きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
tsuribashi
吊橋・長い道程




2007.12.14(金)


 午前中から神楽坂(天神町)の日本詩人クラブ事務所に行ってました。1月新年会の案内状と、2月に行われる広島でのイベント案内状発送です。理事長以下7名が集まって作業しましたが、11時から始まって終わったのが18時過ぎ。けっこう掛かるものだなと思います。会社勤めの頃はよく経費を計算したものですが、それに倣ってみると、7人×7時間で49時間、時間あたり1,000円とすると、単純計算で計49,000円の人件費が掛かったことになります。実際にはこれに健康保険料負担分や失業保険負担分・光熱費が加わりますから、ザッと2倍というところでしょうか。それが全てボランティアですから凄いことだと思いますね。
 そんな苦労をしながら発送していますので、新年会も広島も、皆さん是非おいでください。そして呑みましょう(^^;



文芸誌『京浜文学』10号
keihin bungaku 10.JPG
2007.6.30 横浜市保土ヶ谷区
京浜文学会・神谷量平氏発行  非売品

<目次>
【創作】
嬉野の夢…栗原治人 4           遠い流れ…新井知次 14
工都の夜…稲木順平 30
【童話】うさぎとカメのかけくらべ…田中誠一 37
【詩】
鉄格子…うめだけんさく 38         盗む/正月の空…新井知次 42
猪狩満直に捧げる詩 愛宕の桜はいま満開です…松崎唯史 44
津軽海峡/ぐい呑み一杯…高橋一仁 51    百行散文詩 猫たちの話…いわたとしこ 54
【短歌】スケッチ風メーデー歌…渡辺暁男 61
【ノンフィクション】地の果て西アフリカを目指して…木村為蔵 62
【特集/船方 一 五十年祭 二〇〇六年】
船方 一の未収録詩について…神谷量平 85  ピンさんの笑顔…栗原治人 89
船方 一先生…高橋一仁 94
【視点】このいとわしきものと捨てがたきもの−川崎長太郎のこと…うめだけんさく 97
【エッセイ】時だけが過ぎて…渋谷とみ子 104
【ノンフィクション】麻布山善福寺裏(三)−関東大震災の思いで−…神谷量平 106
【戯曲】六月朔日
(さくじつ)記・華 一幕…秋間瑛子 124
編集後記…160
表紙絵・扉/牧野英雄 さし絵/高橋一仁・牧野英雄



在郷軍人のおじさんがやって来たのは大本営発表に「玉
砕」の文字が使われだした頃でした
「お国のためですお宅の猫たちを供出して下さい」 と言
ってきたのです
節ちゃんちの犬が連れていかれたのはその前の年 シェ
パードでした 軍用犬になったと聞きました
徹くんちの犬も連れていかれました 毛の長い犬でした
兵隊さんの毛皮になると聞き 徹くんは犬と一緒に隠れ
たけど連れていかれたそうです
クロとミーを抱いてわたしは防空壕に隠れました でも
すぐに見つかって 檻にいれられたクロとミーの最後の
悲鳴が六十年たってもわたしには聞こえるのです
「助けてあげられなくてごめね」母はそればかり言って泣
きました
しばらくして剥製屋さんの店先に小さな毛皮がうず高く
積まれているのを見ました クロやミーもその中に混じ
っているにちがいありません 反戦主義だ兵才無用の思
想だと難しいことはわかりません でもそれ以来わたし
は戦争を生理的に憎みます 父は化学工場が爆撃され即
死でした 母も戦後まもなく亡くなりました いま捨て
猫の世話がわたしの生きがい クロやミーヘのお詫びの
つもりで猫たちを世話しているんです でも猫って不意
にいなくなるんですよ 行き先も告げずに 始めは涙に
くれていましたけど今は違います 猫はあの世とこの世
を自由に行き来できる動物だってわかったからです ほ
ら猫ってよく鏡を見るでしょう あれは自分の姿を仲間
と思いこんでるのではなく 鏡の奥があの世へつながっ
ているのです 先へいった仲間を呼び出しているんです
暗闇で瞳が光るのはそのためです あちら側とこちら側
両方見ることができるのです

 『京浜文学』は、今から30年以上も前の、私が20代の頃から知っている有名な雑誌です。それが10号≠ニいうので、あれっ? と思いましたら、第4次とありました。いろいろと紆余曲折があったのでしょうね。
 紹介した作品はいわたとしこさんの「百行散文詩 猫たちの話」の中間部分です。「シェパード」が「軍用犬になった」とは聞いたことがありますが、「毛の長い犬」が「兵隊さんの毛皮にな」ったり、「剥製屋さんの店先に小さな毛皮がうず高く積まれている」ということは知りませんでした。当時を知る人には当然なのでしょうけど、私たち戦後生まれには貴重な歴史の証言です。「猫はあの世とこの世を自由に行き来できる動物」という視点とともに興味深い作品でした。



隔月刊詩誌『石の森』142号
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2007.12.1 大阪府交野市    非売品
交野が原ポエムKの会・金堀則夫氏発行

<目次>
河童/美濃千鶴 1             ジコチュウの一歩/佐藤 梓 2
期限切れ/佐藤 梓 2           お帰りなさい/夏山なおみ 3
(わだち)の前で/夏山なおみ 4       いつか花になる/西岡彩乃 5
鏡がない/西岡彩乃 6           一〇〇分の五〇/山田春香 7
うさぎの部屋/石晴香 8         きもち/石晴香 9
帳消し/大薮直美 10            閉まるドアにご注意/大薮直美 10
山師/金堀則夫 11
《交野が原通信》第二五七号 金堀記 12   《石の声》四方彩瑛・佐藤 梓 13
あとがき



 ジコチュウの一歩/佐藤 梓

ホームに立つ時はいつも
レールの先にあるものを見たいと
望む
なんどもここから
飛び立ちたいと思った
鉄の棒が伝える
あしたへの期待と
絶望の足音
さかさかさかと
レールが鳴る
ホームに鳴り響く警戒の声
わたしはレールの先を見るのをやめて
足元に目をおとす

飛び出してしまおうか

誰かが誘う
この命を天にまかせて
あの二本の鉄の間で
砂利と列車の隙間に上手くもぐりこめたら
なんて気持ちがいいだろう

そんなはた迷惑な好奇心をかかえて
列車の到着を待ち
今日もわたしは何事もなく
いつものように扉をくぐる

 「飛び出してしまおうか」という感覚は誰にでもあるのだなと改めて思います。私も電車に乗るたびに「なんどもここから/飛び立ちたいと思った」ものです。別に世に悲観してとか、失恋してとかではなく、あれは不思議な気持ですね。その心理を巧く表現した作品だと思います。そして、この作品の優れているのは、そんなのは「ジコチュウ」なんだ、「はた迷惑な好奇心」なんだとしているところです。私は怖いからやらないだけですが、作者はそこまで考えています。見習いたいものです。



総合文芸誌『秋桜』2号
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2007.10.31 大阪府交野市
志田静枝氏発行  500円

<目次>
蝉しぐれ−江口レラ…4           パートナー−江口レラ…5
じたばた−伴 隆志…6           柏手
(かしわで)を−伴 隆志…7
ヤドカリ−司 由衣…8           スタートライン−司 由衣…9
宇宙人−
志田静枝…10            春の陽−志田静枝…11
ふとん祭り−
志田静枝…12          春の街角−山下俊子…14
節句の夜−川内久栄…16           敗戦ソ連抑留(捕虜生活)−渡邉芳治…18
赤帽への気配り−堀 諭…20         福々カラー写真――ある日ある時ステキ展覧会を思いつつ−堀 諭…21
親しい友に−堀 諭…22           韓流ドラマに魅せられて−
志田静枝…23
*創刊号合評会記……26
編集後記
研究会だより



 ヤドカリ/司 由衣

行くのであって
帰るのではない
来たのであって
帰ってきたのではない

息子が言うのです
一緒に食事をすると咽に詰まる
一緒にいるとピアノが弾けない
一緒にいると息が苦しくなる
一緒にいると眠れない

栖を取り替えるくらい
おてのもの
わが家を出たのは
わたしのほうです

食事を作りにきたのです
お茶を沸かしにきただけです
洗濯をしにきたのです
様子を見にきただけです

用事を済ませたら
貝殻を探しに出かけましょう
巻貝の空き殻でなくてもいいのです
螺旋状に巻いた殻なら
ペットボトルの蓋だって事足りる
わたしはヤドカリ

 「息子」さんが「一緒にいると」云々言っていたので、「わが家を出たのは/わたしのほう」だったのですね。でも心配で時々は「様子を見に」「行く」わけです。それで第1連がよく判りました。最終連の「わたしはヤドカリ」にもつながります。血を分けた母子であっても「一緒にいると眠れない」というのは、作品とは逆になりますが、私の父親もよく言う科白です。こっちは年寄りの一人暮らしだからと思って訪ねるのですが、なかなか親子関係とは難しいものです。現代の世相なのでしょうか。そんなことも考えてしまいました。



詩誌『すてっぷ』77号
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2007.12.8 京都市左京区
河野仁昭氏方・すてっぷ詩話会発行 500円

<目次>
きゅうりは夏…上野準子 4         日替りランチ…司由衣 6
決断…富沢玲子 8             紫陽花を生ける…稲葉やよい 10
逢魔が時…武藤迪子 12           無心…横山芳郎 15
訪日本京都大八木先生…候海臣 16      我答礼候海臣先生…大八木庸男 17
春景…史麻雅子 18             カンナの花…田中明子 19
晩年の頌/心ゆく立志…曽谷道子 20     ポスト/一日…藤本美代 24
面影…賀川幸夫 28             満月…住田文子 31
モノローグ…野谷美智子 32         千葉で葬儀・東京で妹を訪ねた…常願路哲満 35
みっつになったけいすけのどうぶつえん…金原樟子 36
夢たがえ…北野一子 38           イヌの話…西田明子 40
百歳の姑…山本君子 42           彼岸花…河野仁昭 45

旅のスケッチ W…野谷美智子 46      京都の俳人たち(二)−野風呂・草城と『京鹿子』−…河野仁昭 52
例会 メモ 他…賀川幸夫 67
Step 72                ADDRESS
カット・森田英津子



 日替りランチ/司 由衣

一度逢いましょう
メールで言葉をたび重ねても
虚しいだけです

思いがけないことだったから
その人から電話をもらって
どぎまぎした
日常がみるみる
稀薄になっていく
受話器を片手に時間と場所をメモり
華やいだ声で
はい! と約束をした
うしろめたい気がして逃げた
台所で逃げてくるわたしと出会した
長年抱えてきた息子を理由に
日常が容姿に染みついている

馬鹿みたい 午後二時に
男と逢う約束をしたら
日常がくら替えして
容姿にばかり気を取られている
約束の時間まであと三時間ある
取り繕えば何とかなる

かあさん! きょうの日替りランチ何?

 「男と逢う約束をした」非日常と、「かあさん! きょうの日替りランチ何?」と聞かれる「日常」、この落差がおもしろいですね。日常の中に潜む非日常を改めて感じてしまいます。私は会ったことのない、いわゆるメル友と会うという機会はほとんどないのですが、パソコン通信の時代はオフ会によく行っていました。そんなときは自分でも「華やいだ声」だったなと思います。これも現代≠ナすね。一昔前では考えられないような出会いのある時代なんだなと思います。



   
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