きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.12
宮崎「西都原古墳群」にて
 

2005.7.21(木)

 定時後から新製品の承認会があり、すんなりと承認されました。すんなり承認されるために準備をしていますから、承認されて当り前なんですが、それでもやっぱり緊張しますね。
 予定通り18時過ぎには承認会が終って、営業と技術部門と私とで祝杯を上げようということになって、私の好きな店を指定しました。一番好きな「獺祭」のある店です。ところが品切れ。この店は関連で3店あるんですが、ここのところ3店とも品切れ状態…。うーん、山口の銘酒は手に入らないのかな…。焼酎で我慢しましたけど、せっかく楽しみに行っているのに、残念なことです。
 ま、それはそれとして祝杯は気の合った社員同士ですから、楽しめました。どうせ呑むならこういう祝杯がいいですね。新製品が世に出て、どんな苦労が待っているか分りませんけど(^^;




鈴木どるかす氏一行詩詩集『この孤独』
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2005.8.9
神奈川県横須賀市
はこぶね書店刊
1200円
 

  <目次>
   春の葬列  5
   この孤独  15
   暇人クラブ  25
   ビルの空  35
   陸橋  45
   玉葱  55
   八月  65
   エレベーター 75
   青信号  85
   受話器  95
   ムーミンママ 105
   骨の一本 115

   あとがき 126



    この孤独

   サドを愛する悲しみのゆびを折る この孤独

   愛してはくれないきりきり月の中 この孤独

   蛇と酌む青いリンゴといる この孤独

   近ごろマッチの柔らかい嘘 この孤独

   人の字は折れる 消化器は倒れる この孤独

   ウォークマン一八〇度人を消す この孤独

   耳底をてくてく歩く冬の息 この孤独

   限りなく眠り この孤独から逃げる

   寝返りを打ってなじみの この孤独

   虫を殺す今日という日があたたかい この孤独

   ペらペらの紙一枚でにんげん万歳 この孤独

   原爆ドーム直線だけを書きなぐる この孤独

   実刑判決・綿菓子も飛び出してくる この孤独

   どんぐりが落ちる 三分ばかり留守にする この孤独

   愛のふりかけ料理も忙しい この孤独

   子育てを終えて銀河の浜を行く この孤独

   改札を抜けて半分になるわたし この孤独

   交換日記ころころとネジひとつ この孤独

   ルビを振る唇は風にめくれて この孤独

   耳にするどい氷が当たる この孤独

   うつの日の 羊百匹の尿意 この孤独

   骨のこの孤独 自転車は錆びて

   ひまわり畑いっぱいの この孤独

   白桃は素肌のまま この孤独

   花びらが一枚足りず引きこもる この孤独

   いつまでも求道者でいるサクランボ この孤独

   君の影踏んで深ねむりする この孤独

 総題のもとに一行詩が30篇ほどあるという、おもしろい詩集です。ここではタイトルポエムでもある「この孤独」を紹介してみました。このシリーズでは必ず「この孤独」という語句がはいりますが、他はそんなことはありません。このシリーズだけ意識して創ったようです。
 「ウォークマン一八〇度人を消す この孤独」「寝返りを打ってなじみの この孤独」「虫を殺す今日という日があたたかい この孤独」「改札を抜けて半分になるわたし この孤独」などが佳いですね。俳句や川柳と違い特にルールもないようで、その分自由な発想・表現になるのかなと思います。現代詩の分野では最近、二行詩や四行詩が意識的に取り組まれていますが、その一端を担うものになるかもしれませんね。




仁科 龍氏詩集『はるかなる遠き落日』
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2005.7.15
東京都台東区
コンサルアーツ獏出版刊
2000円+税
 

  <目次>
   国境 6
   在ることの 10
   欣求浄土
(ごんぐじょうど)のバラード 14
   足もとで 18
   老人と犬 22
   歴史物語 26
   千年の恋――和泉式部―― 30
   はるかなる遠き落日――マリリン・モンロー―― 36
   雨降る昼下がりに 40
   ささやかに懐疑 46
   流沙の記憶 50
   カオスの海へ 54
   ある晴れた日に 58
   戦火のイラクとわたし 62
   ハーシィ・チョコレート 66
   湖畔の碑 72
   生けるミイラの夢想断片 76
   聖徳太子幻想 80
   古寺巡礼――大和・当麻寺 86
   古寺巡礼――奈良・玄奘三蔵院 90

   ■評論
   詩話と詩想の断片
    愛欲と捏磐をめぐつて
   T 仏教詩人・アシュヴァゴーシャ 96
   U カシミールの詩人・ビルハナ 07
   ■評論・別稿
   人類よ猿の親類よ 111

   あとがき 126
    カバー・『サウンダラナンダ』サンスクリット・テキスト



    湖畔の碑

   彼が配属されたのは
   陸軍特別攻撃隊誠三十一飛行隊
   別名武揚隊であった
   発進が命じられた時は
   終戦間近かな四月十二日未明五時三十分
   行動を共にする隊員十六名
   与那国島北方洋上から侵攻してきた
   米国編隊二十機グラマンの迎撃だった
   高度二千メートルの上空

   空中戦を展開するも戦果なく
   重傷を負って不時着した一機をのぞき
   ことごとく撃墜され
   彼が生きて地上の土をふむことはなく
   二十三歳の誕生日の当日が命日となった
   会津若松出身の学徒兵・長谷川 信
(しん)

   今次の戦争には もはや正義云々の問題はなく ただただ民族間
   の憎悪の爆発あるのみだ 敵対し合う民族は各々その滅亡まで戦を
   やめることはないであろう≠ニ彼は陣中にあって日記を秘そかに書
   いている
、  彼は自他の中に人間の獣性のあることを見
   涙を流して祈り
   念仏し そして叫ぶ
   恐ろしきかな あさましきかな
   人類よ 猿の親類よ≠ニ

   猪苗代湖畔の戸の口の地に
   彼が望んだ通りの石碑が建てられて
   残された日記の中の一節が刻まれ
   俺にもたった一つできる
   涙を流して祈ることだ≠フ語を含む一文が
   周囲の静寂をつき破って語りかけてくる
   間近かにのぞまれる山なみと
   ひとむれの雑木林があるだけで
   見まわしても一軒の人家さえない
   歩くかぎりの足もとは
   ただ雑草におおわれていささかぬかるみ
   限られた身内の関係者の案内がなければ
   その碑にたどりつくことはむずかしい
   自然石に深く刻まれたその碑は
   湖畔を吹く風をうけとめ
   吹きつける雨にあらわれて
   今もなおなめらかに光って
   静寂の中にたたずんでいる

        ☆参考『きけわだつみのこえ』日本戦没学生の手記・東京大学出版会。
         『新版きけわだつみのこえ』日本戦没学生記念会・光文社。『はるかな
         る山河に』東大戦没学生の手記・東京大学出版会。ヴィットコップ編・
         高橋健二訳『ドイツ戦没学生の手紙』岩波新書。
        *詩の中で……∴の部分はいずれも『きけわだつみのこえ』の中の
         長谷川信の手記に出ることば。

 紹介した作品は「評論・別稿」として載せられている「人類よ猿の親類よ」の詩作品です。この別稿は1983年の『鮫』15号に載せられていたそうですが「今回思うことあって(あとがき)」再録したとのことです。この時期に、なぜ別稿を再録し、さらに詩作品としたのかを考える必要があると思います。「敵対し合う民族は各々その滅亡まで戦をやめることはないであろう」「人類よ 猿の親類よ」という言葉の重みを感じます。

 他に紹介したい作品が多くありますが、たまたま『鮫』に載っていた作品を拙HPで紹介していました。
「足もとで」「ささやかに懐疑」はハイパーリンクを張っておきましたので、そちらで全文をご覧ください。この詩集の、現実に真摯に向き合う姿勢を感じていただけると思います。




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