きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.5.20 栃木市 とちぎ蔵の街




2007.6.8(金)


 明日から始まる日本詩人クラブ長野大会のため、早朝6時に家を出ました。今日は大会前日で、共催の長野県詩人協会の人たちは準備のため14時に集合します。主催の日本詩人クラブ側も私も含めて3人が合流することになっていました。
 私の家からの所要時間をカーナビで調べると、高速道路使用で4時間ほど。一般道路では8時間と出ました。久しぶりに全線一般道路経由で行ってみました。国道246号線、138号、137号、20号、141号、18号(一部浅間サンライン)というルートです。高速道路が整備されていない時代は、スキーでよく使ったルートですが、道がすっかり奇麗になっていて驚きました。クルマも30年前とは大違いですから、快調に走ることができました。結局、計1時間の休憩を取っても7時間で到着。実質6時間の走行でした。

 クルマも新しくなって、道も良くなって、カーナビのお陰で道に迷うこともなく、天気も良く、今まで体験したことのない快適なドライブでした。でも、やっぱり疲れましたね。一般道路をこんなに連続で走るなんて久しぶりでしたから、まあ、無理もない。
 で、会場のホテルに到着して1時間もしないうちに、突然の雷雨。まるで私がホテルに入ったのを確認したかのようなタイミングの良さに、晴れ男の面目躍如というところです。やめればいいのに、それを誰れ彼れなく言いふらして、また顰蹙を買ってしまいました。

 会場設営の打ち合わせ、準備は14時から17時過ぎまで。当然のように細かい問題点は続出しましたけど、長野県詩人協会の皆さまのご尽力でことごとく解決しました。やはり地元の力がないとこういう大会は進まないものです。ありがとうございました。
 懇親会は近くの「幸べえ」という居酒屋に連れて行ってもらいました。ママさんが一人で切り盛りしている小さな店ですが、手造りの肴がおいしい処です。「七笑」を燗で呑ましてもらいまして、これも旨かったですね。

 ホテルに帰ったのはたぶん22時頃だったと思います。横になったところに隣室の地元の人から電話。これから二人で呑みに行こうというもの。さすがに気力は費えて、丁重にお断りしました。本当は私の好きな先輩詩人なので、一瞬、行こうかなと思ったのですが、なにせ眠い。明日のために体力も温存しておきたかったので泣く泣く断った次第です、ごめんなさい。
 電話を置いたとたんに爆睡したんでしょうね。夢も見ませんでした。



安達徹氏著          改訂版
『雪に燃える花
−詩人日塔貞子の生涯−
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2007.5.30改版第1刷 山形県寒河江市 桜桃花会刊 2190円+税

<目次>
詩 私の墓は 日塔貞子
序 −再会の喜び− 神保光太郎
 †
幻の母:11
.      斜陽:25
幼い雛:46
.      文学修業:61
アリサの恋:78
.    片割れの月:103
喪失:122       岩根沢の春:148
青い花かげ:178    酸っぱい季節:203
ながれ雲:230     光風園:258
もう一つの故里:277  逝く花:298
 †
改訂版−あとがき:320 著者紹介 <桜桃花会調べ>:325
巻末しおり
日塔貞子年譜抄
.    手紙−柏倉昌美から安達徹へ
本書関連地図
.     日塔貞子から見た血縁図(登場する人物のみ)



 貞子の病気も快復の見通しのつかないまま、花の季節をむかえていた。
 花々が咲き乱れ、花粉の香りがまき散らされると、蜜蜂の羽音が耳鳴りのようによみがえってくる。
 貞子の好きな花にカタクリの花がある。「片栗」の漢字をあてるのが常だけど、万葉では「堅香子」を使っている。方言のカタカッコにも通じ、文字そのものが、なにやらゆかしく感じさせられる。貞子の詩や日記にも堅香子とあり、私も花のイメージからして、堅香子、そして呼び名はカタカッコにしようかと考える。
 私が二月に岩根沢の渡辺花子へもうフキノトウを三回も食べた≠ニ書いてやったら、いまだ冬深い岩根沢の彼女は、春を想って次のような返事をしたためてくれた。
 「花には気温で咲く花と、季節で咲く花と二通りあるようです。福寿草などは暖かな日さえ続けば、いちめんに咲き出しますが、堅香子はいくら温かい日が続いても、季節がこなければ咲きません。
 そのかわり季節が来れば雪を突き刺して芽を伸ばし、紅い花を開かせます。
 そのガンコなところが自分に似ているようで、堅杏子の花はいちばん好きです。
 雪をおかして咲くこの花の紅さは雪に燃える花≠フ題名にも通じませんか」
などと嬉しいことを書いてくれた。
 コブシの咲く頃、このカタカッコの花について貞子と聰とが、たわむれの口論をする。貞子はカタカッコについては権威だから、負けてはいない。その日の日記に「岩根沢では堅香子が咲いているとおっしゃって譲らない。岩根沢は雪で堅香子はまだよ≠ニ言ったら、雪が片っぽにあっても、消えたところから出てるんだ。雪の下で伸びてるんだから≠ニ言い張って負けない。
 そう言われると、山ではそうなのかと自信もないことだし山はどうか知らないけど≠ニごま化したらぼくも知らないが≠ニ、そっちでもあまり自信のなさそうな声だ」
 岩根沢の自然を知らないから貞子は黙ってしまったが、勝敗はどうだろう。ただ聰は紅紫色のカタカッコが一面に咲く山に貞子を連れて行き、心ゆくまで花と戯れさせたいと願っていた。

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2007年2月15日の部屋で紹介した同名評伝の改訂版です。B6版412頁だったものがA5版325頁と、より読みやすくなっていました。挿絵も前回より多く載せられており、視覚的にも優れて改定されています。
 四季派の詩人・日塔聰の妻、貞子は1949年に28歳で亡くなった美貌の詩人。詳細は前回書きましたので繰り返しません。ハイパーリンクを張っておきましたので、よろしかったらご覧ください。
 本著のタイトルになった雪に燃える花≠ェ出てくる箇所は何ヶ所かありますが、上で紹介したのもその一部です。「堅香子」をめぐる聰と貞子の会話、それを見つめる著者の視線がやわらかく読者を包む部分だと思います。私は四季派は再評価されるのではないかと思う一人ですが、多くの皆さまにも読んでいただきたい1冊です。



詩誌『ONL』91号
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2007.5.30 高知県四万十市
山本衞氏発行  350円

<目次>
現代詩作品
文月奈津/花時間 2            岩合 秋/無言館 4
山本歳巳/ヒトノカタチ 6         森崎昭生/時代 8
福本明美/下宿のおばさん 9        西森 茂/いくさのない桜に 10
浜田 啓/議員選挙 11           柳原省三/イチョウ 12
徳廣早苗/ざわめきながら 14        北代佳子/銀座柳まつり 16
土志田英介/遠見の窓 18          丸山全友/抵抗 20
水口里子/音もなく開くドア 21       河内良澄/初夏 22
宮崎真理子/長寿悲喜交々 23        大森ちさと/海 24
大山喬二/橡の木の森へ(8)25        山本 衞/少年たちへ・二題 28
土居廣之/出産 32
俳句作品
文月奈津/ミニ水仙 26           瀬戸谷はるか/無言館 27
寄塙評論
村上利雄/九十号読後感想 38
随想作品
芝野晴男/料理教室 34           秋山田鶴子/本のお墓 35
小松二三子/はつ体験 36
評論
谷口平八郎/幸徳秋水事件と文学者たち(4)37
後書き 40
執筆者名簿 41
表紙 田辺陶豊《浜辺の二人》



 花時間/文月奈津

心配しないで
兵器じゃないから

あたしは
つぼみ

アマリリス


こくいっこく


角度変えているのは
標的探しているのじゃなくて
開花のじゅんびをしているだけ

ほら
見て
あたしの内部
核心がすでに花かげを得て
出発の
ベル
鳴り始めている
でしょう



 今号の巻頭作品です。いきなり「兵器」という言葉が出てきてびっくりしましたけど、この効果は大きいと思います。「角度変えている」「標的探している」「核心」などは兵器との関連もあって、ここは巧いですね。兵器と花がこれだけ言葉で結ばれた詩も珍しいんじゃないでしょうか。お見事!



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