きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.9.9 東京・浅草




2007.10.19(金)


 裏の畑を耕しました。義母が野菜作りをしていまして、4分の1ほどの面積が空いたので、そこを耕しておいてくれとの依頼。小型の耕運機を入れて20坪ほどを耕しましたが、ものの10分ほどで終了、そのあとの耕運機の掃除に時間が掛かったほどです。その程度なら鍬でやった方が早いのでしょうけど、なにせ鍬など握ったことのない身、ついつい機械に頼ってしまいます。
 百姓の真似事でもスッキリした気分になったのは、農耕民族の一員だからでしょうか、本物のお百姓さんには怒られますけど、働いたな!という気になった一日でした。



アンソロジー『火皿詩集』2007
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2007.8.31 広島市安佐南区
火皿詩話会・福谷昭二氏発行  1500円+税

<目次>
詩作品
あの邑この邑どこの邑/荒木忠男 8     駅にて/石田明彦 14
防空壕のうた/伊藤眞理子 20        紙ヒコオキ/上田由美子 26
自由研究「鰯の頭も信心から」/えぬ・まさたか 32
新宿原人/大石良江 38           僕はいつも森にいた/加藤千穂子 44
布/川本洋子 52              メメント モリ/佐藤芳子 58
深呼吸ひとつ/沢見礼子 64         島門を見つつ/末田重幸 70
埋めたものを/図師照幸 76         無常/津田てるお 80
はたして夜は明けるだろうか/長津功三良 86
. 原爆被爆煉瓦の水路/中間末雄 92
ささやき/福島美香 98           骨の墓標/福谷昭二 104
夕映えの空/松井博文 110
.         君の見る夢/松本賀久子 116
夫婦/的場いく子 122
.           族譜−亡き李順基氏に/御庄博実 128
水を積もらせて/山本しのぶ 134
エッセイ
若き日の詩暦回想/荒木忠男 142
.      シャッターのむこう/石田明彦 143
記憶のうた/伊藤眞理子 144
.        線香の匂い/上田由美子 145
「日本今話」を採話する/えぬ・まさたか 146
. 北国の春/大石良江 147
平成エロチカ/加藤千穂子 148
.       身近に歴史的建築がたっていたら/川本洋子 149
幸せを生きる/佐藤芳子 150
.        子猫の一分/沢見礼子 151
柿本人麻呂の生涯 山柿の歌仙 山辺赤人 序 末田重幸 152
涙の意味/図師照幸 154          「火皿」以前と現在/津田てるお 156
生きること/長津功三良 157
.        声をひろって歩きたい/福島美香 158
リルケとの出会い/松井博文 159
.      詩を書いてゆくこと/松本賀久子 160
夕日/的場いく子 162
.           詩集「原郷」をふりかえる/御庄博実 163
空白/山本しのぶ 164
記録と報告
詩誌「火皿」五〇周年にあたって−最近の一〇年の回顧−/福谷昭二 166
あとがき 176
表紙 神尾達夫



 埋めたものを/図師照幸

埋めたものを尋ねて
男が二人やってきた。
知らぬ、
という私に
お前が埋めたものが
時々お前に挨拶に来ているはずだ、
と二人のうち髪の薄い男が言うのだが。

埋めたものを尋ねて
女が二人やってきた。
知らぬ、
という私に
あなたが埋めたものが
時々あなたを誘いに来ているはずです、
と二人のうち胸の大きい女が言うのだが。

確かに埋めたのだ。
それはしかも、一つや二つではない。
埋める前に私はそれらのいずれをも
舐め、
しゃぶり、
咥え、
啜り、
噛み、
撫で、
抓み、
打ち、
そして、貫いた。
確かに埋めたのだ。
それらはいつも、美しかった。
埋める前に私はそれらのいずれをも
汚し、
はずし、
割り、
壊し、
そして、詰った。

確かに埋めたのだ。
やめることをそれらが懇願するまで
繰り返し
私はそれらを弄んだ。

しかし、忘れたのだ。
何を埋めたのか、
いつ埋めたのか、
どこに埋めたのか、
そして、
なぜ埋めたのかを。

確かに埋めたのだ。
しかし確かに、私は埋めたのだ。
そのとき私の爪の中に忍び込んできた腐敗したそれらの匂いは
朝、髭を剃るそのときに、
夜、ビールを注ぐそのときに、
静かに漂い始める。

私が埋めたものは一体、
何だったのだろう。
私が恐れ、
隠れ、
逃げなければならなかったもの、
それが思い出せないのである。

 確かに「私が埋めたものは一体、/何だったのだろう」と思います。若さや恥や青臭い理論、そして悔恨などがすぐに思い浮かんできます。それら全てなのかもしれません。私たちはそうやって、他人様には言えないことを胸に仕舞い込んだまま、一生を終える存在なのかな、とも思います。そして最期は何を「恐れ、/隠れ、/逃げなければならなかった」のかも分からなくなってしまう…。
 この作品はまさに詩でしか表現できないところを描いていると言えるでしょう。小説や絵、音楽で表すことができるとは思えません。詩がやるべきことをしっかりと留めた秀作と思います。見習いたいものです。



詩とエッセイ『解纜』136号
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2007.10.5 鹿児島県日置市
西田義篤氏方・解纜社発行 非売品

<目次>
詩 捕鯨民…石峰意佐雄…1
  変心…中村繁實…16
エッセイ「小さな窓から」中国人って?日本人って?…中村繁實…21
詩 診察…池田順子…23
詩集評 池田順子詩集『耳の中の銀河』によせて−みずを確かめ合いつつ…村永美和子…27
詩 峠のベンチ…村永美和子…30
  棒…村永美和子…32
  末男…西田義篤…34
「魯迅文学論」その現代的意義を更に問う…中村繁實…42
詩集評 詩集がもたらすもの(3) 石峰意佐雄詩集(かごしま詩文庫2 ジャプラン刊)
 −「少年時」の予感から、単独者たちの「生」の肯定へ…(寄稿)谷口哲郎…45
編集後記
表紙絵…西田義篤



 棒/村永美和子

太古から あれで
蛇は 直進歩行のつもり
道に倒れたままの棍棒をまね

棒切れも
弓から放たれた矢の
かたくなさ 折り

離れてごらん
かえって遠くまでみえる
ポキンと音して瞬時棒が高速道路と寝た痕跡

目に止めてもらえない棒は
輪差になり
都心部へ うつり

骨格の骨組み
積む 高層ビル
筋金入りに盛り上がり

大空で鳥は 樹の枝ゆらし
飛び立つ間あい
尾羽根のいろ のこす

蛇は 飛べない身をいとい
雨つづきに所在なく
ビルの根もとの墓所の湿りをつたう

――やめた
人の棒もころんと 横たわる
墓石のかたちに固まって 後
(のち)

 「太古から あれで/蛇は 直進歩行のつもり」という最初から思わず笑ってしまいました。蟹の横歩きじゃありませんけど、蛇も真っ直ぐ歩いているつもりなのかもしれませんね。
 そこから始まる様々な「棒」は、この世は棒の積み重ねであり、組み合わせであることを知らされます。安部公房の作品に「棒」というのがありましたが、それに近い感覚のように思います。そして最後は「人の棒」。棒になることによって、やっとこの世と和解できたのかもしれません。おもしろい視点の作品だと思いました。



詩誌『複眼系』40号
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2007.10.10 札幌市南区
ねぐんど詩社・佐藤孝氏発行 500円

<目次>
その日…米谷文佳…2            誕生日…米谷文佳…3
初夏…高橋淳子…4             にわとり…高橋淳子…5
たっこやんのこと…高橋淳子…6       カラス…常田淑子…8
一日…板垣美佐子…10            癒しを与えて…板垣美佐子…12
箱…板垣美佐子…14             いのち…小林小夜子…16
筑波嶺…金崎 貢…20            新茶…金崎 貢…22
無作法と知ってか…金崎 貢…23       ファッション…金崎 貢…24
しびの日…金崎 貢…25           夕映え…金崎 貢…26
ヂンギスカン鍋…金崎 貢…27        四行詩…佐藤 孝…28
老いは騎馬で…佐藤 孝…30         春を散歩する…佐藤 孝…32
浦島太郎…佐藤 孝…35           暗喩…佐藤 孝…38
後書…40                  表紙写真「円山の散歩道」佐藤 孝



 その日/米谷文佳

腰かけている
気を
撓めている

天からの糸に
掴まって
立つつもりだ

力を入れても
宙を踏む
踏みなおしても
宙を踏む

呼ばなければ ならないが
寄せてくるものを
見ている

予知のように
覚悟のように
ひたひたと

 「天からの」迎えが来る「その日」を描いている作品ですが、第3連の「力を入れても」「踏みなおしても」「宙を踏」んでしまうというところに妙にリアリティを感じます。たぶん、そうなのでしょうね。そして、本来はこちらから「呼ばなければ ならないが」、あちらから「ひたひたと」「寄せてくるものを/見ている」作中人物。ここには、やるべきことはやって、見るべきものは見たというような達観性があるように思います。「その日」はこうやって迎えたいものです。今号の巻頭詩にふさわしい作品だと思いました。



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