きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2007.9.9 東京・浅草 |
2007.10.5(木)
今日も特に予定のない日。これで3日連続で家にいます。HPのアップも多少は捗っています。9月24日まで漕ぎ着けました。でも、まだまだだなぁ。あと10日分の日記が残っています。忘れそうです(^^;
○門林岩雄氏詩集『道しるべ』 |
2007.9.30 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
花の涙
春風 11 雨 12 西洋タンポポ 13
林 14 春の宵 15 川 16
散歩道 17 初夏 18 沼 19
夏の湖 20 秋の野 21 遠景 22
ふるさと 23 秋の小川 24 秋の林 25
冬の鹿 26 冬の夕焼け 27
古稀の盆
道しるベ 31 秋篠寺 32 おとこ 33
紙 34 山頂 35 いとなみ 36
古稀の盆 37 いのち 38 途上 39
偶感 40 蜜柑 41 檻 42
孫娘のことば 43 冬 44 目 45
詩 46 ことば 47
銅版画
夕焼け雲 51 風 52 川下り 53
退院前日 54 雀 55 鈴の音(ね) 56
友に 58 船 65 あの世の君に 66
年賀状 67 亡き友に 68 塔 69
夢幻境
夢幻境(一)73 夢幻境(二)74 夢幻境(三)75
夢幻境(四)76 夢幻境(五)77 夢幻境(六)78
夢幻墳(七)79 夢幻境(八)80 夢幻境(九)82
夢幻境(十)83 夢幻境(十一)84 夢幻境(十二)86
夢幻境(十三)87 夢幻境(十四)88 夢幻境(十五)89
夢幻境(十六)90 夢幻境(十七)91
収録作品一覧 92 あとがき 96
道しるべ
鬼につかまり
山へ男が運ばれた
道しるべにと
彼は次々と
椿の花を落としていった
それはうつくしい
帯になった
タイトルポエムを紹介してみました。「鬼につかま」って、逃げて帰るときのために「道しるべ」として「次々と/椿の花を落としていった」ら、「それはうつくしい/帯になった」という詩ですが、これは様々な喩として考えられると思います。例えば、やくざな詩の道に捕まってしまって、いずれ真っ当な道に戻ろうと思って撒いた言葉が、計らずも詩になっていた、というような。著者の意図はおそらくそんなところにはなく、純粋にご自分の創り上げたイメージを楽しんでいらっしゃるだけだと思うのですが、佳い詩というのは一人歩きして、読者を自由に遊ばせてくれるのだと考えています。その典型のような作品だと云えましょう。
本詩集中の「蜜柑」と「友に」はすでに拙HPで紹介しています。「友に」は前詩集『城』からの再録ですが、いずれもハイパーリンクを張っておきました。合わせて門林岩雄詩の世界をご鑑賞いただければと思います。
○個人誌『一軒家』19号 |
2007.10.1 香川県木田郡三木町 丸山全友氏発行 非売品 |
<目次>
お客様の作品
詩画
秋/沢野 啓 0 花/丹治計二 33
詩
高崎一郎の世界/高崎一郎 1 楽しい愛/高松恵子 3
随筆
潮風/宮脇欣子 4 第二の里を折ねて/中井久子 5
抱夢園−満員御礼の巻/荒木伸春 7 「あしたは雨やと思え」/池田みち 8
留守番の老婆/星野歌子 9 青春日記/角田 博 11
飛騨の歳時記/佐藤暁美 12 桶職人/篠永哲一 13
冬至/内藤ヒロ 15 今に生きる徒然草/田島伸夫 16
いい人生の生き方/伊東美好 17 依って件のごとし/小倉はじめ 18
詩
詩二編 赤トンボ/高橋智恵子 18 りんどう忌/高橋智恵子 19
あわれんぼうのコスモスさん/山上草花 20 「心の領域」/戸田厚子 21
Mさんの思い出/深野久江 21 祈る人/吉村悟一 22
永遠という言葉/吉田博子 23
介護の詩二編 介護の日々に/友里ゆり 23 介護の母に/友里ゆり 24
砂糖湯の思い出/星 清彦 24 何も言わないけれど/星野歌子 25
晩秋/内藤ヒロ 26 寒梅/佐藤暁美 27
もう少し/大山久子 28 母の星/藤井彌峰子 28
晩秋の山影に/小島寿美子 29 ほたる/佐竹重生 30
落葉の今日/小倉はじめ 30 冬物語/字賀谷妙 31
天使たちの帰り道/成見歳広 32 大事な一滴/小山智子 32
童話
赤い風船/丹治計二 33 千人針/星野歌子 36
美しい村の夢/佐藤暁美 37 チエおばちゃんと幸夫ちゃん/森ミズエ 38
俳句 中井久子 40 徳増育男 41 小倉はじめ 41
川柳 中井久子 42 川西一男 42
短歌 森ミズエ 43 川西一男 43
小説 二の壁/坂戸敏明 44 前夜/小山智子 47
一軒家に寄せられた本より 命の贈りもの 49
全友の作品
小説 峠 50
詩
辛抱 57 倒木 57 選別 58
処暑 58 秋 59
身辺記 猪 59
辛抱/丸山全友
朝早く
妻と山裾の草を刈りに行く
既に蝉が鳴いている
「蝉は鳴くことだけが仕事ね」
後ろから妻の声がする
「雄蝉が雌蝉を呼ぶためになくそうだ」
「蝉にも相性ってあるのかしら」
「長くてもたかが二週間だ。相手がどうであろうと辛抱できるさ」
「あんたはまだ辛抱できるの」
失礼ながら思わずアハハと笑ってしまいました。でも、蝉の2週間って、人間では20年、30年に相当するのかもしれませんね。それでもやっぱり「辛抱」しているのかもしれません。
他人様の作品に蛇足を加える無礼を許していただけれるなら、私はこのあとにうん、俺は辛抱強い!≠ニ書きそうです。お互いに辛抱していくのが夫婦なのかもしれませんね。
○詩誌『よこはま野火』53号 |
2007.10.1 東京都中野区 高木氏方・よこはま野火の会発行 500円 |
<目次>
日が昇る/阪井弘子 4 蝉/進藤いつ子 6
< 湖辺(みずべ) >/宮内すま子 8 川の時間/馬場晴世 10
出発点/はんだゆきこ 12 砂時計/真島泰子 14
月・夏の終り/疋田 澄 16 夜の海/加藤弘子 18
大鷹/浜田昌子 20 ヴァイオリン・コンサート/菅野眞砂 22
忘れない夏/松岡孝治 24 実る/森下久技 26
銀座ゴールデンパレード/唐澤瑞穂 28
* *
よこはま野火の会近況 編集後記 30
表紙 若山 憲
日が昇る/阪井弘子
少年と父親は珊瑚の砂浜に立っている
太平洋上にあるキリバス共和国のなかの小さな珊瑚島
「ここは世界で一番早く日が昇る島だよ」
遥か水平線から打ち寄せてくる陽光の波
少年の顔は輝いている
わたしは隣家の屋根越しに差してくる
一番早い陽光にあたりたくて庭に下りた
朝露にぬれて
もうヘブンリーブルーや黄つりふね草が咲いている
夫が好きだったみつばつつじや侘助は
花が終わって深緑の葉を繁らせている
野鳩の番いも忙しなく地面をつついている
あちらこちら爽やかな風に揺れて
小さな躍動感があふれている
終日陽光を浴びて洗濯物や夜具をとりいれ
夕焼けに染まった雲や山並みを見ている
ふと日が地球を巡っていることを思う
庭の隅にも仄かに夕焼けが残っているころ
南の国の少年は遊びつかれて
日焼けした体を投げ出し
とっぷりの眠りの波間に揺られていることだろう
「太平洋上にあるキリバス共和国のなかの小さな珊瑚島」と「野鳩の番いも忙しなく地面をつついている」「わたし」の家の「庭」。「日が昇る」時間は多少違っても「日が地球を巡っていることを思う」。地球規模のスケールの大きさを持ちながら、視線はあくまでも細やかな作品だと思います。最終連の「南の国の少年は遊びつかれて/日焼けした体を投げ出し/とっぷりの眠りの波間に揺られていることだろう」というフレーズも佳いですね。実際に会ったことがあるのか、想像上の「少年」なのかは判りませんけれど、人間同士のつながりが爽やかな作品だと思いました。
○アンソロジー『山形の詩』2007 |
2007.10.7 山形県山形市 芝春也氏方・山形県詩人会発行 1000円+税 |
<目次>
山形が光って観える=@会長 木村迪夫
作品
ある先生(メットル)に捧ぐ…相蘇清太郎 6 反流行性感冒/擬人的食事法…青木紀幸 7
短詩群(七篇)…安達敏史 8 やいと/追憶/空寂…阿部栄子 10
むんつんたかりの詩…阿部宗一郎 12 いきし(生き死)/三月の日…いであつし 14
歯科医院にて…いとう柚子 16 彼岸の皇帝の咽るまで…井上達也 18
野の草の文化地図・歴史地図…伊淵大三郎 20 仕事…大場義宏 21
かまど消し…上野政蔵 22 カーテンコール/さんりんしゃ…遠藤敦子 24
ぼくの魂がある日…近江正人 26 ねむの花ゆれて…大江利知 28
黒伏山/眠れない夜…奥山美代子 30 動物園/退化…尾崎まりえ 32
生いたち/残された道…蒲生直英 34 父・母(雨)…菊地隆三 36
美しい人…木村迪夫 38 下駄…木村 廣 40
春のイマージュ…小寺壽毅 41 森/歳月/水音/自然/径…小林 功 42
言の葉…斎藤範雄 44 橋/空/潔く(祈り)…斎藤政明 46
野球少年/陸上の聖地…齋藤 守 48 吹浦/きさらぎ…佐藤 伝 50
独白…佐藤亜美 52 様似町…多田良子 53
あめふり花…佐野カオリ 54 あばよ。…芝 春也 56
青い水球/実生…島村圭一 58 屋号 源五兵衛 祖父 源蔵さま…菅井やゑ子 60
ゆうやの白いズック靴/くんくん…鈴木康之 62 碧落(へきらく)…高瀬 靖 64
朝/幸福/汚ギャル… 高橋英司 66 わたぼうし、飛ばそうよ?/メッセージ…ちょぐお 68
八月/滝…中江清満 69 雨の記憶…並木 翔 70
風…細矢利三郎 71 亡き妻を想う…比暮 蓼 72
つかまる…平塚志信 74 メキシコの闘牛士…本郷和枝 76
いまと 昔…本間とみ 78 父のふるさと・東京/さりげなく…本間光枝 80
寝相考…松田達男 82 がん告知…真冬理華 84
泣く…若木 睦 85 天の配剤/出会い/継投…万里小路譲 86
理科ばなれ…山田よう 88
*
会員の著作・出版状況一覧 90 山形県詩人会々員・役員一覧 92
あとがき 94
むんつんたかりの詩/阿部宗一郎
人間あきらめたときが一番美しい
おかめに生まれたらおかめでいいじゃないか
ひょっとこに生まれたらひょっとこで何が悪い
がんばれ あきらめるな なんて
背中を押され 尻を叩かれ
ついついその気になって
身のほど知らずの重荷を背負わされ
人生を捧げるだけの何があるというのだ
学歴を名刺に刷りこんで誰に君臨したいのだ
巨億の紙幣をベッドにして何の夢を見たいのだ
勲一等落日芋花章がそれほど欲しいなら
街のコイン古物商で十八万円で売ってるよ
そんなに長の椅子に坐りたいなら
無用の長物の長でいいではないか
どだい 数学が1と2の父と母から
数学5の子が生まれる訳がないだろ
おのれのDNAをさておいて
がんばれだの あきらめるな なんて
身の丈のすべては父母の分け前ではないか
人生 知ることが最良の価値なんて大嘘
人類は知り過ぎたからこそ不幸が始まったのだ
知る権利などとまことしやかに赤い鎌を振り廻すが
知らずに済む権利のほうがはるかに大きくて重い
法のもとにすべて平等だなんていうけれど
法そのものが不平等なのをどうしてくれるかだ
何はともかく 道端の石にでも腰をおろして
ゆっくりあたりを見廻して
目から鱗を落とそうよ
そのうえ身の丈にあわぬ肩の荷なんか放り出してしまえ
人間肩の荷を捨てると人生の足取りが軽くなる
かんじんかなめの肝臓も腎臓もみんな生き生き
五臓六腑が ぴんぴん走りだすよ
山は緑の双手をひろげて君の肩を抱き
川は波をゆらしてワルツに君をいざなう
草は七色の花で君の衣を染めあげる
そして樹林は両手にあふれる木の実をもたらす
食うだけの米と大豆とわらびと山女と落鮎と
こぼるるほどの隣人の支えと愛とにつつまれ
遠く山脈が見える段丘のちいさな萱ぶきの家で
花と鳥と風と月と蝉と蛙とそしてむささびとの人生が
あきらめひらきなおればそれが見えるだろうが
※むんつんたかり/つむじもへそも曲がってる奴
2004年以来の2冊目のアンソロジーだそうです。55名の会員中49名が参加というのですから、参加率89%、すごいものです。ここでは数ある佳品の中から阿部宗一郎氏の作品を紹介してみました。「そんなに長の椅子に坐りたいなら/無用の長物の長でいいではないか」、「法のもとにすべて平等だなんていうけれど/法そのものが不平等なのをどうしてくれるかだ」などのフレーズは辛辣で、胸がスカッとする思いです。山形県には出張で5〜6回行った程度ですが「むんつんたかり」な人には会ったことがありません。密かに胸に秘めているのかもしれませんね。詩人としては大事な素質だと思います。
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