きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.10.15 箱根・湿生花園のコウホネ




2007.11.25(日)


 久しぶりに出掛ける予定のない一日。月末締切り原稿の下調べをしたり、いただいた本を読んで過ごしました。



山本衞氏詩集『讃河』
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2007.11.29 東京都板橋区
コールサック社刊  2000円+税

<目次>
第一章 讃河
讃河T
・誕生 10      ・青海苔のうた(1)13 ・青海苔のうた(2)16
・水のはじまり 18
讃河U
・河 21       ・屋号 23      ・憎しみの川 26
・歓喜のうた 29
讃河V
・脱藩の道 32    ・ダム 34      ・ゴリ 37
・川べりに 40    ・沈下橋 42
讃河W
・窃盗事件 44    ・ひとりのおんなと 47 ・足 49
・朝 52
第二章 浜田知章氏の帽子
浜田知章氏の帽子 56  裁判所界隈 58    B 61
釣り 64       家祈祷 66      独立 69
沙魚
(ハゼ)に 72    雑学的人体論 74   ビヤ 77
枇杷 80       納骨堂 83      重さ 86
水 89
第三章 撒水
撒水 94       放たれて 97     触れられない 100
輸送船 104
.     お母やん 108.    まがい物 110
仔馬 113
.      嫂(ネエ)よ 116      兄よ 118
かぜ 122
.      つれあい 125.    うぶ毛 128
旬を食う 132
第四章 砂嘴の上で
樹の話 136
.     砂嘴(さし)の上で 139  捜しもの 142
あした 144
.     峡谷の村 146.    シバテン 149
一発 152
少年たちへ 154
.    落ち葉焚き 154.   忘れるな 157
膨らむ 160
.     ひとは 162
あとがき 164



 讃河W

 窃盗事件

昭和六年旧九月二十六日夜竹内宇太郎所有字蜥蜴山ニ於テ
松茸ヲ盗ミ取ラレタル申出ニ付組中協議シタルモ盗ミシ者ナシ
依而評議シ結果左ノ如ク確定シ窃盗者ヲ詮議スルコトニ決ス。
協議確定。
一、窃盗者ノ判明スル迄詮議スルコト、
一、窃盗者詮議中掛リタル時間一時間ニ付一戸ニ付五銭ノ日役ヲ
窃盗者ヨリ負担スルコト若家族ニ窃盗シタルモノ有トキモ同ジ
此ノ件ニ付掛リタル諸費用全部窃盗者ノ負担スルコト、右規約ニ異
議之無依而惣員書名ス、
規約
協議ニ依リ規約確定ス、
一、本件ハ一時中断シ犯罪者ヲ探偵シ判明次第再度組会ヲシ確定ス、
一、今回窃盗者判明セサル内ニ何品ヲ問ハズ窃盗スル者之有時ハ此
ノ者ニ全責任ヲ負スモノトス、
一、今回ノ費用詮議中ハ時間十八名分百四十四時間ニシテ
金七円弐拾銭其ノ他ノ費用金参円四拾七銭五厘(酒代三升、
ウドン、ショウユ)合計金拾円六拾七銭五厘全責任者ノ負担トス

四万十川支流の山峡J集落に今も遣る文書である
その後 犯人が確定したかどうか 定かではない
また もうひとつ別の文書に依る同様の事件処理には
犯人と思しい者を入札で決めた
とも伝えている
被疑者とされた人物も
息を顰
(ひそ)めた真犯人も
特定されないままの歴史の中で
どんな思いの生涯をそれぞれが生きただろうか

松茸山の松は枯れ腐れ
棚田を蔽う葛根カズラの傍らには
倒壊した墓石を起こす人も居なくなった

峡谷の襞々
(ひだひだ)に滾々(こんこん)と湧く清水を集め
川だけは悠久を貫流していく

 8年ぶりの第5詩集です。今回は河に焦点を当てたと書かれてある通り、居住する四万十川流域に素材を採った作品が多く載せられていました。まさに讃河詩集≠ニでも謂うべきものでしょう。ここでは、詩集の中ではちょっと異質な「窃盗事件」を紹介してみました。「J集落に今も遣る文書」から想起される住民の暮らしぶりがおもしろく感じられます。「昭和六年」と云えば今から76年前。戦後の民主主義が始まる14年前になりますが、「協議」という形で、今日から見た「確定」内容の是非は別として、民主主義があったとも採れます。それを現在から見て「被疑者とされた人物も/息を顰めた真犯人も/特定されないままの歴史の中で/どんな思いの生涯をそれぞれが生きただろうか」と眺める著者の視線も卓越したものと云えるでしょう。好詩集です。



大塚欽一氏詩集
『これから生きる人々に』
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2007.10.15 茨城県水戸市 風樹社刊 1143円+税

<目次>
T(おおはさみ虫) 11
悲劇(1) 12                悲劇(2) 16
悲劇(3) 20                悲劇(4) 24
子ども受難時代 28             祝祭の夜 32
透明な君たちの存在 36           銃口 40
宿業 44                  一枚の写真を前に 48
これから生きる人々に 52
U(飛蝗) 61
皮膚の時代 62               皮膚論 66
壁 70                   カメレオン 74
陥穿 78                  脳死 82
解体工場 86                疾走する今 90
飛蝗 94                  いずこへ 98
V(伏流) 103
ペンフィールドの実験 104
.         遺体解剖 108
ハンガー 112
.               鶏舎 116
ラムネの海 120
.              石柱 124
新生 128
.                 門 132
球体 136
あとがき 140



 これから生きる人々に

ほんとうにぼくの生きる時代は暗い!
と B.B.
は詠ったが
ぼくたちの生きる時代も暗い
もう絶望的だと思えるほど
ふたつも大戦があった――殺戮の何たるかをはっきりと知らしめた
ふたつもキノコ雲が頭上に湧き上がった――巨大な不信の筍
あれらは地球の終焉の隠喩

もう何を見ても骨に見える――剥き出しの骨に
歴史はコペルニクス的転回を起こした
ぼくたちはもう信じていやしない
コウノトリが赤ちゃんを運んでくれることも
クリスマスプレゼントをサンタクロスが運んでくれることも
金ぴかの馬車がぼくたちを薔薇の園へ連れて行ってくれることも
それどころか知っている この馬車が
汚物を垂れ流し 黒い埃を舞い上がらせるのを

たしかにぼくたちの時代は満ち足りている
飢えることはない(地球の向こうでは今も飢えているにも拘らず)
戦争もない(地球のどこかで殺し合いがつづいているにも拘らず)
何でも手に入る 運がよければ金持ちにもなれ有名にもなれる
おそらくぼくたちの時代はこの上なく裕福なのだろう
それにもかかわらずぼくたちの時代は暗い
ぼくたちは幸福の鍵を見つけようとして
魂の領域をもはやずたずたに切り裂いてしまった
王の墓は暴かれ 白日の下に晒され
山という山は征服され尽くし 海は底が割れた
心のなかもさんざんにかき回されたが特別なものは何もなかった
肉の下にはやはり肉しかなかった(いや残ったのは皮膚だけ)
すべてが明るみに出され 人々は口々に叫ぶ
自分を束縛するものなど何もないと

ぼくたちの時代は暗い
正義はもはや無力そのもの 愛という言葉はそらぞらしい
教育は偏差値で輪切りにされモラルも何もあったものじゃない
結果だけが問われて 心などどこかに置いてきぼり
幼児虐待 いじめ 家庭内暴力 ストーカー バーチャルリアリティ
ぼくたちの頭はコンピューターの蜘蛛の巣にすっかり支配され
ありあまるエネルギーは何もない空に放散される
何をやっても漂うのは無力感だけ
無力感と閉塞感の分厚いコンクリートに囲まれて
ぼくたちは空気を求めて金魚のように口をぱくぱくさせる
欲望は欲望を生み 渇きはさらなる渇きを生む
仮面を被りあるいは影を持たない男たちや
灰色服の男たちが跋扈するこの世の中
金色の足枷がぼくたちをこの大地に縛りつけ
飛翔しようとするぼくたちの喉にくいこむ首枷
がちゃがちゃと重い鎖を鳴らしながら
ぼくたちは力なく吠える 貧血した月に向かって

だが気休めは言うまい
おそらく君たちの時代はもっと暗い
ぼくたちが壊したものはなかなか修復されない
自由競争平等 成果主義 能力主義 勝ち組負け組等と呪文のよう
に唱えながら
弱者は切り捨てられ雇用は保証されず社会格差はどこまでも広がり
巷にワーキングプアーたち(ニートビころじゃない)が溢れる
グローバル化の大波によって伝統も個性も優しい心も押し流され
蔓延するエゴイズムと留まることをしらない温暖化は
もはや猶予を許さない危機的状況だ
君たちは砂漠と化した地球の上で首まで砂に埋まりながら
未来への希望も生涯の設計も立てられず
そして何よりも君たちはぼくたちの思想の申し子だ
あの途方もない存在は跡形もなく消え去り
哲学はもうあらかた言い尽くされて
この世がどのみち虚無にすぎないと公言し
干からびた真理とやらを探してちまちまと重箱をほじくり返すだけ
もうぼくたちのように呪文を唱えることもない

ぼくたちはまだ明るかった時代を少しは覚えている
まだ暈をかぶった太陽のことも覚えているし
魂の領域もおぼろげには記憶している
だが君たちはぼくたちの壊した跡しか知らない
少なくともぼくたちは虹を見ることができた 遠い虹を
ぼくたちの存在よりも途方もなく大きな虹を
だが君たちは等身大の虹しか見られなくなった
もちろん君たちはこれからも営々と生き続けるだろう
小さくなった地球で砂粒のように犇めき合いながら
荒涼とした砂漠の無数の暗渠のなかで
等身大の夢と窮屈な現実と閉塞した心を抱いて
空はあんなに青いのに 外はあんなに明るいのに
君たちの心の奥は暗い そして濃い霧が立ちこめている
君たちの行く先には暗雲が垂れ込めて
どこへ歩いていったらよいのかわからなくなって
もう誰もが諦め顔で
ケ・セラセラなんて軽口を叩く余裕もなく
ぼっかりと空いたマンホールの上で虚しく煙草をふかす
欲望の捌け口だけを求めて
君たちが平気でいられるのは実相を知ろうとしないだけ

 *B・B・:ベルトールト・ブレヒト(1898−1956)、劇『三文オペラ』『肝っ玉おっかあ』などで知られるドイツの詩人・劇作家。社会主義者でもあった彼は、ナチズムが席巻してきた時代状況の下、世界の変革を志向する思想的営みから芸術と政治の関わりを追求した。第二次世界大戦中にアメリカ合衆国へ一時期亡命したあと、ドイツに帰国し、自ら劇作・演出を行い作品を発表していった。

 詩集のタイトルポエムを紹介してみましたが、問題が大きすぎてなんとも、ハヤ≠ニ言うのが正直なところです。この問題は、私の文学らしきものの一大テーマでもあります。こんな時代しか「これから生きる人々に」遺せなかったのは我々だ、という意識もあります。それを見事に表現した作品なのですが、ではどうする?という更に大きな問題を感じてしまうのです。

 問題を解決しておくこと、解決に到らなくても手法を提示すること、手法がなくても考え方だけでも遺しておくのが「これから生きる人々に」対する大人≠フ務めだろうと思っています。解決方法のひとつとして宗教があるのかもしれませんが、私はそれを採りません。採らない理由は技術屋だった職業との関係からでしょう。技術屋は科学的に解決を試みます。問題点を整理し、更に根本的・本質的な問題点を抽出する。抽出された根本的・本質的な問題の解決方法を探る。解決方法が見つかったら、人的にも経費的にも最も効率的な対策を立てる。対策を実行し、対策の可否を検証する。検証結果が可であれば、その対策を他の似たような問題にも適用し、さらに似たような問題が起こらないために事前に手を打っておく。言ってみればこれだけなのですが、問題点の整理が最も重要です。整理の手法にはさまざまなものがありますけど、整理さえできれば問題の9割は解決したと云っても過言ではないでしょう。

 おそらく行政も似たようなことをやっているはずです。その結果として法律なり条例なり、各省庁の通達が出てくるわけですけど、それでも「ぼくたちの時代は暗」くなるばかりです。何が原因なんだろうなといつも考えてしまいます。資本主義の構造そのものに根本的な原因があるのでしょうが、その対案としての社会主義は問題がさらに多すぎます。社会主義の要因を採り入れた現在の修正資本主義が今のところ最良だと思っていましたが、ここ10年ほどで「おそらく君たちの時代はもっと暗い」と言わざるを得なくなってしまったのです。

 上述しましたように、これは私にとっても一大テーマですので、今後も問題点の整理≠し続けるしかないのでしょう。そして「これから生きる人々に」には「実相を知ろうと」する努力だけはしてもらいたいものです。改めて大きな問題を指摘された詩集です。是非ご一読いただき、一緒に考えていければなと思っています。



月刊詩誌『柵』252号
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2007.11.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 三沢浩二の遺産と継承 三沢浩二追悼…中村不二大 70
沖縄−文学ノート(1) 詩人たち…森 徳治 74
流動する今日の世界の中で日本の詩とは36 日本初の完全英語版アンソロジー『戦争と平和詩集』…水崎野里子 78
薄田泣董と大阪6 友人たちのその後、現在の研究…黒田えみ 82
風見鶏 秋元炯 真田かずこ 久宗睦子 根元昌幸 なす・こういち 86
現代情況論ノート19 神の政治…石原 武 88

詩作品□
肌勢とみ子 おむすび 4          柳原 省三 クマゼミ 6
松田 悦子 雨 8             前田 孝一 山寺 10
今泉 協子 最後のスープ 12        佐藤 勝太 母を拭く 14
江良亜来子 夕陽拾い 16          山口 格郎 「空」なるもの 18
小沢 千恵 フナ 20            進  一男 父のこと 22
宗   昇 巣作り 24           北村 愛子 今日という日 26
中原 道夫 殻 28             小城江壮智 パール判事 30
名古きよえ 戦友 32            山崎  森 僕は病気になりたいなぁ 34
若狭 雅裕 石蕗の花 36          織田美沙子 夢語り 38
南  邦和 燻製の匂いのする県庁 40    西森美智子 矢印 42
北野 明治 道・しあわせもの 45      月谷小夜子 胡蝶蘭 48
八幡 堅造 「代々騒々しい家」 50      川端 律子 はじめての出会い 52
宇井  一 小さな幸せ 54         安森ソノ子 シャングリラのステージ 56
鈴木 一成 八十路 58           野老比左子 時の風景 60
門林 岩雄 酷暑・光・変人 62       山南 律子 秋のはじめ 64
忍城 春宣 須走家族 66          徐 柄 鎮 百日紅 68

世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想18 芥川籠之介『儒儒の言葉』小文 詩的精神をめぐって…小川聖子 90
世界の裏窓から−カリブ篇(4)『オメロス』と『オデッセイ』…谷口ちかえ 94
ベトナム現代詩人レ・パム・レの詩7 教会の鐘…水崎野里子訳 86
コクトオ覚書227 コクトオの「詩想」[小説『山師トマ』]…三木英治 100
中原道夫詩集『人差し指』 現代社会を突き動かす詩…田中眞由美 104
南邦和詩集『望郷』 デラシネの旗の向こうには…長津功三良 106
東日本・三冊の詩集 伊集院昭子『忘れかけていた男』 甲田四郎『冬の薄目の怒りうどん』 武田潤子『鏡に聞いて』…中原道夫 108
西日本・三冊の詩集 外村文象『陰が消えた日』 小西たか子『水甕』 門林岩雄『道しるべ』…佐藤勝太 112
受贈図書 118  受贈詩誌 115  柵通信 116  身辺雑記 119
表紙絵:申錫弼 扉絵:中島由夫 カット:野口晋・申錫弼



 しあわせもの/北野明治

〈母の日〉に 母はいなかった
〈父の日〉に 父はいなかった

もうこれ以上
両親に心配をかけさせずに済む

 今号で最も短い作品ですが、内容は大きな広がりを持っているように思います。最終連が決まっていることもさることながら、「しあわせもの」は誰だったのかなと考えました。「母」も「父」も、そして作中人物の3人、あるいは詩には出てこない他の親族も「しあわせもの」なのかもしれません。そして「〈母の日〉に 母はいなかった/〈父の日〉に 父はいなかった」と言うように、本当は決して幸せではありません。それを「もうこれ以上/両親に心配をかけさせずに済む」んだと納得させなければならないことを感じさせます。今号随一の佳品だと思いました。



詞花集『岩魚』3集
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2007.12.1 埼玉県飯能市  非売品
吉村明代氏代表・現代詩の会岩魚発行

<目次>
〈寄稿〉言霊 K女のはなし…田中順三 6
〈寄稿〉秘歌…町田多加次 8
空の色・鉄棒・縁日・アイスの滴り…浅見友博
.10
睡蓮(伯母の訃報を聞いて)…板垣久枝 16
ダージリン・FANTASY・片想い…岡部暢子 22
すかしもよう・悲しみ・庭…坂本美登利 28
リクイエム/(1)忘れもの・(2)六月の手紙・(3)栞…高橋紀子 34
おせいさん・孫の手・半熟玉子…田中まさ 40
橋・遠い日の記憶…巴 希多 46
「白の歌(1)」・「白の歌(2)」…西沢与志栄 50
煙の向こうに・何処に・コーチ…ホソダヨネイチ 54
ちょう・ごはん・梨…増野膺子 62
SILENT TALK・カラー・きざし…森住貴子 68
さくら・ひなまつり・車窓…柳沢陽子 74
早春・藤棚の下で・記憶/(一)(二)…吉村明代 80
手・壁・河童色・挨拶…和田建一郎 86
遊泳…92
あとがき…94



 橋/巴 希多

小畔川にかかる田中橋に
太い氷柱が下がっていたんだ
と父から
子供のころの話を聞いたことがあった

夜中
母は
一番下の弟をおぶって
三人を引き連れ
真っ暗やみを割って歩き出す
田中橋の袂に着くと
決まって
明日出直そうと家に戻るのだった
ツララが下がっていたという
あの田中橋です

父が逝って二十年
母は病院で赤んぼうに還っている
父は
母を待っているとは思えないし
母とて
父を捜すとは思われない

夜中
わたしたちが行こうとしていた
母の実家は
電車でさえ
いくつも乗り替えるのに
と橋の袂で途方に暮れた
七歳の記憶を
わたしも
子供に話したことがある

 「母」から「わたし」、そして「子供」へと繋がる「小畔川にかかる田中橋」が家族の歴史を見ていたような作品です。その歴史は決して華やかなものではなく、むしろ「父は/母を待っているとは思えないし/母とて/父を捜すとは思われない」ようなものなのですが、それでも「橋の袂で途方に暮れた/七歳の記憶を/わたしも/子供に話したことがある」と言わなければならないのです。そこを「わたし」がきちんとやっていることに感動しました。「夜中/母」が家出するような状態があったとしても、それは伝えなければならないことなのでしょうね。考えさせられた作品です。



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