きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
murasame mongara
新井克彦画「ムラサメモンガラ」




2000.12.31(日)

 その2  
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沼津の文化を語る会会報『沼声』247号
shosei 247
2001.1.1 静岡県沼津市
沼津の文化を語る会・望月良夫氏発行 年間購読料5000円

 おまかせ
 高校PTAを引受けた。教育について先生方の意見を伺える機会と期待した。しかし、医療のインフォームド・コンセントは教育にはなく、先生方は「プロにおまかせ下さい」が本音だった。
 一方学校行事は社会に開かれすぎているのには驚かされた。研修会に続いて懇親会は必ずシャン・シャン・シャンでお開き。理想は理想、現実は現実、皆仲良くと聞える。21世紀はますます多様化の時代、「おまかせ」は寿司ならばよいのだが…。[君塚忠男]

 「猫のあくび」というコーナーに載っていた文章です。私も中学校PTA役員をやっていて、同感です。やはり「プロにおまかせ下さい」という態度は見えますね。知人には教員も多く、彼らに以前、PTAって、どう思ってる?と聞いたところ、あまりあてにしていない、むしろ邪魔、という返事が帰ってきて驚いたことがあります。他校のPTAは女性が多いようで、男性が役員の半数を占めるうちの学校とは比較できませんが、なるほどなと納得した覚えがあります。
 親の側にも問題はあるでしょうね。学校内のことを逐一知ることは難しく、どうしても先生任せになっていることは否めません。特に父親が無関心なようで、母親に任せっきりというのも起因しているかもしれません。うちの学校では美化清掃には力仕事が多いため、父親も半数は出席してくれています。父親の出番を作る必要性を感じますね。プロはプロでも、父親は実業でのプロなんだから、教員とはちょっと違った見方をしています。それを生かさない手はないでしょうね。



詩誌『饗宴』26号
kyoen 26
2001.1.1 札幌市豊平区
林檎屋・瀬戸正昭氏発行 500円+税

 怒髪の風景/瀬戸正昭

曇天の
東京都西新宿2丁目
ハイパービルがホゾを噛む…
見下ろすと底なしの深い穴
今世紀で人類は滅亡
と定められてゐたのに
何もかもが…

残躯
怒髪天つく…
足もとの危ない札幌も
寒風吹きすさぶ仙台も
大人の遊園地のやうな東京も
キシメンの迷路のやうな名古屋駅も
280円の焼きそばと
1万8千円の定食が同居する
不思議に明るい
大阪梅田 も
落雁食ひの
金沢も

何もかもが
残ってしまった
所在なげに…
はにかんで

師走…
憂悶は
三毒のやうに
五臓六
腑に …

 「今世紀で人類は滅亡/と定められてゐたのに/何もかもが…」「残ってしまった」ことに対する「怒髪天つく…」怒りの作品なんですね。でも、なんで怒っているんだろう?なんで滅亡しなくてはいけないんだろう?
 もちろん環境問題や遺伝子組替えの罪、民族紛争の罪、国家主義に傾いていく日本の危険性などなど、怒り心頭なものがたくさんあるのは判ります。「三毒」とは辞書によると、むさぼること・怒ること・理非のわからないこと、とありますから、それが「五臓六腑に」染み込んでいくほど現状はひどいモンだと言いたいことも理解できます。でも作者が具体的に何に対して怒っているのかが判らない。
 全てのことに怒っている、あるいは、オレが何に怒っているか読者も考えろ、ということかもしれませんね。そういう風に読むのが正解なのかもしれません。そして私はこの作品で「はにかんで」というフレーズに救いを見つけています。この言葉に作者のはにかみがあるように思います。怒っていることへのはにかみです。それが無かったらただの小言オヤジだもんね。やっぱり詩人だな、と思いますよ。
 怒りを忘れた人間、日本人への警句ととってもいいでしょう。



詩誌『帆翔』22号
hansyo 22
2000.12.25 東京都小平市
《帆翔の会》 岩井昭児氏発行 非売品

 日本詩人クラブの会員でもある篠崎正俊さんの追悼特集号になっていて驚いています。9月に74歳で亡くなっていました。お会いしたことはありませんが、詩集『蒼玄』をいただいて以来、Eメールで何度もやりとりをしていました。このHPにも何度も来ていただいたようで、ご丁寧な感想まで受けていました。まったく青天の霹靂で、日本詩人クラブの名簿管理もやっていますが、知らずに11月発行の会員名簿にも載せてしまったほどです。

 (絶筆) 篠崎正俊

扇子の音
もうろうの中
扇子を小開きにして
パチリと閉ぢる

闇然而日宇 *(呉清源)

今、蒼々とした山の
隧道をくぐろうとしているのか

扇子の音は隧道入口の合図
パチリと発する音
         
たお
玄之又玄 宇がる『道』への信号

 
*日本碁院名誉客員九段呉清源揮毫扇面文字。

 奥様がこの(絶筆)について、次のようにお書きになっています。

 ・主人が最後に病院で書いたと思われるものをコピーして送らせて頂きます。痛みを紛らすために扇子をパチパチと鳴らしているのだと申しておりました。

 「今、蒼々とした山の/隧道をくぐろうとしているのか」というフレーズに、ご自分の死期を悟った詩人の言葉を見る思いです。ご冥福をお祈りいたします。



 
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