きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.10.9 八方池




2008.11.26(水)


  その1

 午後は入院中の父親を見舞いに行って、その足で東京會舘で開催された日本ペンクラブの「ペンの日」に参加してきました。まあ、いつも通り賑やかな会でしたが、一つだけ嫌なことがありました。ある先輩詩人がつかつかと私のところに寄って来て、私が懇意にしてもらっているある詩人について、滔々としゃべり始めたのです。それもまったくの中傷。私は思わず「何が言いたいのですか!」と声を荒げてしまいました。彼はびっくりして、「君は僕が言いたいことがわからないのか!」。私は「分かりませんね!」と、その場を立ち去ってしまいました。
 もともと詩人仲間からあまり相手にされていない人ですから、私も相手にしなければ良かったのですが、ついつい立ち止まって話を聞いてしまったのが失敗でした。楽しいイベントを下らない話で台無しにされて、まったく不愉快でした。

 そんなことがあったと誰かに話すのは好きではないんですが、今日はすぐに親しい詩友を見つけてその話をしてしまいました。彼は笑って聞いてくれましたけど、聞いてもらえて良かったです。これだけは胸に留めておくと、あとあとまで尾を曳きそうでしたので、鬱憤を晴らしておきたかったのです。聞かされた詩友こそ迷惑だったでしょうが、お陰でスッキリしました。Aさん、ありがとう!

 まあ、そんなこともありましたけど、そのあとは楽しかったです。その詩友を含めて4人ほどで小じんまりと2次会に行きました。珍しく「電気ブラン」があって、懐かしい味を堪能しました。遅くまでおつき合いいただいた皆さん、ありがとうございました!




野田順子氏詩集『恩寵』
現代詩の新鋭4
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2008.11.11 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 1800円+税

<目次>
大きな窓を持つ者へ 6           ありふれた日 10
恩寵 14                  新緑のメルヘン 18
醗酵 22                  カリフォルニアの青い空の下で 24
さがしもの 28               カリフォルニア・アベニューの月 32
ジグソーパズル 36             花の色は 40
独裁者 46                 春の思い出 50
異邦人 54                 ねがいごと 58
ある家族の物語 60             クールミントガム 64
幸せの町 68                夏の終わりに 72
笑顔の意味 76               ささやかな希望の詩 78
天上の旅人 82               終着駅 86
今度生まれるときは少年になることにした 90




 
恩寵

子宮を摘出する決断に際し
盲腸の手術以上の悲壮感を感じなかった私は
きっと神に祝福された者なのだ

決して子どもが嫌いなのではない
街で見知らぬ幼児と目が合えば
率先して微笑みかけるのは
世渡りの術の変形だとしても
勤め先で教え子の打ち明け話に涙ぐむのは
演技ではない

しかし 自分の胎内に
誰かを宿したいと思ったことは一度もなく
私に似ている夫も
昔から 子どもが欲しくなかったのだと言う

何千年先か 何十億年先かわからないが
人類がいつかは滅びることの
私たちはその予兆なのかもしれないが
単なる復讐である可能性も捨て切れない

心身をつかさどるのは神ではなく
ホルモンバランスなのだとすれば
自らの虚弱な身体を受け入れるために
心が譲ったのだという見方もあろうが

 今の私を形作っているものが
 未来への予兆であれ
 過去への復讐であれ

 私は

 私に下った恩寵を

 信じていたい

 第1詩集のようです。ご出版おめでとうございます。ここではタイトルポエムを紹介してみました。詩作品ですから現実のことと採る必要はないと思いますが、第5連の〈自らの虚弱な身体を受け入れるために/心が譲ったのだという見方〉は実感なのかもしれません。さらに〈私に下った恩寵〉と捉える姿勢に、この詩人の真摯な生き方を見る思いです。
 新しい詩人の登場を心から慶びたいと思います。今後のご活躍を期待しています。




埋田昇二氏詩論・エッセイ集『修辞と転位』
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2008.11.20 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 3500円+税

<目次>
T 展望・現代詩時評
『修辞的現在』のいま 12
日常派の詩の豊かさ、怖さ 20
社会的主題の問題−主題の内面化がなくてはならない 30
旅の詩、世界へのまなざし 39
自然との距離の取り方 50
連詩の試みと可能性 59
比喩と表現、主務のことなど 68
U 詩論・エッセイ
不幸であることはスキャンダルなことか 82
詩の発想について−入沢康夫『詩の構造についての覚え書』についてのメモ 86
詩のなかの〈私〉−入沢康夫と高橋喜久晴の作品から 91
詩のリアルな表出ということ 97
前衛的なものと大衆的なものとの共存−世界詩人会議日本大会'96前橋 分科会「ラテン・アメリカの詩」報告 100
アメリカグローバリズム−その傲慢と想像力の欠落 106
歌と詩と言葉と−合唱詩『富士』の制作を通じて 108
現代美術からの触発−「ヒロシマ」が視えてきた 113
言葉による進化がもたらすもの 116
李白の心 118
V 詩集・詩書評 1
嵯峨信之論ノートー「野火」と「ヒロシマ神話」のあいだ 124
黒部節子詩集『空の皿』によせて−魂をもつ物たちを鮮やかに感知する童女の眼 132
後藤一夫初期詩集『瓦』にみる詩の出発 157
木津川昭夫詩集『凩と鳥語の男』−幻想の心眼で不毛の現実からの回生をめざす 142
小川アンナ詩集『沙中の金』−事物の相を照射する透明な視線 147
島田陽子詩集『森へ』−青春のかがやきを照射する透徹した目 151
日高滋詩集『ペーパーマン』−生霊として彷徨する紙人 157
渋沢孝輔評論集『花後の想い』−精神と言葉の深奥を語る 163
小柳玲子詩集『雲ケ丘伝説』−幻想を現実化させる夢の秘苑 165
溝口章詩集『戦史・亡父軍隊手牒考』−叙事詩の内奥を超える詩人のしたたかな美意識 172
溝口章詩集『病状記−母への頌』−生きながら虚に近づいていく魂の美しい軌跡 180
浅井薫詩集『鳥の歌 わがスペイン』−人間が英雄でありえた時代の劇藷 184
池谷敦子詩集『象がくる空』−大いなる生命への讃仰と卑小なる「猫」的人間への洞察 190
岩ア豊市詩集『金子光晴の墓ほか』−時代の流れにくみせず、体制の外で飄逸に生きた魂への共感 200
小川アンナ評論集『そのとき住民は−富士川町の住民運動私記』−いのちの根源を見つめる深いまなざし 204
高橋喜久晴詩集『巨いなる樹』−神への信仰「光」と内心に潜む「闇」の狭間に揺れる精神の誠実な軌跡 213
原田道子詩集『うふじゅふ』と『葵生川玲 詩集成』
  −言葉の対照的な手法・身体共感から発する心象風景と苛酷な現実と対置できる明晰な言葉 215
橋本由紀子詩集『見つめられる−想花幻想コラージュ』−花の真ん中に、エロスの川が流れている 218
河上鴨詩集『海辺の僧侶』−記憶のなかの非現実に拒まれ佇立する 220
高橋喜久晴エッセイ集『薔薇と落暉』−日本の現代詩に対する強烈な反対命題・陳千武/金光林論 224
溝口章詩集『残響』−澄明な魂が月光に踊躍する「空」の浄福 228
高炯烈長詩『リトルボーイ』韓成禮訳−在日韓国人の原爆被災と植民地支配を告発する壮大な叙事詩 234
『原爆詩一八一人集』管見 237
原利代子詩集『ラクダが泣かないので』−ユーモアと極め付のウィットに包まれた新たな世界 242
W 詩集・詩書評 2
岩瀬正雄詩集『生のとき 死のとき』−人の生と死を極限まで見通した不動明王の眼 250
三木卓、高橋順子、新藤涼子連詩集『百八つ物語』−孤立からの回復をめざす曼陀羅世界 252
安水稔和詩集『ことばの日々』−凛然して立つ日本語の比類なき言葉の清澄な響き 254
湯沢和民詩集『あおみどろのよるのうた』−壊れ潰れていく世界に漂う魂を澄明な世界に誘う癒しの光り 256
渡辺正也詩集『零れる魂 こぼれる花』−無意識を掘り起こし、存在以前の始原の世界を幻視する 258
加藤陽子詩集『水、半島状の』−混沌の影のなかで魂を喪失したものたちのバラード 260
齋藤エッセイ集『植民地と祖国分断を生きた詩人たち』−朝鮮の詩人たちの人と作品の軌跡を検証する 262
原子修詩集『受苦の木』−苛烈な内省の上に立って、みずみずしい思想の葉の再生の祈りをこめて 264
財部鳥子詩集『モノクロ・クロノス』−現実と幻想が交錯しながら、瑞々しい感性が宇宙的なスケールで放射する 267
古賀博文詩集『人魚のくる町』−猥褻と欲望、殺戮に満ちた現代社会の喩 269
池谷敦子詩集『夜伽』−幻夢がうみだす詩人の魂の戦慄 271
菊池柚二詩集『木々も草々も花々も』−誠実な精神の軌跡、聖なるものと俗なるものとの同居 273
安田雅博詩集『海府行』−佐渡に凝縮された「過去」の痛み・負債に向き合う誠実な魂 275
佐野久夫詩集『川が流れていて』−死を覚悟しながら生と死の境を見つめた詩心が清澄な空間をつくりだす 277
桜庭英子詩集『薔薇を焚く』−たがいに尽くせぬ恋の哀切をうたいあげた絶妙な息遣い 279
小網恵子詩集『耳の島』−身体の持つ思想性を触発・喚起する 281
崔龍源詩集『遊行』−二つの祖国に引き裂かれた詩人の苦悩と希望の詩
(うた) 283
朝倉宏哉詩集『獅子座流星群』−事象の真の相を視るためには幽鬼にならなければならない 285
暮尾淳詩集『雨言葉』−酔いどれの遊び人の奥に生に対する深い喪失感と哀しみ 287
たかとう匡子詩集『水と一緒に暮らしましょう』−言葉と用語法の転位が生の不条理と希望を透視する 290
堀場清子詩集『延年』−戦争と殺戮に加担する「無知」の罪を戒める 292
宮沢肇詩集『分け入っても』−ことばの香り、芳醇な比喩に託された思念の深さ 294
北川朱美詩集『人のかたち、鳥のかたち』−世界の滅び、世界の痛苦と同居、あるいは同時性を透視する 296
日原正彦詩集『十字が丘駅で』−哀しさ、底知れないさびしさで哭いている 299
小柳玲子詩集『為永さんの庭』−自由な発想と批評の新たな可能性 301
草野信子詩集『地上で』−何げない風景や物が世界の悲劇の喩となる 304
泉谷連子遺稿詩集『ピアニッシモの春』−感情や思いの直接性が言葉の力を生む 306
尾花仙朔詩集『有明まで』−世界の悲しみの記憶に耐えて、咽び泣くたましいの戦慄 308
石原武詩集『飛蝗記』−世界と人間の現在を多様性として指し示す 311
杉山平一詩集『青をめざして』−詩人と詩の成熟に触発される 313
中正敏詩集『なぜ』−底知れない魂の孤独を見つめる 315
久保寺亨詩集『詩遊び・神遊び』−純粋な感性が極めようとする宇宙存在と自己探求の悲痛な詩遊び、神遊び 317
平林敏彦詩集『舟歌』−世界が壊れていく相をつぶさに見つめつつ、詩人の波乱に満ちた全生涯を哀切をこめて絶唱する 319
河津聖恵詩集『青の太陽』−孤独や悲哀の所在さえ行方不明な現代のあまりに繊細で傷つきやすい精神の哀しみ 322
高岡修詩集『犀』−犀の痛点、凶暴な自然(過酷な現実)に立ち向かう精袖のすさまじい壮絶な格闘 324
岡隆夫詩集『ぶどう園崩落』−交響曲の構成を詩編の構成とした葡萄酒賛歌 327
狩野敏也詩集『犬はつぶやく』−犬の目線でとらえる人間社会のおかしな風景、不可思議な言葉を活写 329
新川和江/甲斐清子詩画集『人体詩抄』−人間の肉体の持つ不思議な生命力と美しさの賛歌 331
白石かずこ詩集『満月のランニング』−「遊び」によって始まる新たな詩の旅の予感 333
『大滝清雄遺作集』−人や自然・宇宙と直線に交感する自由闊達さに魅せられる 335
菊地貞三詩集『蛇がゆくように」−「今」と非現実をも穏やかに見つめる成熟した視線 337
『長津功三良詩集』(新・日本現代詩文庫35)−被爆の実相が詩人のなかで内面化・深化することで原爆詩が可能に 339
坂本つや子詩集『風の大きな耳』−困窮と苦役、屈辱の闇に引き裂かれながら希望を見るしたたかさ 341
川野圭子詩集『かいつぶりの家』−生の肉体から発信するイメージの意外性、巧まざるユーモア 343
川島完詩集『ゴドー氏の村』−地球と森の崩壊に対する深い悲しみとかすかな希望 345
宇佐美孝二詩集『虫類戯画』−虫に変身することで時空を共有しはじめる不思議を捉える 347
吉永素乃詩集『仮定法の夏』−戦火のなかの危うい命の記憶が詩を書く原点に 349
大崎二郎詩集『幻日記』−記録に依拠して幻視した「ヒロシマ」の内面化 351
渡辺めぐみ詩集『光の果て』−現代社会の負荷に反逆者として光のパテを張っていく 353
小網恵子詩集『浅い緑、深い緑』−日常、現実からの転位のさわやかさと痛みと 355
麻生直子詩集『足形のレリーフ』−純粋な情念と魂の奥底を凝視する視座 357
倉橋健一詩集『化身』−擬態テロリストを夢想しつつ、世界のさまざまな低みに立つ 359
有馬敲詩集『洛中洛外』−京言葉で語る政治や社会に対する直截な批判のしなやかな強さ 361
杉山平一詩論・講演集『詩と生きるかたち』−独自の感性で語る時代と詩、詩人たちの語り口に魅了される 363
小長谷清実詩集『わが友、泥ん人』−事象の空無への意識が己れに向かうとき、諧謔は鋭い刃となって刺さる 365
財部鳥子詩集『衰耄する女詩人の日々』−詩人と人類の衰耄を写しだす刺激的なネガフィルム 368
小林茂詩集『幽界より』−世界のすべてを限定されない夢幻と視る変化の書 371
松岡政則詩集『草の人』−光りかがやくサトの草と母への渇仰 374
横井新八詩集『彼岸』−生と死を見つめる透徹した視線が、失われていく原郷への回帰を希う 376
小柳玲子詩集『夜の小さな標』−現実と非現実の合間で、詩人は夢に見られている 379
永谷悠紀子詩集『冬の家』−不可解な奇妙な事件を陽気に描く怖い詩人 381
小川英晴詩集『カーマイン エクスタシー』−ひとはエクスタシーの瞬間、どれほど美しくなることができるか 383
篠崎勝己詩集『悲歌』−生と死と愛のきれぎれの囁きが心音に鳴り響く 385
嶋岡晨詩集『キープ・カマヨに捧げる詩』−戦争の現実を厳しく凝視、インカの結縄に人間回復を願う 387
大西規子詩集『ときの雫 ときの錘』−感性ゆたかなことばで存在の危うさと夢を紡ぐ 390
金光林エッセイ集『自由の涙』−精神の「自由」と人間の「涙」が同義に語られる魂の無垢に感動 393
佐藤正子詩集『同い年』−韜晦せずに真っ正直に自分を見つめる眼差しが爽やか 395
中村不二夫詩集『コラール』−「手」は人の生命の終わりに際して何ができるか 398
白井知子詩集『秘の陸にて』−スターリン統治下の詩人の受難の歴史に合流する 401
三井喬子詩集『紅の小箱』−官能的で妖しい物語の世界に挑発される 404
長谷川紘子詩集『さようなら冥王星』−生活者の視線で意外性のあるイメージをのびかな言葉でさしだす 407
X 詩人論
詩の青春と澤村さん 412
嵯峨さんの思い出 415
小長谷静夫−「死」と世界の滅びの予感から日常を照射した詩人 420
孤高の詩道の求道者・後藤一夫氏を悼む 428
高橋喜久晴さんを偲ぶ−高貴な精神性をもって詩業の研鑽を最後まで貫いた詩人 437
小川アンナ 森閑とかがやくいのちの詩人の至福 442
Y 時事寸感 455
あとがきに代えて 482
初出掲載一覧 484
装画 岩佐なを 銅版画「きのめ」




詩と散文『モーアシビ』15号
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2008.10.24 東京都世田谷区 白鳥信也氏発行 500円

<目次>

蜂蜜を持って 青空の下(写真&詩)     北爪 満喜 3
迷子                    ブリングル 8
いじめ                   辻  和人 16
いき                    松本 真希 22
ぼろぼろ花火                五十嵐倫子 28
十五夜の月の下でほんとの話はまだ続いていく 川上 亜紀 32
木                     浅井 拓也 38
汗の製造工場                白鳥 信也 42
散文
失われた言葉を求めて・その4        福田 純子 48
風船乗りの汗汗歌日記 その14        大橋  弘 62
クルマに関する二、三のこと         平井 金司 70
翻訳
月蝕 11 グラジーミル・テンドリャコーフ  内山昭一訳 73
カット:市川史子



   
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