きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.6.11 軽井沢タリアセン・塩沢湖




2007.7.2(月)


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詩誌『二行詩』21号
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2007.6.27 埼玉県所沢市 非売品
二行詩の会・伊藤雄一郎氏連絡先

<目次>
アントニムの法則/伊藤雄一郎        言葉拾い(2)/布谷 裕
Q&A(てんつく)/高木秋尾         曲がりくねっている道がかなしい/大瀬孝和
櫻花 他/安部慶悦             ひきこもり症候群/濱條智里
ゼロ/若月瓔子               生活 他/森 春生
空 他/根本昌幸              三月/青柳 悠
風の中で/渡辺 洋
先人の『二行詩』を訪ねて第4回/伊藤雄一郎 お便りコーナー
お知らせ                  後書き



 アントニムの法則/伊藤雄一郎

 小路
ノッポの男がながぁい影を引きずって歩いている
後ろを歩く小男が日陰の囚人のように震えている

 悲劇
太った大男の後ろの指定席に案内された男の憤懣
目に入るのは喜劇映画に連動して振動する背中だけ

 酷暑
信号待ちの背の高い太った妻がしきりに汗を拭う
隣で背の低い小男の夫は妻の木陰でしばし涼む

 孤塔
ノッポの男俺は天辺を風に曝された孤独がわかる
チビの男僕は底辺で支えている石の痛みがわかる

 運命
ノッポの男は戦争で狙われる最初の犠牲者になる
チビの男は銃弾が頭上を通過して最後まで生き残る

 表題の「アントニム」とは反義語や反対語のことのようです。ここでは「ノッポ」と「チビ」の対比で話が進んでいきますが、特に「悲劇」はおもしろいですね。もちろん「喜劇映画」が「アントニム」になっているわけですけど、私にも覚えがあって「男の憤懣」がよく判ります。最後の「運命」はよく言われることですが、統計的にも事実なのかもしれません。それぞれに楽しませてもらいました。



詩とエッセイ『想像』117号
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2007.7.1 神奈川県鎌倉市
羽生氏方・想像発行所 100円

<目次>
考古学・人類学と現代社会…羽生淳子 2
入浜権運動の資料のこと…羽生槙子 3
詩「江ノ島電鉄 鎌倉高校前駅の前の海」…羽生槙子 6
ゾリステンコンサートに行く…羽生槙子 7
詩「ゆれる菜の花」ほか5編…羽生槙子 9
花・野菜日記07年5月…12



 江ノ島電鉄 鎌倉高校前駅の前の海/羽生槙子

 2 子どもと海辺

梅雨前の晴れた午前
小笠原の向こうを 台風が通りすぎたという
気温が上がって
きょうの海辺は 三々五々人がいる
先生が二人と
オレンジ色の帽子の 幼稚園児らしい一団がいる
波が寄せて来るまで パチパチ手をたたいて
波がバシャンと打ち寄せると止め
またパチパチ手をたたいて 次の波を呼び寄せる子
打ち寄せる波を ぴょんととんで渡る子
海草を拾う子
波が打ち寄せると逃げ 引くと追いかける子
先生に何か言ってくる子
「水着着てるから ぬれて大丈夫よ」と先生
冒険心いっぱいらしい子が
水際を向こうへ走り出すのを 先生が止める
オレンジ色の帽子を数えると十名
どうしても海がこわい子が二人いるらしい
先生が「大丈夫」と水際に連れて行こうとしても
子どもの方が真剣にこわいのだから 子どもの勝ち
ア また遠くへ行きたいあの子が 渚を走り出す
先生が呼び戻す
アレ? 水の中に 引く波に乗って行きたそうな子
先生が連れ戻す
オレンジ色の帽子 一 二 三……十名 いいです
水に入らない子たちと先生の一人が
砂浜に池を掘って深く掘って 池はもう水がいっぱい
水際から長い長い海草を引きずって来て池に入れる子

ね 海
こういうのを「平和」と言うでしょ
ありがと 海

 渚で遊ぶ「幼稚園児らしい一団」が生き生きと描かれています。特に「波が寄せて来るまで パチパチ手をたたいて/波がバシャンと打ち寄せると止め/またパチパチ手をたたいて 次の波を呼び寄せる子」というフレーズは微笑ましくて良いですね。「子どもの方が真剣にこわいのだから 子どもの勝ち」というフレーズにも瞠目しました。子どもの強さの秘密が分ったように思います。
 最終連の「こういうのを『平和』と言うでしょ」という言葉には、平和の重みが乗っています。微笑みながらもその奥の平和について考えさせられた作品です。



個人詩誌『凪』19号
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2007.6.20 千葉県八千代市
星清彦氏発行  非売品

<目次>
金色の菜の花…2   魔法のチケット…3
ヘッドライト…5   過ぎゆく窓の景色から…9
六月だもの…11    海からの風はよい風…13
とある焼鳥屋で…15  後書き…17



 魔法のチケット

冬の終わりの陽射しには
いさぎよい美しさがある
そんなある日の朝
不意に誰かに呼び止められた気がして
くるり振り向くと
「おやっ・・・梅。」
もう何万年も以前からそうしているような
見事さと懐かしさが開いている
生来の東北人だから
この時期やこの瞬間がたまらなく好きだ
何でもかでも全てが許される
とても嬉しくて目ばゆい頃
僅かに付けた小さくて白い花が
冬との別れを告げてくれる

「春」という言葉は
やり直しのきく
魔法のチケットだ

流れる水の音も
流れる風の音も
全てが魔法にかっている

 「不意に誰かに呼び止められた気がして/くるり振り向くと」それは「梅」だった、というフレーズも良いのですが、それ以上に第2連が佳いですね。「やり直しのきく/魔法のチケット」は、人間の世にはなかなか存在しません。自然の「春」がそのチケットだという発想に、この詩人の本質的なものがあるように思います。「生来の東北人」と無関係ではないでしょう。殺伐として世にあって、なにか救われた思いのする作品です。



個人詩誌『休憩時間』創刊号
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2007.6.24 千葉県八千代市 星清彦氏発行
非売品

<目次>
初夏の空       後方支援
起きたばかりの絨毯  懺悔その1
でっかいかさぶた   紫陽花
後書き



 でっかいかさぶた

もう五十年も生きていると
幾つもの後悔や未練が
長い長い尾になって
夏空に傷跡を残している

 前出の『凪』が今号から印刷本になったので、新たに手作りの詩誌を作ったそうで、その創刊号です。写真と詩が組み合わされた美しい詩誌です。紹介した「でっかいかさぶた」という詩には「夏空」の写真が添えられていて、写真の真ん中は飛行機雲で切り裂かれています。「でっかいかさぶた」です。「幾つもの後悔や未練」の「傷跡を残」すかさぶた。見事としか言いようがありません。今後のご発展を祈念しています。



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