きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
tsuribashi
吊橋・長い道程




2007.12.31(月)


 恒例の、今年いただいた本の発表です。

  詩集等(冊) 詩誌等(冊)  計(冊)
1月 17 60 77
2月 12 44 56
3月 13 57 70
4月 15 61 76
5月 15 68 83
6月 17 50 67
7月 26 61 87
8月 24 50 74
9月 35 59 94
10月 30 62 92
11月 24 59 83
12月 34 78 112
262 709 971

 昨年に比べると詩集などは同じような数ですが詩誌等が100冊ほど増えています。それだけ活動が活発だったと言えるかもしれません。いただいた本の合計も昨年より100冊ほど増えています。来年は1000冊の大台に乗るかもしれません。謹んで拝読いたします。
 今年のトピックスは、12月に初めて100冊を超えたことです。2月のちょうど2倍ですから、さすがに読み応えがありました。礼状も大幅に遅れてしまいました、すみません。もっと早く読めるように工夫したいと思っています。



詩誌『堅香子』2号
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2007.12.25 岩手県岩手郡滝沢村
吉野重雄氏方「堅香子」の会発行 800円

<目次>

斉藤駿一郎 歯科治療室 2         斉藤駿一郎 かっちゃと僕 5
佐藤 康二 磯崎 7            千葉 祐子 嶽きみの袋片手にゆらし 10
千葉 祐子 絵葉書 12           永田  豊 一枚の絵 14
大村 孝子 さくら草が還る 18       大村 孝子 ゆきあいの空 20
斎藤 彰吾 へいへい唄 22         佐々木光子 灯り 24
佐々木光子 風の遺稿集 26         上斗米隆夫 国道一○六号 28
黒川  純 少し悪いことは少し良いこと 31
エッセイ〈詩とその原風景〉
渡邊 眞吾 ずばり原風景 34        千葉 祐子 旅の記憶に 36

朝倉 宏哉 へその緒 38          藤森 重紀 かたっけゃ葬 41
藤森 重紀 恵比須講 43          糠塚  玲 ビー玉 45
かしわばら くみこ 訪れた秋 47      かしわばら くみこ 百舌の食卓 49
八重樫 哲 樺山 連詩61 52        森  三紗 秋のイリュージョン 54
藤野なほ子 黄あげは 57          長尾  登 婆子焼庵
(ばししょうあん) 60
長尾  登 親に似ぬ子は・・・ 63     渡邊 眞吾 山峡の駅で 65
吉野 重碓 花ことば 68

寄せ書き 72                読者からのお便り 76
紙上合評会 78               受贈誌の紹介とお礼 80
伝言板(かたかご・らんど) 80        編集後記 81
同人名簿 82
表紙題字・岩手墨滴会会長 阿部宏行     装丁・田村晴樹



 かっちゃと僕/斉藤駿一郎

「だっこしてかっちゃ」
「このいそがしどぎなにしたど」
「だってだっこしでぇもん」
「あやや 小学校二年しぇになっても
 だっこだってが。このすとんけ」

「詩をかかねばなんね
 だっこの詩を書かねばなんね
 だからだっこしてってば・・・・」
「まんまの仕度しねばなんねぇしいそがしがらよ」
「かっちゃだっこしてければえどもな」
(ああそういえば下の娘が生れてから
 息子はされぇかまねできてしもった)
「どれ、来(こ)」
息子はかっちゃの胸にしがみつく
「かっちゃギュッとして」
(かっちゃは息子をギュッとする)
かっちゃは子守唄を歌った
家のなかぐるぐるまわりながら子守唄うだった
かっちゃ涙っこ流しながらうだった

息子は詩を書いた
その詩をかっちゃに「秘密」と言って見せなかった

夜 息子の寝顔を見ながら
かっちゃは枕もとの詩をこっそり覗いた
文のおしまいに
「まただっこの宿題があればいいな」と書いて・・

かっちゃは一人ごとを言った
「宿題がなくてもいつでもギュッとすっからな・・」

 岩手弁(で良いと思いますが)が何とも佳い味を出している作品です。「下の娘が生れてから」母親に構ってもらえなくなった「小学校二年」の「息子」が良く描けていると思います。「かっちゃ涙っこ流しながらうだった」のも「まただっこの宿題があればいいな」も生きていますね。父親の眼で母子を見ている構成も成功していると思いました。



詩とエッセイ『飛揚』46号
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2008.1.7 東京都北区 葵生川玲氏発行 500円

<目次> 特集・身体の言葉
作品
骨−仲村ひなた 4             縮む−みもとけいこ 6
繁みを払う−米川 征 8          曲げる−沖長ルミ子 10
化石となる日−土井敦夫 12         五重の塔−伏木田土美 14
ココロとカラダ−くにさだきみ 16      歯がゆいこと−青島洋子 18
転写−北村 真 21             手をふる−葵生川玲 24
エッセイ
痛みをもって体感せよ−仲村ひなた 27
夜道の縄をまたいだ(くにさだきみ詩集『静かな朝』)−青島洋子 28
もどかしい場所に踏とどまろうとする志(米川征詩集『腑』)−北村 真 30
近況
葵生川玲・仲村ひなた・米川征 33
●編集後記 34 ●同人刊行詩書 2 ●同人住所録 35
装幀・レイアウト−滝川一雄



 歯がゆいこと/青島洋子

「大きかったので
神経を削りました。」

昨夜私を眠らせなかった犯人を
医者は容赦なく削り取る。

「倒しますよ」
「うがいして下さい」
椅子を何回か倒される。
そのたびに
前面に広がる窓から
木々が緑の腕で
私の緊張を包むが
麻酔でこわばったうがいは
ゆがんで

「噛み合わせてみて下さい」
もとから狂っている噛み合わせが
いよいよ心もとない。
これで食べものを噛んできたのか。
消化してきたのだったか。

虫歯はまだ何本かある。
歯噛みする想いは数えきれないほど
歯が浮く言葉も何度か使った。
歯に衣きせないのは生来のこと。
歯がたたない教養や人徳を土台に
歯を食いしばるプライドがあり
歯がゆさばかり味わっている。

私をいたわり
他人をいたわり
深い井戸からくみ上げる
言の葉は干からびて
それがために根元から
蝕まれていた言葉の砦。

歯を治療したら
胃腸の具合が良くなったと
つい先日、
友人がせいせいした顔つきで
言っていたのを思い出しながら

「先生 言葉も良く噛みしめられる歯に
 して下さい」
私はよくよくお願いしたのだ。

 特集「身体の言葉」の中の1篇です。第5連の歯に関する言葉、特に「歯が浮く言葉も何度か使った」や「歯がたたない教養や人徳」もおもしろいのですが、やはり最終連が佳いですね。巧い!と思わず手を打ってしまいました。1行1行の言葉を「良く噛みしめ」て、何度も味わった作品です。



季刊・詩と童謡『ぎんなん』63号
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2008.1.1 大阪府豊中市
島田陽子氏方・ぎんなんの会発行  400円

<目次>
僕は歩く…もり・けん 1          声で旅して…森山久美子 2
すずむし…ゆうきあい 3          まんぷく おつきさまのよる/パパのおにぎり…池田直恵 4
美しいもの/ごはん/ねこやなぎ/行動力のあるバッタ/みかん/空…いたいせいいち 5
てのひらにまめ/ぶどう…井上良子 6    不思議な種/ブランコ毛虫…井村育子 7
もし青虫になれたら…柿本香苗 8      どうしたの?/いいのにな…かわぞええいいち 9
びっくりって素敵/むかし…小林育子 10   ふしぎな ねこ…島田陽子 11
とけた/掃く…すぎもとれいこ 12      パパになりたい/心替え…滝澤えつこ 13
今日から/あまとうがらし…冨岡みち 14   社会見学/一房の花…富田栄子 15
あまのじゃく/しつもん…中島和子 16    童話教室/土のぬくみ…名古きよえ 17
雪の花/お寺の石だたみ…畑中圭一 18    てぶくろ/ムダ/つぼみ…藤本美智子 19
まさか こんな所に!/オウムのうた…前山敬子 20
もうすぐふゆ/おいもほり…松本純子 21   帰り道/少女が撮った やぎ…萬里小路和美 22
野の花/北風の中へ…むらせともこ 23
本の散歩道…畑中圭一・島田陽子 24     かふぇてらす…藤本美智子・前山敬子・森山久美子 27
INFORMATION 28         あとがき 29
表紙デザイン 卯月まお



 むかし/小林育子

むかしねって
つぶやいてみる
ほおがゆるむ
胸におさまった
「むかし」は
もう変ることはない
「むかし」のためには
もうがんばらなくていい
くるくる変る
「いま」を生きることに
疲れたら
じたばたと作ってきた
「むかし」が
自分の中にちゃんと
静かに座ってることを
たしかめる
そして また
「生きる」をはじめる

 私は「むかし」のことを考えると、忸怩たるものがあって、赤面することばかりです。時々、ああしておけば良かった、こうしておけば良かった、変えられるものなら変えたいと思うのですが、この作品は「『むかし』は/もう変ることはない/『むかし』のためには/もうがんばらなくていい」と教えてくれます。まったくその通りで、昔のことより今を「『生きる』をはじめる」ことの方が大切ですね。子ども向けの詩ですが、大人にも充分通用する作品だと思いました。



個人詩誌『進化論』8号
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2008.1.1 大阪市浪速区 佐相憲一氏発行
非売品

<目次>
詩 灯台
(こえ) 1
『詩と思想』
Book Review '07.9〜12月号 3
『詩人会議』書評 '07.11月号 4
『PO』126号 一編の小説 5
『九条の会詩人の輪』千葉のつどいプログラム よびかけ人メッセージ 6
『しんぶん赤旗』関西版 近畿の散歩道 '07.10.6〜10.27 7
エッセイ 地球論(随筆風)(1) 静御前のうたが聴こえてくるまで 9
詩 ハードボイルド 12
受贈詩誌等紹介 13
詩 俳優
(アドリブ) 17
新年のご挨拶



 ハードボイルド

仕事帰りの深夜十一時三十分
アスファルトに街灯がしみこみ
誰もいない師走の通り
救急車、消防車、パトカー
そして私の靴音
深夜食堂のおかわりセルフサービス
突然人間と遭遇する
疲れきった顔、解放感の顔、思案顔
私は風部薬を飲んで店を出る
海が近い
ここはアジアの匂いがする
深夜十二時の公園を通過
日付はあっけなく変わる
私の残業代は闇に消えたが
人生をあきらめるわけにはいかない

 慌しい師走の「仕事帰りの深夜」の一齣です。「救急車、消防車、パトカー/そして私の靴音」と無機質な風景の中で、「突然人間と遭遇する」のは「深夜食堂」ぐらいなものかもしれません。そんな彼らを作者は「疲れきった顔、解放感の顔、思案顔」と観察し、「海が近い」場所を「ここはアジアの匂いがする」と眺めます。これらに人間を見つめようとする精神が表出しているように思います。
 最終行の「人生をあきらめるわけにはいかない」というフレーズがよく効いています。タイトルもそれと関連しているのでしょう。応援したくなる作品です。



   
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