きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
  050507.JPG    
 
 
 
 
2005.5.7
「榛名まほろば」にて
 

2005.5.28(土)

 日本現代詩人会主催の「日本の詩祭2005」が日暮里・ホテルラングウッドで開催され、行ってきました。私は日本現代詩人会の会員ではありませんが、「日本の詩祭」にはかなり出席させてもらっています。今回もその一環なんですけど、ちょっとした目的がありました。第55回H氏賞受賞者の山本純子さんに会うことです。

     写真は朗読をする山本純子さん。高校の先生だそうです。
 山本さんとは2000年に出版した第一詩集
『豊饒の女神の息子』をいただいたことがきっかけで手紙の遣り取りが今でも続いています。当時、私は日本詩人クラブ新人賞の選考委員で、選考委員推薦枠で『豊饒の女神の息子』を推したのですが、残念ながら授賞には至りませんでした。それが今度の第二詩集『あまのがわ』ではH氏賞受賞ですからね、うれしかったです。私の目に狂いはなかった。

 私が当時『豊饒の女神の息子』を推したことは何人かが覚えていて、良かったね、と言われてしまいました。別に私が受賞したわけではないんですけど、ちょっと鼻が高くなったのは事実です。2冊の詩集は当然このHPでも紹介しています。ハイパーリンクでジャンプできるようにしておきましたから、興味のある方はご覧ください。

 初めてお会いした山本さんはハキハキした女性なんですが、一歩引くところは引いているという印象を受けました。そのバランスは作品にも現れていて、H氏賞らしい新しさがあると思いますね。今後のご活躍を期待しましょう!
  050528-1.JPG
    050528-2.JPG    こちらは懇親会でのスナップ。今までの「日本の詩祭」は半蔵門のダイヤモンドホテルばっかりでしたが、今回は日暮里になりました。今後も日暮里が続くのかどうか知りませんけど、落ち着いてなかなか佳い処です。やっぱり現代詩は半蔵門より日暮里かな、なんて関係のない感慨に捕らわれました(^^;
 二次会は6人ほどで近くの居酒屋へ。鹿児島の焼酎「晴耕雨読」が良かったですね。





個人誌『むくげ通信』27号
    mukuge tsushin 27.JPG    
 
 
 
 
2005.6.1
千葉県香取郡大栄町
飯嶋武太郎氏 発行
非売品
 

  <目次>
   第一回日韓文学交流会《詩の祝祭》
    成耆曹兆詩人の挨拶(全文)
    当日朗読された詩
     私は生きていたい―金鮮一の叫び 成耆兆(ソンキジョン)
     まだ女でありたい 崔金女(チェクムニョ)
     出会い 金文中(キンムンジュン)
     燕々 鄭光修(チョンクァンス)
     ネギ 李昇九(イスンク)
     砂漠 金貴姫(キムキヒ)
     茶一杯のゆとり 崔明珠(チェミョンジュ)
     実の成る樹 李續(イヨンミ)
     咲け、フラメンコ 尹香基(ユンヒャンキ)
     愛しい人 安初云(アンチョウン)
     春を呼ぶ 禹在貞(ウチェジョン)
     豊年の恋歌 鄭小(チョンソヒョン)
     サングムプリ村 ススキの花 高景子(コキョンジャ)
     銀河 黄順男(ハンスンナン)
     海 金京英(キムキョンヨン)
     地の果ての村で 李仁淑(イインスク)
     パッチム 中村 純
    参加者名
    歌の色、祝祭の炎 第一回日韓文学交流会の記 三方 克
    朗諦の仕方 第一回日韓文学交流 <詩の祝祭> に参加して なべくらますみ
    自句寸景 日韓文学交流会 近況 飯嶋武太郎
    「基
詩集「きのうおととい遠い日に」書評
     「京都市 相馬 大」
     「山口県倉敷市 高田千尋」
     「相模原市 郡山 直」
     「三重県 津坂治男」
     「宮崎県 南 邦和」
     「千葉市 新井愛子」
     「熊本市 古賀博文」
     「東京都 レアリテの会 西一知」
    受贈御礼
    編集後記




    私は生きていたい
      ―金鮮一の叫び    成耆兆(ソンキジョン)

   オレンジ色の囚人服を看せられ憔悴しきった姿
   目隠しされた顔は洗うこともできなかったろうな
   覆面した男達が殺すと威嚇するのだが
   “私も生きていたい”と絶叫する声が
   地球を何回まわっただろうか?
   イラク戦争に派兵を撤回しなければ
   殺すとという彼等も同じ命を持った人間なのに
   砂風が飛散る異国の地で君は彼らに殺された
   光化門ではイラク派兵撤回を叫ぶキャンドルデモの真っ最中
   そして彼等は大統領も 外務長官も
   嘘つきだと糾弾する
   その理由は君が拉致された事実を
   三週間を過ぎるまで政府が知らなかった
   というのは嘘だと言うのだ
   誰が嘘を言ったのかと国中が大騒ぎなのに
   君は無言で死んで帰ってきたんだね
   大統領の弔花がたたき潰され
   国民は政府を信じられないと言う
   そして統制機能を失ったと非難する渦の中で
   君は土にかえり
   我々はこの地でまだ殺された悲しみに
   どれだけ直面しなければならないのだろうか?

    注 金鮮一はイラクで首を切断された三一歳の青年。彼は
    罪なくして、この国の代わりに殺された。
                  詩集「ひとり語る木」より
                        志賀喜美子訳

 4月28日に千葉県冨里市で開催された第一回日韓文学交流会《詩の祝祭》の特集になっていました。表紙はカラー写真で、華やかな交流会の模様を知ることが出来ます。韓国側参加者22名、日本側41名で盛会だったようです。
 紹介した作品は「当日朗読された詩」の冒頭にありました。イラクへは韓国軍も派兵されていて、金鮮一青年は兵士なのか一般市民なのかは判りませんが、どちらにしろ「私も生きていたい」と叫ぶ気持は同じでしょう。日本でも同様の事件がありましたが「キャンドルデモ」もなく、いつの間にか忘れ去られています。今後も両国で似たような事件に「どれだけ直面しなければならない」のか判らない状態が続くのだな、と思った作品です。




詩誌『驅動』45号
    kudou 45.JPG    
 
 
 
 
2005.5.31
東京都大田区
驅動社・飯島幸子氏 発行
350円
 

  <目次>
   評論 一編の詩
      中野 嘉一 「ヤスパース家の異変」   周田 幹雄 23

   詩  闇のはじまり              山田野理夫 1
      老母を抱えて 他一編          長島 三芳 2
      蓑虫の頃                池端 一江 6
      花のしたにて              中込 英次 8
      切れ味                 飯島 幸子 10
      激震                  たにみちお 12
      お札のひとりごと            内藤喜美子 14
      ビルが 日曜日に立っているわけ 他一編 星   肇 16
      散歩考 他一編             周田 幹雄 20
      この<まち>に決めた日         忍城 春宣 28
      非詩卑文(9)
       西鶴文学会四○年の記録(2)      桝井 寿郎 30
      装身具 髪               田中 高雄 32
      断片詩・恩師小向春雄先生 他一編    飯坂 慶一 34
      南無三宝                三沢 学人 38
      出発点(詩・二00五年・六十五歳・前世) 小山田弘子 40
      終りのない旅              金井 光子 44
      亜急性期入院医療室           舘内 尚子 46

   同人氏名・住所                      48
   寄贈詩集・詩誌                      48
   編集後記



    お札のひとりごと    内藤喜美子

   新しく衣替えした福沢さんと
   まだ古着のままの彼が
   同じ財布の狭い部屋で
   肩を擦り寄せて仏頂面をしている

   「なんだか肩身がせまいよ」
   「君も早く着替えてくるといいよ」
   新調した彼は得意そうに
   光りもののマークを見せる

   だが近ごろ仲間のなかに
   古着姿の偽者が忍び込んで
   あちらこちらで悪さをしているとか
   まったく迷惑千万な話だ
   福沢さんはご立腹で透かしの丸窓に消える

   それだけでも我慢ならないのに
   鉄の重い扉に鍵を掛けられ
   囚人扱いされること
   一度入ったら容易にシャバの空気が吸えなくなる
   金持ちなんて糞くらえだ

   どうしてみんなは我々を欲しがるのか
   争奪戦で命を落としたり
   偽者たちが悪びれもなく全国を行脚する
   油断も隙もあったもんじゃない
   人間って醜い生き物だね

   あっ 向こうからすっかり板についた新入りの野口さんと
   ただ一人女性の一葉さんが仲睦まじそうにやってくる
   ちょっと妬けちゃうけど
   この部屋空っぽだから遠慮なく入っておゆきよ
   大歓迎 いつまでいてもいいんだよ

 思わず微笑んでしまう作品ですね。私は「お札」には縁遠くて、来たと思ったらすぐに出て行ってしまいますが、でも、考えてみると、そういう作品はありそうで無かったなぁと思います。着想の妙、発想のユニークさが勝った作品と云えましょう。「囚人扱いされ」ている、「この部屋空っぽだから遠慮なく入っておゆきよ」などのフレーズは特に佳いですね。本当に「大歓迎 いつまでいてもいいんだよ」と言ってやりたいものです。




   back(5月の部屋へ戻る)

   
home