きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.7.7 クリスタルボウル(「アリキアの街」にて)



2006.9.7(木)

 久しぶりに詩誌の編集をしました。ある女性詩人が出している個人詩誌で、私も毎回書かせてもらっています。今までは校正のお手伝いなどをさせてもらっていたのですが、ある時、彼女自身で編集せずに印刷所に生原稿を持ち込んでいることが判りました。もちろんそれが悪いわけではありません。多くの詩人が編集などやったこともないというのが実情でしょう。詩人として文学に携わっているのであって、編集者をめざしているわけではないと思っていることでしょう。それもOK。
 しかし私が関与している個人詩誌だということになると話は別です。プロではありませんがそれなりに編集の経験があります。中学・高校の頃は活版印刷所でアルバイトをしていましたし、職業に就いてからも自宅に中古の写真植字機を持ち込んで、取説を読みながら版下を作るなんてこともやっていました。印刷所とはどういうものか素人なりに多少は判っているつもりでいます。

 そんな村山が関与していながら生原稿を出すだけでいいのか、とお叱りを受けたこともあります。僭越ながらここはひとつ彼女に編集とは何かをお教えするか!と、その気になったわけです。ノウハウもそうですが編集の楽しさ、醍醐味も味わってもらえればと欲をかいてみました。久しぶりに『編集入門』『編集ハンドブック』を引っ張り出して、ちょっと勉強し直しましたけどね(^^;
 新宿の「ルノアール」で3時間ほど。もちろんそんな短時間では私が知っていることを全てお教えすることはできません。ほんのさわりだけです。校正記号の意味、原稿への赤ペン書き込み方法程度で時間切れとなってしまいました。初めてのことですから彼女には戸惑いもあったようですが、編集のおもしろさが少しは判っていただけたのではないかと感じました。その詩誌の出版は11月になると思います。ここでも紹介しますけど機会のある方はぜひご覧になってみてください。

 で、そのあとは呑み会。都内、近郊で仕事が終わった詩人たちが続々と集まって東口の「魚民」へ。直前になって電話をした詩人も飛んで来てくれて、計8人で呑みました。編集だけでなくこれも目的だったんですがね(^^;
 「魚民」って、たぶん初めてだと思うのですが良い店でした。2時間の呑み放題で3000円ちょっと。しかも個室。料理もお酒もイヤというほど出てきました。その値段ですからもちろん日本酒にマトモなものはありませんでしたけど、ナントカという赤ワイン(ワインの名前が覚えられない)はおいしかったです。欲を言えば2時間じゃなく2時間半、3時間でその値段だったらなあ。でも19時過ぎには行列が出来るほどでしたから無理だろうと思います。とにかくお薦めできますね。
 新宿の楽しい夜をありがとうございました! 平日にこんなにのんびり出来て、無職っていいなと思いました(^^;



詩誌『1/2』22号
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2006.9.10 東京都中央区
近野十志夫氏発行 400円

<目次>
青いバケツ/芝 憲子 2
不確実な羨望/宮本勝夫 4
えんやこら老後対策/館林明子 6
マウスピース/黒 鉄太郎 8
法人・汚れる/野川ありき 10
花/枕木一平 12
ネギ 3/辛 鍾生 13
窓・帰る/エレーナ・ヴェリーカヤ 藻利佳彦訳 16
足尾町にて/薄葉久子 22
猫の侵略・くらやみの中で/都月次郎 26
海にそって/宮川 守 28
唐がらしみそ/西條スミエ 30
若いクルミの木の下で・草の庵の別れ/呉屋比呂志 32
米一文字・右巻き左巻き2 ネジバナ/近野十志夫 35
或る決別/佐伯けんいち 38
合宿報告 宮川守…20
「弥三郎節」…41
平和記念公園デザインの起源(補) 近野十志夫…44
あとがき…48



 えんやこら老後対策/館林明子

ヨーグルトに豆乳 チョコレートにお茶
忘れてはいけない納豆
骨のためには牛乳にしらす干し ひじき
筋肉には豆腐 青魚 豚肉少々
お通じのためにコンニャクとごぼう
お肌のためにはコラーゲン
ゴーヤにトマト ブロッコリー
間接にはビタミンEにリノール酸
沖縄のウコンがいいんですって
卵油に肝油 プロポリスにアガリクス
あっ! ゴマはどうした! ゴマは何処?
心臓には大麦 バナナ
おっと忘れたコエンザイムQ10
(これは何にいいんだっけ?)
髪のためにはわかめと昆布
それでもダメなら育毛柑気楼
毎日忙しい健康づくりに
食べるもの 食べる 食べる
太りすぎには食事の前にトコロテンをお腹いっぱい
病気で長生きなんて真っ平ごめん
尊厳死の会に入会を決め
けれどその前に お肌と関節 高血圧に高脂血症
糖尿病に骨租しょう症 認知症
必須脂肪酸ARA=アラキバンサン DHA=ドコサヘキサエ
 ン酸 EPA=エイコサペンタサン酸
血圧下げるにはバリン・プロリン・プロリンにイソロイシン・
 プロリン・プロリン
ばあさん ぷろりん ぷろりん どこさいく えいこらさ
それでもだめならゴマペプ茶にローヤルゼリーだ
なにがなんでもなる時にはなるガン対策はアリコのまるごとは
 いれますに入る
8億5千万人が飢餓線上にいる地球の片隅で
この世の春は
食べて 食べてと 食べつくす
ころり逝きたい老後対策はありやなしやと

 私も60近くになって、この作品を拝見して「老後対策」を考えてしまいました。若いときには感じませんでしたが、今は実感です。それにしてもこんなにたくさんあるのか! そして「8億5千万人が飢餓線上にいる地球の片隅で」「食べて 食べてと 食べつくす」我々っていったい何だろうと思ってしまいました。もちろん長生きしたいと思うことは悪いことではありませんけど「なにがなんでもなる時にはなる」もんですからね。
 最終行が良く効いていると思います。「ころり逝きたい」ものですが、やっぱり「病気で長生き」の可能性が高いのかなぁ。「ありやなしやと」笑い飛ばしたいものです。



土井のりか氏詩集
『草の身のオブジェ』
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2006.6.22 東京都千代田区
美研インターナショナル刊 1300円+税

<目次>
T
水槽 4       春の雪は… 6
冬明けの明星 8   眺め 10
丘の草 12      ベランダで 14
U
星空 18       光源 20
シャッターチャンス22 古い海図 24
小さな落款 26    燐寸 28
V
ホルスタイン 32   時に呼ばれて 34
壁画 36       「時」のめぐみ 38
月光 40       落ち葉の道 42
夕映えのように 44
 あとがき 46



 丘の草

丘にしげる萱
(かや)の葉は
地下水を吸いあげ
放物線をえがいでは下垂
(したた)れる
みどりの噴水
こぼれ落ちない水のオブジェ

風が寄せると
のっぽの吹き上げの葉は
水の素性をあらわにし
風に泳いで
  風に波打つ
噴水はしだいにまとまって
丘を浸す萱の川となる
思えば わたしもまた草の身
分け入れば 波にまぎれる

小鳥をかばい
赤とんぼをいこわせ
草雲雀
(ひばり)も住まわせたあと
草の川はきまって晩秋には涸れていく

白い穂波をゆらしながら
名残惜しそうに繰り返すのは
春までのお別れ

みんなでの さようなら
みんなへの さようなら

 タイトルポエムの「
草の身のオブジェ」という作品はありません。紹介した「丘の草」の内容から採っていると思います。粋な詩集タイトルの付け方ですね。作品も「みどりの噴水」としての「萱の葉」に思いを寄せて、同化する、この詩人の詩作態度が如実に現れた佳品と云えましょう。最終連の「で」と「へ」の遣い方も著者の視点をよく表していると思います。
 詩集中の
「時に呼ばれて」は拙HPですでに紹介していました。若干改作していますが父上を描いた、この詩集の中では異質な作品で、著者の作品の広がりを感じます。ハイパーリンクを張っておきましたので合わせて土井のりか詩の世界をご覧いただければと思います。



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