きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.6.30 東京・新宿 |
2006.8.20(日)
全国の多くの皆さんが同じ感激を味わっていると思いますが、駒大苫小牧と早稲田実業線にはシビレました。今日は新しい本箱を探しに行くことになっていて、15時には終わるだろうからそれからでいいやと思っていました。ところが、ご承知のように規定15回が終わったのが17時近く。本箱どころではなくなっていまいました(^^;
それにしても良い試合でした。それほど多く高校野球を見ているわけではありませんけど、おそらく球史に残る名勝負だろうと思います。再試合となって球児の皆さんは大変でしょうが、明日も素晴らしい試合を見たいものです。
で、結局17時過ぎに家具屋に行きました。で、結局良いものは見当たらず。小さな本箱は自分で造るにしても大きいものはそうはいきません。後日、他の家具屋に行くかネットで探してみようと思います。せっかく無職になって時間が出来たのですから、納得できる書斎に改造しようと目論んでいます。さて、どうなることやら…。
○佐藤真里子氏詩集 『ラピスラズリの水差し』 |
2006.8.20 東京都大田区 ダニエル社刊 2000+税 |
<目次>
空き家の夕食会 10 いのち輝く果て 14
秋のチェロ 18 ショーウインドーの森で 22
弾力の翼 26 花あかり 30
薔薇の窓 34 ラベンダー摘み 38
青桐の手のひら 42 終わらない神経衰弱ゲーム 46
空き家の賑わい 50 秋が消える日に 54
ラピスラズリの水差し 58
時計仕掛けの部屋 62 夢のつづき 66
誕生日の贈り物 70 スースースー 74
水中歩行 78 リバーシブル 82
三つの空っぽのエピソード 86
あとがき 90
ラピスラズリの水差し
遠くまで南下してきたわたしを待っていた
閉館時間が迫っていた美術館で
ひっそりとガラスケースのなかに沈んでいた
四百年以上も前のフィレンツェからやって来た
ラピスラズリの水差し
その深い瑠璃色
点在する小さな金色の粒々が
時をこえてめぐる星空を想わせた
両手で包める大きさの水差しの
曲がるストローのような注ぎ口が
わずかに傾いて流れ落ちる水
音もなく
色もなく
ガラスケースを満たし
佇むわたしを満たし
おいでと
微かに呼ぶ声がして
ラピスラズリの深い瑠璃色に溶けていく
限りある身体が囚われていた時空が外れ
やっと会えたね
つなぐ手の温もりが
ともに生きられなかった物語を揺らし
わたしたちは誕生と消滅を繰り返す星のかけら
もう戻らないだろう
かなたに飛んでいったわたしのひとかけらを残し
急ぎ足の靴音を残し
美術館の外へと
タイトルポエムを紹介してみました。「ともに生きられなかった物語」という詩語が効果的だと思います。「わたしたちは誕生と消滅を繰り返す星のかけら」とはもちろん「点在する小さな金色の粒々が/時をこえてめぐる星空を想わせた」に掛かっているわけで、ここも美しいフレーズと云えましょう。
拙HPではすでに「空き家の賑わい」を紹介していました。これも佳い作品です。ハイパーリンクを張っておきましたので合わせて鑑賞していただけばと思います。他に「誕生日の贈り物」も佳品です。粒よりの作品が揃った詩集です。
○詩とエッセイ『千年樹』27号 |
2006.8.22 長崎県諌早市 岡耕秋氏発行 500円 |
<目次>
詩
口笛/さき登紀子 2
番外コード――ダ・ヴインチ/植村勝明 4
銭なれや/和田文雄 8
「北総台地U」の為の習作/早藤 猛 10
哀しみ ほか一篇/江アミツヱ 12
生活を探しに ほか一篇/鶴若寿夫 16
ひとつの夏 ほか一篇/岡 耕秋 20
エッセイほか
城原川(五)流域治水/佐藤悦子 24
ポーチュラカ/植村勝明 33
ウエストミンスターの鐘(一〇)/日高誠一 36
古き佳き日々(二四)/三谷晋一 44
ばらの名前(二)平戸ミステリー・ローズ/岡 耕秋 48
菊池川流域の民話(二一)/下田良吉 60
樹蔭雑考/岡 耕秋 69
編集後記ほか/岡 耕秋 72
表紙デザイン 土田恵子
夏の日に/江アミツヱ
掌のかたちした大きな緑の葉が
重なり合いその中に
黄白色の小花がふくらみはじめる街路樹
その梧桐(あおぎり)を目にすると
曖昧な自らのいきざまが無性に腹立たしい
もう遠い昔
原爆の閃光をあびた梧桐は
黒焦げの姿のまま原子野に黙し立っていた
それから……
自然の営みのなかにすべてをまかせて耐えていた
人々の予想を遥かに越えて
梧桐は速く芽をふき葉を繁らせ
剪定されたあとの太い骨々からいのちを蘇生させた
そして私
自らが自らに課した目標を
宙に飛ばして失ってしまった
その焦燥感に駆られて見詰める
今日の夾竹桃
合歓木
百日紅
それらの淡い桃色の花花は
眼をそらすことなく
みな自然に視線をかえしてくれる
さあ
踏み出そう
出遅れの一歩
ためらわず
再生の第一歩
具体的に「自らが自らに課した目標」とは何であったのか判りませんが、「人々の予想を遥かに越えて/梧桐は速く芽をふき葉を繁らせ/剪定されたあとの太い骨々からいのちを蘇生させた」「梧桐」に比しているところは理解できます。その他の「夾竹桃/合歓木/百日紅」の「自然に視線をかえしてくれる」「淡い桃色の花花」に励まされて「出遅れの一歩/ためらわず/再生の第一歩」を「さあ/踏み出そう」と決意する最終連が佳いですね。「原爆の閃光」を目撃した人の強さを感じる作品です。
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