処女詩集 『プラスチック粘土』
発行日 1977年10月
発行所 神奈川県小田原市曽比
 小田原「あ」の会
定価 1000円
plastic nendo
体裁 A5版 80頁


 プラスチック粘土

グラスの十九世紀を強いた
安っぽい絵模様でも
栓抜きでも
赤い小指なんか
原寸大のコピーだ

つるつるの土を
一枚めくって
手の届く限りに掘り進んでいくと
関東ローム層で
まだまだやめないと
観光地にもならない
プラスチック粘土だ
ずっしりと重い
ねずみ色一色の土塊より
軽やかに多色だが
等倍率のコピー器だ
どうにでもなるレリーフだから
化学信者のぼくは
プラスチックが好きだ
なんて言ってしまって
すがすがしい顔 してたんだ
ディスコの目いっぱいの音の中の
飛んで行ってしまった君の声を
解読しながらぼくは
ああ いい奴だと
今でも思っている

月に一度しか血の通わない心臓
これが拡大されたアルコールにめっぽう強い

転げてしまったのが実物より大きめの乳房
三cm3の不定形な雲形の脳みそ
うろこもない人形のひとみを貼りつけ
細心に慎重に作りあげた名器と
フランス風の腰つきを
テーブルの上に置いて
君ができたよ

ぼくは骨組みだけでいいから
残りでロッキードとミグの机上戦だ
赤と黄色を使ってしまっても
君の粘土で二大陸ができるだろう
やあ いらっしゃい
アトランティックは青にしよう
最新鋭集積回路の
三ヘッドテープデッキを持ってきて
くり返し再生させれば
地球と歴史は一望で

ぼくらは
どこに行っても同じだ


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