きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.9.16 群馬県榛東村「現代詩資料館・榛名まほろば」にて



2006.10.30(月)

 横浜市都筑区にあるスゥエーデン家具「IKEA港北店」という所に行って来ました。東名高速大井松田ICから横浜青葉IC経由で1時間弱で、意外と近かったです。以前は横浜町田ICから八王子に行ったりしていましたけど、それに比べると速いなと感じました。
 ここのところ本箱を作ったり探したりしていました。ネットで買ったりして当面の分は確保できましたけど、近い将来書庫を設置する予定なので、その下見というつもりです。行って驚いたのは、ともかく安い! 桁が違うのではないかと疑ったほどです。たしかに、ずば抜けて良質というわけではありませんが実用上の問題はなさそうです。書庫の本箱の予算を大幅に減らせるかなとほくそ笑んでいます。量もすごい。圧倒されましたね。
 照明や雑貨も見てきました。こちらはそれほど安いわけではありません。量販店と同じくらいの値段です。家具に限って買う、というスタンスにしようと思っています。家具が安いのは基本的に客の持ち帰り、客が組み立てというところにあるようです。店舗の広さの割には店員が少なく、先日利用した大塚家具の店員がベッタリという方式とは逆です。ケースバイケースで両社を使い分けていくのが良いかな。それにしても、書棚の前に行くとワクワクするのはどうしてだろう(^^;



野仲美弥子氏詩集『時間(ときのはざま)
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2006.11.20 東京都東村山市 書肆青樹社 2400円+税

<目次>
 *1
草むしり 10                時間 14
歯について 18               川べりのアーチの下を 18
良い季節 26                古くなったので 30
五月 34                  宴のあと 38
夏の <耳鼻咽喉科> 42            練り 46
 *2
午後の牛 または手 52            あの家 56
柿の実のある風景 60            地下 64
真実 68                  諸葛菜 72
笑う歯科医 76               花火 80
不思議な青年 84              十二月 88
 *3
命令するじゃが芋 94            猫の死に方 98
家 98                   少年に 106
守護草 110
.                部品 114
サーロイン・ステーキ 118          わたしの手 122
夜 126
.                  女性専用車 130
 あとがき 134

 
装幀 丸地 守



 古くなったので

古くなったので 姑になってしまった
家に誘われたのか 嫁が来たので

ゴキブリハウスかもしれないというのに
入ったら出られない ネバネバの

またたく間に子供が二人できて
家にしっかりくっついていることの
涙ぐましさ 愛らしさ 哀らしさ

子供たちは秒単位で大きくなる
(さすが ゴキブリハウス!)

全員で移動するときは
四角い大きな 黒い護送車のような車だ

護送車が着くと わたしたちは門まで出て行く
中からゾロゾロ 出てくるわ出てくるわ
(と いうほどでもないか)

もう一匹増やそうかどうか検討中なんです
嫁がこっそり言った

息子はしかつめらしく指揮をしていて
嫁はしっかり自己を主張していて

そんな気配を背に受けながら
一番のチビを抱き上げようとして泣かれた

チビたちはジジゴキブリが好きなのだ
彼は魔法を使うから
いつの間にか 二人とも膝の上に抱え込んでいる

カサコソと外で足音がして 窓が開いた
カサコソは隣に住む 今年卒寿の姑だった

古くなりすぎて・・・・・とは言わなかったが
来たの? と言って
いつまでいるの?と言って

またカサコソと帰って行く後姿
大ババゴキブリは随分ちぢんだ

 タイトルがおもしろい詩集ですが「時間」という作品に「ときのはざま」のルビは付けられていません。あとがきで10年ぶりの詩集だとあり、「この十年間、わたしの時間(ときのはざま)≠ナ紡いだこれらの作品は」とあります。そういう意味だそうです。
 紹介した作品は第1連の「古くなったので 姑」、「家に誘われたのか 嫁」から惹かれてしまいました。家族を「ゴキブリ」に、自家用車を「四角い大きな 黒い護送車のよう」とするところに野仲美弥子詩の面目躍如を感じます。こうやって嗤い飛ばして過ごせれば、どんなにか気分もスッキリすることでしょう。見習いたいものです。
 本詩集中の
「部品」という作品は、拙HPですでに紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて野仲詩をお楽しみください。



詩誌『海嶺』27号
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2006.10.30 さいたま市南区
杜みち子氏代表・海嶺の会発行 非売品

<目次>
扉詩 杜みち子/花束 1

桜井さざえ/牛鬼・磯女 4         杜みち子/野原・夏の日記・九月 10
河村靖子/ハローワーク・シャワー 16    植村秋江/蝉坂・お遍路さん 20
同人の詩集 杜みち子/河村靖子詩集『すこやかの光景』 24
散歩道〈我が町〉
植村秋江/時の流れの中で 26        桜井さざえ/二つの海 28
河村靖子/そこに人がいて 30        杜みち子/魂の休み処 31
雑記帳 33                 編集後記 34
表紙絵・カット 杜みち子



 花束/杜みち子

タクサンノ人ガ
言葉ニ換エテ
花束ヲ贈リアウノデ
花ハ途方ニクレテイル

花ガ美シク咲ケルノハ
言葉ヲモタナイユエナノデス

 扉詩を紹介しましたが、佳い詩ですね。「花ハ途方ニクレテイル」も、最後の「花ガ美シク咲ケルノハ/言葉ヲモタナイユエナノデス」というフレーズも感服しました。人間の身勝手を敵視して言いつのるのではなく、静かに耐えている花が見えるようです。カタカナも奏功していると云えるでしょう。扉詩としての長さも適切です。こんな詩を書いてみたいものです。



詩誌Void11号
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2006.10.30 東京都八王子市
松方俊氏他発行 500円

<目次>
『詩』
空蝉橋U…浦田フミ子 2          息子の絵…小島照男 4
咲きはい…原田道子 10           二人三脚は足の引っぱりあい…中田昭太郎 12
秋草…森田タカ子 18            稲荷坂 他二篇…松方 俊 22
鎮魂…中田昭太郎 28
『小論』
寄贈詩誌から…中田昭太郎 31
後記…32



 稲荷坂/松方 俊

その坂は何時の頃からか多分ずっと昔から
「稲荷坂」と呼ばれていたのだろう
国道の長い橋を渡った先 旧日光街道の
「七曲がり」と呼ばれる峠への道の入口に在った

坂の中途 間道と交差する所
東側には小さな交番が在り巡査がいつも一人立っているのが見えた
西側には道祖神の脇
火の見櫓が建っていた

私はその火の見櫓の半鐘が鳴ったのを一度だけ聞いたことがある
近火を知らせる擂半だった
紅く染まった空の闇に荒い音をたてて火の粉が舞い
けたたましく敲かれる甲高い半鐘の音が人々を火事場に奔らせた

(結婚するの)と病を養う私に告げにきた女がいた
帰るという女を火の見櫓の停留所まで送っていった
バスが来ると女は一瞬強
(きつ)い目をすると(さよなら)といって乗り
見送る私に窓からの女の顔が見えた

バスは
折から美しく山嶺を染める夕映えの斜光につつまれながら
女を乗せ
緩い勾配を早いような遅いような速度で下っていった

その後相変わらず坂は「稲荷坂」と呼ばれているが
火の見櫓は取り払われ
停留所も無くなった
私も女と二度と逢うことはなかった

今日も大きな橙色の屋根を見せて
バスが坂を下りてくるのが遠くから見える
停留所で平凡に開くドアーから私はバスに乗る
見知らぬ人同士不機嫌な偶然に隣あって

 「稲荷坂」をめぐる過去と現在が鮮やかに描かれている作品だと思います。「紅く染まった空の闇に荒い音をたてて」「舞」う「火の粉」、「美しく山嶺を染める夕映えの斜光」、「大きな橙色の屋根」などの色彩が「私」の心境を見事に具現化していると云えるでしょう。「女」の「強い目」、「早いような遅いような速度」も両者の心理描写を的確に表現しています。最終連の「見知らぬ人同士不機嫌な偶然に隣あって」というフレーズも佳いと思います。地名には不思議な魅力がありますが、それを結果として上手く遣った作品だと思いました。



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