きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.8.3 | ||||
馬籠「藤村記念館」にて | ||||
2005.8.10(水)
夏の連休最終日。本日も特記事項なし。いただいた本を終日読んでいました。
○彼末れい子氏詩集『ほほえみの人』 | ||||
2005.7.20 | ||||
兵庫県尼崎市 | ||||
風来舎刊 | ||||
1500円+税 | ||||
<目次>
冬芽 8-9
アキニレの日々 10-12
防戦のかまえ 14-15
カレンダー 16-18
いつの頃からか 20-22
腎部 24-26
余りのある割り算 28-30
小学校の時に 32-35
桃の日 36-39
星あかり 40-42
紅白まんじゅう 44-45
願い事のかなえ方 46-48
記念撮影の日 50-52
馬 54-56
エシュロンの春 58-60
中国の蝉 62-63
人民広場の夜 64-65
髪の毛 66-68
蓮茶の飲み方 70-72
満月の夜 74-75
ほほえみの人 76-77
*
あとがき 78
装幀 橋本健治
ほほえみの人
あなたは目によって育てられた
わたしのまなざしの
ゆりかごの中で
迷うときは目をみた
それでいいのよ やってみなさい
と 目でほほえむ
わたしのほほえみを武器にして
あなたは もう どこへでも行ける
はずなのに
<猿と目を合わせないで下さい>
と 山道に立て札がたっている
ニホンザルのばあい
相手の目を見ることは
攻撃の意思を示すことだけれど
アフリカの奥地 森の中には
静かにほほえみを交わす者たちがいる
チンパンジーの小さな群れ
しっぽの短いその者たちが
そろってこっちを見ている
春の夜
ほほえみの人が
ひとり ふたり さんにん
さあ もう行かなければ
詩集のタイトルポエムです。佳い作品だと思いますがかなり難しいですね。最終連の「春の夜/ほほえみの人が/ひとり ふたり さんにん/さあ もう行かなければ」は「わたしのほほえみを武器にして/あなたは もう どこへでも行ける/はずなのに」と対になっていると思うのですが、そこから先に進めません。たぶん「はずなのに」に意味があるのでしょう。私のボンクラな頭脳を恥じるばかりです。
詩集の中の2篇は、すでに拙HPで紹介していました。詩と散文誌『多島海』に載っていた「余りのある割り算」と「桃の日」です。ハイパーリンクを張っておきましたので、合せてご覧ください。特に「桃の日」は傑作です。
○詩誌『思い川』18号 | ||||
2005.10.1 | ||||
埼玉県鳩ヶ谷市 | ||||
桜庭英子氏方・思川舎 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
<詩>
洗う…………………………………………桜庭英子 2
塀の下の、…… …………………………柏木義高 4
秋の垣根……………‥……………………桜庭英子 6
生き肝とりの夜……………………………高島清子 8
<詩論・私論>
「読み人知らず」の詩の論理………………溝口 章 10
<詩>
木……………………………………………山本 衞 12
返礼…………………………………………桜庭英子 14
灰の指輪……………………………………佐川亜紀 16
破れ傘………………………………………桜庭英子 18
<エッセイ>
情念の詩人は黄昏の雑草であれ…………桜庭英子 20
<詩集紹介>…………………………………………… 24
<詩の汀>
童謡/石垣りん…………………………<H・S> 26
<瀬音>
ガラスの芸術と飢餓の時代………………桜庭英子 28
<執筆者プロフィール/後記> …………桜庭英子 30
<題字・装画 五月女喜八>
返礼 桜庭英子
何かをしたのだ
きっとわたしたち
地の中で
空の下で
弓形に沿って延びる秋雨前線が
梅雨の頃からずっと居座っていたり
雷鳴を轟かせて
夏を忘れた天の号泣が
滝となって落下した年もあった
冷夏の次は耐え難い酷暑になったり
異常気象はここ数年続いている
しっかりと地に足の着いていない人間たちに
朝からグラリと大きな地震もやってきて
地球の芯の傷口を見せつける
あげくの果てに台風まで次々と襲来し
季節はすっかり狂ってしまった
こんどは見境もなく春の大雪が降り続く
雪解けでどこが川なのか道なのか
さだかでは無く々った国には
何が善なのか
悪なのか
分からなくなった人間たちが住む
アバウトなこの国に
夕ベは風雨が激しく叫びながら
容赦なくやってきた
礼儀を忘れたわたしたちに
律義にも
丁寧すぎるほどの返礼をしに
確かに「異常気象はここ数年続いている」のは間違いなさそうです。それを「何かをしたのだ/きっとわたしたち」と結びつけて、「礼儀を忘れたわたしたちに/律義にも/丁寧すぎるほどの返礼をしに」きた、とするところがおもしろいと思います。作品の上ではおもしろい≠ナ済ませますけど、現実は「すっかり狂ってしまった」状態ですので、そうおもしろがってばかりはいられませんけど…。考えさせられる作品です。
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