きょうはこんな日でした【 ごまめのはぎしり 】 |
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新井克彦画「モンガラカワハギ」 |
1999.12.27(月) その2 その1へ
○江口あけみ氏詩集『角円線辺曲』
1999.12.29 かど書房刊 1000円+税
詩集となっていますが見開き1頁が詩、隣の頁に川上茂昭画伯の絵が添えられている、いわば詩画集と呼んでもいい詩集です。小学校高学年向きの絵本ととらえてもいいかもしれません。
正方形
何もかも 整っている
行儀の いいこと
それは もちろん
正しいに 決まっている
僕には ちょっと
物足りないのさ
でも それが
君なんだよね
こんな恰好で図形についての思い入れが語られていきます。あとがきには「好きという気持ちがはたらくのでしょうか、形をじっと見つめ、形と語り合い、形と遊んでいるうちに、ことばが生まれてきました。」とあります。この「正方形」を拝読すると、まさにその通りだなと思います。稀有な才能と言ってもいいでしょう。
○アンソロジー『阿由多』1号
東京都世田谷区 成田佐和子氏 発行
新川和江さんの詩の教室の生徒たちが作ったアンソロジー第1号です。横浜詩人会、日本詩人クラブでご一緒している土井のりかさんよりいただきました。阿由多とは梵語で、極めて大きな数量を指す単位だそうです。
----死んだら お父さまのお墓ではなく
はじめ許嫁だったかたのお墓にいれてね----
とぎれ とぎれに語る
母のことばの意外さ
死の床にまでひきずる希いのおもたさに
裏切りを知るよしもなかった 父へのあわれみに
驚きをかくし
うなずくよりほかなかった あのとき (土井のりか「冬のこおろぎ」第3、4連)
こういう愛もあるのか、と衝撃を受ける作品ですね。そこまで我慢をする必要があるのか、時代の違いと言ってしまえばそれまででしょうが、なにか切ないものを感じます。
手元に返って来たレモンは
光を吸って
少しだけ 重くなっている。(高梨早苗「レモン」第4連)
こういう発想というのは大好きです。視点を変えることができるのは詩人が本来持っている才能ですから、量子力学もそういう眼で見たらおもしろいでしょうね。
その他、風里谷歌子さんの「坑口」では常磐炭坑の坑口を思い出し、宮本智子さんの「夕焼け」では猫がいつも目を閉じているわけを知りました。力のある、楽しみな人たちが多く、今後も阿由多までご発展することを祈っております。
○詩とエッセイ誌『しある』26号
長野県大町市 秋園 隆氏 発行
じっと見つめられている
とは知らずに
黒猫は ゆっくりと
優雅な歩みをつづけて
視界から消え去った
理由もなく
しまったなと思う
ことによると 猫との会話を
したかったのかも知れない (原健太郎氏「猫の居る情景」第5〜終連)
犬とは会話ができます。室内犬がうちにいますが、よく会話しています。単に、私が一方的にしゃべっているのを、犬も判っているはずと錯覚しているにすぎませんが…。でも、酔って話しかけると嫌そうな顔をしますし、少なくともこちらの言っていることは判っているようです。あちらはあちらで、遊べと小さく吠えます。
猫と暮らしたのは子供の頃で、もう記憶も遠くなりましたが、やはり猫とも会話したんだろうと思います。作者の「理由もなく/しまったなと思う」気持ちも判りますし、なにより、そう表現するのは素晴らしいことだと思いました。爽やかな信州の風を感じます。
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