きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
070909.JPG
2007.9.9 東京・浅草




2007.10.30(水)


 庭の片隅に6畳間ほどの倉庫があるんですが、ご多分に漏れず、いっぱいです。小型耕運機をはじめとした農器具、電動ドリル以下のDIY工具類、ジャッキなどの自動車整備工具、衣類乾燥機、冷蔵庫、そして30脚におよぶ椅子を筆頭にしたキャンプ用品…。椅子は庭でバーベキュパーティをよくやっていたので、買い足し買い足ししていつの間にか増えていたものです。
 数年ぶりで片付けをしました。この10年、出番のなかった物は今後も使わないだろうと判断して倉庫の外に山積みしましたけど、100kgぐらいにはなったろうと思います。一番多かったのはキャンプ用の椅子で、10脚を廃却。いつか使うだろうと思って取っておいた材木も結構ありました。これらは後日、市の清掃工場に持ち込むつもりです。

 それにしても知らないうちにモノは増えるのだなと思います。田舎暮らしのシンプルライフを目指して、本以外は捨てるようにしていたつもりですけど、なんだかんだと買っているんですね。しかも生来の貧乏性で捨てるのが惜しい…。さすがに真空管やダイオードなどの電気部品は経年変化で使えなくなって、思い切りができるようになりましたが、一番古いのは30年前のコンデンサーというものまでありました。もっとスリムな生活にしたいものです。



星野典比古氏詩集『花のほうから母へ』
hana no houkara haha e.JPG
2007.10.31 栃木県下都賀郡壬生町 衣の会刊 2000円

<目次>
第一章 花のほうから母へ
花のほうから母へ 5  東風 6       穏やかな日々 7
父の存在 8     振動 9       祖父 10
私 11        愛する君へ 12    不毛の地 13
自分について 14
第二章 風船
風船 16       役割 17       未熟 18
色 19        蝶番 21       羨望 23
入社試験 24     蛻の殻 25      侵入者 26
導く者 27      人間 28       感動 29
夢 30
第三章 清流
清流 32       水でありたい 33   天の祝福 34
笑納 35       好い加減 36     輝き 37
環境破壊 38     絆 39
跋文 40       あとがき 42



 花のほうから母へ

私の家の庭は花園といっても過言ではない 母が造ったもの
だ 当初私には その華麗さに焦点が合わなかった 若さと
有り余るパワーに 儚さとは無縁であった

母が乳癌を患い体力が甚だしく低下した時 庭が一変した
私は花の魅力に取り付かれてしまった 母と花が同調し語り
かけてくるのだ ゴージャスに街を闊歩する者にはわかるま
い 母は弱ったのではない 花を労り共に咲いたのだ

私は惹かれつつも母のように花を咲かせることは まだでき
ない 谷間にひっそりと咲く一輪の白百合に憧れてしまうの
だ 誰の目にも触れることのない孤独さが心を揺さぶる 咲
き乱れる花の美しさは未来に残しておきたいのである 母の
年輪に届いたとき可能になるだろう

私は隣町の花屋へ出掛けた 母の好みの花を選択するのは極
めて簡単である 花のほうから母のもとへ行きたいと語って
くるのである

 まだ30代という若い著者の第1詩集です。ご出版おめでとうございます。この詩集は装幀も凝っています。布製の袋に収められています。ちょっと意表を突く詩集と云えましょう。
 ここではタイトルポエムで、かつ巻頭詩の「花のほうから母へ」を紹介してみました。「乳癌を患い体力が甚だしく低下した」「母と花が同調し語り/かけてくる」という関係、「私は惹かれつつも母のように花を咲かせることは まだでき/ない」という花との関係に、この作者の非凡な視線を感じます。特に最終連の「花のほうから母のもとへ行きたいと語って/くるのである」というフレーズは、この作品、この詩集のタイトルともなっているわけで、花の方から母上に近づくという発想は、従来になかったものだと思います。
 今後のご活躍を祈念しています。



詩とエッセイ『ガーネット』53号
garnet 53.JPG
2007.11.1 神戸市北区
空とぶキリン社・高階杞一氏発行  500円

<目次>

阿瀧 康 複製画 4
廿楽順治 とじられない/ひねくれる/へらされる 12
神尾和寿 或る日の「先生」/「先生」の活躍/「先生」の生涯 18
高階紀一 名月に一句/今夜、スリッパと 34
嵯峨恵子 指をしゃぶっても/「広辞苑」の新しい旅/フィレンツェの夜 38
大橋政人 大根はエライ/サブちゃんとミッちゃん 48
1編の詩から(24) 宗左近 嵯峨恵子 21
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.53 佐久間隆史/渡辺めぐみ/松下育男/塚本敏雄 24
詩集から NO.51 高階杷一 26
 ●詩片●受贈図書一覧
ガーネット・タイム 53
作者の死 廿楽順治
池田晶子の手紙 大橋政人
夏から秋へ 阿瀧 康
靴下とハンカチ 嵯峨恵子
東京コロッケVS大阪焼き 高階杞一
もえちゃんにエビちゃん 神尾和寿
同人著書リスト 59
あとがき 60



 「先生」の生涯/神尾和寿 Kamio Kazutoshi

「先生」

禿げていなければ
ならない
始終 細君を怒鳴りつけていないと
いけない
食後には
窓際に立って
戸外の小鳥の行方を 目で追っている
死因は胃癌であることが
のぞましい
葬儀の日は悪天侯であることが
さらにのぞましい

 「先生」3部作とでも言うのでしょうか、往来で先生と呼ぶと多くの人が振り返るという「或る日の『先生』」、ボーリングで豪快なストライクを出し、大食いの「『先生』の活躍」、そして紹介した「『先生』の生涯」が載っていました。「死因は胃癌であることが/のぞましい/葬儀の日は悪天侯であることが/さらにのぞましい」というフレーズには、先生≠フ一面の真実があるように思います。ヒトの上に立つことが望まれる、あるいは望んでなった先生≠ヘ、ストレスでのたうち回り、悪天候で参列者に最期までかけることが義務付けられているのかもしれません。先生受難の現在、反面教師≠ニいうことまで考えてしまった作品です。



詩誌『潮流詩派』212号
choryu shiha 212.JPG
2008.1.1 東京都中野区
潮流詩派の会・村田正夫氏発行 500円+税

<目次> 表紙写真→鈴木茂夫
特集 雲
丸山由美子/俄雨 7            村田正夫/雲 8
竹野京子/雲と散歩 8           島田万里子/八月の雲 9
加賀谷春雄/「現在の雲の様子です」 10    山崎夏代/雲 11
鈴木茂夫/入道雲の下で 12         千葉みつ子/雲がくれ 12
山本聖子/雲に棲みつく 13         能谷直樹/しょうがない 14
勝嶋啓太/怪物の誕生 15          福島純子/夜の雲 16
清水洋一/夜空(雲) 16          水崎野里子/雲を掴むハナシ 17
神谷 毅/浮雲 18             土屋 衛/暗雲 18
山入端利子/下(さが)い太陽(てだ) 20    藤江正人/雲の話 20
宮城松隆/入道雲 21            荻野久子/大いなるもの 22
伊藤美住/白い雲のデッサン 22
状況詩篇
津森美代子/歌 23             夏日ゆき/でぶキャリア 24
藤江正人/8月6日 8月9日 25      平野利雄/コラージュ〈人間座〉 26
尾崎義久/人喰い人種 27          舘野菜々子/段ボールに 28
田島美加/梨 28              新井豊吉/足を踏まれた者達 29
詩篇
藁谷久三/庭園の女たち/バヌクールのセーヌの川岸 30 時本和夫/大岳山・残照(10) 31
中村恵子/午後の陽のオブジェ 32      藍川外内実/夜の海を渡る鳥 33
戸台耕二/気がつけば戦争 34        清水博司/あの人たちは 35
比暮 寥/夢幻の妻よ 36          皆川秀紀/あざやきと呼ぶ秋 37
桐野かおる/三本足 38           大島ミトリ/わたしはどうして 38
飯田信介/空の真中(二) 40         まちえひらお/愚 40
鶴岡美直子/カウンターで 41        井口道生/ウマが合う 42
皆川秀紀/絶えまなく始まる朝 42      山下佳恵/笑 43
高橋和彦/月が朱く 44           土井正義/横丁の秋 44
清水洋一/細道 22             原崎惠三/危ない昆虫標本箱 46
若杉真木/やらせろ! 46          麻生直子/ゆくえ 47
田島美加/秋へ 47             勝嶋啓太/ともだち が 死んじゃった 48
伊藤美住/青い花 48            林 洋子/降りつもる 49
●世界の詩人たち(18) 現代アイルランド詩人 ジェイムズ・フェントン2 水崎野里子 56
センチミリミリの歌 回想の詩と時代(8) 村田正夫 58
残虐な理−『奥尻駆けぬける夏』から 麻生直子論(2) 丸山由美子 64
日系人・日本人社会 ロサンゼルスは海の向こう(3) 福島純子 68
耕す人の抒情 新川和江詩集『記憶する水』評 麻生直子 70
戦争の現場を見た眼 丸山由美子『上田幸法論』評 加賀谷春雄 72
時代と風土を解く 丸山由美子『上田幸法』評 山本聖子 74
ブックス 鈴木茂夫 山本みち子詩集『オムレツの日』 石村柳三詩論集「雨新著の詩想』・他 76
マガジン 山崎夏代 COALSACK57号 交野が原62号 日本未来派215号・他 78
前号展望 山本聖子 病気に対する笑いの効用が 80
戦争に死んだ子どもたちの声(書評)山崎夏代 82
メモランダム・前号ベスト5 83
リスト/入会ガイド 84〜85
編集後記(村田正夫) 86



 足を踏まれた者達/新井豊吉

チョンボは朝鮮人を揶揄したことば
ではないらしい
語源はどうであろうと
侮辱されたと感じる背景が問題だ
「日本人に生れてよかった」
みそ汁のコマーシャルが鼻につく
在日であっても
ショ−トステイの外国人であっても
みそ汁に感激する人間はいるのだ
障害者
手帳をもらった彼らは
駆除すべき「害」をもって
生まれてきたわけではない

 タイトルが良いと思います。足を踏んだ方は自覚もないし、仮にあったとしてもすぐに忘れてしまうでしょう。しかし「踏まれた者達」は忘れません。本文からはどんなことが足を踏んだことになるのか、考えさせられます。しかも表面的な言葉ではなく「侮辱されたと感じる背景が問題」であるのだなと深く反省させられました。
 ちなみに障害の障はへだてること、さまたげることの意。障害の本来の意味はさまたげやさまたげる物のこと。障害者とはさまたげになっている者のこととなり、「駆除すべき『害』をもって」というフレーズと意味は同じになります。何気なく使っている言葉ですが、本来はとんでもない意味だったのです。手元の1966年版の大修館書店『新漢和辞典』には人間に対する説明は載っていませんでしたから、おそらくそれ以降に出てきた言葉だろうと思います。そんな面でも考えさせられ作品です。

 なお、今号では拙詩集『帰郷』を「ブックス」で鈴木茂夫氏が採り上げてくださいました。好意的に読んで下さっていて、感謝しています。ありがとうございました。



   back(10月の部屋へ戻る)

   
home