きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.5.6 群馬県榛東村にて |
2006.5.1(月)
失業第1日目(^^; 世間様も休みが多いようで、あまり実感はありません。無職になったなぁという実感は、だぶん連休明けの8日あたりに訪れるのでしょうか、判りません。とりあえず第1日目は銀行に行って退職金の入金を確認して、市役所に行って国民年金の変更をやっておきました。
それにしても暑かったですね。神奈川県西部地方は30℃近くまで行ったのではないかと思います。これからの熱い日々を暗示してくれているようで気分は良かったんですが、真夏日とはね。はしゃぎ過ぎてオーバーヒートしないようにしろ、ということなのかもしれません。
○詩誌『ガーネット』47号 |
2005.11.1
神戸市北区 空とぶキリン社・高階杞一氏発行 500円 |
<目次>
詩
飯島耕一 けふの月 4
大橋政人 進化について/ナンデモアリ 8
神尾和寿 非国民 12
高階杞一 夜の固まり 14
阿瀧 康 a chamber・夏・海・秋 24
嵯峨恵子 夕暮れの道/兄弟のように/沈みゆく村 30
1編の詩から(18) 新川和江 嵯峨恵子 16
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.47 18
立野雅代/久谷 雉/南陀楼綾繋/山口真理子
「太郎」は「次郎」のクローン人間? 大橋政人 20
――三好達治「雪」解釈アンケート結果発表
詩集から NO.45 高階杞一 39
●詩片●受贈図書一覧
ガーネット・タイム 46
映画館での出来事 嵯峨恵子/ゴスロリ 高階杞一/勝手な言葉 大橋政人/夏から秋へ 阿瀧 康/体当たり革命 神尾和寿
同人著書リスト 51/あとがき 52 表紙絵 中井雄介
ナンデモアリ/大橋政人
イカの足とか
タコの足とかに
こだわる訳ではないのだが
平成十七年三月二十五日付けの産経新聞によると
タコが二本足で歩く様子が
米カリフォルニア大学の研究者によって確認されたという
残りの六本は体に引きつけて
別の生きものに化けて
スタコラサッサと海底を歩くのだという
タコも結構
いろいろ考えて生きているんだ
それどころではなく
先日読んだ『へんないきもの』(バジリコ株)によると
昭和三十二年、三重県登志島で
足が八十五木あるタコが捕れたという
あんまり珍しいので
酢ダコにされず標本にされた(笑)
なんて書いてある
この世は実にナンデモアリだ
ナンデモアリが
日に日に身に響いてくる
ナンデモアリは
ナンデモアリだ
手は二本で
足は二本
耳は二つで
目は二つ
ニンゲンという
こんなカタチに
いつまでも安住している場合ではない
「タコが二本足で歩く」のは環境への対応、「足が八十五木あるタコ」は突然変異。科学者ならそう説明してオシマイになるんでしょうが、詩人はそれを「ナンデモアリ」の具現ととらえます。ここが理系と文系の最大の違いかもしれませんね。さらに「ニンゲンという/こんなカタチに/いつまでも安住している場合ではない」となると詩人の独断場です。二項対立で考える必要はありませんけど、科学的な説明と詩人の関係を比べたら、やはり詩の方がおもしろいなと思いましたね。
○詩誌『ガーネット』48号 |
2006.3.1
神戸市北区 空とぶキリン社・高階杞一氏発行 500円 |
<目次>
詩
阿瀧 康 O駅北口 4
神尾和寿 子羊ツアー 6
嵯峨恵子 ホーホケ、チュン/薔薇色の涙を流して/いじましさゆえ 10
高階杞一 魚の目 22
大橋政人 空一つない雲 24
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.48 18
葵生川玲/藤田晴央/宮本むつみ/山本純子
まだまだあった新解釈 大橋政人 20
――三好達治「雪」解釈アンケート その後
1編の詩から(19) 高田敏江 嵯峨恵子 29
詩集から NO.46 高階杞一 32
●詩片●受贈図書一覧
ガーネット・タイム 45
眠る男 大橋故人/おんなじことをなんべんも言う 神尾和寿/秋から冬へ 阿瀧 康/そのうち、壊れる 嵯峨恵子/好きな花 高階杞一
同人著書リスト 51/あとがき 52 表紙絵 中井雄介
いじましさのゆえ/嵯峨恵子
「で、本の方は売れるのか」
とそれは突然
向かいの席からかかった
どんぶりに張り付いた冷し中華をつついていた私は
本って?
自費で出したあれのことか
売れるくらいだったら
今頃、社食でご飯なんか食べてない
と思うけどね
それきり相手は引き下がった
就業時間中に インターネットの検索などして
本のありかを探し出したに違いない
情報はタダと思いこんでいる輩こそ手に負えない
女も働いて五十も過ぎれば先も見えてくる
こいつは総合職だが
給料はこれから下がる一方
それにしても 私などより高い給料を何に使ってきた
毎晩のように飲む酒代か
若い頃は奢ってくれる男も多かった
昼飯だってそうだ
今や 奢ってくれる年代の男たちは会社からいなくなり
残っているのは同年代のしぶい奴らか
年下のちゃっかりした男の子ばかり
飲み代にも苦労するようになったか
老後の生活を案じてか
ご飯の盛が少ないと文句を言う女が
社食で頼む小鉢をひとつ減らし
家から一品、二品持参するようになった
それでも 食べるものが足りなくなると
すかさず 「海苔ちょうだい」
とご飯の残った茶碗を向ける
海苔やらふりかけやら
準備だけはいいが
量は食べられぬ私である
この日も最後は
何食わぬ顔で「海苔」と言い出した
私はゆるい缶のふたを開け
しけた海苔の固まりを
ご飯の上に盛ってやった
気持ちよくたんまりと
本当に「いじまし」い話ですね。でも「老後の生活を案じ」るまでもなく「五十も過ぎれば」無駄なことはしなくなるのかもしれません。この作品の見所は「しけた海苔の固まりを/ご飯の上に盛ってやった/気持ちよくたんまりと」という最終部分にありますが、これは小さな意地悪と見ることもできるでしょう。そこで小さなストレスも発散する、そんな風に読み取ってみました。
嵯峨恵子という詩人の作品には多面性がありますけど、47号にもあった会社生活を題材にした作品が私は好みですね。日本のサラリーマン・サラリーウーマンの、ある意味では平均像を描きながら人間や社会の本質に迫っていると思います。ひとつひとつの具体が詩的なんです。漢(おとこ)らしい作品です。
○隔月刊詩誌『石の森』133号 |
2006.5.1
大阪府交野市 交野が原ポエムKの会 金堀則夫氏発行 非売品 |
<目次>
顔 美濃千鶴 1 鉛筆草紙 夏山なおみ 2
桜蛭子 南 明里 3 かえろう 佐藤 梓 4
白い空の鳩/さびしいもの 西岡彩乃 5 隴を得て/後悔先に立たず 大薮直美 6
言 四方彩瑛 7 解放帯/私流オーダーメイド 山田春香 7
八年目 石晴香 9 ふきだまりの部屋 上野 彩 9
宗円ころり 金堀則夫 10 蝶に関する雑考 四方彩瑛 11
石の声 14 あとがき 15
さびしいもの/西岡彩乃
さびしいもの
誰もいない駅のホームの放送
駅に関して言えば 空っぽの車両に聞こえる
車内放送
さびしいもの
人影や車のひとつもない道路で
赤や青などに変わる信号機
さびしいもの
一人このホームに
信号の色が変わるのを待って座っている
私
これは良く判りますね。特に第2連はクルマで信号待ちをしているときに感じます。以前は、世の中でエライのは大勢の人を動かすこと、ならば信号機が一番エライ、なんてうそぶいていましたけど、今はむしろ「さびしいもの」と感じます。
最終連はちょっと不明です。「ホーム」で「信号の色が変わるのを待」つというのはどういうことなんでしょうか。関西のホームには人のための信号機がある? 来月は日本詩人クラブの関西大会で大阪に行きますから、そういう眼で観察してみようと思います。
○小野耕一郎氏詩集『国立村』 |
2006 東京都国立市 ゴトー印刷刊 1000円 |
<目次>
向かうところは………2 水滴…………………34
ひとつの事件…………4 冬の軍団……………37
歩行者として…………7 ナマズが泳いでいる40
青空……………………9 苦悩の果てに………41
衰弱した魂……………12 多摩川の土手に立ちて44
蹲る男…………………14 鷲の寓話……………47
フジオッサアーが通る16 吠える男……………50
墓地を見つめて………18 襲う太陽……………53
初恋の歌………………20 水滴…………………56
絵のクレヨン…………22 海の記憶……………59
時計がグルグル回る…24 少女T………………61
机のなかから声がする26 手紙…………………63
窓の世界………………28 疼く季節……………65
木の声…………………30 襲う花………………67
カネとシローの伝説…32 あとがき……………70
ナマズが泳いでいる
川を泳いでいる一匹の魚
どこまで遊ぶのか知れないが
スイスイと人が泳ぐように
過去を生きるように
未来を生きる
やがて訪れる
将来の海を生きる
いつまでも泳ぎ続ける
鯉にも似ているし
鮎にも似ている
不思議な魚
詩集の中では最も短い作品で、他の詩と比べても異質です。昇華された作品と呼んでも良いでしょうし、この作品の意味するところは大きいと思います。「過去を生きるように/未来を生きる」とは小野耕一郎詩の大きなテーマのひとつですが、ここでは「ナマズ」が主人公になっています。しかも決して似ていないのに「鯉にも似ているし/鮎にも似ている/不思議な魚」としています。これは著者の投影かもしれません。社会に同化させようという意識が読み取れる、と言ったら過言でしょうか。本来持っているおだやかさまで読み取れるように思います。
本詩集の中で「ひとつの事件」 「木の声」はすでに拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせてご覧いただければより深く小野耕一郎詩の世界を堪能できると思います。
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