きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
tsuribashi
吊橋・長い道程




2007.12.8(土)


 午後から日本詩人クラブの今年最後の理事会と「国際交流の集いおよび忘年会」が
東京大学駒場Tキャンパスで開催されました。
 理事会からのお知らせの目玉は、来年2月の例会は東京ではなく広島で開催するということです。「詩と平和」の集い(広島会場)として、詩の朗読、シンポジウム、平和のうたコンサートなどを行います。詳しくは
こちら をご覧ください。これは私も出席することになりました。
 私からは先日のオンライン作品研究会などの報告をしました。さらに、以前、会員から要望が寄せられていた事務所の公開を諮りました。これは理事会の承認が得られましたので実施します。実施日は総務に一任させてもらいました。事務所公開とは、会員・会友の皆さんの会費値上げによって実現した事務所を、1日公開して見てもらおうというものです。理事会や委員会で使っていますから、それに関係する人はどんな処がご存知なわけですけど、そうでない人のために1日開放します。日程が決まりましたらお知らせしますので、ぜひ一度は見ておいてください。

 「国際交流の集い」は東大大学院准教授のヘルマン・ゴチェフスキ氏
による講演「朗読と歌唱――言葉のリズムとメロディーについて」でした。言語には散文や韻文と関係なくリズムとメロディーがあること、わらべうたなどには自然に言語のリズムとメロディーから発生するものが多くあることなど、日本とドイツを中心にした実証的なおもしろい講義でした。

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 写真は「国際交流の集い」の後の忘年会の一齣です。ヘルマン准教授はピアノを弾いてくれたり、大きな身体を縮めて合唱に加わってくれたりで、非常に好感の持てる先生です。集まってくれた人も今理事会としては初めて100名を超えて、主催者側の一員として篤く御礼申し上げます。駒場の夜を楽しんだ佳い1日でした。おいで下さった皆さん、ありがとうございました!



詩誌『存在』97号
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2007.11.30 岐阜県各務原市
河田忠氏編集・存在社発行 500円

<目次>
白露の葡萄…向井成子…2          萩の闇…村瀬和子…4
暮れていく町の狭間
(はざま)で…平石三千夫…6  十三夜…井手ひとみ…8
萩…稲垣和秋…10              夕凪の海…河田 忠…12
同人T…村岡 栄…14            詩人は死ぬ、詩を進化させよ…伊藤成雄…16

窪田般彌ノート T…河田 忠…18      詩的メモ…河田 忠…19
書評『近世日本世相史』…船木満洲夫…20   美術館めぐり…船木満洲夫…21
同人の著書…21               俳句 秋思…伊藤成雄…22
存在同人名簿・編集後記…22



 十三夜/井手ひとみ

上京して一年がたった夜
ふと電灯に透かした手のひらに
昔ふるさとを飛び出した若い祖父の血を探る

しゃくしゃくと蚕が桑の葉を食む家を出て
東京のまんなかで
彼は何を思っていただろう
白い梨の花が散る下で
ほんの少し汗ばんだ少女の額の熱も
もはや都会の夕刻のうらさみしい冷え込みの
なかでは蘇ってこない

心地よいつめたさが鉄路からのぼってくる
咲いたばかりの桃の枝を酔いにまかせて
振り回しながら
突進してくる列車が彼にむかうあの時が
こようとは

とうふ屋の音がする
露地うらの
少し傾いた下宿屋の二階で寛ぐ彼が見える

捨ててきたものと
掴もうとするものを数えながら
今夜のような月を見上げて
杯を捧げて

 「昔ふるさとを飛び出した若い祖父」が「少し傾いた下宿屋の二階で寛」ぎ、「捨ててきたものと/掴もうとするものを数えながら」「月を見上げて」いた姿に、その孫は「電灯に透かした手のひらに」「祖父の血を探」っているわけですが、時間の処理がおもしろいと思いました。過去と「今夜」をつなぐ「十三夜」は現在でも同じように出ているので、そこに読者は時間を委ねることができます。そして「血」という着実な時間の経過についても思いを馳せることもできましょう。「東京」という同じ土地で、主題は「祖父」と孫にとって「捨ててきたものと/掴もうとするもの」は何であったかというところにありますが、それは読者にとっても同じこと、共感できる作品だと思いました。



文芸誌『ノア』14号
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2007.11.30 千葉県山武郡大網白里町
ノア出版・伊藤ふみ氏発行 500円

<目次>

月の浜辺…右近 稜 2           旅の終り…筧 槇二 4
締切日…大掛史子 6            コオロギさん おべんとう どうぞ…山口敦子 8
シュレッダー…上村節子 9         琉ちゃん…大沢直江 10
お伽話…伊藤ふみ 11
エッセイ
『いかのおすし』…保坂登志子 12      芸がまずいと叱られて…高島清子 14
人形の中に見えるもの…遊佐礼子 16     フビライ・ハーンとマルコポーロ…馬場ゆき緒 20
詩画 武政 博 田村和子 22
紀行文
私のアブロード…森 ケイ 24        あたたかな風…井上明子 28
新刊紹介 右近稜著作集(詩編)…30     ご紹介…31
編集後記 32



 シュレッダー/上村節子

優しい言葉が
呑み込まれ
縺れたいきさつが
噛み砕かれる

ながい間
捨てられずにいた
手紙の束

意を決した昼下がり
一枚
また一枚
獲物を捕えた刃が
勢いよく切り裂いてゆく

時どきブレーキをかける
ためらいの指先

ビニール袋一杯に
形を変えた過去たち

こそげ取った胸のつかえを
押し込む

 「時どきブレーキをかける/ためらいの指先」というフレーズが良いですね。私も会社で書類を「シュレッダー」に掛けたとき、本当にこれ大丈夫かな?と躊躇ったものですが、ましてそれが「優しい言葉」や「縺れたいきさつ」が書かれている「手紙の束」なら尚更でしょう。「ながい間/捨てられずにいた」心境も最終連の「こそげ取った胸のつかえ」という詩語によく出ていると思います。現代の事務用品を見事に遣った作品だと云えましょう。



情報誌『あっとほっと』創刊号
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2007.9.1 千葉県山武郡大網白里町
あっとほっと編集室発行  非売品

<目次>
真珠の涙壁 大網白里町の里山、谷津田の自然
私と大網白里町
昔はあった「六斎市」



 私と大網白里町/小中在住 KHさん

 在住27年のKさんは、世界の空を飛び回っている。ウッドシーラーシングルという輸入外壁のお宅は、後ろに山を背負い、前面の溜池にはボート、放し飼いのアヒル、犬、猫と、まるで外国の田園風景。
 Kさんがこの町に住んだのは自然の中で生活をしたかったから。広々したテラスは、ログハウス造りを本格的に学ばれたご本人の作。裏山の竹もふんだんに使い、居心地は抜群で、犬や猫たちのくつろぎの場にもなっている。
 ここに移った当初は、地域の行事に積極的に参加したという。三人の子供さんはすぐ地元にとけこみ、(今は成人して町を出ている)桑の実で口を真赤にして自然のめぐみを満喫して育ったようだ。
 ユンボが恋人というKさんは埋もれた溜池を掘り、夢中になるとユンボごと身動きが取れなくなり、奥様が知人に助けを求めることも何度か。それでも仕事の合間をみて一人で掘りあげ、すっかりユンボの虜に。
 池は近所の人が放した鯉が増え、気温が上がると水の色が変わるのは鯉の量と池の大きさのせいかと、環境を配慮、また、近々新道が出来るので山が壊されることに危惧されていた。
 自然との共生のなかで「素敵」がいっぱいのKさんご夫妻、「まだまだやりたいことがたくさん」とおっしゃるKさん、「定年まであと二年!」とのこと。(伊藤記)

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 私も何度か訪れたことのある大網白里町の情報誌、創刊号です。A4を3ッ折りにしたミニサイズながら、町のお薦め情報がコンパクトにまとめられていました。役場や商店で気軽に手に取ることができるようにと作られたものでしょう。
 紹介したのは「世界の空を飛び回っている」というKさん宅訪問記。成田が近いことから国際線のパイロットなのかもしれません。「自然のめぐみ」を楽しんでいる生活が伝わってきます。なお、原文では姓名が載っていましたが、ネットの特殊性を考慮してイニシャルだけとさせていただきました。ご了承ください。



情報誌『あっとほっと』2号
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2007.12.1 千葉県山武郡大網白里町
あっとほっと編集室発行  非売品

<目次>
九十九本の矢と九十九里浜 堀川のゴミの番人排水機場
私と大網白里町
大網白里町の名前



 大網白里町の名前

大網白里町は長い町名です。昭和29年に大網町と増穂村と白里町が合併しました。大網地区は海が近かった昔、広い網場があったようで、「ひろい」網の打てる場所、「大網」。白里地区は百里から漢字の一を引いた「白里」で九十九里に引っかけている。どちらもいわれのある名、一緒に付けて町名になりました。

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 町名の由来が紹介されていましたが、「長い町名」はやはり町村合併の結果だったのですね。それにしても「白里」がおもしろいです。百寿、白寿の類でしょうけど、昔の人の粋なセンスには脱帽です。



   
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