きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.11.04 仙台市内 |
2006.12.11(月)
今週は一日おきに都内に出向く予定があります。今日はそんな週の始まりですが、予定がありません。貴重な一日。いただいた本を読んで過ごしました。
○詩誌『坂道』4号 |
2006.12.1
さいたま市見沼区 ささきひろし氏発行 非売品 |
<目次>
竹ロケット/飯島正治 4
祝婚歌/ささき ひろし 6 万年筆/ささき ひろし 8
ひまわり/浅井裕子 10 流れの音/浅井裕子 12
狂う/秋田芳子 14 竹の子/秋田芳子 16
ライブアースの樹/対馬正子 18 水の画布(カンバス)は渇いて/対馬正子 20
碁石海岸/林 哲也 22 残りの時間/林 哲也 24
白い秋/植原まつみ 26 海の絵/植原まつみ 28
若葉/ふくもり いくこ 30 花火/ふくもり いくこ 32
静謐(せいひつ)に揺らぐ/月谷小夜子 34 業の深さゆえ/月谷小夜子 36
茶房 38
浅井裕子 秋田芳子 対馬正子 林 哲也 植原まつみ ふくもり いくこ 月谷小夜子 ささき ひろし
(表紙・カット 浅井裕子)
ひまわり/浅井裕子
教科書の一頁から
とつぜん心の隙間に
熱をおびた風がしみこむ
小柄な少女は
背の高い西洋人のような花に
おどろき あこがれ
気づいた時には
糸杉の息吹に巻きこまれていた
ひとり遊びで
お絵かき好きな少女に
見知らぬ画家が
異国の太陽をつれて来た
何度も塗りかさね 仕上げた絵
黄色の花は力強く
父を亡くした母の部屋に
光りをそそいだ
少女は旅立ち
戻ることのない部屋
ひまわりは満面の笑みで
今も母を見守る
「教科書の一頁」、「糸杉の息吹」、「異国の太陽をつれて来た」「画家」とありますから、ゴッホの「ひまわり」と採って良いでしょう。「力強」い「黄色の花」で「父を亡くした母」を励まそうとする「少女」の気持が伝わってくる作品です。
この場合の「父」は、「母」の父上なのか「少女」の父上なのか判らない面があります。後者なら、例えば夫を亡くした母≠ニした方が良いかもしれませんね。視点はあくまでも「少女」のものですけど、読者に関係性を明確に採ってもらうにはそんな点も留意する必要があるかもしれません。色彩にあふれ、その対比で「母」が浮き上がっている作品だけに、そんな細かいところまで眼が行ってしまいました。それを措いても「少女」の優しさがにじむ佳品だと思いました。
○季刊詩誌『地球』143号 |
2006.12.20 さいたま市浦和区 地球社・秋谷豊氏発行 1400円 |
<目次>
特集 第31回地球賞発表
《受賞のことば》…倉橋健一…8 第31回地球賞選考経過報告…9
地球賞選考の感想
地球賞にふさわしい品格…尾花仙朔…11 詩は思想の新たな局面を切り拓く…秋谷 豊…12
『化身』の寓話的な構想力…石原 武…13 きわめてパーフェクトな現代詩に…新川和江…14
〔思想詩としての達成〕…辻井 喬…15 詩を読む歓び…八木忠栄…16
ポエジーのバトン−倉橋健一詩集「化身」をめぐって−「わたしのなかのおしゃべりな五人」…今野和代…17
倉橋健一詩集『化身』抄…22
草原にて 不眠 今日もどこかで
八つのレリーフによる子どものいる黙示劇 溜まり色 不思議な明治
■同人の詩(1)
ほたる…安英 晶…28 シバカリ…関口隆雄…48
降りなかった駅…三田 洋…29 冬の花…星野美恵子…49
手と火…田井淑江…30 渓流の出合に立つ一本の木…秋本カズ子…50
七月の四十五分…見上 司…31 ミステリー・ツアー…石島俊江…51
昨日が立冬という夕暮れどき…池上耶素子…32 結末…山崎佐喜治…52
梅雨明けの頃…高原木代子…33 光る丘…西村義博…53
チャレンジ…久保克彦…34 お礼肥…四釜正子…54
殖民都市…中川 波…35 熊公園…小関 守…55
目にはみえない螺旋の歯に…雪山 雅代…36 せつな…木村ララ…56
靴…桜庭英子…37 しだれざくら…藤井慶子…57
早春…人羽南鳳…38 女優アリダ・バリ…中村傳一…58
金杉篤彦さん…大石規子…40 夕暮れの暗示…鵜飼攝子…59
苦悩の雲…木村和夫…41 不在…宇佐美敦子…60
シロの道で…吉永素乃…43 洗われる…網谷原子…61
自転車…三好由紀彦…44 檜原湖…塩田禎子…62
日蓮の道…水橋 斉…45 今に思うと…柳原省三…63
百姓…梁瀬重雄…47
■同人手帳
文芸祭「現代詩大会」のこと…岡崎 純…106 あるものはあるがままに…三田 洋…101
言葉…喜(きの)春子…108 永遠なる中也…井上朝之…109
■同人の詩(2)
開花期…森田 進…70
風の道…荒木 元…71 アクロスティツク・ソネット二篇
時間旅行…金子万里子…72 カタツムリ 古池や蛙…森田 孟…89
夏のおわりの風…結城 文…73 雑草…浪本琢夫…90
初めの日 自己紹介…伊集院昭子…74 命の鼓動…谷口ちかえ…91
田舎道…渡辺眞美子…75 追突する、あぶら蝉よ…浜江順子…92
憂国…野間亜太子…75 花まつり…水木萌子…93
花違(たが)え 山河 アガタ 滝…渡邉那智子…77
半月…原口久子…94
じいさんの顔…秋山公哉…78 わが街の商店街…山田由紀乃…95
ネクタイ…ささきひろし…79 受け止めること…岡本雅子…96
少年二題…熊沢雅晴…80 中庭…吉田ゆき子…97
T 模型グライダー U 晩夏 世界の縁…槇 さわ子…98
あおい大空に…植木信子…81 シンプル エレガンス…下村和子…99
お店屋…木下博子…82 風の吹く町…浅井裕子…100
キジバト…鈴木豊志夫…82 孔雀さぼてんの夕暮…青 博章…101
さようならミモザさん…金子たんま…84 ぼくの原点…辻田武美…102
燻室…松下美恵子…85 うただったのだ…たかはしとしえ…103
鎮魂の館(大和ミュージアム)…長田一枝…86 波…桜井マリ子…104
太陽…藤坂信子…87 やがて深い冬…喜(きの)春子…105
■リポート
第三回宮沢賢治国際研究大会 成功裡に終る
−「賢治さんの想像力ときたら、大したもんだ!」…森 三紗…67
■同人の詩(3)
幸福の黄色い帽子…山本 衞…130 わが師 青地農…奥山正江…151
ビルケの夏…川中子義勝…131 秋の家…里見静江…153
遊ぶ風…北原千代…132 日常…堀込武弘…154
美しいゴミ捨て場にて
秋色…清水榮一…155
くるしみ…サーカー和美…132 道行…河内さち子…156
海に浄(きよ)められる日輪 ハープのアルペジオに
−八丈小島の落日を思って−…吉川悠子…134 微風の歌を聴く…中島 登…157
一枚の絵…花籠悌子…135 陽は西に…香野広一…158
ショウジョウトンボと指…名古きよえ…136 遠近の葛藤…星 雅彦…159
藁の匂い…向田若子…137 ふるさとの駅…たしろきみこ…160
ツヅレサセコオロギ…都留さちこ…138 夏の花びら…村田寿子…161
雪三題 冬 北の街 雪国…瀧 葉子…139 涼風…大森隆夫…162
風…梅本賢次…140 雨の音…鈴木正樹…163
切れない糸…坂本公子…141 ノビネチドリ…石井眞弓…164
霧の伝言−井上靖研究会にて…松井郁子…142 見えないもの…山路豊子…165
私がいなくなっても…小林登茂子…143 白砂を踏んだ日は遙か…比留間美代子…166
米屋の丸田さんは…井上朝之…144 宗太郎峠…羽田敬二…167
歩いて…菊池唯子…145 ゼネラル・フレークに出合った朝…森 三紗…168
影…林 哲也…146 坐しておられる…岡崎 純…169
アラワレヨ…みくも年子…147 固(かた)雪…高橋絹代…170
愛の療法…山中真知子…148 いのち…白川 淑…171
すだれ…山本美代子…149 じいじの畑…斎藤正敏…173
お前が生まれた朝…小林由利子…149
■同人の詩(4)
二〇〇〇三年…島田陽子…176 門付け節…李 承淳…180
夏草繚乱…石野茂子…177 太平山…佐々木久春…181
尋ねてください
青き光景…海上晴安…182
わたしの在り処…橋本福恵…178 風雨の羅臼岳…前川整洋…183
モンゴルにて・再び…水崎野里子…179 江戸時代からの…安森ソノ子…184
■新同人の詩
二つのシャトル…中尾敏康…186
井上靖研究会
井上靖文学研究者集う…110 磐梯・穂高・ヒマラヤをつなぐ岩稜…谷口ちかえ…111
五〇〇〇メートルの氷河から持ち帰った貝の化石…小林登茂子…113
「小磐梯」に導かれて…松井郁子…114 磐梯高原の一日…結城 文…115
裏磐梯の緑深い高原にて…塩田禎子…116 魂の声を聴きに…松下美恵子…117
薄暮の手紙−井上靖氏に…秋谷 豊…120
<講演要旨>
『氷壁』と『星と祭』の舞台−穂高とヒマラヤをめぐって−…秋谷豊…121
■海外の詩
ジョン・アップダイクの詩 船上のつれづれ 女流詩人 青春の進化…中島 登・訳…174
中東世界に広がる日本現代詩の読者−『新版・日本現代詩集』…武田朝子…64
モリー・ケニアリーさんの詩と画について…谷口ちかえ訳…66
■地球情報…187
■編集後記
関口隆雄……188 大石親子……189 石原 武…190
斎藤正敏……188 谷口ちかえ…189 秋谷 豊…191
鈴木豊志夫…188 山中真知子…190
中島 登……189 小林登茂子…190
表紙・とびら モーリー・ケニアリー
本文・目次カット/鈴木豊志夫
ネクタイ/ささきひろし
私の首をしめる
父のネクタイ
形見わけに数本もらってきたものだ
上京するたびに
浅草や銀座で購入していたネクタイ
父の匂いが染み込んでいる
出勤の朝
眠気を覚ますように
ネクタイを強くしめると
首の周りから父の緊張感が湧いてくる
疲れた夕方は 父をゆるめる
思いがけずに父を身近に感じる
無口で頑固一徹の父
その存在の大きさは
失ってはじめて気づいた
心の拠り所であったことも
時間が じわじわと
底知れぬ寂しさを運んでくる
年齢と共に顔と性格が
父に似てきたと妻はいう
濃い血のなせるわざか
少年の頃
母に暴力をふるった父を許せず
鏡の中の父の首をしめる
もう一人の父に似た自分がいる
女性には別の装身具か衣類だと思いますが、男にとっては「ネクタイを強くしめ」たときの「緊張感」には何とも云えぬものがあります。ましてやそれが「形見わけに数本もらってきた」「父のネクタイ」だとすると、「首の周りから父の緊張感が湧いてくる」感覚は格別のものがあるでしょうね。この作品で面白いのは、「父を許」しているわけではないのに、あえて「父のネクタイ」を締めるところにあると思います。愛憎相半ばという感覚が上手く表現できていると云えましょう。知らないうちに「父に似てき」て、「鏡の中の父の首をしめる/もう一人の父に似た自分」を見る、そんな男の心情に共感した作品です。
○詩歌文藝詩『ガニメデ』38号 |
2006.12.1 東京都練馬区 銅林社発行 2100円 |
<目次>
巻頭翻訳 生理学および小史 マリヤ・ステパーノヴァ たなかあきみつ訳 4
エッセイ
法橋 登/ヒルデガルトとモーツァルト−石井誠士さんと癒しの原理 30
小笠原鳥類/動物、博物誌、詩−二〇〇六年の、幻のような動物たちの詩 37
翻訳連載詩 街の軽業師 チャールズ・ヘンリー・フォードヘ イーディス・シイットウェル/藤本真理子訳 43
小詩集第五回 海埜今日子/卵売りの恋 49
映画評 太陽/藤本真理子 83
詩作品T
渡辺めぐみ/春を捨てる 87. 粕谷栄市/呪詛について 90
川井豊子/連詩 眠る女 93. 岡野絵里子/Shadows 98
進 一男/薔薇の館という名の飲み屋 103 小笠原鳥類/楽器が宇宙から来る 108
斉藤 倫/踊ろよ、メンデル 113 山本美代子/かなかな 他一篇 122
最果タヒ/藁ヲモ掴ム 126 久保寺亨/「白状/断片」 130
小林弘明/そこにわたしはいなかった 134 中原宏子/蜻蛉 138
浜江順子/墓場まで 142 仲嶺眞武/四行連詩「造形」 146
くらもちさぶろう/き の ね その ほか 160
歌壇時評 小塩卓哉/一つの時代の終わりに考えるべきこと 170
短歌作品
大口玲子/われは 176 村田マチネ/水 空気 天体 自由 その他 180
田中浩一/超・花鳥風月U 184 川田茂/警報機<虚空忌の夜に> 188
小塩卓哉/自画像 194 和泉てる子/「父の横顔ふと浮かび」 198
沼谷香澄/星と月 204 喜多昭夫/一同、礼 208
森本 平/美しい国 212 黒瀬珂瀾/小さき船のためのフーガ 218
鳴海宥/Mystery 222
詩壇時評 片野晃司/変わらないもの 226
詩作品U
望月遊馬/向日葵228 篠崎京子/鱗 他一篇 232
丸山勝久/五月 他二篇 236 藤本真理子/絹の日・傘−故栗原禮子さんへ 242
吉野令子/夜の音楽(二〇〇六年十二月) 246 平塚景堂/短くて単純な二行詩 252
森 和枝/蔦の付け睫 254 金子以左生/秋草文壷 260
松下のりを/道・駅 272 平野光子/ドクダミの花 他三篇 280
村永美和子/夢のなかの紅引き 他五篇 292 砂東英美子/炎の銀河 304
紫圭子/逃げ水 316 藤倉一郎/晩年 他一篇 321
上野菊江/信仰の悲しみ 326 工藤優子/さえずり 他三篇 333
梢るり子/静謐な黄昏を待って 342 里中智沙/隅田川 351
相良蒼生夫/ヒルズ街 他一篇 360 松本一哉/アマミノクロウサギ−生物の権利 他二篇 369
荒木 元/詩人の中の半透明な液体 382 中神英子/木苺 他二編 397
片野晃司/エネルギー 410 野村喜和夫/ままーむ街道 414
編輯後記 421
釣/村永美和子
人の 詩を読むと
お金は払いますつり銭はいいわ と
そそくさ 部屋を去りたくなる
つられて 次の部屋に押し入り
自分の詩を読むと
釣り糸を垂らすかたちに 腰がこごみ
何かのお釣りとおもって受け取って
払うお金はないけど小銭でいいなら
置いとく ここに
といってバタンと出入口を閉めたくなる
閉まったドアの反動で外に出てきてる わたし
どちらの部屋にも
わたしのほかに人がいたのだろうか
村永さんの作品は「夢のなかの紅引き 他五篇」となっていて、載せられているのは「夢のなかの紅引」「瞬」「釣」「貸し借り」「闇白」の5編です。ここでは「釣」を紹介してみましたけど、「人の 詩を読む」ことと「自分の詩を読む」ことが「つり銭」というキーワードで面白くうたわれていると思います。しかも最終は「どちらの部屋にも/わたしのほかに人がいたのだろうか」という締め。「詩を読む」ということは結局「わたし」を離れてはできないのだとつくづく思いますね。
この5編のうち「貸し借り」はすでに拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、こちらもどうぞご覧ください、面白いですよ。
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