きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.6.11 軽井沢タリアセン・塩沢湖




2007.7.2(月)


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詩誌『青芽』545号
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2007.7.5 北海道旭川市
青い芽文芸社・富田正一氏発行 700円

<目次>
作品
富田正一 4     森内 伝 6     村上抒子 7
山田郁子 8     四釜正子 9     吉村 瞳 10
本田初美 11     芦口順一 12     荻野久子 13
佐藤潤子 14     佐藤 武 15     武田典子 16
宮沢 一 17     小森幸子 18
◇詩見・時言・私見特集
文梨政事 19     村田耕作 20     小林 実 21
武田典子 22     本田初美 23     沓澤章俊 24
仲筋哲夫 25     佐藤勝信 25     吉村 瞳 26
横田洋子 27     佐藤 武 28     森内 伝 29
浅田 隆 30     富田正一 31
作品
浅田 隆 32     菅原みえ子 33    堂端英子 34
横田洋子 35     オカダシゲル 36   千秋 薫 37
能條伸樹 38     仲筋哲夫 39     岩渕芳晴 40
沓澤章俊 41     現 天夫 42     倉橋 収 44
小林 実 45     村田耕作 46     文梨政事 48
◇連載
青芽群像再見 第五回 冬城展生 53     青芽60年こぼれ話(2) 富田正一58

青芽プロムナード 50            寄贈新刊詩集紹介 50
扉について 60               告知 61
寄贈誌深謝 61               目でみるメモワール 62
編集後記 64
表紙題字 富田いづみ  表紙画 文梨政幸  扉・写真 富田正一



 背中のエレジイ/能條伸樹

街角で、ふと前を行く老人の少し前かがみの固い背中
に、あなたを見た。

父よ。あなたが逝って四半世紀。私もその歿年に近づ
いた。あなたの痩せた背中は、そんな私の人生の前で、
ずっと揺れ続けている。

 北の島利尻の鴛泊に生を受け、地元の高等科を終え
 て出札した父は、編入学した北海中学で、同級の野
 呂栄太郎ら多くの個性的な友を得、学友会誌編集部
 員として、ひそかにモノカキへの志を育んだ。

 上京して入った大学には、漱石門下の逸材が揃って
 いて、父の文士への夢をかきたてた。関東大震災が
 起き、両親が強く帰郷を促したが、父はそれを拒み、
 仕送りは杜絶えた。大学二年で中退、退路を断った
 貧乏文士ぐらしが、そこからはじまる。

 東京、札幌と何度も居を移しながら、父は演劇活動
 や文芸誌編集などに手を染め、ひたすら貧乏を増幅
 する。結婚して二男二女を得たが家計は常に火の車。
 家族は、父が軽蔑する世俗の掟から復讐され続ける。

私は、そんな父の不遇と痩せ我慢の背中をみつめつつ
育った。だが問わず語りの父の、 貧乏物語 は、か
えって私にモノカキへの憧れを伝染させた。親も子も、
ついにその道での成功は覚つかず、いまもって私は、
中途半端なライター稼業を卒業できない。

でも父よ。あなたの傷だらけのDNAを背負い込んで、
私はもう少し歩き続けたいと思う。

 「父」という人間像がよく描けている作品だと思います。「父が軽蔑する世俗の掟から復讐され続ける」「家族」の一員である「私」もまた魅力的な人間に映ります。「不遇と痩せ我慢の」「傷だらけのDNAを背負い込んで」いる親子の、決して暗くはない姿勢がどこから来るのか、この作品からは直接読み取れませんけど、おそらく「モノカキへの志」の高さに拠るのだろう思います。文学の怖さ、そして本質を感じさせる作品だと思いました。



詩誌『詩区 かつしか』94号
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2007.6.24 東京都葛飾区 池澤秀和氏連絡先
非売品

<目次>
蓮の花/小川哲史              脱皮/田中眞由美
千秋楽/小林徳明              こころ模様/小林徳明
消えた道/池沢京子             さようなら コムスン/みゆき杏子
アラビアナナイトのガラス玉/しま・ようこ  美しい村/工藤憲治
キャラメルコーン/工藤憲治         水鳥/内藤セツコ
雑念 こぼれて・・・/池澤秀和       おくど木橋/石川逸子
くろネコ/堀越睦子             梅雨の晴れ間にしたこと/青山晴江
人間84 老人どもが怒り狂って何故悪い/まつだひでお
人間86 癌の妻/まつだひでお



 雑念 こぼれて・・・/池澤秀和

幼児期 ばあちゃんから「ごはんに おみおつけを かけて食べると転ぶから
 だめ」と 何度も聞かされた 学童期 おふくろから「茶碗のなかに ご飯
粒残しては だめ すすいで飲みなさい」
 「母乳の出ない人は おもゆを うすめて あかちゃんを育てるのだから」
とも聞かされた
いつの間にか「ご飯のあと ねばりを すすいで飲むと百メートルぐらい走れ
るカロリーがあるんだぞ」と子や孫に聞かせていたりする 今でもご飯にかけ
るのは納豆・とろろとお茶づけのときだけ ヨーグルトを食べた後もすすいだ
りすると「きたな−い」と言われたりして・・

先日 突然五感を走り抜けたものがあり「もったいない」という行為を捨てる
ことにした 工業団地 宅地開発 干拓地はそのままに お手盛り無駄速いも
そのままに祭り太鼓に手拍子のまま それ行けどんどん さんせい さんせい
美しい国 徳育 などと こころの 端に残る隙間へ尤もらしく 押し込み募
いられるので 捨てることにしたのだが・・
ひとつだけは「もったいない」を守りたい むかし平城京は唐都長安をまねて
南北九条東西四坊 整然とした街路をつくり 国とひとの暮らしの基確をつくっ
た――と歴史の時間に教えられた

敗戦後 ずうっといままで 言いたいことを言い 食べたいものを食べ 自由
に行動できたのも 現行憲法で こころを育てられたのも 誰にも言える本当
の話 九条に苦情 前文書き換えなどと 独りぼっちでもなく貧しくもないの
に もうひとつの貧しさの 声の高さに 悲鳴が聞こえてくる

難問ひとつ浮上して もったいない を大事にすれば家の中はダンボールの山
使い捨てに転じれば ごみ捨て場が悩みの種 ひとつのものを寿命が尽きるま
で 使いこなせば作った物の在庫の山 回りつづけ 動きつづく速度に 歯止
めをかける知恵の 回路を探す 変更ボタンの位置を探る 予告時計の秒針に
間に合わせないと・・・

 最近はやりの「もったいない」への異議申立ての感があり、指摘していることは重要だと思います。最終連の「もったいない を大事にすれば家の中はダンボールの山/使い捨てに転じれば ごみ捨て場が悩みの種 ひとつのものを寿命が尽きるま/で 使いこなせば作った物の在庫の山」というフレーズはその通り、ここに問題が解決できない鍵があります。
 それではどうするか…。作者は「動きつづく速度に 歯止/めをかける知恵の 回路を探す」と言っています。けだし名言と云えましょう。速度なのです。いつまで動く機械・機器なのかは速度と関係する、とここでは言っているように思います。いろいろな見方が出来ますが、ゆっくりと長く稼動するのか、速く動いて速く寿命を全うするのかを問われていると私は思いました。もちろん現在は後者です。その考え方に「歯止めをかける知恵の 回路」が必要なのでしょう。それは決して企業の利潤追求と矛盾しないはずです。

 私も現職ならこの考え方をもっと仕事に生かしたでしょうが、残念ながら今は技術屋の世界から離れました。しかし、それは個人の生活の中でも生かせるでしょう。良いヒントをいただきました。もう少し考えを発展させて、ひとつの理屈を組み立ててみたいと思います。



個人誌『むくげ通信』35号
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2007.7.1 千葉県成田市 飯嶋武太郎氏発行
非売品

<目次>
金光林エッセイ 二人の恩人と一人の怨鬼 1

貧しい詩人…キムソル 3
ある九十歳の老人の人生談/私の人生の果実の味/この世を恥なく…崔載亨(チェジェヒョン) 3
血肉−子供について(七)…金年均(キムニョンギュン)・鴻農映二訳 4
山裾に座り…金学K(キムハクチョル) 5
無常/希望…崔ソンビョン 5
インド…尹ドンジェ 5
鳥…イフンガン 5
素描(デッサン)…南 邦和 6
南京大虐殺…水崎野里子 6
知覧基地 三角兵舎…雲島幸夫 7
草原/消えない傷/カラコルムへ移動…飯嶋武太郎 7
編集後記 8
第三回日韓文学交流「詩の祝祭」のご案内 8 → *詳細は
こちら へどうぞ



 消えない傷/飯嶋武太郎

世界詩人大会は
世界の詩人たちが集い
詩を朗読し友情を育み
世界の平和を希求する処
しかし世界には
殺し殺された過去の歴史が
今なお我々のこころに影を残している
日本の詩人が原爆の悲惨を叫べば
アジアの詩人から
侵略の責任を逆に問われる
南京虐殺や重慶空爆
従軍慰安婦が如何に非道なものであったか
その釈明を求められることもなくはない
私たちがすまなかったと言えば
その場はそれで済むかも知れないが
それで終わりにはならない
被害を受けた国と
そこに生きる人々の心には
時が如何に過ぎようとも
例え世代がかわろうとも
過去の歴史が遺伝子のように
民族の消えない傷として残っている

 モンゴルでの「世界詩人大会」に参加したときの作品が3編載っていました。そのうちの1編を紹介します。「日本の詩人が原爆の悲惨を叫べば/アジアの詩人から/侵略の責任を逆に問われる/南京虐殺や重慶空爆/従軍慰安婦が如何に非道なものであったか/その釈明を求められることもなくはない」というフレーズに、世界における日本の立場が如実に現れているように思います。「民族の消えない傷」を私たちはお互いに認識しなければならないのだと教えられた作品です。



『関西詩人協会会報』46号
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2007.7.1 大阪府交野市
金堀則夫氏方事務局・杉山平一氏発行 非売品

<本号の主な記事>
1面 知事表彰受賞・関西詩人協会 第6回詩で遊ぼう会in伊賀上野
2面 自選詩集追加募集・第16回詩画展のお知らせ・運営委員会の模様
3面 ポエム・セミナー「自作を語るX」
4面 同上・新入会員紹介・竹島昌威知氏を悼む
5面 文学散歩と講演会報告
6面 会員活動・イベント



 1面には、関西詩人協会が大阪府知事の表彰を受けたことが載っていました。表彰状の写真もあり、そこには「多年文化芸術の向上に寄与されその功績顕著でありますので表彰します」と書かれていました。おめでとうございます。
 2面の「運営委員会の模様」では、昨年暮に開催した日本詩人クラブ国際交流に参加してくださったお二人のエッセイがあると出ていましたので、さっそく訪れてみました。いずれも長文ですが的を射たエッセイとなっています。よろしかったら、関西詩人協会HP
http://homepage2.nifty.com/4-kansai/
をご覧ください。



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