きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.2.3 千葉県鴨川市・仁右衛門島




2009.3.3(火)


 またまた伊東市・一碧湖畔の「池田20世紀美術館」に行ってきました。今回は昔の職場の仲間2人と一緒です。というか、日本画家でもある仲間の一人、Tさんの師匠・近藤弘明さんが、新春特別展「幻想の絵画旅行」に出品していますので、それを観にいこうということになったものです。近藤さん宅には一度伺ったこともありますし、私にとっても身近に感じられる画家です。

 近藤さんはもとよりダリ、難波田史男、福沢一郎などの見慣れた絵の他に、新たに呉R三、佐々木正芳、横地康國、三橋英子などの絵に惹かれました。20世紀絵画にはもともと幻想的な雰囲気があると思っていますが、こうやって並べられると改めて20世紀とは何だっかのかと考えさせられ、良い企画だったと思います。

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 写真は貴賓室にて。池田20世紀には何十回と行っていますが、貴賓室に通されたのは初めてです。絵描きのTさんが学芸員とも親しく、そのお陰です。広い窓の向こうには一碧湖の別荘地が。展示されている絵をお見せできないのは残念ですが、一度訪れてみてください。20世紀美術愛好家には絶対にお薦めです。




高木秋尾氏詩集『あかりすい』
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2009.3.10 茨城県龍ヶ崎市 ワニ・プロダクション刊
1200円+税

<目次>
あかりすい 8      ぷちぷち 12       かんろ 16
のろま 20        ひきずり 23       どうすベー 26
くすくす女 30      ふらりどん 34      ややこし 38
ひゃっくりさん 41    ひさかたぶり 46     いきているこぽこぽ 50
人間へんげ 53      月の脈が昇る 56     鼻の穴・狢の穴 62
歌枕・ばね・と・ぜんまい
.65 ひがな小僧 68      でっぱりと膝小僧 72
うつつの里 76      もののけ通り商店街 79  化ける術 82
龍生だるま 86
あとがき 90       装丁 原田圭太




 
あかりすい

じっちゃんのわらしのころには村の土葬の墓場に
あおじろいひと魂が浮いていたそうな。
ひとの骨がしぜんの水に洗われて
髄の光りがあかりだま。
あたりまえのように浮かんでいたそうな。
ただただ浮いていたのだそうな。

さっこんのあたりまえはといえば
はなの都のとっぱずれ
商店街から曲折して少しいりくんだ
いたみ路地の家や空地のうすくらがりに
まよいでたようになにやら浮く気配があって
とりわけ明るそうな窓を
覗いているらしいという噂。
あたりまえのところに
あたりまえでなくでてくるものは
さっこんの妖怪〈あかりすい〉で
ぼうおっと青じろい水銀灯のようにふくらむ。

酔いどれて路地をくねって歩く男にだけ見える妖怪。
あかり呪いの鬼ごころがおんなの顔して
あおあおと浮いている。
しあわせあかりの窓の外でぼんやり浮いているだけだが
ファッションは考える。
きょうは何を着て浮こうかしら。
だが首からしたはみえない。
やがて窓明かりを吸い込みはじめ
怪しく鬼灯いろにそまっていく水銀灯。
妖怪〈あかりすい〉に
しあわせ明かりをまい夜吸い取られた窓は
やがてゆがんであおあおと闇に浮く。

〈あかりすい〉はあいまい首。
たったそれだけのことだが
酔いどれて路地をくねって歩くばかりの男も
あかりすいをみたとたんあおあおと病んでいく。
しあわせ咬みたいおんなの顔がどこかのだれかに見えて
咬むものはあなただとあけた口に
むすうにならんだ蝋燭がさらに飢えた口をあけて
明かりを吸いこんでむせているのだから。

 高木さんとは古い知り合いですし、作品は詩誌『二行詩』などで多く拝読していましたから、拙HPでは当然、詩集の紹介をしていると思いましたが、これが初めてでした。13年ぶりの第8詩集のようですので、紹介の機会がなかったことになります。
 ここではタイトルポエムでもあり巻頭詩でもある「あかりすい」を紹介してみました。『二行詩』で妖怪の詩を書き続けてきた高木さんらしい作品と云えましょう。〈さっこんのあたりまえ〉である〈あかりすい〉は、〈しあわせ明かりをまい夜吸い取〉る妖怪のようです。私には庶民の幸せを吸い取ることによって繁栄していく、経済という怪物に見えた作品です。




北野一子氏詩集『道知辺』
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2009.3.10 東京都千代田区 砂子屋書房刊
2500円+税

<目次>
T
朝の祈り 10       野わけ 12        この術で 14
みそかしぐれ 16     走って四十五年 18    落花生 20
戻る鳥 22        うろ有漏と 24      半夏 26
ココロを乗せて 28    過ぎゆくままに 30
U
道知辺 36        焼け跡の子供だった 38  形見衣 40
おもかげの町 42     寺も 町もなく 44    帰ろうよ 48
数奇屋橋 52
V
ひょんの木に出会った 56 砂洲の町 60       小津橋 64
海辺橋 66        赤い橋へ 70       汐見橋 74
胡蝶侘助 78       夢たがえ 82       白い朝 86
とうとう(到頭)88    卯の花 92        小名木川を背に 96
あとがき 100
装本・倉本 修




詩誌『パレット倶楽部』7号
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2009.3.3 埼玉県三郷市
植村氏方・パレット倶楽部発行 非売品

<目次>
藤本敦子……シュート…2
熊沢加代子…雪の降る日 蔓珠沙華…6
笠間由紀子…生きている シンプル…10
重永雅子……風にのって枯葉が ポインセチアは樹木だった…14
植村秋江……いわし雲を見た日 壁紙をかえて…19
重永雅子……勝海舟の悼詩…24
<スケッチノート>…26
あとがき



   
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