きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.20(日)

 頼まれていた原稿は昨日のうちに送信して、今日はゆっくりと本を読んで過ごしました。いただいた本の礼状が1ヵ月以上遅れていますので、早く読んで早く書いて、と思うのですが、なかなか…。礼状が遅いとお思いの皆様、ゴメンナサイ。




北岡武司氏詩集『ビワの葉裏』
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2005.9.20
東京都新宿区
思潮社刊
2200円+税
 

  <目次>
   T 幸せなのです
   いけにえ 8          ウルティマ 12
   末世 14            幸せなのです 18
   艶、一八歳 20         告白――艶、二六歳 24
   子供でなくなった日 26     もういないのに 30
   あなたはここに 34       コレスポンデンス 38
   うすい銀紙 42         いえなかったこと 46
   やさしい背中 50

   U きれいな水
   チロの歌 56          とどろき 60
   終わったの? 
T'as fini? 64  それでも 68
   ブルーウェイヴ 72       無心 76
   祈願 施無畏 78        風だよ 風 80
   恵まれぬ人 84         友が逝った 86
   嘘つき 88           ほほえみ 90
   きれいな水 92         ビワの葉裏 96
   
Puer natus est ――御子はお生まれになった… 100

   あとがき 102          装画=浅川洋



    恵まれぬ人

   ヴォランティアだと?
   学生は学問すればよい
   特攻隊も
   ヴォランティアだった
   命がけの
   ただ 君らとちがうのは
   学問したかったけど
   ヴォランティアやってた
   君らは 学問したくないのに
   大学へ入ってしまった

   何? ヴォランティアが単位になる?
   そんな学校 やめてしまえ
   恵まれぬ人に
   愛の手を だと?
   募金箱抱えて
   そこに突っ立っていてか?
   そんなことせずに 働いて金を稼げ
   稼いだ金を 献金しろ
   おそまつな君らより恵まれぬ人の方が
   よっぽど恵まれている

 「ヴォランティアが単位になる」という新聞記事を見て、えっ、何で? と思ったことがありましたけど、同じ感覚を持っている人がいるのだなと安心しました。「稼いだ金を 献金しろ」と云うのも正論でしょうね。「学問したかったけど」「特攻隊」という「ヴォランティアやってた」先人を偲ぶことは、「学問したくないのに/大学へ入ってしまった」今の若者には必要なのかもしれません。
 著者の作品の何編かはすでに拙HPでも紹介していました。この詩集の中に収められている
「きれいな水」にはハイパーリンクを張っておきましたので、合わせてご覧ください。




安英 晶氏詩集よる・あ・つめ
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2005.10.31
東京都新宿区
思潮社刊
2200円+税
 

  <目次>
   花腐し 8     片見月 16
   かえしうた 20   夜集め 24
   匂ふ 28      川座敷 32
   のかげろう 36   声問い 40
   沼 42       夏期休暇 44
   初夏の母胎 48   喪あけ/春 52
   魂祭り 56

    *

   顛末 62      声 70
   暗室 78      変転転々 84
   回転扉 90     仕掛け 98

    装画=浅川洋



    夜集め

   薄暮の空が破れ
   かぞえきれない数の星の欠片が落ちてくる
   その位置で 声をむすぶ

   みずの底から浮き上がる顔は兄だ
   水死した兄の若い八月だ

   夜の障子いちまい隔てたむこうで話し声がして
   近づくと声はぴたりとやんで
   そんなふうに 生も死も
   障子のむこうとこちらの距離でしかないのだから
   ひょいと行ったり来たりしながら
   みんな川語で話している

      夜
     爪を摘む
       空を摘む
         かぜの森を摘む

   あお栗の匂いをさせて
   みんな みずの産道を かえって行きました
   つぎつぎと黄泉の国にかえって行きました

   (夜集めして
    だから死に目にはあえなかった

   汗ばんで干満をくりかえす森 その位相で
   激しく声をむすぶ

   かぜの土間のほうで
    地下の者たちの気配がして
          なにかやわらかいものが
      くぐる

 詩集タイトルの「よる・あ・つめ」という作品はありません。紹介した「夜集め」が最も近いだろうと思います。タイトルポエムを特定することにあまり意味はないと思うのですが、やはり詩集の性格を端的に現している可能性がありますので、気にしてみました。「よる・あ・つめ」と「夜集め」の違いを考えることも、この詩集を見る上で大事なことかもしれません。
 「そんなふうに 生も死も/障子のむこうとこちらの距離でしかないのだから」というフレーズに注目しています。この感覚が詩集全体を貫いていると云っても過言ではないでしょう。「つぎつぎと黄泉の国にかえって行」くという視点がモノを見る中心になっているように思います。重いテーマですが、読んでいるとそれほど重いと感じません。底に突き抜けたものを持っているのかもしれません。おもしろい詩集です。




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