きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2007.4.8 神奈川県真鶴岬 |
2007.5.28(月)
今朝はとても嬉しいメールを2通開きました。25日の頁で、宇都宮の詩誌『コウホネ』21号に載っていた石岡チイさんという詩人の「鳴子が鳴っている」という作品を紹介したのですが、2通ともとても良い作品で感動しました≠ニいうものです。2通のうちお一人は宇都宮在住の詩人で、石岡さんとお会いしたことはないそうですが、作品には以前から注目していたとのこと。しかし、最近書いていないようなので気にしていたところ、拙HPで久しぶりに佳品を見て感激した、というものでした。もうお一人は京都の詩人です。当然、石岡さんとは面識がないと思われ、純粋に作品を褒めてくださいました。「作者も力量のある方だから、こういう作品がうまれたのだとおもいます」と言ってくれています。
これまでもメールで「あの作品は良かったよ」と言ってくれた人は数多くいらっしゃいましたが、二人同時に一つの作品を褒めてくださったというのは初めてです。もちろんそれは私とは何の関係もない話で、あくまでも作品本位。でもね、紹介した作品を褒めてもらえるというのは正直、嬉しいものです。まるで自分が褒められたよう(^^;
それに、私は皆さんがしっかり詩作品を読んでくださっていることにも感動しました。詩人は自分の作品の押し付けはするけど他人の作品は読まない、という批判があるのは事実です。そういう人もいるでしょう。しかし拙HPを訪れてくれる詩人はそうではないと断言できます。お二人とも佳い作品を書く、名の知られた中堅詩人です。他人の作品をちゃんと読むから佳い詩も書ける、そう思います。
こういうことがあるからHPは辞められません。ハイパーリンクを張りましたので、よろしかったら「鳴子が鳴っている」を読んでみてください。抑制された文体は多くの人に受け入れられてもらえると思います。
○季刊『楽市』59号 |
2007.4.1 大阪府八尾市 楽市舎・三井葉子氏編集 952円+税 |
<目次>
●詩
浅いねむり/小野原教子…12 くぐり ぬける/永井章子…14
舌 熱泥/加藤雅子…17 おもちゃ/中神英子…20
リーベの夜警/福井千壽子…22 店/木村三千子…24
昼下り/太田和子…40 地図/小西照美…42
くみ子さんの町/斎藤京子…44 鴨の声/司 茜…46
舎弟頭/谷口 謙…49 約束したこと/川見嘉代子…52
幻夜/福井栄美子…54 遠い山では/松井喜久子…56
ちゅうちゅう 春/三井葉子…58
●楽市楽座
燃費/福田優子…4 葭焼き/小西照美…4
わたしの旅 オーデンセ/福井千壽子…5 千の風では忙しい/司 茜…6
断想(21)/木内 孝…7
●随筆
名刺について/玉井敬之…26 日本のこころ/萩原 隆…30
晩秋の和田山/北原文雄…35 ポオル ヴァレリのなぎさに漂着/渡部兼直…60
ラクロウとキンマ/山田英子…62
●編集後記…68
鴨の声/司 茜
芭蕉の話を聞いている
ところで
書いてあった字を
ていねいに消して
まっさらになった
黒板に
海暮れて鴨の声ほのかに白し
と先生は書かれた
この句は
どこで切れ
どういう意味でしょうか
にっこり
見渡しながら
みんなに問われる
みんな黙っている
では
海暮れて/ で
切れると思う人
十人ほどの手が上がる
海暮れて鴨の声/ で
切れると思う人
ぱらぱらと手が上がる
ほう
海暮れて鴨の声ほのかに/ですか
他には
私は
窓際の後ろの席で
鉛筆を回しながら
女性は「子を産む機械 装置」
発言の柳沢伯夫厚生大臣の
目力のない顔を思い浮かべている
美しい国づくり
夢づくり
平成十九年二月
日本の奈良の
公民館の裏庭に
あれは
ひまわり
「公民館」とありますからカルチャー教室での一齣でしょうか。後の4連目からの転調がおもしろい作品です。それ以前の連を「子を産む機械 装置」発言と「鴨」の繁殖などに強引に関連付けることも可能ですが、それは作者の本意ではないでしょう。ここは「芭蕉」の知的な句と「美しい国づくり/夢づくり」との落差を感じてもらうのが良いと思います。
最終連の「あれは/ひまわり」も落差の大きいフレーズです。「平成十九年二月/日本の奈良の/公民館の裏庭」ですから、ひまわりが咲いているわけではないでしょう。おそらく枯れた茎さえも残っていないはずです。冬のひまわりはあり得ない話。「美しい国づくり/夢づくり」へ掛けていると思います。「柳沢伯夫厚生大臣の/目力のない顔」にも掛かっているかもしれません。身近な素材だけを集めて施政者を斬る、知的な秀作と思いました。
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