きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.2.3 千葉県鴨川市・仁右衛門島 |
2009.3.7(土)
午後から日本詩人クラブの詩論研究会が東京大学駒場Tキャンパスで開かれました。講演は「パウル・ツェランという傷」〜ユダヤ・ドイツ詩史の余白に〜 と題され、講師は日本詩人クラブ会員で愛知県立芸術大学准教授の関口裕昭氏。まだ40代という若い先生ですが、『パウル・ツェランへの旅』でオーストリア文学研究会賞、『評伝 パウル・ツェラン』で小野十三郎賞特別賞などを受賞しているドイツ文学研究者です。
ドイツ系ユダヤ人の詩人パウル・ツェラン(1920〜70)の詩には、「死のフーガ」をはじめほとんどの作品にアウシュヴィッツ体験から受けた傷が深く刻印されていて、「傷(Wunde)」という形象もしばしば現れると教わりました。1960年以降のツェランの詩には、ハイネ、カフカ、フロイト、ローザ・ルクセンブルク、ネリー・ザックス等、ユダヤ系作家の引用が頻繁に登場しますが、その多くが民族の負った「傷」をテーマにしているそうです。豊富な資料をもとに40名近い人がツェランの詩と生涯を学びました。
○設楽信子氏詩集『白い壁』 |
2009.2.28 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
T
陶芸教室 8 ふりかえる 12
ご飯の湯気 15 大人は言うのです 18
父さんの日 21 謝ってもだめなんです 25
絵を描きます 28 サルスベリ 31
シンナーよりも 34 白い壁 38
待つのです 42 関係 あったの 46
気持ちって色みたい 49 欲しかったんです 52
怖いお兄ちゃんと思ってて 55 野宿したことあるんです 59
私を叱ってくれて 63 夜になりました 67
私は ここには 70 「それ違う」 74
私のやってるところ 77 欲しいものを手に入れて 81
レース編み 85 あれも これも 89
私がやっておけば 93
U
あの日 98 蜘蛛の巣 102
困った こまった 106 「私の普通」と「素直」 110
「ここのきまりですから」 114. ここは平和です 119
そえがき 122
あとがき 126
白い壁
ここは学園です
いま 独りのお部屋にいるのです
周りは静かです
ここの壁はみんな白いです
白い壁が話し掛けてくれました
「あなたも
たいへんだったのね」
私はそっと答えます
夜の渋谷で……
赤や青の重なったライトがね
うす暗い壁や客席にうつって
お洒の匂い
たわいないお喋りで
時間が過ぎていったの
私の居場所はここしか無いと
思っていたの
小学生の頃は母さんの
自慢の娘だったの
本当の自分を忘れていたの
自分に嘘ついて生活して
嘘つき過ぎて
嘘の方が楽しくなって
私は十七歳になったのよ
人の暮らしには白と黒の
部分があるでしょう
黒い部分を見てきたの
ここでは
白い部分がわかるのよ
見た目 表面的
渋谷の暮らしに戻ったら
自分の弱気で崩れたら
私が駄目になるのよね
白い壁と色々色々話しました
白い壁は黙って分かってくれました
本当の私にかえります
お名前は<したら・のぶこ>さんとお読みします。第1詩集のようです。ご出版おめでとうございます。「あとがき」では〈いつの間にか勤務年数が三十年を過ぎておりました〉と書かれていますが、そのほとんどが看護師として少年院に勤務していたようです。多くの作品がそれを素材にしていると思えます。ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈白い壁〉は〈学園〉の〈独りのお部屋〉の壁。〈本当の私にかえ〉らせてくれる壁なのかもしれません。未成年者の非行ばかりではなく、その元を作り出している大人社会を鋭く抉る問題詩集だと思いました。ぜひ読んでみてください。
○総合文芸誌『まほろば』69号 |
2009.3.10 奈良県奈良市 河野アサ氏発行 1500円 |
<目次>
■詩・短歌
失われてゆくものへの哀歌 ……望月 苑巳 5 思い出の雛祭り …………………笠原三津子 6
梅・二〇〇八年の ………………村山 精二 7 ムグンファの人 …………………綾部 健二 8
市民は怒れよ ……………………平賀 勝利 9 無名の星 …………………………宮内 憲夫 11
一秒の席 …………………………宮内 憲夫 12 『人は争うものだ!』その(1)…奥宮 教生 13
『人は争うものだ!』その(2)…奥宮 教生 14 雛の日に …………………………池田 藍 15
心の愛 ……………………………河野 善充 16 影 …………………………………時代 駅舎 18
卒業 ………………………………時代 駅舎 19 リトルボイス(Tanka・3)…時代 駅舎 21
リトルボイス(Haiku・3)…時代 駅舎 22 チュニスの宿で …………………石田 天祐 23
海辺の宿 …………………………石田 天祐 24 わが眠り姫 ………………………石田 天祐 25
移ろい ……………………………石田 天祐 26 誕生日祝い ………………………石田 天祐 27
散歩 ………………………………石田 天祐 28 雛祭り ……………………………石田 天祐 29
春爛漫 ……………………………石田 天祐 30 アーリー・モダン・ローズ ……石田 天祐 31
義兄の死(遠藤 正を悼む)……石田 天祐 32 雪のひとひら ……………………久我久美子 33
■戯曲 吉良上野介(全四幕)…阪上 誠一 35
■エッセイ
天衣無縫 …………………………藤田 健二 62 語と語のつながり方は掛け算
心の愛 ……………………………河野 善充 72 であるということ …原内 信光 63
ありがとう ………………………河野 善充 73 追悼 詩人 三木昇様に捧ぐ …笠原三津子 74
約束 ………………………………各務 麗至 75 ある詩篇から ……………………北岡 善寿 77
回想・吉野氏 ……………………亀井はるみ 82 異人邂逅記(その三)麻生知子 …石田 天祐 86
零落記 ……………………………石田 天祐 90 忍性芳典行録 ……………………田島 毓堂 96
二〇〇一年トルコ紀行 …………冨貴 高司 102
■童話
雪の夜 ……………………………大頭 昭一 111. 葉っぱの上で ……………………大頭 昭一 113
■小説
轍のあとを 最終回 ……………久我久美子 115. 昼食会 ……………………………亀井はるみ 130
からくり時計 ……………………石原 滝子 134. ヨイトサット(二)………………小間 甫 141
真夏の夜の夢 ……………………山田 一好 158 「まほろば」(二)…………………河野 アサ 165
■論考
相撲史研究ノート(四)…………石田 天祐 169. 偽史倭人伝 ………………………石田 天祐 175
イザナミ語造語辞典(七)………石田 天祐 180. 桃太郎伝説(桃田有造氏を悼む)…石田 天祐 188
編集後記 …………………………石田 天祐 190
○表紙絵「渓流秋彩」とカット 山田 一好 ○カット ねねこすず子
今号では拙詩「梅・二〇〇八年の」を掲載していただきました。御礼申し上げます。
○詩とエッセイ『千年樹』37号 九年輪記念号 |
2009.2.22 長崎県諌早市 岡耕秋氏発行 500円 |
<目次>
詩
隠れん坊・夕暮れ/わたなべえいこ 2 ちりぢりの雲・夕方/早藤 猛 6
つゆ草・五度目の妻/松尾静子 10 春にあけて/和田文雄 14
すずめ色の・窓辺・立ち止まる/田中 掌 16 濱村という村・海辺で/高森 保 22
北の砂丘で/佐々木−塵 26 今年の冬は鳥が少ない・寒の入りの日/松富士将和 30
ばらの剪定・ヒヨドリの贈りもの・小さなこうふく/岡 耕秋 36
エッセイほか
自由の鐘(八)/日高誠一 42 失われた系譜から/森田 薫 46
古き佳き日々(三四)/三谷晋一 51 モンゴル通勤(二)/早藤 猛 54
波のたわむれ/木下健枝 58
千年樹の窓から 九年輪記念エッセイ 62
海月なす漂ひて 佐々木一麿/正月と年賀状 高森 保/富士山とは 早藤 猛/アンチ・エイジング・ドック 日高誠一/最後の食事 松尾静子/九年輪記念号に寄せて 松富士将和/ある山荘の思い出 森田 薫/里の春 和田文雄/昔のお正月 わたなべえいこ/年年歳歳 岡 耕秋
九年輪索引 三三〜三六号索引・執筆者紹介 73. 樹蔭雑考/岡 耕秋 77
『千年樹』受贈詩誌・詩集等一覧/岡 耕秋 78. 編集後記ほか/岡 耕秋 80
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