるかもしれ」ません。今後のご活躍を祈念しています。



鈴木哲雄氏詩集『神様だって』
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2007.9.26 静岡県浜松市 樹海社刊 2400円+税

<目次>
T 蛍平の夜
切り岸 8      呼ぶな 14      蛍平の夜 18
山吹の海 24     発火域 30      歩く携帯電話 34
キリの売人 40    映っていない 46   三枚の絵 48
風景断章 54
U 神様だって
曙の境界 64     アマラとカマラ 68  鬼面病 72
ミンパイ 78     表と裏 82      断念 86
神様だって 90    ソラの風 96     秋の手紙 100
蛇行川 104
あとがき 109     カバー装画=堀 昌義



 神様だって

神様だって
神様だってあるのだ
過ちを犯すことが

少女が生まれたとき
脊椎の腰のあたりの皮膚が剥がれて
そこから神経の束がのぞいていた
母胎でいのちが形づくられていく
そのどこかで
神様がひととき目を離したのだ

過ちの負債は
すべて少女が負わねばならない
再々の手術の痛みも
下半身麻痺の苦しみも
少女はそれらを受け容れることで
揺れるいのちの灯を守り
風の歳月を生きていかねばならない

二本の足で立てない少女の空は
誰の空よりも遠い

   *

だが
中学一年になった少女はもう
涙を見せない
車椅子を漕ぎながら
明るくクラスメートに声をかけていく
あれはいくつの時だったろう
鏡に映る自分の背中に
初めて手術痕を見たのは
涙の目で問いかける少女を母が抱きしめ
<真美ちゃんの背中には
 天使の羽が畳まれているのよ
 がんばる勇気を失わなければ
 きっと空だって飛んでいける>
と励ましてくれた早春の日

あの日から
少女は変わることができたのだ
股関節のリハビリも
長下肢装具をつけて歩く練習も
辛いとは思わなくなった
遠かった少女の空
それもいつの間にか
みんなと同じ空になっていた

神様だって
神様だってあるのだ
人間に赦されることが

  *二分脊椎症 日本では千五百人に一人の割合でこの病気の子が生まれてくるという

 7冊目の詩集だそうです。ここではタイトルポエムを紹介してみました。「誰の空よりも遠い」「少女の空」が「みんなと同じ空になっていた」過程に、「母」の「真美ちゃんの背中には/天使の羽が畳まれている」という言葉に感動を覚えます。「神様だって」「過ちを犯すことが」あるのは判っていることですが、最終連では「人間に赦されることが」あるというフレーズになり、ここに詩としての新しさを感じ、神と人間の関係を考えさせられます。しかし「人間に赦される」神の存在とは、いったい何なんでしょう。役にたたない神は、いつか罷免しなければならないのかもしれません。そんなことを考えさせられた佳品です。



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