きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.11.04 仙台市内 |
2006.12.7(木)
拙HPのアクセス数が本日で80,000件を超えました。開設以来7年と11ヵ月ですから、年平均10,000件というところでしょうか。一日平均27〜28件ですが、開設当初は日に10件か20件、最近では70〜80件と増えています。だからどうだ、という話はありましょうけど、ここは素直にお礼申し上げておきます。やっぱり、誰も見てくれないより見てもらえるHPの方が嬉しいですからね。ありがとうございます!
と、自分のHPのことばかりを喜んでいるわけにはいかないのです…。拙HPにもリンクしている日本詩人クラブのHPは、実は私が作っています。拙HPに遅れること半年で開設しましたが、現在のアクセス数は18,000件ほど。一応公式HPですから、記事は客観的にしか書いていません。それが面白くないのかもしれませんね。でも、毎月のイベント報告は写真入りで、そこそこ楽しめると思っているのですが…。拙HPは開設以来のスタンス・スタイルを今後も崩すつもりはありませんけど、日本詩人クラブHPはもう少し考える必要があるなと思っています。拙HP同様、日本詩人クラブHPもどうぞよろしくお願いいたします。
○宮崎亨氏詩集『空よりも高い空の鳥』 |
2006.12.10 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
T
月 8 雲 12
河 16 影 20
雪 24 玉 28
秋 32 風 36
牛 40 馬 44
猫 48
U
十姉妹(じゅうしまつ) 52 相思鳥(そうしちょう) 56
胡錦鳥(こきんちょう) 60 薄雪鳩(うすゆきばと) 64
日の丸鳥(ちょう) 68 小紋鳥(こもんちょう) 72
朱嘴錦静鳥(しゅばしきんせいちょう) 76 金糸雀(カナリヤ) 80
鳳凰雀(ほうおうじゃく) 84 錦華鳥(きんかちょう) 88
青輝鳥(サファイア) 92 紅雀(ベにすずめ) 96
V
生首 100. サーカス 104
霧隠才蔵 108. 記憶 112
耳鳴り116
あとがき 120
ちょう
日の丸鳥
パワフルな日の丸鳥の子は
五つの卵から一羽しか貯らなかったが
一羽でさえ仮母(かぼ)の十姉妹(じゅうしまつ)の手に余り
養育の仕上げは人の手に移された
金網に爪を挟んだままばたついて骨折
マッチ棒の添え木に絆創膏のギプス
カルテには「日吉丸」と書いた
翡翠の上着にルビーの頭巾
目がさめる大人の羽根に代わったのは
ギプスがとれる頃
眼鏡レンズの横で逆上がり
頬を突いて噛みかけのメシ粒をねだり
寝顔のヘリポートに着陸
雑草を抜くように鼻毛を引張るのは
起きて遊ぼうの誘い
鳥の子の夜更かしはいけない
携帯寝室の竹籠を持ちだしてくると
精いっぱいの抵抗を見せはするが
最後は裏返しの従順
一緒に育った小紋鳥はかりそめの妹鳥
家族で日曜ドライブに行った
鳥の兄妹は走るクルマのなかで追いかけっこ
クルマごと無重力
日の丸鳥のふるさとの
ニューカレドニアの海岸に漂着したとて
微塵の驚きもなかっただろう
なんでもないある日
上空から泡立つ洗濯機を発見した日吉丸は
ゼロ戦のように急降下
洗剤にあぶらをとられ
泡の海に浮いていた
あとがきによると著者は「十年あまり、同じ通りの小鳥店の客が、店から奨められて見にくるほどの多種の小鳥を飼った」そうです。Uはそれら小鳥たちの作品で、珍しい詩集と云えましょう。紹介したのはそのうちの「日の丸鳥」という作品です。どんな小鳥なのかネットで調べてみると、学名を
Erythrura psittacea と云うようで原産地はニューカレドニア。高級フィンチの代表的な種。メスはオスに似るが、赤色の部分が少なく、全身の色も淡い。禽舎などでの繁殖は可能のようである。抱卵しないため、十姉妹などの仮母に預ける≠ニありました。添えられた写真は確かに「翡翠の上着にルビーの頭巾」の、非常に目立つ小鳥です。
作品からは愛嬌あふれる姿が伝わってきますが、結局「ゼロ戦のように急降下」して死んでしまったのでしょうね。まさに「日の丸」にふさわしい特攻精神≠ナ、それがこの作品の眼目と思いました。
なお、本詩集中の「牛」は拙HPですでに紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので合わせてお楽しみください。こちらも面白い作品です。
○詩誌『ONL』88号 |
2006.11.30 高知県四万十市 山本衞氏発行 350円 |
<目次>
現代詩作品
宮崎真理子/里の景色 1 徳廣早苗/またおあいしましょう 2
名本英樹/願い 4 大森ちさと/夕陽 5
山本 衞/重さ・他 6 北代任子/突然の悲しみ 10
土居廣之/現実と妄想 11 柳原省三/滅び行くもの 12
河内良澄/秋の日に 14 水口里子/両手に 16
福本明美/満月 17 西森 茂/寂光の群とともに 18
宮崎真理子/食 20 丸山全友/不器用 21
浜田 啓/口紅 22 横山厚美/旅 23
土志田英介/旅日記 24 岩合 秋/水色の星 27
大山喬二/橡の木の森へ・他 30
追悼 三沢浩二先生のこと/柳原省三 35
俳句作品 瀬戸谷はるか/草の架 36 文月奈津/初鴨 37
臨想作品
芝野晴男/おさくれ 38 秋山田鶴子/大座礼山のブナ 39
小松二三子/潮の香に誘われて 41 谷口平八郎/幸徳秋水事件と文学者たち(1) 42
後書き 43 執筆者名簿 44 表紙 田辺陶豊《壷》
居酒屋にて/山本 衞
ここの二階座敷は
まっこと昔の映画館みたいに
一階を見下ろす桟敷席で
二の腕ほどの大鯖の姿寿司の丸焼きがうまから
ちょっとしよっぱいが一尾を一人では喰い片付(あら)けれん
でもあなたさんは
肴よりも冷酒という男だから
そいつよりはウツボのタタキがいいだろう
オレもはじめはウルメのヌタでももらうとする
まずはビールと世間はよく言うが
オレは前から熱爛党
あなたさんがそういうならつきあわぬでもないが
互いに斟酌なしで
好きなものを好きなように好きなとき注文しよう
ときに今日の秋水の墓はどうじゃった
小んまい粗末な石碑じゃが
あれでさえ ようも建てれた と
ここらのみんなは言うている
今じゃちあの人は極悪非道の大罪人
罪状の根拠たるや
昭和・平成の御代がこうなること
このままでは日本が滅びることを
たった一人で五十年前に予言したに過ぎない罪
あの頃だって誰が考えたち冤罪でしかないのだが
誰一人修正する奴は居らん
「過ちを改めるに憚ること勿れ」は庶民の言
上の過ちがまず糾されたことのない世の中
そのこたぁあなたさんも今までに良う書いちょること
思うだに思うだに
遣り切れんものを抱(うだ)いて生きて来ちょる
生きるたぁ何故(なーし)こんなにも
こんなものながじゃろか
まあ ともかく呑んで
グーッと一気に引いて
久しぶりの四万十の夜
呑んで積年の憂さが一気に霽れるわけでもないが
それはそれ これはこれ
ここでの夜をたのしんでくれ
お姐さん 冷酒もう一本
切れないようにドンドン持ってきて!
やっぱあ灘よりゃぁ土佐鶴をたのむけに
たのむけに
反射的にタイトルに反応しましたが、拝読するとそんなたわけた頭で読んではいけない作品だと判りました。「秋水」は大逆事件の幸徳秋水のこと。「五十年前に予言したに過ぎない罪」を土佐の詩人たちは今でも許していないことが読み取れます。そして「上の過ちがまず糾されたことのない世の中」が明治以降続いていることを改めて感じました。
作品は土佐弁が効果的に遣われていると思います。「片付(あら)けれん」「抱(うだ)いて」「何故(なーし)」などのルビは味がありますね。それに酒呑みの私としては「やっぱあ灘よりゃぁ土佐鶴」は大賛成。東京・神田のホームから見える、大きな「土佐鶴」の看板を見るたび、舌なめずりをしています。
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