きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.4.8 神奈川県真鶴岬




2007.5.12(土)


 有限責任中間法人・日本詩人クラブの第58回総会が開かれました。場所は初めて東大駒場の18号館ホールを使わせてもらいました。プロジェクターも完備され、音響・照明とも申し分のない設備です。同時通訳も可能とのことで、そこまでは必要ありませんでしたけど、さすがは国立大学。重税に苦しむ国民の一人としては存分に使わせていただきました(^^;

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 写真はいずれも会場風景です。容量が大きくてごめんなさい。いつもはかなりトリミングするのですが、会場の大きさを伝えたくてトリミングを控えました。今後のイベントはここやセミナールーム、他のホール使わせてもらうことになりそうです。

 総会では全ての議案が執行部原案通りに可決・承認されました。ありがとうございます。今回は役員改選もありました。詳細は
日本詩人クラブHPの「役員紹介」をご覧ください。私は8年ぶりに総務を担当します。
 今回の総会報告の目玉は事務所の設置です。昨日、正式に契約され、総会で発表しました。場所は東西線「神楽坂駅」から徒歩5分の処です。ちょっと古いビルですが9階建ての4階フロアー全部を借り切りました。とは言っても12坪ほどの部屋です。私はまだ見ていませんけど、16日に内装屋さんとの打ち合わせがありますので、そこで確認して皆さんにもお知らせしようと思っています。管理は総務の仕事になります。専任の事務員は置きませんから、総務が頻繁に通うことになりそうです。
 ビルの外側にテナントの看板が付いていますけど、それも設置するそうです。私は部屋の入口の看板は想定していましたが、これはまったくの想定外。他の企業や団体と同じように、並んで看板が取り付けられるわけです。出来上がったら感無量だろうなと思います。

 二次会も18号館のコラボレーション・ルームを使わせてもらいました。大学生協の人たちが配膳をしてくれます。80人ではちょっと狭いかもしれませんけど、部屋代が無料というのは嬉しいです。私は急に司会をやってくれということになり、写真を撮る間もなく、呑む間もなく、結局ワイン1杯だけでした。ワイン1杯で5000円というのはひどいボッタクリだな(^^;
 でも、二人の女性が会いに来てくれて嬉しかったです。お一人は会員ではありませんけど、最近よくイベントに参加してくださる方。もうお一人は海外在住で、一時帰国を機に時間を取ってくれました。ありがとうございました。

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 今日は写真が多くてゴメンナサイ。先ほど撮っていただいた写真が送られてきました。2枚ありましたけど女性陣に囲まれてニヤケタ方を載せましょう。全々呑んでいないので珍しくまともな顔付きだと思っています。しかし、それにしても日本詩人クラブは美人が多いなあ。



個人詩誌Quake25号
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2007.5.15 川崎市麻生区 奥野佑子氏発行
非売品

<目次>
言祝ぎの詩(ことほぎのうた)《闇の中の十連珠》
Y 一        Z 五
[ 七        \ 九
] 十二



  Y
おばあちゃんの編んでくれた
オレンジと黄色の 毛糸のベッドカバー
その上に
高校生の私が横たわる
拾ってきた猫のペケが丸くなる
年老いた私が眠る
犬のブルースがまどろむ
読みかけの本が 書きかけのノートが
無造作に置かれたまま
ベッドカバーの上にいると
時の流れが狂うのだ
死んでしまったように
ペケも
私も
ブルースも
本もノートも何もかもが
動きを止める
安らいで
オレンジと黄色の中に
静かに沈んでゆくのだ
自らの体の重みで出来た くぼみに
丸くなり
清らかに消えるのだ
おばあちゃん
たとえ 死が 私たちを引き離しても
今も
私とあなたは ひとつ
こうして 毛布のあたたかい色で
この世界をまるごと くるめば
いつだって 決して離れられない
共にいるのだ
ブルースも
ペケも
私のコトバも
ああ おばあちゃん!
ベッドカバーを編んでくれて ありがとう
南無妙法蓮華経と祈りながら
おばあちゃんの 白い指が
鮮やかな模様を紡いでゆく
その うつむきかげんの メガネをかけた姿がはっきりと
私の前に立ち現れるよ
ベッドカバーはうつくしい砦
天空に張られた 繊細な蜘蛛の巣のように
あの世と この世とを
区切り そして つなぐ
肉体は その上で捕らえられ
喰いちぎられてしまうかもしれないけれど
思いは 魂は 飛ぶのだ
緻密な結界を するりと抜けて
愛しいもののそばに いつだって いるのだ
おばあちゃんの編んでくれた
毛糸のベッドカバー
オレンジと黄色の渦の中に
今夜も 私は ダイブする
身を投げ出して 会いに行く
ああ おばあちゃん!

 前号に引き続いた連載「言祝ぎの詩(ことほぎのうた)《闇の中の十連珠》」も今号で完結しました。ここでは「Y」を紹介してみましたが、「高校生の私」から「年老いた私」へといきなり展開するところが面白いと思います。その仲立ちをしているのが「おばあちゃんの編んでくれた/オレンジと黄色の 毛糸のベッドカバー」なのでしょう。それを暗示しているのが「ベッドカバーの上にいると/時の流れが狂うのだ」というフレーズだと思います。その「ベッドカバーはうつくしい砦」でもあります。一つの具体的な「ベッドカバー」を通して語られる見事な観念の作品と思いました。



文屋順氏詩集『祥雲』
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2007.3.31 東京都新宿区
思潮社刊  2200円+税

<目次>
生きる 8      夕暮れ 12
ひらく花びらの風景16 眠っている間に 20
起伏 24       苦しい年波 28
過ぎゆく夏に 32   最後に見たものは 36
目に見えない敵 40  銀のネックレスになって 44
祥雲 48       結実 52
遠いところで 56   消失する意識 60
人生ゲーム 64    魔法のスキル 68
酒に酔って 72    どんな星の下に 76
ぼくらの空 80    開発 84
帰巣性 88      あとがき 92



 祥雲

遠くから走って来るのは
紛れもなく私の影で
昨日まで行方不明だったのに
突然現われて私を驚かせた
私の分身は少しずつずれて
もう原型を留めていない
太陽の巧妙なトリックで
透き通った肌に
くっきりと
tattooが浮かび上がる
だんだん影が薄くなり始める頃
怪しく輝く日輪は
私の心を乾かし
目に見えないエネルギーを与えてくれる

両脇に勢至・観音菩薩像がはべる
金色の阿弥陀三尊に秘められた
謎の沈黙を拝んで
堂内撮影禁止にもかかわらず
素早くシャッターを切る
穏やかな顔の表情が
長い歴史の経過を唱えていた
紫陽花が満開の三千院を出て
ふと空を見上げると
紫色の祥雲が広がっていた
何かめでたいことが起きる吉兆かと
自然と心がときめいて
歩き疲れたのも忘れて
足取り軽く今日の宿へ向かった

 中学生以来40年、詩と関わってきたという著者の8冊目の詩集です。タイトルポエムを紹介してみました。あとがきでは「旅先の京都でたまたま見た縁起の良い雲に因んで」タイトルにしたとありました。「昨日まで行方不明だったのに」「遠くから走って来」た「私の影」という発想が面白いと思います。「紫色の祥雲」を見て「何かめでたいことが起きる吉兆かと/自然と心がときめ」くのも分かりますね。
 本詩集中の
「苦しい年波」という作品はすでに拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて文屋順詩の世界をお楽しみください。



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