きょうはこんな日でした【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「モンガラカワハギ」 |
1999.12.31(金) その1 その2へ その3へ
年末ですね。今年も残すところあと9冊になりました、いただいた本の紹介。さあ、がんばって読みましょう!
で、いったい今年は何冊読んだのかな? ちょっと待ってネ、調べてみます。詩書等が122冊、詩誌等が97誌205冊、合わせて327冊でした。うーん、日本の詩壇は隆盛ですね。全国にはこの何倍も何十倍もの詩関連の本が出回っているかと思うと、壮観です。インターネット上での書籍は含まれていませんから、それも考えたらすごいことです。
どうも一年間ご覧いただきありがとうございました。今日でたぶん2300回のアクセス数を超えるんではないかと思います。月に約200件近いアクセスというのは、開設当初は考えてもみませんでした。それを励みとして来年も役に立つ紹介をしていきたいと思います。
○CD-ROM詩集『大きな木作品集』vol.2 |
福島県西郷村 さたけまさこ氏発行 非売品 |
CD-ROM詩集というものをいただいたのは、今年はこれで2回目になります。そういう時代になったんだなぁ、とつくづく思います。絵もきれいだし、詩の組み方にも工夫が見られます。新しい感性でしょうね。
さたけさんはHPも運営なさっていて、私のこのHPにもリンクをお願いしてあります。CDとはちょっと違いますが、楽しいHPですから覗いてみてください。私の下手な解説より、そうしてもらうのが一番です。感想なども送ってあげると喜ばれると思いますよ。
○詩誌『青い階段』63号 |
1999.6.30 横浜市西区 浅野章子氏発行 500円 |
貨車/浅野章子
山田今次さんを悼む
いい天気だ
窓の外
広い道路を隔てて高架鉄道が数本
JRや東急の青や赤のライン
時たま黄色い風船が描かれた車両
いい天気だ
超高層ビルのてっぺんまで光ってまぶしい
JR線に黒い貨車が走ってきた
『たったんぐたったんぐ たったんぐたったんぐ』
あ 山田さん
「いい天気だねえ」
「はい いい天気ですね」
『雨の鉄橋を
貨車が ずぶぬれになって渡っていった』
消えた引き込み線の鉄橋の上 はるか
詩人の後すがた
長い貨車はいつの間にか濡れて
『ど、だうん ど、だうん ど、だうん』
『
』内は 山田今次さんの詩を引用
追悼の詩としても優れていますね。「いい天気」だったのに山田さんが出てきて、「長い貨車はいつの間にか濡れて」しまうなんて…。浅野さんの悼みがその一行で判ります。
こうやって引用された山田さんのフレーズを見ていると、山田さん独自のオノマトペーでありながら、浅野さんの作品にマッチするというのは、それだけ普遍性があるからでしょうか。二人の詩人の詩がお互いに反発することなく、うまく融和していることが判りますね。山田さんも喜んでくれていると思います。
○詩誌『青い階段』64号 |
1999.12.20 横浜市西区 浅野章子氏発行 500円 |
法事/廣野弘子
女は仕事を放り出すように
さっさと逝ってしまった
この男にはもう付き合えない
とでも言うように
五月の空の明るさや 緑の美しさ
つややかな 娘の髪も編まないで
狂っているわ と筆談を残したとおり
女のいなくなったあとも 男は馬鹿ばかりやって
秋晴れの祝日にさんざん血を吐いて
娘と他人に看取られて 死んだ
やがて 秋と春 ふたつの季節に法事を終えると
娘は 小さな小さな女児を生んだ
お金の才覚に明け暮れた女の 面差しに似た
はかない重さの女児を抱く
愛で飽きない無心のものの やわらかな指
にぎりしめた手の中に 何を探しに来たのか
愛されたまま死ぬとは限らない
愛しきれぬまま見送ることもあって
最終行の発想に驚きました。「愛されたまま」「愛されぬまま」は何度も表現として見ていますが、「愛しきれぬまま」という、いわば途上の状態としての表現には初めて出会っただろうと思います。それがこの「男」と「女」の姿だったのかもしれませんが…。
つくづく男女の仲は難しいなぁ、と数少ない(^^;;
経験からも思います。それでも「はかない重さの女児」が子孫として残されるんだから、種としては問題がないんだなあ、と変な納得をしています。
作者はそこまで考えてこの作品をお作りになったんだと思います。
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