きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.8.20 神奈川県真鶴半島・三ッ石




2007.9.20(木)


 来週開催される西さがみ文芸愛好会の〈文芸の楽しむ会〉のリハーサルが行われました。今回は西さがみ地方に関係のある詩人が作曲した詩で、歌になっているものを楽しもうという企画です。詩の解説と朗読は西さがみ文芸愛好会の会員、歌は「美しい日本の歌を伝えてゆく会」というところの人たちが歌ってくれることになっています。歌はともかくとして詩の解説と朗読だけはリハーサルをやっておこうじゃないか、というものです。午後から出演者(^^; が全員、小田原市の施設に集まりました。

 やって良かったです。地名の読み方などがあいまいなところも発見され、すぐに修正できました。私の分担は大木惇夫の詩の解説と朗読ですが、解説を練習しているうちにヘンなことに気づいたのです。大木惇夫が北原白秋を慕って「赤き屋根」という作品を書いているのですが、それは有名な〈木莵の家〉のことだと解説したのです。途中で、あれっ、ヘンだな?と思いました。写真で見る〈木莵の家〉は藁葺きか茅葺きです。その屋根が赤いということはない! 隣に建っている〈白秋山荘〉のことをうたっていたんですね。すぐに訂正しました。本番で大恥をかくところで、冷や汗ものでした。

 当日用のパンフレットも出来てきて、準備はすっかり整いました。あとは本番であがらないこと。私はニブイところがあって、本番では平気なんですが、終わったあとで足が震えるなんてことがたまにあります。まあ、逆じゃないからいいけど…。大勢の皆さんに来ていただければと思っています。



隔月刊詩誌RIVIERE94号
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2007.9.15 堺市南区 横田英子氏発行 500円

<目次>
秋のうかつ/釣部与志(4)         街/松本 映(6)
雪の日/蘆野つづみ(6)          散文的日常/永井ますみ(10)
出会い−津風呂湖畔一/山下俊子(12)    草花と記憶/戸田和樹(14)
散華の頃は/泉本真里(16)         アメリカ芙蓉/清水一郎(18)
旗−その領域−/横田英子(20)

RIVIERE/せせらぎ(22)〜(25)横田英子/石村勇二/永井ますみ/河井洋

煙草喫みについて/内藤文雄(26)      愛と希望の国(古都外伝)/河井 洋(28)
田舎の春/後 恵子(30)          確かめる術もなく/平野裕子(32)
深海魚U・紫陽花/藤本 肇(34)      短詩集/安心院祐一(36)
謎解き(マスカケから日本永代蔵まで)/ますおかやよい(38)
お疲れさま、お休みなさい/石村勇二(40)
受贈詩誌一覧(42)
同人住所録(43)
編集ノート 河井 洋
表紙の写真と詩・横田英子



 煙草喫みについて/内藤文雄

煙草喫みは しいたげられている
いや ぶじょくされている
のに怒れないのだ

煙草は
宝くじで一等が当る確率より百倍
高い交通事故での死より三倍
多い風呂場での事故死より十倍
健康に悪い

タバコ一箱三百円として
税金が百八十六円
バクチ場のテラ銭が五分
競輪 競馬のテラ銭は四分半
国家的サギの宝くじだって半分である
これを ぶじょくされていると言わないで
どうする

健康に悪いから
税金を多く取って 止めさせよう
というのではない
タバコは嗜好品だから
止めるはずがない と
税をかけているのだ
煙草喫みは ブジョクされている

医者に行くと
 バランスのとれた栄養で
 毎日変化のある食生活を
さらに
 食べすぎをさけ
 脂肪分は控え目に
 お酒は ほどほどに
 タバコは吸わないように
とダメ出しをされる
お医者さまの言うことだからなー

これが二十代ならともかく
八十になって言われてもなー
二十才から喫ってきて
まだ死んでいない
それを守っていたら
絶対死なないってか

二十才から喫っていたって言ったけど
それ以前から 本当は吸っていた
二十才になるまで
どうしていけないのか分らない
法律で決められているからだけなのか
明治に疫学的根拠があって決めたとは思えない
だれかが
エイヤ と決めたのに違いない
 別に十五才でも三十才でもよかったのに
むかしから ブジョクされていた

喫煙席と非喫煙席が分けられた場所がある
公共施設は全面禁煙になった
まあ それはいい
他人の健康まで侵すつもりはない
せめて自分の部屋でくらい吸わせろ
 おじいさん匂いがこもるから外で
これじゃ迫害である

地方都市の駅前ですら
ポイ捨て禁止になった
別に二千円が惜しいわけでない
人通りがあったら
汚れるのは当たり前である
ゴミ一つない通りなど気味が悪い

煙草喫みは
ブジョクされている
自分の健康である
せめて勝手にさせてくれ お願いだから

 私も「煙草喫み」ですので、ぜんぶ代弁してもらったような気分です。「非喫煙」の皆さまからは反論もあるでしょうが、「ぶじょくされている/のに怒れない」のが実態なのです。国家も国家、医者も医者、というのが私にも同感ですね。「タバコは嗜好品だから/止めるはずがない」とせせら嗤う国家、「それを守っていたら/絶対死なない」とまでは言えない医者、そして家族からは「迫害」。良いところは何もないけど、「自分の健康である/せめて勝手にさせてくれ」というのが大方の喫煙者の気持でしょう。もちろん「他人の健康まで侵すつもりはない」ですけどね。
 作者に代弁してもらってスカッとした、という気持と、でも、これから先の議論はないんだよな、という気持。複雑です。ともかく、ここまで言ってくれたことには感謝!!



瀧葉子氏詩集『へごの話』
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2007.8.31 栃木県宇都宮市 自然社刊 非売品

<目次>

海 三題 10     自然 十編 14
へごの話
いたみ 28      この世 30      くらい朝 32
地球 34       風 36        地球 38
別れ 40       雲 42        海峡線 44
メニュー 46     へごの話 48
記憶
記憶 T 54     記憶 U 58     記憶 V 62
記憶 W 65
地球
雪国 十二篇 70   モッサム川 九編 82  地球 十二編 92
著者自装



 へごの話

石炭の話を聞いたときから サンルーム温室
のへごの柱が輝いて見えだした いじけてし
がみついている着生蘭までもが生き生きとし
ているようで つい柱の前に立つことが多く
なった
山師が露頭の石炭を見つけたときから 石炭
は燃される運命が始まる 鉱脈に添って海の
底にまでも掘り追われたり

三億六千万年前からという石炭紀 繁茂して
いた大量の 巨大へごが圧縮され地層に組み
込まれてしまった そんな密林で生きていた
爬虫類も昆虫も地に沈んだか?

誰もいない家の中で ようやくできた話相手
のへごに話しかける
 あなたの先祖は どうやって生きのびたの
 だろうねえ 無性生殖だから進化もしない
 まま 途方もない回数の世代交替をくりか
 えして
返事のないまま しゃべっている
 
太古(むかし)は北海道も暖地だったのかしらねえ
 いっぱい炭坑があったもの
 こんながさがさのからだが圧縮されて ぴ
 かぴか黒く輝く石になったのだねえ

人間は 三億数千万年の時間の所産を使い切
り それであき足らず ようやく生きのびた
へごたちを 平和の時代の園芸ブームに乗っ
て 蘭の用土とばかりに どんどん伐採しつ
づけている

そんなことに気づいて 何となく気はずかし
くなって 少しはなれて それでもいっぱい
しゃべりかけてみる 地球の太古のことを

  へご…巨大木生しだ

 タイトルポエムを紹介してみました。そういえば「石炭」って巨大な羊歯類が炭化したものだったなと思い出しています。日本では石炭はほとんど掘りつくしたのかもしれません。「三億数千万年の時間の所産を使い切/り」というフレーズはそれを言っているのだと思います。園芸について詳しくはないのですが、続く「それであき足らず ようやく生きのびた/へごたちを 平和の時代の園芸ブームに乗っ/て 蘭の用土とばかりに どんどん伐採しつ/づけている」というのも事実なのでしょう。そんなことを思いながら「誰もいない家の中で ようやくできた話相手/のへごに話しかけ」ている著者の姿が目の前に浮かびます。「地球の太古」と現代が一つになった作品です。



壷阪輝代氏エッセイ集
『詩神
(ミューズ)につつまれる時』
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2007.9.26 東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税

<目次>
T章 詩神
(ミューズ)につつまれる時
詩神(ミューズ)につつまれる時 10      ひきつがれていくもの 13
富士山をかついで 20            交わらない声 23
日だまりの会話 26             ふるさとの古墳 28
花の色 30                 河童見習い 32
街角の名医 34               宝物 36
ちいさな謎 38               ある出会い 40
辞書あれこれ 42              白い馬について 44
忘れられない絵 47             縁を結ぶ(1) 50
縁を結ぶ(2) 53
U章 絵のなかのぼたん
絵のなかのぼたん 60            風のありか 63
精神風土について 66            まなざし深く 69
私にとってのバイブル 74          「つつまれる」ということ 77
ふたりの詩人 80              「詩と画」が届けてくれたもの 85
詩と楽器のジョイントからみえてきたもの 89
V章 定住したボヘミアン
定住したボヘミアン 96           ひとすじの煙 104
一冊の本との出会い 108
.          アガスティアの葉 112
「星の王子さま」は何処に…115        詩集『動物哀歌』との出会い 122
座右の詩集 126              「前頭部の詩魂」について 130
小説家の詩 137
.              月船さんへのたより 143
詩人の眼 149
.               含羞の詩人 153
あとがき 156



 街角の名医

 車を持たない私は、もっぱら自転車を使っている。ステンレス製の丈夫なものだが、三十年も乗っていると故障も多い。が、私の自転車には心強い味方がいる。ホーム・ドクターだ。
 今の住所に引っ越してきた二十年前に、ライトがつかなくなってはじめてその店へ行った。小柄なおじさんは、手際よく電球を取り換えながら言った。「この自転車に乗っているのは学生さんかね。荒い乗り方をしているよ」と。私は冷や汗をかきながら黙っていた。友人から「自転車の暴走族」と言われていたことを思い出したからだ。その時を境に、私はスピード控えめの乗り手になった。そして、故障やパンクはすべてそのおじさんに頼むことに決めた。
 おじさんは、自転車の名医である。自転車の声を聴くようなしぐさで、手早く故障を直す。二十年の間に、数えきれないほどお世話になった。後ろのタイヤを取り換えた際、前もついでにとお願いすると、「まだ大丈夫だ」と言ってくれる。ゆがんだ荷物かごを新しいものに取り換えたいと言うと、「まだ使えるよ」と言ってゆがみを修正してしまう。
 一年ほど前、もうそろそろ新しい自転車に買い替える時期ではないか、と言ってみたが、「まだ十分乗れるよ、自転車は一代物だから、そこにある自転車、うちの奥さんが何年乗っていると思う? 五十年以上だよ。結婚した年にプレゼントしたんだから」と笑っている。
 街の中にある自転車店が、いつの間にか閉店していく現状の中で、おじさんは多くの人にとっても名ホーム・ドクターであるにちがいない。おじさんが健在なうちは、私も自転車も元気でいられる。

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 同人誌や新聞に書いたエッセイをまとめたもので、初のエッセイ集のようです。粒よりな作品が揃っていて、どれを紹介しようか迷うほどでした。その中から「街角の名医」を紹介してみましたが、内容も文体も申し分のないエッセイと云えましょう。著者は岡山市在住。岡山でもこういう「名医」は珍しいんじゃないでしょうか。
 私は自転車ではなくクルマの方ですが、友人が修理工場に勤めていたときは同じような体験をしました。メーカーから取り寄せる部品はすぐに数万円になってしまいます。彼はそんなことをせずに、部品を分解して、壊れた部材を自分で造って直してくれました。数百円で済みます。その彼も今は廃業。そんなことをやっているから儲からないんでしょうね。
 それにしても「五十年以上」は驚きです。そこまでは無理としても20年、30年乗れる自転車、そしてクルマが欲しいものです。



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