きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.6.11 京都・泉湧寺にて



2006.7.7(金) その2

その1



詩誌『ガーネット』44号
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2004.11.1 神戸市北区
高階杞一氏方・空とぶキリン社発行 500円

<目次>
詩 阿瀧 康 卵・近道 4
  大橋政人 空のホース/夏の太陽/極楽浄土へ泳いでいこう/おれ、こんなんじゃ 8
  嵯峨恵子 その日/時代の感覚/会社の倫理 16
  高階杞一 昼餉/夜とジャコと足 28
  神尾和寿 地上のメニュー/門下生/時間です/さかなのようにばか 32
1編の詩から(15)西條嫩子 嵯峨恵子 22
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.44 浜江順子/川江一二三/川口晴美/伊武トーマ 24
エッセイ 暮鳥雑感 大橋政人 26
詩集から NO.42 高階杞一 37
 ●詩片
受贈図書一覧
ガーネット・タイム 46
 毎日が記念日 嵯峨恵子
 「サー」について 神尾和寿
 JUDO考 大橋政人
 夏から秋へ 阿瀧 康
 後ろから前から 高階杞一
あとがき 52
表紙絵 中井雄介



 卵・近道/阿瀧 康

  1 卵

休日の朝、外出寸前にパソコンが壊れた
午前中いっぱいかかって復旧させたが、その次には車のエンジンの調子がおかしくなっていた
修理の手配などやっているうち
結局、午後も遅くなってしまった。

仕方がないので部屋の整理をした
本棚のうしろに鉛筆が何本も落ちていた
そのどれにも輪ゴムが何重にも巻きつけてあった
外そうと力を入れると、ゴムはぼろぼろ崩れて落ちた。

夜、ある女性と電話で仕事の話をした
だんだんその女性が興奮してくるのが分った
その理由が分らず、だからどうということもなかったが
不思議なこともあると思った。

夜中、手の甲が痔くなって目が覚めた
蚊に喰われていた
(血が卵に)ベッドに三十分坐っていると痒みは消えた
その間、蚊の姿はまったく見えなかった。

翌朝、駅に向う途中
繋がれている犬を見た 
み つ
そいつがじっとこちらを凝視め続けていた
小さな地震が起こってそのとき空気が揺れてくれなかったら、視線を逸らすことはできなかった。

 「卵・近道」という総題のもとに「1 卵」「2 近道」と2編の詩が収められています。ここでは「1 卵」を紹介してみました。日常生活の中のちょっとした非日常がおもしろく描けていると思います。タイトルとも関連する「(血が卵に)」という詩語が難しいのですが、血が卵のようになった、血が卵を被った、血に卵が産み付けられたとでも解釈すれば良いのかもしれません。
 特に最終連が佳いですね。「小さな地震が起こ」らなければ、他者からの力が加わらなければ「視線を逸らすこと」さえできない現代人の性癖を描いているように思います。



詩誌『ガーネット』45号
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2005.3.1 神戸市北区
高階杞一氏方・空とぶキリン社発行 500円

<目次>
詩 高階杞一 電球/絆創膏 4
  神尾和寿 花嫁/デート/いたぶられる/大空 8
  大橋政人 ヒコバエもどき/福寿草 12
  阿瀧 康 空気・鶸 30
  嵯峨恵子 おばあちゃんに聞いてごらん/雪、記憶の、むき出しの/余白の時 36
1編の詩から(16)白石かずこ 嵯峨恵子 16
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.45 平田俊子/大澤 都/今井義行/時里二郎 18
詩集から NO.43 高階杞一 20
 ●詩片
受贈図書一覧
詩を読む(11)尾崎与理子詩集――地について―― 神尾和寿 46
同人著書リスト 53
ガーネット・タイム 54
 落ちないリンゴ 高階杞一
 読者へのアンケートのお願い(半分冗談) 大橋政人
 非生産的 神尾和寿
 秋から冬へ 阿瀧 康
 ストレスの解消 嵯峨恵子
あとがき 60
表紙絵 中井雄介



 いたぶられる/神尾和寿

政変によって
圧倒的に優位に立ったアイツから
いたぶられる
炎天下の
きをつけい から始まって
まわれみぎ へと続き
ここほれワンワン へと展開する
昔はよい時代だったのになあ
あのときに
もっとアイツをいたぶっていれば思い残すこともなかったのになあ と
こうして
とうの昔をはるかな対象として
ヘリコプターのように旋回する 観念にまでは
さすがの
アイツでも 手が出ない
人生の
不幸のなかにもまた違った種類の幸福があるのだ ということに
気がつくと その
気がとおくなってくる

 「アイツ」とは誰かが問題ですが「政変によって/圧倒的に優位に立った」とありますから、ここは素直にコイズミさんと捉えて良いでしょう。「あのときに/もっとアイツをいたぶっていれば思い残すこともなかったのになあ」という感慨は同感です。今は「ヘリコプターのように旋回する 観念にまでは/さすがの/アイツでも 手が出」せまいと思うことにしていますけど、教育基本法の改悪騒ぎを見ていると「観念にまで」手を出そうとしていて「気がとおくなって」きそうです。どこかで「もっとアイツをいたぶって」やりたいものです。



詩誌『ガーネット』46号
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2005.7.15 神戸市北区
高階杞一氏方・空とぶキリン社発行 500円

<目次>
詩 神尾和寿 福助/ロックン・ロールの定義/かまぼこ 4
  阿瀧 康 映画館・ラジオ・駅・橋 10
  高階杞一 受話器 14
  嵯峨恵子 コチョウランの運命/手の仕事/緑の思い 28
  大橋政人 他人の夢の中で/暫定的 36
1編の詩から(17)石垣りん 嵯峨恵子 16
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.46 山村由紀/遠藤志野/山田兼士/笹野裕子 18
詩集から NO.44 高階杞一 20
 ●詩片
受贈図書一覧
ガーネット・タイム 40
 棺桶に入る 神尾和寿
 冬から春へ 阿瀧 康
 不読の薦め 嵯峨恵子
 山本純子さんのこと 大橋政人
 父の傘 高階杞一
INFORMATION 46
同人著書リスト 47
あとがき 48
表紙絵 中井雄介



 コチョウランの運命/嵯峨恵子

会社にはよくコチョウランの鉢植えが届く
昇進祝い
合併祝い
どれも花茎がふたつからみっつ
そこに規則正しく
白やピンク、紫の花が並んで揺れている
リボンやきれいな紙で包まれた鉢は
玄関や応接間、役員室などに華やかに飾られる
それは花が咲いている数ケ月だけのこと
丈夫な花が順番に枯れ
長い花茎だけが緑の葉の間に残る頃になれば
場所を取るだけのやっかい物
窓際の隅に追いやられ
応接間のキャビネットの上で忘れられ
陽を浴びて枯れていくか
水だけやってりゃいいと根腐りするか
コチョウランは熱帯の植物だから
雨季と乾季があって水やりも季節による
直射日光にも寒さにも弱い
花が枯れたら茎を切り
化粧鉢から出してひとつずつ鉢植えしてこそ花も咲く
育てるより即戦力
社員より派遣雇った方が安いって時代
お客さんに茶出しした茶碗だって片付けないんだから
ランの世話なんてここじゃ無理ってものです
そういえば
定年で辞めたYさんは
会社でもよくコチョウランの世話していた
家では冬はお風呂の蓋の上に鉢を並べておくのだそう
酔っ払って帰ってきてもそれだけは忘れない
そのくらい私たちの面倒もみてよって奥さんに言われたらしいが
葉のコチョウランは鉢ごとある日会社から消える
存在がすっかり忘れた頃
いずこからか花のコチョウランはやってくる
ここに連れてこられるコチョウランの運命って

 「ランの世話なんてここじゃ無理」という会社は「育てるより即戦力/社員より派遣」なのだと捉えるところが現代だなと思います。こういう会社が多くなって、結果は米国のように貧富の格差が広がることが目に見えています。それがグローバルスタンダードだと言って憚らないわが国の政府は、政治とは何かが根本から判っていないと言わざるを得ませんね。「そのくらい私たちの面倒もみてよ」と言いたくなるのは「奥さん」に限らず、日本国民の大多数ではないかと思います。そんなことを考えさせられた作品です。




   
その1

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