きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.5.23 静岡 中勘助文学記念館




2010.6.21(月)


 裏の畑に雑草がグングンと伸びています。畑全体に何かを植えていればそんなに草も生えないんでしょうが、3分の1ほどしか使っていません。使っていない部分はコレデモカという具合に伸びてきます。
 夕方、涼しくなった頃を見計って草むしりをしました。作物を植えている周辺だけですけど、それでもたっぷり1時間は懸かってしまいました。残り全部を手作業では無理なので耕運機で掘り起こしてしまうか、草刈機を買ってきて処理するか、ちょっと悩みます。
 農家の苦労が少しは分かった気でいます。百姓は雑草との闘いと聞いていましたけど、わずかな畑でもこの苦労。農作物は感謝して食べないといけませんね。




杉本知政氏詩集『迷い蝶』
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2010.7.6 東京都板橋区 コールサック社刊
2000円+税

<目次>
T 迷い蝶
声の無い会話 10              空を裂く言葉のように 14
語りかけて 18               風の囁き 20
見続けて何時も 24             空の里 28
すこしずれた所から 32           落葉の向こうへ 36
瞥見 40                  亜希の実 44
故里の柿の実 48              響きのない跫音 52
白い鳥 56                 迷い蝶 60
U 海の瞳
海の瞳 故福中都生子氏へ捧ぐ
.H20・2・9 66  墓掘りニックに 70
島は忘れなかった 72            義兄
(あに)の夏 76
土橋の記憶
(1)橋の周り 80              (2)兵士の朝 83
(3)峠の航海者たち 87
火の雨降る夜の記憶 92
V 明日の旅
声が聴えて 98               二つの月に 102
うそ 106
.                 朝の台所から 108
時には空を飛んで 112
.           父の仕種で 116
旅へ 120
.                 コーヒーのある風景 124
昼の夢
 その一 −昼の夢− 126
.          その二 −日の丸弁当− 128
 その三 −悲しい因果− 130
西域夢幻 134
.               明日の旅 138
あとがき 140
略歴 142




 
迷い蝶

何もすることが無いからではない
断続的な雨手の痛みに耐えるのが辛く
まぎらわすため畑を耕すことにした

今年は殆ど一年の間
首一つ世の中から引っ込め
ひたすら静けさに身体を沈めやり過してきた
時には痛みの合間を縫い
思いの翼を広げたり畳んだりして
未だ知らぬ国を地図の上で旅したり
長く病んでいる友へ届かぬ言葉を呟いたりもした

畑の害虫予防には
寒の間 晒すのが有効だと
うろ覚えの知識をなぞって
スコップでガバッと土塊を起した
おっ 金
(かなぶん)と兜虫(かぶとむし)の桶が出て来た
そおうと元の土の中へ戻してやる
長い長い時をつなぎ合せ
継ぎ継がれたいのちなのだから
隣の小松菜や白菜の葉陰には
冬を迎えながら
生涯を終えられない青虫や蝶の姿が見える
この星に季節を巡らす歯車が
少しずつ狂い始めていますよと
風が肩越しに声を掛け通り過ぎて行く
少し憤りの混じった悲しみを背に乗せ
還れない季節を目指し蝶は飛んで行った
詫びに似た気持ちが少し後を追っかけていた

 詩集としては5年ぶりの第7詩集になるようですが、その他に随筆集・詩画集も出版なさっています。ここではタイトルポエムを紹介してみました。隠遁にも似た〈首一つ世の中から引っ込め/ひたすら静けさに身体を沈めやり過してきた〉という作中人物の姿勢が、〈冬を迎えながら/生涯を終えられない青虫や蝶〉と重なって見えるのでしょうか。生物の悲しみを深いところで受け止めていると思います。〈詫びに似た気持ち〉という詩語からは著者の普段の生活が見えるように感じました。




月刊詩誌『柵』283号
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2010.6.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 詩集賞とクリチシズムの介在 本年度詩集賞にちなんで…中村不二夫 76
戦後史の言語空間 続・(6) 詩人たち…森 徳治 80
流動する今日の世界の中で日本の詩とは(64) 与謝野晶子の再評価 朗読とパーフオーマンスの間…水埼野里子 84
風見鶏 志崎 純 山口賀代子 杜みち子 高田太郎 澤山すみへ 88
現代情況論ノート(52) 歴史の意地悪−「カチンの森」…石原 武 90

平野 秀哉 うた ソネット 4        野老比左子 つるぎの舞 6
進  一男 噴出せよ 8           織田美沙子 諸葛菜 10
中原 道夫 猫 12              肌勢とみ子 ひとはなぜ 14
佐藤 勝太 狼幻想 16            松田 悦子 恋の起点 18
小城江壮智 いま こうして水を撒いているが… 20
黒田 えみ からっぽの遊園地で 22      長谷川昭子 はじめての春から 24
若狭 雅裕 梅雨晴れ間 26          名古きよえ お婆さんの後姿 28
小野  肇 むかし話 30           北村 愛子 笑顔をたやさないお方 32
山崎  森 花冷えの鎌倉 34         南  邦和 両班ひげ 37
秋本カズ子 兆し 40             郡山  直 図書館の上にかかった月 42
水木 萌子 染みる 44            門林 岩雄 立ち話 蟹 早春 46
月谷小夜子 出張 48             鈴木 一成 もういいぜ 50
小沢 千恵 暗闇 52             八幡 堅造 親の意見と冷や酒は… 54
西森美智子 テンポ 56            北野 明治 デス・バイ・ハンギングそして 再び… 58
米元久美子 家族 60             中林 経城 壁 62
川端 律子 みもざの木 64          安森ソノ子 舞踊「淀君」によせて 66
柳原 省三 しんどろーむ 68         江良亜来子 置く 70
前田 孝一 桜木の目覚め 72         今泉 協子 さくらと私 74

世界文学の詩的悦楽 −ディレッタント的随想(49) 良寛の漢詩をひもといて −矛盾が矛盾でなくなる時…小川聖子 92
現代アメリカ韓国系詩人の詩(16) 韓国国旗 キュン・チューン・ウン…水崎野里子 96
戦後詩誌の系譜・補充 昭和35年〜39年 その後約四百点が増える…志賀英夫 98
映画逍遥(6) ジョシュア・ローガンの『ピクニック』…三木英治 108
水崎野里子詩集『ゴヤの絵の前で』…郡山直 110
「柵」の本棚 三冊の詩集評…中原道夫 112
 秋吉久紀夫詩集『ソクラテスの洞窟』112 高鶴礼子詩集『曙光』113 渋谷眞砂子詩集『はじまり』115
受贈図書 119  受贈詩誌 117  柵通信 118  身辺雑記 121
表紙絵 申錫弼/扉絵 中島由夫/カット 野口晋・申錫弼・中島由夫




 
諸葛菜/織田美沙子

今年も庭に紫色の花が咲いた
「諸葛菜」という
花の名を知ったのは
かなり前のことだ
当時の写真がある

どういういきさつで
あの家を訪れたのか記憶にない
一人住まいの女の家
生活感が全く無く
少女趣味の人形や花の絵が
所せましと飾られてあった
一緒に行った彼は
自分の家のように振る舞い
冷蔵庫からジュースを出し
二人で飲んだ

小さな庭には
諸葛菜が咲いていた
その庭で写真を撮った
まだ若かった私は
頬も瑞々しく
手編みのライラック色のセーターの
ふっくらした質感が
表情を明るくしていた

私の長い髪の毛が数本
赤い絨毯の上に落ちた
写真のやさしい顔とは うらはらに
女から
この人を奪うしかないと決意した

諸葛菜の種を
貰ったのはその頃だ
芽が出ることを祈りながら
とんでもないことをしたという後悔と
これからどこへ歩き出すのかという
不安と恐ろしさで震えていた

 〈まだ若かった〉ころの想い出でしょうが、〈女から/この人を奪うしかないと決意した〉というフレーズにはギョッとさせられます。女の人はそういう闘争を多かれ少なかれやるんでしょうね。しかし、〈とんでもないことをしたという後悔と/これからどこへ歩き出すのかという/不安と恐ろしさで震えていた〉というフレーズでホッとします。そういう怖れも持ちながら人生を獲得していくわけで、強さと弱さの両面を見せた秀作だと思いました。




『千葉県詩人クラブ会報』210号
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2010.6.15 千葉市稲毛区
根本明氏事務局・高橋昌規氏発行 非売品

<目次>
平成二十二年度千葉県詩人クラブ総会、盛大に 1
新会長挨拶 高橋昌規 1
平成二十二年度の活動計画と予算と・・・ 2
新役員と主な仕事分担 2
ご苦労様でした 斎藤正敏前会長・佐野千穂子前理事 2
よろしくお願いたします 荒井愛子新理事・星清彦新理事 3
スピーチと朗読 3
会員の作品 歌いつづける/佐藤つや子 なにかよいこと/大野杏子 春隣/中村洋子 4
書評 宇山智子詩集『藻塩草』…中谷順子 5
サークル・詩誌訪問 『玄』を訪ねて 5
書評 石村柳三詩集『夢幻空華』…根本明  市村幸子詩集『はじける』…中村洋子 6
詩人たちの談話室 自由と自分色 高安義郎 7
新会員の紹介 7
会員の活動 受贈御礼 編集後記 8




 
新会長挨拶 高橋昌規

 千葉県詩人クラブは昭和四十年に設立され、今年四十五年を迎えます。設立当初、私は駆け出しの社会人で詩を書き始めたのもこのころです。当時、外野席から望見していたにすぎませんが、雰囲気の一端に触れ、その錚々たるメンバーを仰ぎ見るばかりでした。教えを受けた民衆詩派の旗頭・白鳥省吾先生を顧問格に、鈴木勝氏、荒川法勝氏等々、事務局に杉谷徳蔵氏と斯界の重鎮ぞろいでした。黎明期の進取の気風とエポックを画するうねりを感じたものです。
 あれから四十五年。まさに歳々年々人同じからず。鬼籍に入られた方も多く当時を知る方も少なくなるにつけ、四十五年とはそういう歳月かと時の移ろいを改めて思わされ、感無量です。
 とまれ、この記念すべき年にはからずも会長に推挙され、光栄に思うと同時に責任の重さを感じているところです。役者不足は否めませんが、人事の妙で理事長以下理事の皆さんが多士済々で、私の力不足を補って余りあるものがあります。どうか会員の皆様のいっそうのご支援とご協力をお願いいたします。

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 新会長の挨拶を紹介してみました。簡潔明瞭、挨拶文の見本にしたいような文章だと思います。千葉県詩人クラブの益々のご発展を祈念しています。






   
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