きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.11.21 静岡県裾野市・五竜の滝 |
2008.12.1(月)
その1
入院中の父親を見舞って、あとは終日いただいた本を拝読していました。
○石黒忠氏詩集『夜の虫たちに』 |
2008.10.31 東京都新宿区 思潮社刊 2400円+税 |
<目次>
T
花たたきの雨にうたれて 8 草を刈る日々 10
鶏の顔になった女 14 夜の虫たちに 18
わが割礼の日 22 ぼくらのたったひとつの海では 26
動かない船 30 ビリルビン黄帝の黄昏 36
さざれ石こけむす舌も 42 墓地裏・ベッドハウス 48
向日葵についての断章 52 首塚周辺縁起譚 58
シルバー二百四十日のマーチ 62 シルバー 三度目の冬 66
コードは「消えた人生」 70
U
「マルテの手記」に寄せて 78 「マルテの手記」に寄せて への覚書 94
「溶ける神」の時代 跋にかえて 長谷川龍生 99
あとがき 108
夜の虫たちに
地平線に
点滅するものはたしかに
遠い花火だ
漆黒の海のうえの漆黒の空
この上にどんな闇をかさねることができよう
めぐりにある草っ原では
鈴を振りながら落下しつづける虫たち
その数 数千万
スコールをとりあげられた熱帯の日夜の
絶滅のためのデボリューション
音の流砂
注ぎ込んでくる鈴虫 松虫 轡虫それら無秩序な音の崩落
沈む
たしかに沈む
風景を 頭上はるかな天井にのこして
沈む はてしなく沈む
落下の異変に仰天して動けなくなったか蛾一匹
網戸に張りついて中を窺う
大きく開かれた二つの翰の下に
遠くで点滅する花火
水平感覚が戻ってきても
蛾と点滅する花火
それらは護符となって虫の音の流砂に封印する
立棺 垂直の檻 立型メニエル症候群
見えている風景にまでは浮上できない
この床踏み抜き感覚は
落下傘ではない
軌道を失ったエレベーターのそれだ
孤立を許さぬ液状化現象
立ち止まる時にすら崩落は止まらない
ぼくが立ち止まるとすれば
管のように立つのだろう
もぬけの殻のぼく
筒抜ける音の流砂
折りかさなり生き埋めになる虫たち
死んでもラッパを放さない虫たちは
鈴虫は鈴虫 轡虫は轡虫 声色を使ったりはしない
不同調を貫き通す
ぼくは集音器となって贖罪のように立つ
足下をたえず脅かされながら
拙HPでは初めての紹介になります。ここではタイトルポエムを紹介してみました。2連目の〈デボリューション〉の直訳は価値を減じる≠アとで、転じて権限委譲≠ニなっていました。他に退化≠ニいう意味もあるようですから、ここは絶滅のための退化≠ニ採ってよさそうです。作品は〈夜の虫たちに〉寄せる思いが〈ぼく〉と同化して見事です。〈足下をたえず脅かされながら〉〈贖罪のように立つ〉〈ぼく〉は、現代人の置かれている危うさの本質を表出させていると思いました。
○詩誌『さちや』141号 |
2008.11 岐阜県岐阜市 非売品 篠田康彦氏方編集室・さちやの会発行 |
<目次>
〈詩〉
とりあえず/天木三枝子 2 葡萄/井手ひとみ 3
たそがれの夢/小山智子 4 今更ながら/松下のりを 5
山村/山崎 啓 6 ふうせん/水島睦枝 8
残照/鬼頭武子 9 移動動物園/竹腰 素 10
青の絶対値/竹腰 素 11 共喰い投網かぶせたぐりに/藤吉秀彦 12
分水嶺物語/佐藤暁美 13 ほとけさま/河原修吾 14
躯/河原修吾 14 服装/大川康晴 16
息苦しい時代/大川康晴 18 ツクツクホウシ/斉藤なつみ 20
今は/斉藤なつみ 20 川と人間/大熊春一 21
踏みつけず/篠田康彦 23
〈エッセイ〉
平光善久ノート.戦火への放念/藤吉秀彦 24 「こくばん」(松下・井手・鬼頭・大熊) 32
編集後記 34
○詩誌『存在』99号 |
2008.10.31 岐阜県各務原市 河田忠氏編集・存在社発行 500円 |
<目次>
水位………………………………向井 成子…2 二人へ……………………………村岡 栄…4
川のほとり………………………村瀬 和子…6 伊君の事…………………………平石三千夫…8
海…………………………………稲垣 和秋…10 蘇生………………………………井手ひとみ…12
せみの会話………………………冨永 覚梁…14 船木満洲夫・追悼………………河田 忠…16
テーブルorデスクandチェア.…伊藤 成雄…18 編集後記……………………………………裏表紙
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