きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
mongara kawahagi.jpg
新井克彦画「モンガラ カワハギ」




2001.7.27(金)

 日本ペンクラブ電子メディア研究小委員会がありました。先日の理事会で承認された「電子文藝館」創設の準備です。とりあえず会報に載せる呼びかけ文の検討に入りました。秦恒平委員長の原案を討論しましたが、ほぼ提案通りに可決されました。このHPの
7/23の頁に載っていますので、興味のある方はご覧になってください。
 ちなみに「電子文藝館」は委員の牧野二郎弁護士の働きにより商標登録が出願されたと紹介されました。弁護士が委員にいると、そういうところまで眼配りがきくんだなと感心しています。
 一応、発刊は私の提案通り11/26の「ペンの日」に合わせて創刊準備号を出すことになりました。創刊号としたいところですが、作業を考えると準備号とした方が無難だろうという配慮です。ですから、うまくすれば創刊号になるかもしれません。会員は今のうちから作品を電子化(テキスト形式)にしておいてくださいね。
 今回から文芸HP
「ほら貝」で有名な加藤弘一氏が加わりました。初めてお会いしましたが、まだ40代の若い人だったんですね。「ほら貝」は1995年創立の老舗ですから、もっと年配の方だとばっかり思っていましたよ。委員にはOS「TRON」で有名な東大の坂村健氏や紀田順一郎氏などの著名人がいますが、お忙しくてなかなか出席してもらえず、技術論に踏み込めないんですけど、これで少しは改善されるかなと思っています。加藤氏は当面、「電子文藝館」の見本を作ってくれることになり、それも楽しみです。さすがは日本ペン、いい人材が集まるなと感心しきりの会議でした。

 その後、有楽町の「ニュートーキョー」に行ってきました。日本詩人クラブの気の合った仲間が、たまには呑もうじゃないかと誘ってくれて、私の都合の合わせてくれたものです。でも、新橋の「ニュートーキョー」と間違えて、銀座・新橋・有楽町と歩くうちにすっかり方向感覚が狂って、1時間も遅刻してしまいました。皆さん、ゴメンナサイです。それでも2時間半ほどは呑めましたから、満足しています。ひとりの女性はまったく呑まないので、実質4人で焼酎ボトル1本を空けたのは、まあいいペースだったかなと思います。また誘ってください。今度はしっかり地図を見て、迷わないようにします。



文春文庫094 加藤弘一氏著
『電脳社会の日本語』
dennousyakai no nihongo
2000.3.20 東京都千代田区
文藝春秋刊 710円+税

 前出の著者よりいただきました。本当は買いたかったんですけど、3軒の書店を回っても置いてありませんでした。取り寄せてもいいんですが、なんとか加藤さんとお会いした時には手にしておきたかったので、メールでご持参をお願いしておりました。そうしたら、いただけるとのことで恐縮しています。
 自分で買った本は、このHPでは原則として書かないんですが、いただいてしまったので前例通り書かせてもらうことにします。そうは言っても自費出版ではなく市販品ですから、あまり細かく書けません。是非お買い求めの上、お読みください。コンピュータ・インターネットと日本語に興味をお持ちの方なら、必読の本だと思います。
 まず、目次を紹介しますので全体を把握してください。

第一章 電脳時代のS・カルマ氏
・文書の網の目
・コンピュータは漢字をどうあつかうか
・図書館の電子化から電子図書館へ
・インターネットで登記簿閲覧
・紙がオプションになる時代
第二章 アルファベット世界への参入
・狼煙とオルゴール
・狼煙の系譜=印刷電信
・オルゴールの系譜=パンチカード
・ASCII登場
・仮名文字をどうする?
第三章 国際文字コードとしての漢字
・欧米の人口をしのぐ漢字文化圏
・JIS漢字コードに向けて
・文字概念と例示字形
第四章 漢字制限論争の亡霊
・精神分裂国家日本
・焼け太りした国語改革
・常用漢字という「目安」
・一九八三年のクーデタ
・シフトJISの普及
・迷走する規格改訂
第五章 グローバル・スタンダードをめぐる攻防
・第二の国際文字コード
・アメリカの中・日・韓「漢字統合」構想
・対米摩擦と漢字問題
・バベルの塔を建てた後に
第六章 文字コードの現在
・幽霊漢字の調査
・化けまくる外字領域
・小文字セットと大文字セット
・今昔文字鏡・e漢字・GTコード
・字形カタログを超えて
・表意文字の復権
・文字の多様性

 ご覧のように魅力的な内容が詰まっています。4〜6章はちょっと専門的になりますが、パソコンを扱っている人なら理解できると思います。日頃、何気なく使っているパソコンの奥で、何が起きているのかが判って、のめり込んでいくでしょう。私も多少は関わった「文字コード標準体系検討専門委員会」は話や、電メ研委員の坂村健教授なども出てきて、個人的にも興味を覚えるものでした。
 目次にある本文以外に「補説」があります。個々の技術的な問題を解説したものですが、こちらもおもしろい。パソコンに技術的な興味を持っている方なら、お薦めの「補説」です。
 第六章の最後に書かれた文章は、この本のまとめとしても優れていますので紹介します。
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 マルチメディアは派手に見えるが、実際に社会を動かしているのは画像や音響ではなく、文字である。マルチメディアが真価を発揮するためにも、文字に裏打ちされる必要がある。
 これまでの社会にも文字の皮膜がかぶさっていたが、情報化社会はもう一段階細かいところまで文字がはいりこみ、生活の内部にまで浸潤した社会なのである。文字の出現が社会を一変させたように、飛躍的に量と速度の増した文字は社会を深いところで変えていくだろう。文字と人間の関係も変わらざるを得ないのである。
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 著者の文字と情報化社会に対する深い洞察力が現れている文章だと思います。パソコンを使う、使わないに関係なく、文字に関与する人にはご一読を薦めたい本です。



山本祐子氏詩集『ロスメンの主人』
rosumen no syujin
2001.7.15 東京都小金井市 時間と空間の会刊 2000円

 

くろはえ
黒南風が吹き渡る
関東平野をなにも持たずに歩いていた

あらはえ
荒南風に変った
雷鳴が弾み風は稔りをあげた
わたしは一目散に走った
大粒の雨が激しく地面をたたく

近くで焦げくさい匂いがした

しろはえ
白南風が吹いて嘘のように明るい空
七月の風が八月に吹いて
地球の軋みに違いない風に
わたしは命を拾った

 詩集の巻頭作品です。辞書によると「黒南風」は
梅雨期に吹く南風。伊勢、伊豆の舟人の語。≠ニあり、「荒南風」は載っていませんでした。どこかの方言かもしれませんが、そのまま荒い南風≠ニ受けとってよさそうです。また「白南風」は梅雨明けの時期に吹く南風。また陰暦6月頃に吹く南西風。≠ニありました。それらを念頭に鑑賞しました。
 やはり最後の「地球の軋みに違いない風に/わたしは命を拾った」という部分がポイントですね。なぜ「命を拾った」のか、何から「命を拾った」のかが疑問として残りますが、それは読者が勝手に考えればいいのだと思います。「近くで焦げくさい匂いがした」を関連づけてもいいのですが、ちょっと違うでしょう。象徴的なものとしてとらえていいと思います。
 詩集は3部構成で、Uではインドネシア旅行中のことが出てきます。タイトルポエムの「ロスメンの主人」はそこに含まれています。ちょっと長いので割愛しましたが、ロスメンとは安宿のことで、そこの主人が話した内容が題材になっています。戦時中に日本軍に協力して、子供の食器まで取り上げて日本軍に鉄を送ったというもので、歴史の重みを感じる作品です。



 
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