きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.12.23 群馬県安中市
新島襄旧宅
 
 

2005.12.21(水)

 先輩の定年退職祝賀会がありました。本来の60歳定年には2年ほど早いのですがいろいろ事情があったようで、定年扱いと言うのが正確なところです。私も来年春に早期定年扱い退職を予定していますから、他人事ではない思いで臨みました。

    051221.JPG    他人事ではない思いで臨んだことは臨んだんですけどね、、、酔いました(^^;
 コンパクトカメラで遠くから撮ったから画像は荒れているし、斜めに撮ってしまいました。せっかくの美女もうまく撮れてないなぁ。これ見たら怒るだろうなあ。

 会は好い会でした。100人ぐらい集まったでしょうか。先輩のお顔もうまく写ってませんけど、おだやかな中にも芯が通った人柄を感じてもらえると思います。自身も深夜までがんばって仕事をしてきましたけど、同僚の女性がそれに付き合って仕事をしてくれたことを讃えるなど、善い話をしてくれました。私も仕事上の付き合いが多かったのですが、いろいろな場面で助けてもらいました。

 いつまでもお元気で! 私もすぐに後に続きます。





綾部健二氏詩集『ジオラマ』
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21世紀詩人叢書・第U期18
2005.12.20
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
2000円+税
 

  <目次>
   うたう男 6               歩く男 10
   泳ぐ男 14                秋 一九六八/二〇〇一 18
   真冬の美術館 22             春 ガリオン船に乗って 26
   夏 カテドラルに佇んで 30        ランプシェード 34
   G氏邸の透視図 38            ジオラマ 42
   シエラレオネの蝶 46           女武器商人 48
   少女兵の眼 54              サハラの砂 58
   パンドリナ 62              空也幻想 66
   虹 68                  アフターイメージ 70
   かたな 78                さがしあぐねていた解決 82
   百円ショップで買った地球儀を持って 86  クルパキカワ 90

    あとがき 96

 



    ジオラマ

   冬の陽が
   手のひらサイズの
   プラスチックケースの中にあふれた

   一五〇分の一の縮尺に満たない
   とある海沿いの光景
   道路と鉄道などが
   不意に断たれたままでぼくを待っていた

   季節はずれ?
   サーフボードを載せたえんじ色の乗用車だけが
   いたみを負ったもののように佇んでいる

   透視のために
   世界はときほぐされているか
   せつなさの断面を
   語り継ぐ声はあるか

   惑うことの多い惑星 地球
   その青さの奥にひそむもの
   表出する不安のきれはし

   ぼくはプラスチックケースを開けて
   対向車線に濃緑色の軍用車両を
   線路に灰色の石油専用タンク車を
   そっと置いてみる

   渡り鳥は飛翔しているか
   鯨は回遊しているか
   世界のどこかに 七彩の虹はみえているか

 詩集のタイトルポエムです。「ジオラマ」は本来「透視」画のことですが、立体模型の意味もあり、ここでは後者で良いと思います。
 「手のひらサイズの/プラスチックケース」の大きさですから立体模型としては小さいものですね。「道路と鉄道などが/不意に断たれたまま」という詩句がジオラマの特徴と限界を良く現しています。その限界をこの作品では「せつなさの断面」と謂っているわけで、そこから見た「世界はときほぐされているか」、「世界のどこかに 七彩の虹はみえているか」と問うています。問は私たちに対してであり、自問でもあります。「表出する不安のきれはし」が存在する限り、この問は止むことがないでしょう。それがこの作品の特徴でありますし詩集全体のテーマでもあると感じます。

 拙HPでは詩集に収められて作品のうち
「女武器商人」 「かたな」 をすでに紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合せて綾部ワールドをご鑑賞ください。




國中治氏著三好達治と立原道造 感受性の森
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2005.12.25
東京都新宿区
至文堂刊
3238円+税
 

  <目次>
   第一章 三好達治――職業としての詩人
   1 三好達治における口語四行詩とその周圏        9
   2 三好達治詩への通路――四行詩における指示語を中心に 58
   3 立ちどまる旅――三好達治における口語四行詩の終焉  73
   4 戦争詩への道――『屋上の鶏』から見た三好達治    100
   5 詩における<単純>ということ――木下夕爾と三好達治  141

   第二章 立原道造――物語の誘惑
   1 立原道造とソログープ                159
   2 <ぼく>と<僕>と貝殻細工――立原道造「緑蔭倶楽部」  191
   3 立原道造「オメガぶみ」を読む――フーガの適用    204
   4 立原道造とイベール、ザイツェフ           270
   5 青年立原道造の晩年                 281
   6 立原道造の椅子・萩原朔太郎の椅子          294

     初出一覧                      312
     あとがき                      313

          カバー絵:「立原道造・パステル画」
          本扉のカット:「立原道造・鉛筆画」
          (資料提供 立原道造記念館)



 1996年から2005年までの間に大学の研究紀要や雑誌に書いた論文を集めたものです。私は三好達治も立原道造も常識程度にしか読んでいませんが、専門の学者に掛かるとこうも深く読むのかと感心しました。拙HPはそういう専門の評論の場ではなく、いただいた詩集や詩誌の中から私でも書けそうな作品を読書感想文程度にしか書けませんが、それでも作品を読む上で多くの示唆を与えられたと思っています。

 具体的には「第二章 立原道造――物語の誘惑」の「3 立原道造『オメガぶみ』を読む――フーガの適用」が良い例だと思います。残念ながらこの作品は読んでいませんけど、著者に言わせると「この作品は」「ファンタジーやオカルトの要素もふんだんに詰め込まれた波乱万丈の物語」であるが、途中で「途切れ」「劇的ないし濃密な場面をことごとく排除して」いるそうです。そう書かれるとあまり読む気がしなくなるのですが、実は「フーガの適用」なのだと続きます。音楽のフーガですね。「そういうフーガのイメージを言語作品として形象化するには、名場面があってはいけなかったのである」と解説していました。作品を読んでいないのに軽々しく同調するのはどうかと我ながら思いますけど、これは納得です。そういう視点の変え方があるのだと気付かされました。

 三好達治と立原道造は今でも好きな人は多いでしょうから、そういう方にはうってつけの評論集でしょう。そんな個人的な嗜好を離れても評論とは何かを教えてくれる本だと思います。私にとっては非常に勉強になりました。




詩誌『木偶』63号
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2005.12.20
東京都小金井市
増田幸太郎氏編集・木偶の会 発行
400円
 

  <目次>
   声の行方 ―断章―            仁料 理  1
   パズル                  野澤睦子  3
   冬の木                  山田広美  5
   一九四○年・辰年の記録 アリラン小父さん 土倉ヒロ子 7
   海岸公園夕景               乾 夏生  11
   神域の猟人 繰り返される闇の歴史     長野克彦  13
   現世お盆事情               川端 進  19
   抱 擁                  落合成吉  21
   身を守る?                天内友加里 23
   ヒッキー・アイランド・パーク(篭もりの苑)田中健太郎 25
   靴修理の雰囲気              荒船健次  31
   古時計                  増田幸太郎 34
   読む 連載4『軽石』本山捷平       馬渡憲三郎 47



    声の行方 ―断章―    仁料 理

   朝の公園で
   おさな子が父を呼ぶ
   声を聞いた
   しなやかな
   雨のたしかさで
   染みていく
     *
   生誕の日の
   世界に向かって発した
   あの叫びの声は
   今
   どこに在るのだろう
   母が心に抱いて
   持ち去ったのか
     *
   死は
   孤独だろうか
   耳にとどめた
   あふれるほどの
   声とともに
   在るのか
   それとも
     *
   さまざまな声が
   静まるとき
   遙かなる彼方に
   老いることと
   若き日のことと
   夕陽に染められて
     *
   冬近い
   公園の朝
   美しく啼く
   鳥は
   想念を貫いて
   せつない
     *
   歴史は
   いつも
   声だ

 様々な「声」に思いを馳せる作品です。「生誕の日」から「死」までに発せられた「声とともに/在る」ものを考えさせられますが、「想念を貫いて」「美しく啼く」「鳥」が出現した連にはハッとさせられました。ヒトも鳥もほとんどが意思を持って声を発するのでしょうが、鳥にあっては「想念を貫いて」、しかも「せつない」。ここはヒトとは決定的に違うのかもしれませんね。
 最終連は再びヒトに戻りますが、この視点も面白いと思いました。「声」が作り出してきた「歴史」という観点でも考える必要があるのでしょう。刺激的なフレーズです。




詩誌『光芒』56号
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2005.12.5
千葉県茂原市
斎藤正敏氏 発行
800円
 

  <目次>
  ◇詩作品
   立川 英明 善巧・小品          6  神尾加代子 深い水草の底の鍵 終章   42
   吉川 純子 爪切り            8  鈴木豊志夫 マカピリの唄        47
   武田  健 ちょっと行ってくる      10  阿賀  猥 猫又、猫七、晴彦      50
   山佐木 進 下町余情           12  松下 和夫 カタカナ村         52
   山田ひさ子 せつない           14  松下 和夫 人形の部屋(妹の五十年忌に)54
   佐野千穂子 浮かばずの舶         15
   市村 幸子 たったひとつのことを     18  ◇エッセイ
   藤井 章子 あざとい夏          20  高橋  馨 続・名著再読・その3    57
   奥  重機 新しい風景          26         プーシキン、二つの決闘
   池山 吉彬 姉              29    −『エヴゲーニイ・オネーギン』を読む−
   池山 吉彬 吉野             32  松下 和夫 問わず語り         66
   植木 信子 精霊を流す日         36  山田ひさ子 忘れ得ぬ人(5)      67
   植木 信子 飛べない日 飛べない鳩は   36  神尾加代子 医療を商う         68
   吉田 博哉 皀莢             39

  ◇翻訳詩                           とおね
   本田 和也 ジエイムズ・ジョイスの詩   72  高橋 文雄 遠音           102
                           石橋満寿男 噫、百姓の嫁       105
  ◇詩作品                     篠原 義男 彩世           108
   本田 和也 石蹴り            78  きしすすむ うぐいすが鳴いた     112
   横森 光夫 ケルンの面持ち        81  きしすすむ 虹            114
   川島  洋 会釈             82  小関  守 陣場借り         117
   中村 節子 女の窓口           84  小関  守 田園風景         120
   中村 節子 カラス            86  みきとおる 注文の多い外科医院    123
   近藤 文子 一人業            88  金屋敷文代 アクアリウム       128
   青野  忍 三の塔            90  帆足みゆき 重い日々         130
   山形 栄子 しあわせへ          93  佐藤 鶴麿 大声で歌おう「君が代」  132
   山形 栄子 植物たちは揺れている     94  斎藤 正敏 暗記力          135
   石村 柳三 峠の音色           96  水崎野里子 ひとりの飯・カラス    138
   川又 侑子 二月の雨           99  伊藤美智子 たまゆらも/海原の時   141
   川又 侑子 代官所跡地          100  伊藤美智子 時が切るときうたうとき  142

  ◇言葉の広場                   ◇詩集評
   川島  洋 講演記録 自己表現から作品へ 144    T 斎藤 正敏          166
   きしすすむ 良寛考                 U 池山 吉彬          170
          〜良寛様の漢詩とその心〜1 150    V 本田 和也          175

  ◇光芒図書室                   ◇詩誌評
   本田 和也 美しい思念          154    T 山佐木 進          180
         山佐木進詩集『風土記』を読む      U 鈴木豊志夫          182
   石村 柳三 奥 重機詩集『囁く鯨』    158
        −赤い血の海に問う人間と鯨への讃歌
   高橋  馨 希望と祈りと         161  ◇受贈深謝              188
         松下和夫詩集『えんこ』を読む

  ◇詩の窓                     ◇同人の近刊書一覧           200
  【選者】帆足みゆき・吉川純子・斎藤正敏
   星野  薫 ピーマンのおなか       192
   松本 関治 古い革靴           192
   金綱あき子 刃物             193  ◇ご案内
   藤野 俊明 不始末            194    三隅浩詩集『痕跡』        203
   平田 靖彦 さくら            194    草原舎の近刊詩集         204
   さとう義江 六月の死           195    茂原詩の教室           205
   大森 雄介 ろうそく           195    『広報もばら』の詩作品募集     205
   越川 泰臣 理解者を得て         196    光芒の会ご案内          205
   中山  操 苦闘             196
   御園千賀子 選挙             197  ◇編集後記              206
   阿部  匠 魅惑の歳           198         〈表紙絵/内海 泰〉



    爪切り    吉川純子

   爪を切る
   バッチンバッチン
   深夜に独り
   爪を切る
   小気味良い音は
   はみでた部分を
   容赦無く
   切り捨てる

   いつもいつでも
   笑ってたんだ
   私たちみんな

   その真ん中で
   正義という饒舌が
   大あくびする

   はみ出ちゃいけない
   はみ出ちゃいけない

   そこはいらないのだ
   きれいに
   形良く
   有無も言わさず
   刈り込めば

   はい
   これで全て
   おしまい

   バッチン

 ただの「爪切り」かと思いましたら「はみ出ちゃいけない/はみ出ちゃいけない」という連が出てきました。これは出る杭は打たれる≠ニ同じなのかもしれません。「正義という饒舌」の前では「有無も言わさず」「そこはいらないのだ」と言われてしまうのが現実の社会ですね。しかし、詩人は「はみでた部分を」書くのが仕事。「はい/これで全て/おしまい//バッチン」とはなかな行きません。そんなことまで考えてしまった作品ですが「爪切り」とは上手いところに眼をつけたものだと思います。




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