きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
060630.JPG
2006.6.30 東京・新宿



2006.8.28(月)

 家族から「夏休みの宿題」と笑われながら作っていた、隙間家具状の文庫本専用本箱が完成しました。ドアを開けてもその後にぴったりと収まりました。1段に平均60冊、全部で600冊が収納できます。

 書斎の壁、と云いますか家の壁は杉板と漆喰。そこに杉板の本箱ですから、まあ、合っているかな。写真の上から2段目全部と3段目の半分は、先日亡くなった吉村昭さんの本です。文庫で出版されている全てが揃っていると思います。単行本も含めるとおそらく全冊あるだろうと思います。これから新作が出なくなるかと思うと残念ですが…。
 これで書斎にあふれる本の、ホンの一部が片付きました。でも1割に満たないでしょうね。まだまだ続けなくてはなりません。「夏休みの宿題」に終わりはなさそうです。



個人詩誌『伏流水通信』20号
fukuryusui 20.JPG
2006.8.25 横浜市磯子区
うめだけんさく氏発行 非売品

<目次>

北陸にて…長島三芳 2
走る青春…うめだけんさく 4
白い月…うめだけんさく 5
  *
フリー・スペース(19)
さようなら今辻さん…保高一夫 1
  *
<エッセイ>
「八月の路上に捨てる」を読んで 6
  *
後記 8
深謝受贈詩誌・詩集等 8



 走る青春/うめだけんさく

深夜黒い稲妻が走る
つぶれた声の群れ
走る青春が
眠る街をゆさぶり駆け抜ける

家々の窓にぽつぽつと点る灯
眠りを妨げられた街は
老人のように外の気配をうかがう
かつて不安と絶望を抱えて生きた自己を見るように

若い獣の雄叫びが帯状に連なりそして広がる
ラインをまたぎ規制を拒否するもののごとく
走る 走る 走る
ささくれた反抗の音を轟かせて

青春の叫びはあまりに鋭く
ガラスの破片に似た脆い響きをたてて空を刺し
時代の闇を震わせる
戦きの旋律

猛りたつものたちは何も加減せず
空しい姿そのもののかたまりとなる
方向感覚を失った獣たちの
青春なのであろうか

有り余るエネルギーで圧倒し
一切の常識を拒絶する集団となり
ただやみくもに一途に過ぎる叫びをまきちらしては
その残響を夜の舗道に置いて行く

<それはどこへとどくのだろうか>

 深夜の暴走族を表していると思いますが、「方向感覚を失った獣たち」という捉え方が新鮮です。「青春」とは「方向感覚を失」うことなのかもしれませんね。「その残響を夜の舗道に置いて行く」を受けた最終連の「<それはどこへとどくのだろうか>」というフレーズも見事です。青春なんて「どこへとどく」か判らない「残響を夜の舗道に置いて行く」こと、と採ることができます。遠く過ぎ去った青春を思い出して鑑賞した作品です。



山本十四尾氏詩集『水の充実』
mizu no jyujitsu.JPG
2006.9.15 東京都板橋区
コールサック社刊 2000円+税

<目次>
第一章 鳥族の交信
蝶 12        鴉 14
袋耳 籠耳 16    鳥族の交信 18
鳥群 20       飛翔 22
群飛 26       俯瞰 30
天の深層 32     ゆうぐれ 36
第二章 白いもの
白いもの 40     洗う 42
鴉声 44       弄る 46
差響 48       紙魚 50
儀羽 52       鬆 56
発見 58       レタスのはなし 60
第三章 箸
箸 64        鯨 66
果実 68       衣 70
桃太郎 72      文 74
寸景 76       澗声 78
騙し雪 80      地震雲 82
第四章 水の充実
灸 86        捻鍼 88
萎える 90      回鍼 92
打鍼 94       あなた擬 96
金漆考 98      絡織 100
付録 102
.      ふれる 104
さつる つねる 106  水の充実 108
あとがき 110



 洗う

こどもの目はいつも清々しい すきなときすきなだけ ながせる涙
が塵を洗いながしてくれるからだ

雨あがりのあとの天は澄々としている 大気の汚れを一気に 雨が
洗いおとしてくれるからだ

しかし おとなは我慢しないで泣くことができても それだけでは
濁りきり疲れきったこころまでを洗い晒すことができない それが
難しい

洗う そう人は生まれたとき湯で洗う 死した時は唇を水で潤し身
体を洗うように清める 人生において男も女も どのくらい自分を
洗い 人を洗ってあげ 人に洗われる機会があったかで 終のやす
らぎの深浅がきまる そう思わせていま父が棺に入る

 12冊目の詩集です。「第一章 鳥族の交信」は渡り鳥の眼で見た地球を描いた連作で、おもしろい試みです。ここでは第二章から「洗う」を紹介してみました。「こどもの目」「雨あがりのあと」「おとな」と続いて、最終連の「父が棺に入る」とつなぐ見事な作品です。「洗う」という行為の「深浅」を教えていただきました。
 拙HPでは第二章の
「白いもの」「弄る」をすでに紹介していました。ハイパーリンクを張ってあきましたので合わせて山本十四尾詩を鑑賞していただければと思います。お薦めの第一章は是非お手にとってご覧ください。



   back(8月の部屋へ戻る)

   
home