きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.8.20 神奈川県真鶴半島・三ッ石




2007.9.24(月)


 久しぶりに横浜に行ってきました。弟が所属している〈栄混声合唱団〉の定期演奏会がみなとみらい大ホールであるから聴きに来い、と動員を掛けられたものです。MMには何度か行ってますが、大ホールは初めて。ステージ中央にはパイプオルガンもあって、音響も良く、立派なものでした。

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 ホールは撮影禁止ですから外観をお見せします。外観も立派なものです。で、後ろ向きの男性は何をやっているかと言うと、タバコを吸っているんです。もちろん私も何度かここに来てお世話になりました。

 合唱は子守歌やディズニー映画の主題歌など分かりやすいものから始まって、オーケストラ伴奏付きのルイージ・ケルビーニ作曲「レクイエム・ハ短調」まで。やはりオーケストラ付きの方が迫力があって良かったです。合唱団の年代は横浜市栄区在住の50〜60代が中心のようですが、オバサマ方のソプラノがまるで天使の声のように聴こえました(^^;
 弟はテノールを担当していましたが、図体がデカイので目立ちます。ひとりだけ威張りくさっているように見えました。

 終わったあとは弟夫婦と、これも久しぶりに歓談。横浜駅まで戻って「ライオン」で呑んでましたけど、ゆっくり話すのは何年振りだろう? 時間を忘れてバカ話に興じました。兄弟なんてしょっちゅう会うと、なぜか喧嘩になるもんです。3年に1遍ぐらい会うのがちょうど良いのかもしれませんね。



島秀生氏編・著『ネットの中の詩人たち5』
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2007.9.20 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊  1400円+税

<目次>
巻頭詩 プレゼント 1
瀬未 *
スープ 12      ひつじ 16      タペストリー 21
桂 浩子
スタンス 26     相合傘 28      夏の砂 32
感情線 35      あたたかな場所 39
平田雨音 *
甘い檻 44      たいせつなもの 46  キャベツの中身 49
もんしろちょう 51  星の少年 54     いちねんじゅう 57
抱擁 59
多恵結宇
レモネード 62    ラムネの瓶 65    約束 68
時線上 71      素敵なことば 75
芽衣
扉 80        オルゴール 82    √-1 85
リフレイン 88    二十四時間 90    旅 92
三浦志郎 *
夕焼け 98      失われたものへ
.101  インタールード あるいは ひと流れの川 105
司馬氏遼か 110
夢路
夜空の星々をつなげて 116
.         夏の散歩 118
恋人へ 121
.     初子 123.      あなたに 126
hisako *
杭 130
.       月のうさぎ 132.   死について 136
ありがとう。
.139   かあさん 142.    戦後六十年 146
藤代正和
ある雨の日の空想
.150 しゅむ 156.     ばあちゃんと俺 159
水面の花 162
.    蝋梅の花 165
まやこ
キャッチボール
.170  お母さん 173.    青年僧 175
ババ 179
.      最後 184.      引き取る 187
くじら
後悔のあとに 190
.  アパート 193.    三日月の夜 195
孤独 198
.      君に贈る詩 200
ゆい しずと
中禅寺湖 206
.    あとがき 208.    桜週 212
焼き鳥『しげ』
.215
伊藤浩子
恋人 220
.      ダブル 223.     水仙 226
フェスティバル、あるいは、円舞曲 230
.   あにいもうと 233
A.おじや
雨の日はするすると238
.桜散る町より 242.  遠い国の戦争 246
新聞紙ザラザラ 249
ゆりえ
親友 254
.      納豆ごはん 256.   心の風景 261
追憶 265
.      漂流 270
まる
プロローグ 274
.   Existence 276    約束の日 278
あいうえお作文 280
. ただそれだけ 282.  End 284
はんな
カレー屋 288
.    涙のひと粒 292.   波の間 297
自由な夜 300
.    聴こえる 303
三浦志郎 **
パート・オブ・ミー
.308 いつも誰もいない.311 ボレロ 317
メリー・ゴー・ラウンド 320
オシオマキコ
一つ星 328
.     ashes 332      海へ還える 334
origin 338
.     月光浴 341
メルト
生の軌跡、死の目覚め 346
.         貴方の幻影、私の影 348
赤黒の死神 351
.   機関車少年 357
hisako **
下呂の朝霧 362
.   いかだに乗って 365. 桜の季節に添えて 368
再生 372
.      裏木戸 374
瀬未 **
みずの泡 378
.    カンナ 380.     夜のうつわ 583
林檎のらせん 387
.  みずいろ 392
平田雨音 **
上がり框(かまち)
.396 桜と董と私と 398.  ひとみ 400
陽炎 403
.      深い森 407.     波音 410
島 秀生
きみがいないとき
.414 ピアス 415.     おばあちゃんのローソン 418
父さんのヒコーキ
.421 鴉とセキレイと私と.425
あとがき 428



 夕焼け/三浦志郎

奏でられる音が
夕暮れ時によく似あう
朝に過ちを犯しても
夕ベには許されているような

ビルは鏡
光が当たって私の目を焼く
風の中のフルート
音を紡ぐ空気の唇

今の私には
音も風も
絵にすることができない
ただ
立ち尽くす毎日があるのみだ
今日も届く消息に
私の背中で
いくつかの可能性が死に絶える

記憶が身を重くするので
削りとり
削りとりしながら
風に近づこうとしている

去って行った人々の
心の中を流して歩くが
ひとりひとりが
今年いくつになるのか
もう 忘れてしまった

夕陽がまぶしすぎるから
そのせいにしてしまえば
誰を傷つけることもないだろう

今日はそんな一日だったのだ

 島秀生さんのHP「MY DEAR」に投稿された作品をまとめた「
ネットの中の詩人たち」も5まで来ました。7年半で第5集ですから、決して多いというわけではありませんけど、おそらく投稿作品のために自費で出版しているものと思います。同じインターネットを媒体として詩活動する者として、改めて敬意を表します。
 今集で紹介させていただいた詩は、第1連の「朝に過ちを犯しても/夕ベには許されているような」というフレーズにまず注目しました。後半の「記憶が身を重くするので」も佳いですね。作者には本質的に詩人の素養が備わっているように感じられます。最終連にたった1行置かれた「今日はそんな一日だったのだ」というフレーズも極まっています。佳い詩を拝読させてもらいました。



個人詩誌『玉鬘』42号
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2007.9.20 愛知県知多郡東浦町
横尾湖衣氏発行  非売品

<目次>
◆詩
「オリーブ」     「教員免許」
「地球」       「風の盆」
「薄」
◆御礼*御寄贈誌・図書一覧
◆あとがき



 オリーブ

女神アテナが
アテネに贈ったというオリーブ
聖なる樹が
ギリシアの大地に
生い茂っている
眩しすぎる太陽の下で

その果実から
「黄金の液体」といわれる
オリーブ油を
ギリシア人たちは
どのくらい長い年月
搾り出してきたのだろう
地中海世界の
食生活にはかかせないもの
健康と長寿を
もたらすものとして

健康と長寿は
戦争していては得られない
多鳥海の世界は
大地はあっても
足場はいつも不安定
オリーブの樹が
枝葉を広げて生い茂っている
オリーブの成長が
平和と結びついたのだろうか

白っぽい花の
香りが辺りにこぼれている
戦う心を抑えてと
祈りを込めているように

 「健康と長寿は/戦争していては得られない」というフレーズに納得します。鳩とともに平和の象徴であるオリーブは、「オリーブの成長が/平和と結びついたのだろう」と私も思います。ここでは、そんな一般的なことを更に進めて、最終連で「戦う心を抑えてと/祈りを込めているように」「白っぽい花の/香りが辺りにこぼれている」と締めくくっているところが秀逸です。オリーブを改めて見直した作品です。



詩誌『詩創』7号
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2007.9.30 鹿児島県指宿市
鹿児島詩人会議・茂山忠茂氏発行 350円

<目次>
詩作品
ふるさと‥茂山忠茂 2           球場残影‥茂山忠茂 6
散歩‥松元三千男 8            ある秋の夜に‥桐木平十詩子 9
過疎‥妹背たかし 10            生命‥宇宿一成 12
名前‥宇宿一成 15             おしごと‥宇宿一成 18
毒‥安樂律子 20              送迎‥安樂律子 22
小詩集 生き方‥徳重敏寛 24
 詮無い業       今はまだ       新しい天と地を望み見るそこに
 「わたし」と<わたし>  私の成すべきは    終生の課題
 亀さんみたいに    受信器        私次第

詩創六号読後感 明確な生の希求‥宇宿一成 35
おたよりから‥38
後記‥42
受贈詩誌・詩集‥43



 球場残影/茂山忠茂

球場の
ダイヤモンドに
ピッチャーの
孤独の影を
はりつけたまま
気温四十度が
焦げつき
抛物線を
えがいて
燃えさかる空に
消えた
栄光の残像は
星になった。

煌めく夏の
ことしの
メモリアルは
壮麗な
ドラマの
結晶。

涙と汗が
球場の芝生に
露となる。
太鼓の音と
どよめきを呑んだ
スタンドに
秋が
静かに
おりてくる。

 夏の甲子園を頂点とする高校野球を思い出しました。「ダイヤモンドに/ピッチャーの/孤独の影」というフレーズに、特にそれを感じます。プロ野球ではこうはいかないでしょう。一回性のマウンドだからこそ「孤独の影」が観る者にも伝わるのだと思います。そして最終連の「太鼓の音と/どよめきを呑んだ/スタンドに/秋が/静かに/おりてくる。」というフレーズは、高校野球が夏のものであることを改めて感じさせます。「秋」がこれほど強く迫ってくる作品も少ないでしょう。視点の大事さを教えられた作品です。



詩誌『六分儀』30号
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2007.9.15 東京都大田区  800円
小柳玲子氏方・グループ<六分儀>発行

<目次>
島 朝夫 その姿 1
小柳玲子 煙突夢 4
夏目典子 スイス シヨン城−バイロンを旅する 8
古谷鏡子 ひかりのまち/木のみる夢 12
林 立人 面(U) 16
樋口伸子 遠い花火 20
小柳玲子 夏の収穫 23
鶴岡善久 谷津筆記*5 大石田の斎藤茂吉 26
表紙/林 立人



 その姿/島 朝夫

その姿が 遠い角を曲がって来るのを たまたま目にした
寒い季節であるのに よごれた薄物一枚を身につけている
その薄物に 何本も黒い線が描かれている
手のようでもあり 骨とも見える

急いでいるような しかし
当てがあるとも思えぬ歩きぶり
その視線は 人の頭より上を彷復っている ので
誰かを探しているのではない とは わかる

こっちに歩いて来る と見える時も
誰かを探しているのではない ことは
その顔を一目みれば わかる
人に関心のある顔つきとは とても見えない

行き違う時 誰もが感じるのは
この世のどんな風より冷たい 気の流れ ではないか
いや この世の風を存分吸い込み 吐いただけ かも

その日 そのとき
その姿が うしろから近づくのがわかった
真後ろから 追いついた とばかりに
たしかに わたしに突き当たった

わたしは転ばなかった が
その姿が
わたしの前に出て 歩くのは見えなかった

わたしの
右にも いなかった
左にも いなかった
あらためて うしろを見たが
いなかった

気がつくと
わたしが着ているのは
誰もが見ていた あの うすよごれた薄物
そして みち行く人の 顔が消えている

 「その姿」とは、ホームレスのようなイメージで拝読しました。「その姿」と「行き違う時 誰もが感じるのは/この世のどんな風より冷たい 気の流れ ではないか/いや この世の風を存分吸い込み 吐いただけ かも」というフレーズに「その姿」の本質があるように思います。最終連では「わたし」が「その姿」になってしまいますが、ここに詩人としての矜持があると感じています。所詮、詩人も「この世のどんな風より冷たい 気の流れ」を持ち、「この世の風を存分吸い込み 吐」く者。「誰もが見ていた あの うすよごれた薄物」を着る者だと云えましょう。そんなことを感じた作品です。



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