きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.6.11 軽井沢タリアセン・塩沢湖




2007.7.10(火)


 特に予定のない日。終日、いただいた本を読んで過ごしました。



季刊・詩と童謡『ぎんなん』61号
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2007.7.1 大阪府豊中市
ぎんなんの会・島田陽子氏発行  400円

<目次>
いいんだよ/お姉ちゃんと金魚…萬里小路和美 1 しんこきゅうする/初夏…むらせともこ 2
ほどうきょう…ゆうきあい 3        放課後風景…池田直恵 4
春の山/春の雨/小鳥/トノサマバッタ/つくし/どろんこソフトクリーム/たんぽぽの綿毛/ふるさと…いたいせいいち 5
わたしの風船…井上良子 6         宿題/りょうき10歳…井村育子 7
桜/白い顔…柿本香苗 8          レール…川添英一 9
夜中のサンポ/心…小林育子 10       浦島太郎/てんとう虫…相良由貴子 11
いかる…島田陽子 12            ちょこっと/七月の朝…すぎもとれいこ 13
尺とり虫/ゆすらんめ(ゆすら梅)…富岡みち 14 いそがない電車/チューリップ…富田栄子 15
マンザイシ/髪かざり…中島和子 16     助手…中野たき子 17
は/ゆりちゃん…名古きよえ 18       ねむるお地蔵さん/古墳…畑中圭一 19
くるまがすき/こおり/色がほしい・藤本美智子20 エンスト中/カバカバ カバさん…前山敬子 21
あまだれ/あめがだいすき…松本純子 22

本の散歩道  畑中圭一・島田陽子 23
かふぇてらす (匿名希望)・松本純子 26
1NFORMATION 27
あとがき 28
表紙デザイン 卯月まお



 宿題/井村育子

もぉっと もっと 遊びたい
先生 宿題 出さないで
子供は とっても 忙しい
ピアノに英語に 塾行って
お手伝いもするんだよ
宿題 すまなきゃ 遊べない
母さん おこると こわいんだ

早ーく 早く 遊びたい
晴れたら 宿題 出さないで
子供は とっても 忙しい
おひさま ボールに チョウだって
早くおいでと待っている
宿題 してたら 日がくれる
宿題 出すなら 雨の日に

 今どきの「子供は とっても 忙しい」んでしょうね。私が子どもだった頃の、半世紀前には考えられなかった「ピアノに英語に 塾行って」、その上「宿題」ですから、ある意味では可哀想という気もします。それでもやっぱり「早ーく 早く 遊びたい」という子どもの気持をつかまえて、「宿題 出すなら 雨の日に」してと、うまく押さえました。子どもの視点に立った佳品だと思います。



詩誌『鳥』12号
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2007.7.25 さいたま市大宮区
力丸瑞穂氏方発行所  500円

<目次>

猫・大根…力丸瑞穂 2           神田川8・9…金井節子 4
花開け・好きな作家…八隅早苗 6      桜・斑鳩の里…倉科絢子 8
ひざ小僧・花まつり…田嶋純子 10      悪の夢…菊田 守 12
評論 この一篇(4)−丸山 薫…菊田 守 13
小鳥の小径…16
□八隅早苗 □金井節子 □力丸瑞穂 □田嶋純子 □倉科絢子 □菊田 守
編集後記…19
表紙…西村道子



 神田川 9/金井節子

  ――砂埃

突然 叩きを持ち出した父は
隙間から入り込むザラザラの
砂埃を叩き出す
「この!いい気になりやがって」

黄色い砂埃が辺りを染め
畑には新聞紙の切れ端が舞い上がる
そんな 昼下がり
東京から叔父さんがきた
またかというようなそっけない母の態度だが
叔父さんは私の母の弟だ
――姉ちゃん 今度こそ大丈夫だ
  義兄さん 迷惑かけっぱなしで
  おふくろも年だしなあ――
ほろっとするような事をいつも二言、三言いう

長居は無用とばかり
父からは古いカメラと
進駐軍の払い下げ 皮のジャンバーを借り
母からはこそこそお金の無心
「暮れないうちにさあ早くいきな」
――姉ちゃんありがとよ
砂埃のように走り去っていった

「あの顔色ではまだまだやってるな」
父はぼそっと言う
「本当にすみません すまないことで」
母の声が風に消される

今頃叔父さんは四キロ先の駅舎に
上りの省線を待つだろう

 ヒロポン中毒の「叔父さん」を扱った連載「神田川」は9まで来ました。「あの顔色ではまだまだやってるな」という言葉はヒロポンのことを指していると思ってよいでしょう。毎回「叔父さん」の人間像がよく描かれている作品ですが、今回は「隙間から入り込むザラザラの/砂埃」、「畑には新聞紙の切れ端が舞い上がる」という情景描写にも注目しています。敗戦直後の隙間だらけの家屋、糞尿の撒かれた畑は、今の時代には想像もできないでしょうが、日本のひとつの原風景です。それを背景とした佳品と云えましょう。



詩とエッセイ『橋』121号
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2007.7.7 栃木県宇都宮市
橋の会・野澤俊雄氏発行  800円

<目次>
中津原範之さんを偲んでT
◇放心楽墨/野澤俊雄 4          ◇純粋を病んだ人/金子一癖斎 6
◇中津原さんを偲んで/瀧 葉子 10     ◇いただいた文字/都留さち子 14
作品T
◇ある時/都留さちこ 16          ◇しだれ桜/斎藤さち子 18
◇長い夜/冨澤宏子 20           ◇刺/相馬梅子 22
◇物音・他/簑和田初江 24         ◇雨蛙のサンバ・他/鈴木輝代 26
◇詩を読む時/江連やす子 28        ◇疑い・他/高島小夜子 30
◇コーヒータイム/瀧 葉子 32
中津原範之さんを偲んでU
◇結実/草薙 定 34            ◇(追悼)/國井世津子 36
◇(追悼)/高島小夜子 36          ◇(追悼)/冨澤宏子 37
◇さようなら中津原範之さん/相馬梅子 37  ◇おわかれ/そのあいか 38
◇中津原先生ありがとう/江連やす子 40   ◇追悼の言葉/若色昌幸 40
◇中津原さん/和田 清 41         ◇中津原さんを偲んで/鈴木輝代 41
◇お話をしたかった/大木てるよ 42     ◇さようなら/斎藤さち子 43
◇中津原さんの思い出/宇賀神忍 44     ◇(追悼)/山形照美 45
作品U
◇イヌノフグリ/大木てるよ 46       ◇人間・他/和田 清 48
◇そんなものさ/戸井みちお 50       ◇昼の蛍/國井世津子 52
◇夜の手/山形照美 54           ◇ティーショット/若色昌幸 56
◇いのち/そのあいか 58          ◇介護U−父から−/酒井 厚 60
◇ひかりなでしこ/野澤俊雄 62
橋短信 風声/野澤俊雄 64
受贈本・詩誌一覧 65
編集後記 66
題字 中津原範之



 雪影/中津原範之

星雪が降りはじめていた
広い広い雪の野の
果ては
すでに夕ぐれていた
私は
雪の上を歩いていた
風が出て来た
雪の粉が
舞い上がった
空も雪色
風も雪色
音も雪色

私は
私に与えられた
残りの時間の中を
一人で歩いていた
私が残した
雪の上の足跡は
やがて消える
雪の影であった   (橋・87 一九九六・三)

 今号は今年3月末に亡くなったという中津原範之さんの追悼号になっていました。まだ73歳という若さだったようです。紹介した作品は瀧葉子さんが「中津原さんを偲んで」という追悼文の中で採り上げていた3編の作品、「雪影」「コオロギ」「習死」のうちの1編です。10年以上前の作品ですが「私は/私に与えられた/残りの時間の中を/一人で歩いていた」というフレーズに、作者の潔さを感じます。なお、
「習死」はすでに拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせてご鑑賞いただければと思います。
 『橋』の題字をお書きになっている方だとは認識していましたが、おそらくお会いしたことはないと思います。改めて作品を拝読すると、あたたか味のある方だったのだなと感じます。ご冥福をお祈りいたします。



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