きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.7.30 伊豆・旧天城トンネル




2009.8.23(日)


 珍しく実家の掃除をしました。
 来週、亡母の法要をやります。場所はお寺でもいいよと住職が言ってくれたのですが、実家でやるからと断りました。一人暮らしの父親が介護病院に入院して、しばらく無人となっていました。このまま朽ち果てる危険性もありますので、それを防止するためにも実家で法要をやると決めたのです。そのために今日は掃除に出かけたというわけです。
 午前9時から始めて、午後2時にはだいたい終わりました。父親はいろいろ問題の多い男ですが、身奇麗にする、家の掃除をする、ということにかけてはピカ一です。あまりシンドイ思いをしなくて済みました。まあ、床屋という客商売でしたから、身辺をきれいにしておかないといけなかったのでしょうね。

 一番シンドかったのは蜂の巣退治でした。玄関脇に大きな蜂の巣が出来ていまして、法事で来客が多いのが分かっているのに、そのまま放置するわけにもいきません。可哀想ですが殺虫剤をかけて、巣を撤去しました。反撃してくる蜂にも殺虫剤をかけて…。法事なのに殺生はどうかなと思うんですけど、しょうがないですね。作業そのものは簡単なんですが、心理的にシンドかったのです。




鳥巣郁美氏詩論・エッセイ集『思索の小径』
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2009.9.17 東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税

<目次>
T随想
住吉川ほとり 10    三本の車線 12     御影の頃 15
二月の雪 19      別れを告げたシロ 22  仁川橋あとさき 26
早とちりその余話 29  明治最終の人 33    オホーツクの海 37
焼きものに親しんで 41 秋の足音 44      雑草のある暮し 46
旋律ということ 49   秀太郎をめぐって 53  映画「夢」から 62
U論説
水脈
(みお)に棲む葦 68. 誘いの径 74      詩の領域 82
美の把握 −虚と実と− 104
.          −集団の持つ旗と歌と− 120
 −思想の昇華− 129
集団の中の個 −自我の部分− 138
.       −権力のしくみ− 154
生きがいの行方 −矛盾にみちたロマン− 173
.  闘争に至る意志の是非 192
運命の岐路 −戦争の周辺− 208
.        教育という場の現実 −学校と塾の役割− 223
原子力の行方は 242
V後期泡沫
(うたかた) ――「槐」誌通巻――
(い)地獄は…246                (ろ)人の急逝に…247
(は)自然は……248               (に)足立巻一氏が…249
(ほ)ひっそりと…250              (へ)永遠を…252
(と)平成元年に…252              (ち)もうかなり…254
(り)能登…256                 (ぬ)亜騎保氏が…257
(る)桑島玄二氏…259              (を)正邪という…260
(わ)印度もパキスタンも…262          (か)津高和一氏が…263
(よ)原爆ドームが…265             (た)長野冬季オリンピックで…266
(れ)人の妄想の…268              (そ)北の海底に…269
(つ)現代社会に人攫いが…270          (ね)二〇〇三年末…272
(な)平和を愛する…273             (ら)昨秋九月マスード氏…275
(む)様々な出遇いを重ねて…277
あとがき 282
若者略歴 284




 
住吉川ほとり

 移転前の谷崎邸、倚松庵は、通勤の途次、見渡せる川向うに、毎日のように見ていたのだが、その頃は認識もしていなかった。魚崎駅までの桜並木にさしかかるあたりの向いだったと思う。住吉川ほとりに住んだ二年間の事である。西向きの三階にあった私の住いは、川音と、傍の巨大な一本松と、川を挟んで見通せる、野性味を残して天を指す松林の、松籟の響きに囲まれていた。松の騒ぎは、心の深い触れあいのように私をゆさぶり、遠い世界へ誘ってゆく。空に立ち向かう幾本かの梢は私をも空まで引き上げてくれる程に野放図であった。その松林の中に、松籟荘と名のついて古さびた集合住宅もあったが、もう跡形もない。あれから早二十年も経つが、松林はもう大分前に姿を消し、高層住宅が並び建ち、現在はモノレールの車輌が行き交い、南側も頻繁に車の走る広い道路になり、すべては幻と化した。しかし未だに私の中で、あの壮大な眺めだけが、何処からも得られない印象を彷彿とさせている。

 雨で増水した川のごうごうと鳴る音、月夜の川底のきらめき、時に広い川幅に沛然と斜めに降り込む雨や雪を、迷い鳥がよたよたと横切る構図は、不思議に魅せられる豪放さであった。夏から秋にかけては、帰宅が遅くても殆どの夕焼けを見る事になる。展望できる街の果ての山波一帯がいちめんの茜色に染まる。空の色の澄む秋口がやはり圧巻で、段々と早まって消える余韻を惜しんだものである。視野いっぱいの広がりが染め抜かれて、千変万化して移りゆく様を、毎日のように眺め暮す贅沢、初秋は特に、六甲の山波が紫色を深めて、山紫水明が実感された。

 北隣は、緑青の銅屋根の高裁の研修所で、広大な庭の樹木が四季に変化を見せる。両方の敷地に金木犀が幾本もあり、九月末には香りはじめる。外出するのさえ惜しむ気持であった。初めて買ったマンションで生活はきつかった筈だが、市場までの付近の瀟洒な街並も気に入っていて、佳き時代の川沿いの住いを懐かしむ思いしきりである。後に松林を訪れた折、川床の遊歩道を、鴨居玲氏と、栗色の髪の女性が、のそりと大きいセントバーナード犬を連れて、ふだん着姿で散策されていたのを目にしたが、それもまた幻という事になろうか。

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 拙HPでは初めての紹介になります。散文集としては初めての刊行のようですが、詩集はすでに10冊に及ぶ大ベテランです。ここでは巻頭の随想を紹介してみました。以前お住まいになっていたらしい、神戸の変遷が端的に語られている作品だと思いました。




詩誌『木偶』78号
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2009.8.25 東京都小金井市
増田幸太郎氏編集・木偶の会発行 500円

<目次>
馬を/天内友加里 1              鬼はいるの/野澤睦子 3
通夜の前に、わたしは初めて朗読した/広瀬
.弓 5 漂流物/藤森重紀 7
梅雨の晴れ間/落合成吉 9           鱚の丸かじり −北川朱実さんに−/中上哲夫 11
釣り自慢/川端 進 13             マラリア/土倉ヒロ子 15
二泊三日/沢本岸雄 17             夕映え/荒船健次 19
猫の詩を書く理由/乾 夏生 21         郭公のプリンス/田中健太郎 23
公園で/仁科 理 25              蒼穹/増田幸太郎 27
評論 「首都高速」の伊藤桂一 3/野寄 勉 31
受贈誌一覧




季刊個人詩誌『ぽとり』15号
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2009.8.30 和歌山県岩出市
きのかわ文芸社・武西良和氏発行 非売品

<目次>
15号特集=犬=について 1
詩作品
吠える犬 2      犬の手術 3      電話の犬 4
ラッキー 5      理想の犬 6      ラッキー2 7
犬のお巡りさん 8   犬 9         散歩 10
散歩の記憶 11
ぽとりの本棚・ベンヤミンを読む(6) 12     ぽとりエッセイ(15) 15
既刊詩集・詩文集案内 7            既刊詩誌ぽとり特集案内 16






   
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