きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2007.9.9 東京・浅草 |
2007.10.28(日)
板橋区・板橋詩人連盟・板橋文化団体連合会主催の「2007年区民文化祭・詩のつどい」に初めて招かれて出席してきました。午後1時半から板橋区立文化会館の大会議室を使って、200人ほどの人が集まって大盛会でした。日本詩人クラブと日本現代詩人会が後援でしたので、日本詩人クラブの会員であるお前も詩の朗読に参加しろ、というものでした。久しぶりに自作詩「居酒屋」を朗読させてもらいました。ちなみに他の朗読者は新井豊吉、田中眞由美、長谷川忍、常木みや子、平野秀哉、水島美津江、山本みち子の各氏。いつも親しくさせてもらっている詩人ばかりです。
区単位で詩のつどいを毎年やっているのは、おそらく全国でも板橋区だけではないでしょうか。区長も挨拶に見えて、区としても力を入れていることが判ります。会は菊地貞三さんの講演のほか、区民文化祭詩の部の入賞者授賞式やコーラスグループのコーラスもあって賑やかなものでした。写真はコーラスグループあかしあ≠フ皆さんです。美しいハーモニーを堪能させていただきました。
懇親会は文化会館地下のレストランを借り切って、二次会は東武東上線大山駅近くの居酒屋。大山って、初めて降りた駅ですけど、近くには私好みの居酒屋さんがいっぱい、良い処です(^^;
考えてみると、板橋で呑んだというのは初めてです。朗読を1回やっただけで、ずいぶんと楽しい思いをさせていただいたなあと思います。お呼び下さり、ありがとうございました。
○板橋区民詩集『樹林』22集 |
2007.10.28 東京都板橋区 板橋詩人連盟編・板橋区発行 非売品 |
<目次>
北野明治 ノートとエンピツと消しゴム…4 高梨正雄 ちょっと休んで…5
長田 康 私の心…6 大野ちよ子 夜泣き…6
はらだひろし 季節外れの雨…7 竹下義雄 運動会…8
一ノ瀬美智子 オカリナ…9 北村愛子 人生の味…10
山川久三 顔…11 中原道夫 黒い布…12
長谷節子 秋風…13 中瀬三雄 冬のカマキリ…14
きたまこと あの輝き…15 立会川二郎 道…16
大澤玲子 手まり唄…17 真壁秀樹 岩地… 18
ゆあさ京子 森の家…18 吉田義昭 風の時間…19
平田陽子 夜空…20 上田光由 待っているのだ…21
河野昌子 祖母…22 宇田川正雄 生い立ち…23
今成 敞 音の記憶…24 小野正和 闖入者…25
佐藤詠子 めくれゆく街…26 斎藤幸雄 列車…27
外山美智子 石神井川の辺…27 内山マリ 君を…28
清水久枝 あっちゃん…29 安齋慶長 屁…30
庄司芳江 助かった私の命(平和をかみしめて)31
山口敦子 ムンクの叫び…32
日野亜耶 夢 物語…33 内藤健治 伊勢町バイパス手術…34
鈴切幸子 揺れるままに…35 都路すみれ あなたの星…36
長岡明子 北風が口笛を…37 岡村 梢 セピア色の風景…38
柳澤武美 藤村何処だった…39 古澤志津子 眠り…40
川田裕子 その人に…41 小林正夫 空…42
仁志 恵 HAPPY…42 藤間かづゑ 舞踊六十年人生…43
掘之内稲子 空…44 綾部道代 自爆…45
内山美津子 北海道族行…45 つねみみつ お飾り…46
川崎夜詩子 美しい国…47 日原ゆきゑ 真音ちゃん…47
石川おさむ 至福…48 桐里こむぎ 年下の男 21歳…49
福井美穂 涙…50 わたうち・ちふみ 世話情浮名横道…51
指吸虫吉 むざんやな…52 長岡昭四郎 路地裏…53
川端美子 カナブン…54 武内香奈 花火…54
新谷恵美 二人の母…55 野々下郁子 思い直しなさい…56
新井君子 野火のごとくに…57 転石 光 求めて得られぬ愛ゆえに…58
宮崎利恵 ひとつの拍手に…58 高野トシ江 父母と戦争…59
小野幸子 黄昏白書…60 新井一雄 ある瞬間…61
山ア武久 平和永遠に…62 上村節子 休日に…63
小倉寿男 生と死と…64 田辺直美 父…65
田邊 茜 クジラとイルカの物語…66 下元歌子 はがき…67
小中学生の部
神田莱乃子 そらは どこまでも…67 大部真優 風…68
山崎友里花 空…68 沖住美咲 アルバム…69
あとがき…70
季節外れの雨/はらだひろし
季節外れの冷たい雨が
芽生えたばかりの草の葉襲う
毛根はしっかり大地と手つなぎしていて
そう易易 負けはしない
いつもこの季節に大地は歌い始め
何かあっても立ち上る
このたくましい潜在力とダイナミズムに
ひたすら感謝し感動する
優れた人間の力量は
ともすると季節にまで及んでいる
それでも大地は
そ知らぬ顔で歌いつづける
呼応してか 人は自己過信に気づき
自然美への親炙(しんしゃ)を胸声に奏で始め
大らかな大地の歌と
上手(うま)くコラボレートするだろう
季節外れの冷たい雨
自然のなせる業(わざ)
のまま……
ひそかに大地の歌を聴いていたい
濡れ若葉の上
背中すぼめる青蛙になぞらえて
上述の板橋区民文化祭・詩のつどいで頂戴しました。今年は参加が少なかったようですが、「小中学生の部」まである、まさに区民一体となった区民詩集です。紹介した詩は区長賞を受賞した作品です。「人間の力量は/ともすると季節にまで及」ぶようになってしまいましたが、「それでも大地は/そ知らぬ顔で歌いつづける」という、新たな視線を提示した作品と云えましょう。部分的には大地も汚染されてきていますが、大気汚染に比べればまだ「たくましい潜在力とダイナミズム」を持っているのかもしれません。最終連の「青蛙になぞらえ」たことも奏功している作品だと思いました。
○詩&エッセイ『む』8号 |
2007.10.15 山形県山形市 芝春也氏方・詩工房S発行 非売品 |
<目次>
◆安達敏史 P=短詩四篇 2 E=潔し! 4
◆阿部栄子 P=山河 6 E=欲 8
◆芝 春也 P=小詩集・スナップ(1) 10 E=詩と死−ある詩作ヒント− 14
◆いであつし P=大人のわるだくみ 16 E=詩人の戦争責任(2) 19
◆本郷和枝 E=少女 24 E=底知れないロマン 26
◆いとう柚子 P=からすうりの花 1・2 28 E=詩の中の〈英文法〉 31
◆あとがき・同人名簿 36
小詩集・スナップ(1)/芝 春也
大サービス
靴をはいて
まだ歩けない
秋晴れだから
だっこして
庭に出る
これが 葉っぱ
ちぎって口にもっていく
これが 花
ちぎって口にもっていく
だめだめ
ばっちいヨ
うう〜んと指差すのは
道路の方
(しかたないナ…)
ベビーカーに乗っけて
メイたんとじいちゃんの
うれしい散歩
メイたん ごきげん
じいちゃん 痛いひざ引きずって
小路を通って ランララ ラン
大通りへ出て ランララ ラン
ぐるっと廻って ランララ ラン
さあ 帰ろう
と向きを変えれば うう〜んと
だだをこねる
(しかたないナ…)
ベビーカー押して
足引きずって
ダイユーエイト → ツルハドラッグ
→ スーパーおーばん と
巡りめぐって
じいちゃんは
ついつい
出血大サービス
「小詩集・スナップ(1)」の総題のもとに5編の「メイたん」ものが載せられていました。ここでは最後に置かれた「大サービス」を紹介してみましたが、「じいちゃん」とありますから「メイたん」はお孫さんなのでしょう。「(しかたないナ…)」と思いながら、「痛いひざ引きずって」はいるものの「うれしい散歩」という気持が伝わってきます。そしてさらに「(しかたないナ…)」。「うう〜ん」と、この「(しかたないナ…)」の掛け合いが「じいちゃん」と「メイたん」のつながりを物語っている作品だと思いました。
○詩誌『帆翔』42号 |
2007.10.20 東京都小平市 《帆翔の会》岩井昭児氏発行 非売品 |
<目次>
風の道/坂本絢世 2 単眼の日々/長谷川吉雄 4
蟻/三橋美江 6 夏の朝、木陰で/大岳美帆 8
初夏を渡る/吉木幸子 10 末期の一幕/渡辺静夫 12
熱中症死者十三人と日記に書いた/荒木忠男 14
三才の記憶/岩井昭児 16
勾玉/小田垣晶子 18
随筆
午後の来訪者/坂本絢世 19 バカなブームのしわよせは…。/大岳美帆 20
横浜・伊勢佐木町懐古/三橋美江 21 少し怖かった話/小田垣晶子 22
一夜漬け/渡辺静夫 23
〔時代小説〕暁闇の星・後篇/赤木駿介 26
* * *
◎荒木忠男詩集『夕日は沈んだ』評/高石 貴 25
※受贈詩誌・詩集・書籍等紹介 2〜
※あとがき/同人連絡先 32
夏の朝、木陰で/大岳美帆
普段はほとんど使われることのない
河川敷の野球グランドは
犬たちの格好の運動場
そのグランドの片隅に
一本の木が立っている
雄々しく聳える木ではない
枝葉をたっぷり
繁らせているわけでもない
何の特徴もない一本の木
台風でグランドが浸水したときも
熱風の吹く雨のない夏の日も
葉を枯らすこともなく
ぽつりと立ち尽くす一本の木
カンカン照りの散歩の朝に
その木だけが与えてくれる
涼やかな日陰を
犬たちは知っていて
火照った身体を木陰に委ね
ひんやりとした芝に横たわる
地面からやわらかな冷たさが
伝わってくる
名も分らぬたった一本の木が
与えてくれる心地よさに
静かに感動する朝
日が昇るにつれて短くなる影
強烈な日差しを浴びながら
立ち尽くす木に
つかの間の安らぎの礼を告げ
息を整えた犬たちと
帰路に着く
「河川敷の野球グランド」の「そのグランドの片隅に/一本の木が立っている」光景は、私の家の側を流れる酒匂川支流でもときどき眼にします。「台風でグランドが浸水したときも/熱風の吹く雨のない夏の日も/葉を枯らすこともなく/ぽつりと立ち尽くす一本の木」という認識もあって、「何の特徴もない一本の木」ながら凄いものだなと遠くから眺めていました。しかし、ここでは実際に近寄って「涼やかな日陰」を享受しています。私のように遠くから眺めるだけでなく、近づいて「火照った身体を木陰に委ね」る「犬たち」の「心地よさ」が伝わってきました。体験に裏づけされた力強さを感じる作品です。最終連の「つかの間の安らぎの礼を告げ」るという行為も作品を良質なものにしていると思いました。
○林洋子氏詩集『西新宿の欅』 |
2007.10.10 東京都中野区 潮流出版社刊 2000円+税 |
<目次>
T
散りしく いぬぶなの木 8 萩 旗弁をたてる 10
山頂近くの小さな木 アポイかんば 14 閉鎖花 16
角榛 18 風にのる杉の花 20
藤 杉に咲く 22
U
あずさばらもみの木 26 針の葉たち 29
雪をとりこむ あおもりとどまつ 32 いぶき 針の葉をだす 34
葉をひらく ナツメヤシの木 37 葉をたたむ あづましゃくなげ 40
V
ねじ木 44 斜面に立つ ぶな 46
基部は木 48 平衡をとる みずなら 50
木に絡む いわがらみ 52 枝垂れる 54
W
降りつもる 58 山香ばし 61
殻斗につつむ 64 汽水域 マングローブ 66
おおばやしゃぶし 68 粘る種子 71
舞いおりる 74
X
レバノン杉 78 栂の木 81
鎌の葉 84 沈む木 87
新宿副都心欅通り 90 西新宿の欅 92
あとがき
西新宿の欅
欅並木南通り 銀ねず色の都庁舎がそびえる
並木の内側にもう一列 頭一つ丈低い欅たち
幹や梢は
蛍光ブルーとホワイトの明かりに縁どられ
ホテルの白い壁面に青く浮かんでいる
あの欅たちは 夕暮れのうす暗い空へ
さかさまに立てかけられた箒だ
西新宿の街路樹であれ
肥沃な関東ローム層の土にそだった林であっても
君たちは いつでも
やわらかな光をたくさんの細い枝でうけとめてきた
一枚一枚の葉は
冬芽のなかで
軸にたいして直角にたたまれ
梢は幹に鋭角に伸びていく
葉をひらけば
おもてはみな陽の方向を向く木
黄色から褐色に染まりはじめているはずの葉には
その色もなく
心材のくれない褐色をにじませる
なめらかな幹や梢も
いまや蛍光色の帯でしかない
さかさまの箒たち
なまあたたかな西新宿の夜空を
おもいきり掃くのだ
南通りの朝
建ちならんだ高層ビル群の
半円錐形のビルのなかから
白いシャツ姿の男性たちがあらわれる
すこし照れたようなおよび腰で
短いシュロ箒を手に
低い植え込みに打ち捨てられたスチール缶を拾い
あの欅たちの振り落とした落ち葉を
掃いている
14年ぶりの第3詩集とのことです。日本では珍しい樹木に関する作品ばかりを集めた詩集です。著者は樹木の詩を意図して書き続ける詩人なのでしょう。ここでは巻末に収録されたタイトルポエムを紹介してみました。「西新宿の欅」は「ホテルの白い壁面に青く浮かんでいる」「さかさまに立てかけられた箒だ」という見方がおもしろく、最終連の「短いシュロ箒を手に」した「すこし照れたようなおよび腰」の「白いシャツ姿の男性たち」にも対応して、良い効果を出していると思います。
本詩集中の「萩 旗弁をたてる」は、この4月に拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて樹木の詩をお楽しみください。
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