きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.04 仙台市内




2006.12.15(金)


 午前中は実家に帰って父親の病院通いの付き添い。その足で小田急線の伊勢原駅と小田原駅を廻ってきました。実は昨夜、ロマンスカーでコートを失くしたのです(^^; ロマンスカーは本厚木駅で降りて、そこから急行で新松田駅に行きます。例によって酔っていて、本厚木で電車が止まったとたんに眼が覚めて、あわてて降りたらコートが無い! 網棚の上に乗せられたまま車庫に向かって行きました。駅で届けたところ、伊勢原駅か小田原駅に似たようなコートが届けられているとのこと。深夜なので引渡しは明日です、だって。

 で、伊勢原駅と小田原駅を廻ったという次第です。結論は、二つとも違いました。結局、忘れ物として届けられていなかったことになります。どこへ行っちゃっただろ? ま、しょうがないので諦めましたけどね。
 それにしてもトシだなと思います。酔って乗り過ごしたり、途中の駅で降りちゃったりしたことはあります、正直なところ(^^; でも、電車で忘れ物って初めてだなぁ。これが鞄でなくて良かったと思います。今は退職したので会社の書類はありませんが、日本詩人クラブの会員名簿や理事会の議事録が入っていたりすると、悪用される可能性が充分あります。だから鞄は絶対に網棚に置きませんけどね。これを教訓に、酔ったときは網棚には何も置かないようにしようと思います。皆さんもご注意ください、、、って、そんなドジはしないと叱られそうですね。



岡野絵里子氏詩集『発語』
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2006.11.30 東京都新宿区
思潮社刊 2200円+税

<目次>
 T
憧れ 10       あふれる 12
合唱 16       通り過ぎる少女 20
発語 24       カーネーションの不在 28
点灯夫 32      冬隣 36
音楽 40       永遠の一日 44
タゴールの黄色い葉 46
 U
青帝 54       四分間 58
忙しい砂糖入れ 62  ヤマシタさんにまつわる 66
OKAMOTO 72  野の影 76
泳ぐ陽 80      数える 84
辞書にいる人 88   茶色の小鳥 94
あとがき 98     装幀=森本良成



 発語

 大ホールでは 二百近い病院が机を並べ 名札を立て
て 新卒看護学生に就職説明を行っているところだ 割
り当てられた机の前に 私も腰かけている 真新しい
「病院案内」を重ねて 気後れを紙束の下に隠して

 特養老人ホームや介護施設の担当者たちは 求人の顔
をしている 車椅子を押す優しい手 明るい微笑を求め
て 葉ずれのように続く老人の独り言 透明なファイル
に綴じられる長い長い日常 一人がボールペンでコツコ
ツと 誰も来ない机を叩く 希望を呼び出す合図のよう


 大学附属病院 巨大総合病院 学生たちは大病院のブ
ースに集まる そこは虹の根元だ 空に伸びる大弓へ
彼女たちは  緑の腕をさし上げ  明るい粉を降りこぼ
す 捧げられる花の供物 だが 彼女たちが 女神なの
だ 笑い声が昇る なだらかな虹のカーヴに沿って

 早々に諦め 名札を倒し帰る施設がある 発せられな
かった言葉を鞄にしまい 彼らは帰る 恐れ 泡立ち叫
ぶ声 そのただ中へ 死の理に抵抗する者たちに 時間
はいつも足りない

 ざわめきを遠くに聴きながら 訪れを待つこの時間は
よく知っている幾度もの夜と同じだ 明け方の紙に書き
つけられ 慌しく送られて ほんの少しの友人に読まれ
る詩の言葉 その発語を待つことと

 多くの夜  多くの苦しみを越えて  発語は訪れて来
る 例えば今 通路の混雑を分けて近づいて来る 一対
の真剣な瞳のように 最初の一行が

 タイトルポエムを紹介してみました。「新卒看護学生」に対して「発せられなかった言葉を鞄にしまい」「早々に諦め 名札を倒し帰る施設」の係員。彼の、彼女の「発語」は宙に浮くこともなく、文字通り発せられません。それは「ほんの少しの友人に読まれる詩の言葉」に対して、友人の「発語を待つことと」と通じているのではないか…。
 最終連が見事ですね。「最初の一行が」という詩語が良く効いています。「詩の言葉」はそうやって待つものかのかもしれません。
 本詩集の中で
「カーネーションの不在」は拙HPですでに紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて岡野絵里子詩の世界をお楽しみください。



隔月刊誌『新・原詩人』9号
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2006.12 東京都多摩市
江原茂雄氏事務局 200円

<目次>
《この詩Z》絶頂/李陸史作・萩ルイ子訳 1 まさかのまさかを恐れる/山本日出夫 2
読者の声 2
詩 炎天/丸本明子 3           ともだち/神 信子 3
  しゃっくり/江原茂雄 3        あるとき/井之川けいこ 3
  ≪心の震えるとき≫/竹内 元 3    ブルーベリー・夏の夕暮れ/羽生槙子 3
  長崎外海(そとめ)/佐相憲一 4     黒い背広を求めて/越 一人 4
  お月さん/丸山裕子・愛 4       千人針/大橋晴夫 4
  僕らはみんな生きている/橘 安純 5  あしたは/まつうらまさお 5
  空/江原茂雄 5            あの歌の光景/墨微 5
  コンパス/K(小6)           人/M(小6)
詩人は時代を転がっている石のようなものであろう/小林忠明 6
短歌/太田敦子 6
川柳/乱 鬼竜 6
事務局より 6



 千人針/大橋晴夫

うそついたら針千本 飲おます
ハリセンボンはゴム風船のようにふくらませ
おとりのあゆは千本針でつかまえた
武運長久 それは
どうぞ無事で 帰ってきてくださいという意味で
靖国であおう という意味ではなかった
12月8日は針供養の日でもあって
その日は 豆腐やこんにゃくに針をさして
ごくろうさまと 針の供養をする日であった
針供養の日から
武運長久とかかれた千人針で
女たちは忙しくなった

 「12月8日」の真珠湾攻撃で始まった太平洋戦争開戦の日は「針供養の日でもあっ」たのですね。その針を使って「千本針」で「武運長久」を祈った「女たち」の悲劇を考えてしまいます。「武運長久」は「どうぞ無事で 帰ってきてくださいという意味で/靖国であおう という意味ではなかった」という指摘に納得です。長く久しくですから、確かに死んで帰ってこいではありませんね。一億総玉砕をわめいた軍部に対する民衆のささやかな反抗の4文字、とも採れました。またそんな日が来なければいいなと思いながら拝読した作品です。



『千葉県詩人クラブ会報』196号
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2006.12.15 千葉県茂原市 斎藤正敏氏発行 非売品

<目次>
'06ちば秋の詩祭は大盛会 1
会員の近刊詩集から55 新・日本現代詩文庫43『五喜田正巳詩集』 1
'06ちば秋の詩祭概要報告 2
第19回詩画展・第15回詩書展詳細報告より 4
平成十八年度文学散歩 4
'06詩祭朗読詩から 春とハーモニカ/田村重子 涙/秋田高敏 小さな町で/高橋保雄 5
文化功労で中谷順子氏 千葉県「文化の日表彰」受賞 5
五喜田正巳詩集−彼岸の透視者−/荒井愛子 6
特集 千葉県詩集第39集感想T 6
新会員紹介・会員活動・受贈御礼・編集後記 8



 小さな町で/高橋保雄

小さな旅をした
小さな町の駅前の
初夏の石の上の
小さな風が動くと

午後二時をまわったぼくの影が
幼いころの憧れの人を捜す
半世紀の時の距離を縮めるものは
もう どこにも無い

小さな町の
小さな風に
小さくなった年寄りたちの
小さな茶飲み話が聞こえる

 「'06詩祭朗読詩から」として載せられた4編のうちの1編です。文字ヅラでは繰り返される「小さな」が邪魔のように思いましたが、音読してみるとこのリフレインが効果的であることが判ります。特に最終連の「小さな茶飲み話」が佳いですね。「年寄りたち」の奥床しい存在感を感じさせます。第2連の「幼いころの憧れの人を捜す」というフレーズは、聴衆の耳をそばだたせたのではないでしょうか。短詩ですが聴衆を惹き付けた作品ではなかったろうかと思いました。作者のセンスに敬服しました。



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