きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.28(月)

 11月最後の月曜日。可もなく不可もなく(^^; 平穏な一日でした。




個人詩誌HARUKA 187号
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2005.12.1
大阪府交野市
交野が原ポエムKの会 発行
非売品
 

  <目次>
   缶詰    山田春香    缶カンの居場所  山田春香
   あとまわし 山田春香    川の流れに習って 山田春香
   生命    山田春香    《はるぶみ》



    あとまわし    山田春香

   ダルイから今日はやめる
   眠いから明日の朝やる
   朝はゆっくり休みたいからまた今度
   できればそれを永遠に続けておこう
   自分の中はたぶん
   モヤモヤでいっぱいになるはずだけど

   今やれることは今のうちに

   そんなこととっくに知っている
   知っているから
   それ以上利口になれない
   成し遂げられなかったあとの後悔は
   いつだって繰り返される
   利口になったあとからでも
   ずっと、さらに

 この感覚はよく判りますね。そのやる気≠起こさせるために給料≠ェあるのかな?と思っています。学生だったら成績≠ネのかもしれません。もう少しトシをとっていくと名誉≠セったり生きがい≠セったりするのでしょう。
 「今やれることは今のうちに」というのは日本人の感覚ですが、世界はいろいろで、アラブの格言に<明日できることを今日するな>というのがあるそうです。その感覚も必要で、それら二つのバランスが肝要なんだと思いますね。




金屋敷文代氏詩集『まらりあの子』
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2004.12
千葉市中央区
柘榴社刊
非売品
 

  <目次>
   まらりあの子 4
   太い腕    6
   夏のひとみ  8
   空の自転車  10
   お裁縫    12
   疲労こんぱい困ぱい疲労 14
   七月の身体  16



    太い腕

   朝から 太い二の腕に汗
   手先には 太陽に負けた黒い斑点
    あついですね
    今日は あついですね
   カンナが あついと言って燃えています
   放置された草たちも
   熱中症にかかってケイレンしています

   こんな夏に生まれてきてしまった
    おかあさん
    あついお産でごめんなさい
   もうずいぶん
   あなたの顔を見ていませんが
   あなたはわたしを産んだのですよね
   わたしの中に
   あなたの血が流れているのですよね

    とうとう 娘もいなくなりました
   わたしがあなたを捨てたように
   遠いところに行ってしまった
   わたしは弱虫で
   あなたのように
   しっかりした生活者できなくて
   破綻した日常に
   過去のカンナをしまい込んでいます

    もういちど
    わたしを産んでくれませんか おかあさん
   太い二の腕の 汗の塩辛さ舐めながら
   耳の中で ミンミンゼミが鳴いています

 手作りの第一詩集ですが、とても綺麗に出来ています。詩集タイトルの
「まらりあの子」はすでに紹介していましたのでハイパーリンクを張っておきました。そちらをご覧になってください。
 紹介した「太い腕」は、私も「こんな夏に生まれてきてしまった」部類ですから共感しています。本当に「あついお産でごめんなさい」ですね。「もういちど/わたしを産んでくれませんか おかあさん」と呼びかけたい母は土の中ですが、さて、もう一度生まれてきたらどうするか…、やはり同じような人生を過ごしている気がします(^^;




伍東ちか氏詩集『手風琴』
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2005.12.1
三重県度会郡玉城町
葦工房刊
1300円
 

  <目次>
   T
   紫陽花       10   落ち葉のプレリュード 12
   木漏れ日の路    14   錆びたベンチ     16
   森の小径      18   葉緑素        20
   雨だれの音     22   灰皿の花       24
   固形燃料      26   仮想の森       28

   U
   鴉が見ていた    32   咲いている      34
   廃墟        36   小さな侵入者     38
   林檎の実      40   托鉢の老僧      42
   嘆きの岸辺     44   メタモルフォーゼ   46
   跳ね上げ橋     48   サラサラと……    50

   V
   夕暮れのトレモロ  54   雨の奏鳴曲(ソナタ)  56
   ハミング      58   詩人たらの喫茶室   60
   天然のYellow 62   収穫         64
   タペストリー    66   雨のふる午後     68
   コップ一杯の夢   70   ルール        72

   W
   春をミュートして  76   まごころ       78
   水族館       80   プリズム       82
   雨あがりの蜘蛛   84   蜘蛛の糸に……    86
   デラシネ      88   ちいさなレクイエム  90
   カデンツ      92   木霊         94
          

   解説/清水信    96   あとがき       100



    灰皿の花

   バス通りをかざるプランターに
   白いものが挿してある
    あたらしい花だと思ってみると
    吸いかけの煙草だった

   バスに乗ろうとして
   慌てて捨てていったのだ
    水の撒かれたばかりの
    やわらかな土に つき立てて行ったのだ

   灰色の煙は すいこまれ
    か細くしろい根は
    ヤニ色に染まっていくだろう

   花びらを開いたばかりの
    ちいさい花は
    煙にむせて 喘いでいたのだろう

   ひろい野原を失って
    ちいさな庭を失って
   咲き続ける花たちの
    たったひと握りの小さな自然を
   灰皿に変えていく
    ヒトビトの 何気ない日常

 詩を書き出して5年という著者の第一詩集です。ご出版おめでとうございます。
 紹介した作品は代表作というわけではありませんが、多彩な面をもつ詩人の、ひとつの重要な側面だと思います。想像力の深さに驚きます。「か細くしろい根は/ヤニ色に染まていくだろう」、「ちいさい花は/煙にむせて 喘いでいたのだろう」というフレーズは直接見ている現実の、見えない部分を透かし見ていますし、最終連の「ひろい野原を失って/ちいさな庭を失って」は花本来の姿に思いを寄せています。この姿勢は
「廃墟」でも見られるものですが、これはすでに紹介していますので再録しません。ハイパーリンクを張っておきましたので、そちらでご覧ください。
 新しい詩人の誕生を祝福し、今後の活躍を祈念しています。




清水弘子氏詩集『ジェホメの問い』
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2005.10.31
東京都東村山市
書肆青樹社刊
2400円+税
 

  <目次>
    T
   可燃物の朝 10        ジェホメが突然 14
   おなじようなひとがいる 18  十二月のほのあかるさに 22
   夏至のころ 26        稲妻 30
   橋をわたる 34        ジェホメの問いから 38
   蝶の風景 42         情景 46
   リュウノヒゲの青い実 50   ふるい丘 54
   箸墓の黒い闇 58       雨を待っている 62

    U
   ひらかなのすがた 68     うたう たもつ 72
   うまれたがっている 76    うさぎ の きせき 80
   ここにいてこんなにしめやかに充ちているもの 84
   空のものと土のもの 88    あのときの妹とわたしのくすくすは 92
   閉じる眼 96         浮かぶ 100
   しるすということ 104     起源譚 108
   この夏 112          バムワムの板ガム 116
   異星人の秋の唄 120

   あとがき 124         装画・装幀 丸地守



    ジェホメの問いから

   春の宵は
   空気も時間もなまぬくくよどみ
   温度が皮膚にちかづいて
   子宮のころをおもわせる
   わたしはそこからさかのぼり始めたのだったが など
   ジェホメの問いを反芻していたとき

   うまれたばかりの赤んぼうの
   ひわひわとした
   ひとのこぶしほどしかないかおをおもう
   いのちのもろさとふしぎが交錯して
   もうながいこと
   おもてのきわまでのぼってきながら
   現われないもの
   真空みたいに
   見つめるうち

   それはどうやら
   既視感に似て

   うまれたばかり
   ひとも いぬも とりたちも
   うまれていない写真の胎児も
   いのちのはじまりの相似のかたち
   はるかなねむりの端っこをいまだ抱きしめ
   未分化のものが見えかくれし
   類似項を集めたなかから
   ふしぎななつかしさ
   ふっと始源の相貌
(かお)

   そういえば子どもを産んだ日
   どこかがはげしく覚醒して
   つめたく透
(す)んだ空気の感触があった
   降り積もる雪のしろさの
   室内への清浄なひかりの反射に似て
   ねえジェホメ
   あのときわたしは産むといういとなみのあと
   始源のすがすがしさに触れていたのかもしれない

 タイトルポエムの「ジェホメの問い」という作品はありません。紹介した「ジェホメの問いから」が最も近いと思われます。「ジェホメ」の正確な意味は判りません。手持ちの辞書には載っていませんでした。おそらく固有名詞だろうと思います。
 「温度が皮膚にちかづいて/子宮のころをおもわせる/わたしはそこからさかのぼり始めたのだったが」という「ジェホメの問い」を考えると「いのちのはじまりの相似のかたち」を謂っているのかもしれませんね。最終連の「産むといういとなみのあと/始源のすがすがしさに触れていたのかもしれない」というフレーズがこの作品、強いては詩集全体のテーマと捉えました。




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