きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.21(月)

 日本ペンクラブの電子文藝館委員会があったのですが、行けませんでした。15時からの委員会に間に合わせるためには、午後休暇にしなければならず、ここのところ体調不良で休暇が多かったですからね、取り難くて断念した次第です。次回は何とか行きたいと思っています。




季刊詩誌『新怪魚』97号
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2005.10.1
和歌山県和歌山市
くりすたきじ氏方・新怪魚の会 発行
500円
 

  <目次>
     水間敦隆(2)赤とんぼ
     岡本光明(4)夏の時間
     岡本光明(6)秋の時間
     山田 博(8)探しもの
     山田 博(9)しりとり人生
    五十嵐節子(10)樹
   くりすたきじ(12)朝の日記 2005夏
     寺中ゆり(14)ランボーの詩
(うた)
    曽我部昭美(15)設 問
      AYA(16)未知数
     福島寛子(18)「風の時」
    中川たつ子(20)混沌とした地球の一点で
     上田 清(22)営為(三十六)

    表紙イラスト/くりす たきじ



    朝の日記 2005夏    くりす たきじ

   いつまでも
   かたちにならない夢を求めて
   隅田川のかもめは
   あんなに高く飛ぶのだろうか
   いくつもの夕陽が
   都会の鏡をオレンジ色に染めて
   吐息のような祈りが
   あなたのいない 夏を拒んでいる

   さようならではなくて
   忘れ物のように失くしてしまった恋
   深宇宙の辺りまで
   この空を飛べたら
   嘘つきな 街角の犬に
   追いつくことができるだろうか

   どこまでも
   落ちてゆく 夕陽はあのひと

   小さな窓の外
   地表に群れた街の灯りが傾いて
   空路は真闇の海を 亘る
   あの海へまっすぐ墜ちてゆきたいと
   願う わたしは
   やはり 流れ星の末裔なんだろう
   いつかどこかで 聴いたような気がする
   大気の 焦げる音を

   どこまでも
   落ちてゆく さようならは嘘

   いつかきっと 朝の星にたどり巻きたい
   そして今度は
   ほんとうの さようならを
   育ててみたい
   あんなに高く飛ぶのは
   もう つらいから

 作品の意図しているところとは違うかもしれませんが「隅田川」という言葉でこの夏を思い出しています。詩誌『1/2』の人たちが中心になって
隅田川ライブ≠やったのは8月20日のことでした。そこで初めてくりすさんにお会いし、ギターの弾き語りを聴きました。夜は一緒にお酒を呑んで、良い夜でした。その日のことを思い出しています。ハイパーリンクを張っておきましたのでよろしかったらご覧ください。
 紹介した作品は「さようならではなくて/忘れ物のように失くしてしまった恋」というフレーズが光っています。「わたし」を「流れ星の末裔」と規定するところもおもしろいですね。人間は皆そうなのかもしれません。




詩誌『コウホネ』18号
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2005.11.20
栃木県宇都宮市
コウホネの会・高田太郎氏 発行
500円
 

  <目次>
   作  品 ほたる          片股 喜陽…2
        むかご          星野由美子…4
        引越し          相馬 梅子…14
        呑龍の花         高田 太郎…18
   エッセイ 雨もよい         星野由美子…6
        古本あれこれ       相馬 梅子…8
        姉のことなど       小林 信子…10
        東部ニューギニア巡拝記  高田 太郎…11
   連  載 私の一冊一誌
        臼井早苗詩集『虹の幻想』 高田 太郎…16

        話の屑籠 同人住所録後記
        表紙 平松洋子



    むかご    星野由美子

   ウメモドキの幹に絡みついた山芋の蔓の
   葉の付け根のそれぞれに実をつけた零余子
   それらは 揚げたり炒ったり または
   零余子飯にして食される珍味でもある
   そのまま土に落ちた子芋たちが活着すると
   紫色の芽を逞しく伸ばそうとするので
   庭木にとっては厄介者にもなりうる
   定位置に両足を置き斜交いに支えを把む
   硬い異物をくわえたまま撮られるのを待つ
   (息をとめて) 鉛の肩掛けの重たいこと
   ネガをみると白い顎骨に並んでいるのは
   真偽入り混じるむきだしのわたしの歯列
   眩しいライトの横で寡黙な医師の声が潜もる
   あの頃は屋根の上や縁の下を覗くと
   朽ちた歯を確かめることもできたが
   この歯は何処に雰れさってゆくのだろうか

   零余子は摘みとろうともしないのに
   触れただけで ほろほろと雰れやすい
   急くように土に還ってしまうのは
   いのちを伝える宿世を受け継いでいるからか

   ひとから雰れおちるものはすべて
   かたちをなさず たちまち身を離れ
   ひかりや風のなかに紛れこんでしまうものだ

   器にみたされるときは ほんの束の間
   充ちたりないと念う刹利こそ
   すでに 雰れはじめている兆にすぎない

 「むかご」は私も好きなものですが「零余子」と書くとは知りませんでした。余り零れる≠ニは云いえて妙な言葉です。
 作品としては「歯」への展開をおもしろく拝読しました。確かに「あの頃は屋根の上や縁の下」に抜けた歯を放ったものですが、今ではそんなことはしないんでしょうね。最終連は「充ちたりないと念う刹利こそ/すでに 雰れはじめている兆にすぎない」というフレーズにドキリとしています。充足とは何かを考えさせられた詩句です。




阿部堅磐氏編集『研究紀要』31号
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2005.12.13
名古屋市千種区
愛知中学・高等学校 発行
非売品
 

  <目次>
   巻頭言
   教育・一般研究
   1)日本史授業−日露戦争の評価について(一)−……………………… 井上 静和 …… 1
   2)思春期の人間関係………………………………………………………… 片山 和男 …… 37
   3)四つの輪−むし歯の話−………………………………………………… 尾関 正美 …… 41
   4)「小論文」の授業−「書く」ことから「読む」ことへ……………… 田中 克己 …… 49
   5)愛知高等学校の共学に向けて…………………………………………… 多湖 敏之 …… 57
   6)国際理解コース〔1年目の授業実践〕………………………………… 伊佐治 浩 …… 71
        −「ニュージーランド研修」から「アジアを学ぶ」ヘ−   松岡 武美
   7)国際理解コース、この一年……………………………………………… 鎌原 亮治 …… 83
   8)土曜講座3年目の取り組み……………………………………………… 芳賀 達也 …… 85
   9)土曜講座 航空管制のしくみを学ぼう〜名古屋空港〜……………… 西岡 寿一 …… 89
   10)土曜講座・ナゴヤを歩こう会…………………………………………… 篠田  徹 …… 109
         −第3回 東区白壁・主税・撞木町界隈
   11)鑑賞と実作 王朝の歌人“伊勢”について…………………………… 阿部 堅磐 ……(一)
   12)詩歌鑑賞ノート…………………………………………………………… 阿部 堅磐 ……(九)
   研修報告
   1)
Long time no see,Utha!! ……………………………………… 石井  勲 …… 117

   編集後記 ……………………………………………………………………………………… 編 集 子



    身も果てず    阿部堅磐

   あなたと別れ
   私はどこへ
   孤独なこの魂は
   身を焦がした愛
   それも夢のように
   はかなく消えた
   今は他人のものとなったあなた
   摂関家名流の御曹子
   恨んでもせんないこと
   私は宮仕えを辞し
   父の任国大和へ帰る

   父の家に
   滞在した三ケ月
   古い寺々を詣でた私
   冬の日
   詣でた寺 龍門では
   雲の中より滝が落ちる
   私の恋心も落ち
   涙溢れとまらない
   今では都の御息所から
   再びのお召しがある
   身も果てず
   そう 死ぬことも出来ず
   彼の空にこの身が
   すい込まれることもなく
   悲しい思い出ばかりの憂世へ
   余儀なく
   戻っていこう
   死んだ気になって

 阿部堅磐氏による「鑑賞と実作 王朝の歌人“伊勢”について」の中の挿入詩です。女歌人の伊勢が宇多天皇の後宮温子のもとで宮仕えしていた際、温子の弟・藤原仲平と初恋に陥るが、仲平が他の女性と結婚したため「宮仕えを辞し/父の任国大和へ帰」った、というもの。しかし「今では都の御息所から/再びのお召しがある/身も果てず/そう 死ぬことも出来ず」にいる。宮廷の華やかな舞台の裏で繰り広げられる愛憎を見事にうたった作品と云えましょう。千年の時を越えても変わらない男女の仲を見る思いがする作品です。




田中俊輔氏詩集『イチゴの花』
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2005.11.20
岡山県新見市
緑詩社刊
2000円
 

  <目次>
   蝶とスコープ 8   とりひき 10
   稜線 12       残像 14
   森の時間 16     夏のおわり 18
   スタジアム 20    蜘蛛男 22
   旋回 24       カズラを切る 26
   稲穂の風 28     スワローテイル 30
   弓ヶ浜 32      自由への扉 34
   バベル 36      忘れな草 38
   穏やかな一日 40   モルダウ 42
   白い庭 44      いつからだろう 46
   エルニーニョ 48   ナンセンス 50
   ルート] 52     火事 54
   幻の女 56      非時間の季節 58
   永遠の夏 60     博愛 62
   心象の丘 64     田園 66
   よし子ちゃん 68   雫石 70
   架空の空 72     真夏の畑 74
   旧い家 76      イチゴの花 78
   薄氷り 80      雨の日には 82

   あとがき 84



    イチゴの花

   親株からランナーが伸びる
   子株を移植した
   五つの白い花びらが咲いた
   大きな庭の小さなプランターの中で

   五人の兄弟姉妹の真ん中がぼくだった
   大きな庭でカン蹴りをして
   子供の頃に遊んだ
   ぼくだけが庭に残り
   皆は故郷を離れた

   白いイチゴの花に
   ぼくの視界は幼少に戻る
   けれども歳月は確かに
   ぼく一人を残して去っていった

   ぼくはランナーを伸ばせない
   純白なイチゴの花を
   いつまで見れるだろうか
   孤独な時間の中で
   ぼくは ふと
   赤いイチゴの実になりたいと思う

   実りがなければ
   ランナーを伸ばせない
   ぼくはいつまでも
   ぽつんと立って
   記憶の庭の
   留守番をするのだろうか

 著者の第一詩集です。ご出版おめでとうございます。紹介した作品はタイトルポエムですが、少し解説が必要でしょう。著者は現在30代後半。東京で3年ほど銀行員生活をした後、故郷にUターンしたとあとがきにありました。「ぼくだけが庭に残り」「ぼく一人を残して去っていった」などのフレーズはUターン後のことを言っていると思います。最終連の「ぼくはいつまでも/ぽつんと立って/記憶の庭の/留守番をするのだろうか」というフレーズもその関連で読む必要があるでしょう。
 「ぼくは ふと/赤いイチゴの実になりたいと思う//実りがなければ/ランナーを伸ばせない」は、読み方によっては著者の決意と採ることもできるでしょう。いや、是非そう採りたいですね。陰ながら応援したくなる詩集です。




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